「大企業の印象だけど”永久ベンチャー”を掲げているってどういうこと?」
「ロジカルに詰められる、という話を聞きました……」
「社風がはっきりしていて、中途入社は馴染みにくいのでは?」
転職先としてDeNAを候補に考えた時、こういう噂を耳にする方もいるのでは。
そして「実際のところ、それってどうなの?」と。
では、“転職を検討される方”目線で、日頃からDeNAをウォッチしているプロの意見は――。
というわけで、転職エージェント、リクルートキャリアの松波 達也(まつなみ たつや)さんと内堀 由美子(うちぼり ゆみこ)さんが、フルスイングのインタビュアーとして登場!
『ホントはどうなの? DeNA』の第2弾(※1)として、DeNAヒューマンリソース本部所属・角 壯志(すみ まさし)と、北河真実(きたがわ まみ)に、どんどん斬り込んでいただきました。
※1....第1弾『「DeNAってハードワークじゃないの?」高野秀敏(キープレイヤーズ)が聞いてみた』はこちら
目次 [隠す]
転職の際に気になるリアルな疑問にお答えします!
松波
こんにちは。リクルートキャリアで御社の採用を担当している松波です。
内堀
同じくリクルートキャリアでハイキャリア部門を担当しております、内堀です。
角
こんにちは。ヒューマンリソース本部でキャリア採用グループのマネージャーをしている角と……
北河
北河です。いつもお世話になっております!
内堀
こちらこそ!
松波
私は長らくDeNAさんを担当させていただいていて、多くの転職候補者様に御社にご入社いただきました。本当にお世話になっています。
角
松波さんはたぶん弊社への転職候補者様と会われている回数はトップレベル。なので普段言えないことも含めて、どんどん本音をさらけ出してください(笑)。
松波
いえ。私ではなく、御社の本音をうかがうコーナーですので(笑)。
●斬込1「ベンチャーなの? 大企業なの?」
内堀
では早速。
まずは「DeNAはすでに大きな組織だから、個人の裁量は少ないのではないか?」という意見が候補者の声としてよく聞かれます。その点に関してはいかがですか?
角
はい。いま、社員数は2,500人弱。私が入社した2012年は1,000人前後でしたので、組織が大きくなっているのは事実ですね。
内堀
必然的に以前より役職者の数も増えますよね? そうなると、稟議や決議に時間がかかってしまう印象がありますが。
角
そういったことはあまり感じないですね。slackで部長に「以前お話ししていた件、こうしたいのですが」と伝えると「いいんじゃない?」とサクッと返ってきて進むことがままあるほどです(笑)。
内堀
うらやましいですね!
松波
御社は新規事業の立ち上げなど「予算、内容に関して事業部に決定権がある」とも聞きました。
北河
はい新規事業に限らず、目的とゴールは決めて共有しつつも「プロセスは現場に任せる」というリーンなスタイルは部門、事業領域問わず浸透していますね。
松波
一方で「個人の裁量をできるだけ持ちたい!」タイプは、御社よりもスタートアップを目指すことも多いと思うんです。
角
でしょうね。
ただスタートアップのサイズだと人手が足りないため、否が応でもあれもこれもとやらざるを得ないのが真実だと思うんです。その結果「カオスの中で裁量を持たされている」となりがちというか。
内堀
DeNAは違う?
角
昔と今でだいぶ変わってきた印象です。
弊社は事業範囲や事業規模が拡大するにつれて、専門性の高い人材を多く採用してきました。それは「頼れる人間が増えている」ということ。多様な人材がいるからこそ、異なる強みを活かして質の高いアウトプットができるようになった実感があります。
松波
決議のスピード感はより小規模なベンチャーと同等もしくはそれ以上。しかし、会社自体は2,000人超の社員を抱える大企業ですよね。
スタートアップ企業を希望される方には「裁量ある役職に就けること」を重視されている方も多くいます。そのあたりは御社はどうお考えですか?
角
う〜ん、役職者に一定の裁量があることは事実ですが「役職は役割でしかない」という考え方が社内では浸透しているんですよ。やはり事業を成功させること、世の中に喜びや驚きを届けることこそが大切で、そのために適切な組織をつくり、適材適所で役割をあてるのが筋かなと。
北河
部長職だからといって、部長の役職に報酬を支払う「役職給」みたいな考え方もないですしね。
角
だから、役職についたあとでも「やはりプレイヤーがいい」と現場に戻り、さらにその後役職にまたつく人もいる。
キャリアパスについては、まったくベクトルが1つではないんです。だからこそ、個々人のライフステージに沿った「働き方」を自由度高く選べる。
松波
そうなると1人1人、よく考えてキャリア設計する難しさも出てきますよね?
北河
そう取れる一面もあると思います。
個人のWill、つまり「やりたいこと」が明確にある方に対しては、それをベースにCan「実際に本人ができること」、Must「会社としてやるべきこと」をすり合わせていきます。
けれど、会社にいるすべての人たちが必ずしも“やりたいこと”が明確にあるわけではないと思うんです。個人のWill、Can、Mustはしっかりマネージャーとの1on1でコミュニケーションしながら見極め、広げ、本人もDeNAも幸せになるカタチを常に探っている。
角
ですね。ただ、変化が激しい事業領域で複数のチャレンジを続けるからこそ、組織のカタチも変わらざるを得ない。「今いる役職をずっと守りたい」タイプの方は、少し合わないかもしれませんね。
●斬込2「中途入社でもすぐに馴染めるの?」
内堀
こちらはいかがでしょう? 企業には当然、社風がある。社風に馴染めず中途入社の方が戸惑われるケースが多いのですが……。
角
そういう意味では、まずDeNAは色濃い社風がありますね。
北河
そうですね。実は私、お2人と近い、同業他社からの転職組なんです。転職して最初に驚いたのは、弊社が掲げている全社員に求められる共通の姿勢である「DeNA Quality」、私達は略して「DQ」と呼ぶものです。
松波
御社との打ち合わせでは、頻繁に出てくるパワーワードですよね。
北河
はい。
行動指針としてのDQが社員1人1人に浸透している。ひと言でいえば、「自分が」「事業部が」といった主語をもって働くのではなく、「お客様が」「社会が」「事業が」という主語で考え業務を遂行する、というのが根っこにあります。
角
DQの中にある「『こと』に向かう」ですね。
北河
そう。ちなみに私が入社したばかりの頃、個人的に戸惑ったというか、驚いたのは「発言責任」なんです。
内堀
発言責任?
北河
「役割にかかわらず、しっかりと自分の考えを示す」ことが是とされる考え方です。
一般的には、主に上長を中心に「まわりの空気を読んで発言する」のが、会社でよく見られる光景じゃないですか。
松波
確かに、多くの転職候補者様から「何を言うかの前に、誰が言うかを重視する組織の空気」を現職で感じられていると伺っております。
北河
ええ。
しかしDeNAは完全に逆。「何を」言うかが大切。だから発言しないことは責任を果たしていないことになる。
私も入社初日のミーティングで「外の空気からうちを見て感じることはない?」「自分の意見として、今日の議題どう思う?」などと、すごい“圧”で発言を求められて(笑)。
角
社歴も役職も関係なく発言をしあうことでより良いものを追求するのが当たり前なんですよね。いまマネージャーになっても、上長からもメンバーからも、ことあるごとに「なぜですか?」とつっこまれ続けていますし(笑)
内堀
まさしくフラット(笑)。
北河
これもDQの1つ「全力コミット」に含まれる「球の表面積」という考え方が表れているかもしれません。
DeNAの一員となったその日から、DeNAという球体を代表する表面積の一部をプロフェッショナルとして担うことになる。その責任感と気概を持って仕事にあたれ、という。
松波
なるほど。採用の段階でもこのDQに共感できるか否かは重視されていますか?
角
しています。いくら専門性やスキルが高い方でも、DQを共有できない方は採用していません。そこに共感できるかが、中途入社でも弊社にすんなり馴染めるかどうかに関わるのかなと。
松波
逆に言うと入社してからDQを磨けるような仕組みはあまりない?
角
いえ。
たとえ共感できたとしても、前職とのカルチャーとギャップがある方がほとんどでしょうから、入社時のオリエンテーションでのワークショップや、DQやカルチャーについては南場が直接入社者に伝える場を設けています。
また、マネージャーにも、DQの「体現」はもちろんメンバーへの「浸透」とセットでお願いし、その考え方をことあるごとに発信しています。
北河
何より本当に普段から社員がよく言葉として発していますからね。プレゼンでも、ちょっとしたミーティングでも「その発想はデライトかな?」「DQ低くない?」とか。
松波
そんなふうに日常会話に染み込んでいるから、自然と社員の中にも浸透していくんでしょうね。
●斬込3「ロジカルな人ばかりなんじゃないの?」
松波
次は候補者の方にとてもよく聞かれる質問で「DeNAはロジカルで優秀な人しか入れないのではないか」と。
北河
これ正直、我々の悩みでもあるんです。
内堀
悩み? といいますと。
北河
面接を受けられた方からいただくフィードバックの多くに、
「もっとロジックで詰められると思いました」
「意外とアットホームな雰囲気で驚きました」という声が多い。
「え? うちの会社ってどれだけ冷たい会社で、ロジカルな人しかいないと思われているの!?」と。
内堀・松波 (笑)
北河
確かに、そういう面はあるけれど、必要以上に冷たく思われたり、怖がられたり……実際はそこまででもないんですけどね(笑)。理由は何なんでしょうね?
内堀
ビジネスサイドの層が厚いという印象がありますね。ほかには、受験者の間で「面接でロジックで詰められた」という噂が出ていることもあるのかなと。
角
正直なところ、私自身も学生として受けたDeNAの採用面接でやたらと「なぜ?」「なんでそう思った?」「どうして?」と詰め寄られました(笑)。これも、DQをはじめとする本質を徹底的に追求する風土に基づく行動ともいえるんですよね。
松波
そうか。「『こと』に向かう」ですね。
角
そう。
正しいことがしたい、成功の確率を1%でも高めたい、面接の場で言えば、相手の本質をとことん知りたい……。その結果としてロジカルにツメることに長けた人材は現状多いと思うのですが、冷たいわけでも、相手をツメたいわけでもないんですよ。
松波
( ん? 「つめたい」に2つの意味をかけてきた……? 発言責任を果たしていないと言われそうだが、ここはスルーでいいか)
角
さらに今は南場(※2)も「これからも世の中に喜びと驚きを与えるためにはロジカルな強みとエモーショナルな強みが両方不可欠だ」と言っており、ロジックだけじゃない多様な人材を求め、のびのびと個性が発揮される組織にしていこう、という方向性です。
オートモーティブ事業やヘルスケア事業のように、1人の社員の想いから立ち上がった事業も多くあります。
松波
なるほど。たしかに御社は事業の広がりもあってか、多彩な人材を採用されていますよね。もちろん、どの方にもDQは共感していただいた上だと思いますが。
北河
そうですね。
ゲーム、オートモーティブ、ヘルスケア、エンターテインメント、スポーツなど、事業が多岐に渡り、インターネット企業の出自に限らず、元官僚の方や研究員など専門的なスペシャリストの方に多く入社していただいている状況です。
松波
実はそうした多様な人材を求め、受け入れられる深い懐というか、土俵がすでにある。
それを「ロジカルシンキングな高学歴者」というだけで限定されるのは本意じゃないし、候補者の方にとっても、御社にとっても機会損失になっているのかもしれませんね。
北河
逆に斬り込みたいのですが、どうしたらいいでしょうか? そうした誤解を解いて、候補者の方から支持されるには。
※2……南場智子・代表取締役会長
松波
弊社が2019年の中途採用におけるトレンド予測として出したキーワードが「職場スカウト採用」なんですね。
角
職場スカウト採用?
内堀
はい。
⼈事だけが孤軍奮闘するのではなく、配属先の職場⻑や同僚が採⽤活動を主導して、普段通りのありのままの職場で、仕事の進め⽅や習慣、そして働く環境を共有し、将来のチームメイトとして、⼊社後のリアルをすり合わせる。会社主体の採用から職場主体の採用へと移行している傾向にあります。
そこで事業部主導で、リアルな働く人たちの姿を見てもらい、仕事の進め方や働き方のスタイルを知ってもらったうえで、マッチングをはかる。そのほうがずっと互いがミスなく幸せになれると。
松波
もちろん、この『フルスイング』などで事業部の現場の方々が登場しているのはこの流れに沿った良い施策だと思います。
加えて、今御社にもそのような機会が増えているようにお見受けしていますが、カジュアルに候補者や、あるいは潜在層の方々と職場の方が出会えるようなミートアップの機会などはいいのかもしれませんね。
●斬込4「海外事業に携われる機会はあるの?」
松波
海外に挑戦する機会がほしいという候補者も多く、御社の今後の海外展開についてお聞かせいただけますか?
以前御社は海外展開を積極的にされていたような印象ですが、ここ最近はあまりそのような印象がなく……。
角
そう見えますよね。
あまり知られていないかもしれませんが、ゲーム領域ではアニメIPを使ったゲームで海外展開があったり、世界最大級のオンラインゲームプラットフォームを運用しているテンセントゲームズと提携し中国のゲームの日本版を配信したりなど、色々取り組みはあります。
他にも水面下での動き合わせいろいろと海外展開は検討準備しているのですが、社外からは「以前より海外展開に消極的」と見えがちなことは認識しています(笑)。
松波
す、すみません……。(斬り込み過ぎたか?)
角
いえいえ。
しかし、今また「さらに海外にアクセルを踏み込もう」という機運が高まっているんですよ。
今年、ちょうど20周年で「De20(※3)」の名のもとに、この節目にあらたなチャレンジをボトムアップでして行こうと、ボトムアップでさまざまな施策の検討・実施がすすんでいます。その中で『意地でも海外事業立ち上げを検討してみるプロジェクト』が立ち上がって。
松波
名前がストレートですね(笑)。
角
弊社のミッションに「Delight and Impact the World」があり、ここが指す「World」は「世の中」という意味と「世界」というのがある。今の事業の延長線上から少し離れたところで、海外事業を今一度検討し、Willの強いメンバーが集まって何か生まれないかを模索しているところです。
松波
海外展開はゲームはもちろん、AIやそのほかの分野でもありえる、と?
北河
くわしくは、ぜひ面接で(笑)!
角
いずれにしても、現状は20周年の節目で「さらに挑戦していこう」というフェーズ。
一方で売上の7割をあげているゲーム以外の柱をいまだにつくれない悔しさと焦りも持っています。
内堀
3年後、5年後にはないおもしろさが、今のDeNAにはありそうですね。
角
みんな「次のインパクトを出したい!」という気持ちが溢れているときです。決して順風満帆ではないですし、課題も多いですが「うちの会社ってこうだよね……」と斜に構えて批判するのではなく、当事者、主役として挑戦し「ダメなところは変えていきたい!」という思いを持った方にはとてもエキサイティングな環境ではないかと思います。
松波
これはよく候補者の方に言うのですが「今いる環境で『本当はこれを成し遂げたい』という想いを何かの理由で我慢している方は、きっとDeNAならまっすぐに走れますよ」って。
今日のお話で、この感覚が確信に変わった気がしますね。
北河
お、松波さんDQが高いんじゃないですか(笑)? さすが!
松波
まだまだです(笑)! これからもよろしくお願いします。本日はありがとうございました!
角
また、いつでも斬り込んでくださいね。ありがとうございました!
※3……『De20』とは社員から出てきたさまざまなアイデアを未来に向けてカタチにしていく、DeNA創業20周年を記念した一大プロジェクト。『意地でも海外事業立ち上げを検討してみるプロジェクト』のほか、さまざまな企画が進行中。
株式会社リクルートキャリア インターネットサービス営業部
松波 達也(まつなみ たつや)氏
主にインターネットサービス業界の大手企業に対する中途採用支援を行う。DeNAを担当して2年。
株式会社リクルートキャリア ハイキャリア・グローバルコンサルティング部
内堀 由美子(うちぼり ゆみこ)氏
インターネットサービス業界の転職サポートをして約8年。主にハイキャリアの人材を担当している。
株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部人材開発部キャリアグループ
角 壯志(すみ まさし)
2012年に新卒としてDeNAへ入社。新卒/キャリア採用、人事労務、営業、サービス企画、HRBP等を経験し、現在はヒューマンリソース本部人材開発部キャリアグループのグループマネジャーとして、キャリア採用や派遣採用に携わる。
株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部人材開発部キャリアグループ
北河 真実(きたがわ まみ)
人材紹介会社を経て2017年にDeNAへ入社。事業部の採用などを経て現在は主にバックオフィスの採用に携わる。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
執筆: 箱田 高樹 編集:榮田 佳織・小池 遥 撮影:杉本 晴