DeNAの「人」と「働き方」の " 今 "を届ける。

タクシー配車アプリに自動運転。なぜ今、DeNAはオートモーティブに注力するのか?|私の所信表明 中島 宏

2018.12.05

所信表明。それは自分の考えや、信念、方針などを広く伝えること。

時代を動かしたどんな大きな変革も、最初はたった1人の強い信念からはじまりました。確かなビジョンと哲学に裏打ちされた本気の言葉は、時代を変えるほど大きな力を持つのです。

DeNA各事業リーダーたちの「所信表明」を公開する本連載。今回は執行役員オートモーティブ事業本部長、中島 宏(なかじま ひろし)の登場です。

「オートモーティブ事業でDeNAがなし得る社会課題の変革は、とてつもなく醍醐味があるんです」

そう熱く語る中島が、DeNAオートモーティブ領域に熱い信念を注ぐ理由と、今だからこそ仲間になって欲しい人材とは?

なぜDeNAがオートモーティブなのか改めて話そう


株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業本部長 中島 宏
大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAに入社。2009年4月より執行役員に就任。新規事業推進室長、HR本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任後、2015年にオートモーティブ事業本部を設立、本部長に就任。

こんにちは。DeNAでオートモーティブ事業本部長を務めている中島です。

「どうしてDeNAが自動運転を?」

今も、そんな疑問を投げかけられることがあるんですね。

実はDeNAは既に、自動運転を始め、オートモーティブ領域で多彩なサービスを展開しています。

AIを活用する次世代タクシー配車アプリ『MOV』(※1)。個人間カーシェアサービス・アプリの『Anyca』。無人運転バスによる交通サービスの『ロボットシャトル』。日産自動車様と取り組んでいる自動運転車両の『Easy Ride』などなど……。

他にも多くのサービス検討を進めています。

※1……2018年12月5日に『タクベル』から名称変更


▲DeNAのオートモーティブ事業が展開するサービス
群。他にも多くのサービス検討を進めている。各プロジェクトの詳細は『DeNA AUTOMOTIVE』に掲載

DeNAにゲームや野球のイメージを強く持たれている方には、DeNAがオートモーティブ領域で数々の事業を生み出していることは不思議に映るかもしれません。

ですが、オートモーティブ領域が抱える社会課題こそ、まさにDeNAがこれまで培ってきたアセットがその解決に大きく貢献できる対象なのだと確信しているんです。

これは、私の価値観に依るところが大きいんですが、私は今「日本が直面する社会課題を解決できる」ことに大きなモチベーションを感じるんです。

日本、ひいては世界が直面する社会課題に対し、自分たちの手で直接解決の一助を担える。

それは「新規事業を起ち上げる」「ビジネスをスケールさせる」ことを目的とした仕事よりも、大きな充足感を得られることだと個人的には思います。そして、DeNAオートモーティブには、想いを同じくする仲間が集っている。これは事業を推進する上での強い原動力になります。

これから、我々DeNAオートモーティブが「何をつくり、どんな課題を解決し、どんな未来を描こうとしているのか」お伝えしていきましょう。

交通不全は「今そこ」にある難題

課題先進国。日本を指して、そう言われることがあります。

日本は世界に先駆け、少子高齢社会に足を踏み入れました。そこに端を発っして様々な課題、つまり労働力不足、地域社会の衰退、医療や年金といった社会保障への不安など様々な課題が山積しています。

実は、これらの社会課題の多くが「交通課題」につながっていくんです。

たとえば少子高齢化は、過疎化も進行させます。過疎化が進んだ地域は当然、店舗数も減る。すると、日常的な買い物をするにも、遠方のショッピングモールなどに車で出かける必要が出て来ますよね。

ですが、運転者が高齢であれば、自ずと車の運転リスクは高まります。生活必需品を買うためにも、なかなかご自分で思うように車を運転できない方も多い。

「バスなど公共交通機関を使えばいいのでは」と思うかもしれませんが、すべての地域にバスや鉄道などを走らせるのは実質不可能です。

それならば、人が移動するのではなく「モノ」を移動させるような通販・宅配で生活必需品を届けてははどうかというと、これも課題を抱えています。爆発的に増えたネット通販の影響で、トラックのドライバーは慢性的な人手不足。運送各社が頭を抱えているのも、周知の通りです。

こうした社会課題は、未来の話ではありません。既に日本で起きている「現実」です。

東京の都心部のような場所にいると日々あまり実感しませんが、地方では社会課題が先行して進んでいるのです。

私には、忘れられない光景があります。

2年ほど前に、山口県の周防大島町(すおうおおしまちょう)という風光明媚な島の町を訪れました。ここで自動運転の実証実験をする計画が進んでいたので、ヒアリングに行ったんです。

1980年に3万人を越えていた人口が今や1万7千人ほど。過疎化、高齢化が進み、住民の多くが高齢者になっている。

ヒアリングに応じてくださったのは70代、80代の方々。私が「自動運転の実証実験をここでできないか検討している」と話したら「明日からやってくれ!」と即座に反応が返って来ました。

まだ準備は整っていないというのに「少しくらい危なくてもいい。人のほうが注意するから。それくらい必要としているんだ!」とおっしゃるんです。

現状の社会インフラが、今進行している社会課題を解決できるものになっていないということですね。今の交通システムは、高度経済成長期に設計されたものです。道路にしろ、車両にしろ、法律にしろ、すべて。

けれど、今は人口も減り高齢者が増えた低成長の時代です。時代に合わせ「今」に適合する交通システムを再インストールする必要がある。だから、DeNAオートモーティブは動き始めたんです。

日本の交通システムをアップデートして、課題をデライトに転換させることこそ、DeNAがやるべきことだと。

DeNAだけが持つ両輪の強み

「自動運転を社会実装するのは、DeNAではなく自動車メーカーの仕事ではないのか?」
そう思われる方もいるかもしれません。

けれど、違うんです。自動運転を中心にした交通システムというのは「新幹線」に近いもの、と考えればわかりやすいかもしれません。

新幹線の登場が、日本の地域と地域の距離を縮め、それ以前とそれ以降の世の中のあり方を大きく変えたのは誰しもご存知のところでしょう。

ただ、製造メーカーがつくった新幹線の「車両」だけでそれをなし得たかといえば、もちろんそんなことはないですよね。

ディベロッパーが土地を開発し、電力会社が電気を整備し、建築会社が専用線路を走らせる。さらに、システム会社が複雑な車両マネジメントシステムを提供し、運行者としてJRが人的なオペレーションを含めて全体をパッケージ化することで、始めて新幹線という社会システムを実装できている。

自動運転サービスも同じです。

車両は自動車メーカーによって開発、製造される必要がありますが、その際、車両マネジメントシステムが必要になるし、道路側も変える必要があるかもしれない。そして何より、運行を担う旅客運送事業者の方々が不可欠です。

つまり、大きな交通パッケージシステムが必要で、それを俯瞰でオペレーティングする知見と推進力が不可欠になります。

今の時代、こうしたシステム全体をパッケージとして成立させるには、ビジョンとパッションを持ち、それらを仕切り推進する力、つまり「オーケストレーション能力」と「AIやインターネット」といった技術力や知見が必要です。

そして、DeNAは、それらを持ち合わせているんです。

まずオーケストレーション能力の裏付けとなるのが、Mobageに代表されるゲームプラットフォーム事業を長年続けていることですね。

Mobageではゲームのプラットフォーマーとして事業スキームとマーケティング、具体的な運用などを手がけています。そこに参画いただく各デベロッパーの方々に魅力的なゲームをいかに持ち寄って頂き、エンドユーザーの方々にいかに楽しんでもらえるかを考える。

もちろん、すべての関わる方々にwin-winの関係を築かねばならない。こうしたプラットフォーマーとしてのナレッジを、DeNAはシステムや法務、運営ノウハウを含めて、多層的に積み上げてきました。

オーケストレーションだけ切り取れば、私たちより大手商社のほうがもっとパワフルにできるかもしれない。しかし、そこでDeNAの強みとして出てくるのがもう1つの車輪「AIやインターネット」です。

「ものとインターネットがつながるIoTの時代」が到来し、ハードウェアだけでサービスを成立させるのは難しくなりました。

自動運転の車両だけではなく、そこに実装する自動運転を制御するための基盤技術と具体的なサービスのシステムを結び付け、さらにクラウドによるオペレーション管理を一気通貫にできるのか。使いやすさと親しみやすさを満たしたUXを実現するアプリを開発できるのか、という話が出てくるんです。

自動運転を中心とした新たな交通システムは、これまで市場になかったものだけに、世に出した瞬間に見えなかったニーズがどんどん可視化されるようになるでしょう。

「もっとこうしてほしい」「この部分は変える必要がある」など、常にスピーディに移り変わるムービングターゲットになることは間違いない。そうした声を迅速にキャッチして、アップデートし続ける必要があります。

既にインターネットのサービスやモノづくりの経験や技術は十分あり、優秀なエンジニア陣を有し、AIをゲーム開発や創薬の現場に活かそうとしている我々だからこその強みがここで活きてきます。

"今”が、世の中をアップデートしていくとき

未来は、見えています。

まず私達が持つテクノロジーとオーケストレーション力で、多くのアライアンスパートナーと共に、今目の前の交通課題を解決していく。

それが他の社会課題...…たとえば労働力不足や都市課題を解消していくことにもつながります。

街全体、国全体の課題をゆるやかに解きほぐしていく。

課題先進国である日本でその課題解決を図れれば、それをそのまま世界の課題解決へとつなげられるはず。世界へも向かっていけるんです。

半年後、1年後、3年後では、もう違う景色になっていると思います。

ゲームのアナロジーで言えば、かつては「携帯電話の小さな画面でゲームする人なんているのか」と言われました。

それが当たり前のように、誰しも4センチ四方の画面でゲームを楽しむようになった。

スマートフォンに変わってからは更に進化し、市場も広がりました。世界中とつながって、クオリティの高いゲームを当たり前に楽しめる。

オートモーティブ領域でも、同じような変革が起きます。そして、その最前線に立つには“今”なんですよ。

こんな変革期には、ぜひ強い意志がある仲間がほしい。

世の中の、都市の、これからの社会課題を解決するためには、いろんなスペシャリストが必要ですから。実際、今我々のチームにはコンサル、中央官庁、メーカー、鉄道会社、AIエンジニア……と本当に多様な出身で多様な性格の人間が揃っています。

皆、すばらしく優秀でとにかくアツい。

これは、やっぱりミッションに共感して動いている、ミッション・ドリブンだからだと思うんです。

自分のスペシャリティを発揮しつつ「新たな領域で社会課題のために邁進する」って、ストレッチする苦しみもあると思いますが、爽快で気持ちいい成長実感がありますよね。

パワーの目盛りが100あるとしたら、今まで60程度で十分人並み以上にこなせていたような方も、100、あるいは120出さないと追いつかないような環境がここにはあります(笑)。「社会課題を解決したい」という想いを持っている方であることは最も重要で、絶対条件です。

3年後にはまったく違う景色になっている。そんな世の中のアップデートを、意志ある仲間と一緒に取り組んで行きたいと思っています。

あらゆる人やモノが、安全・快適に移動できる世界を目指す。そんな想いにワクワクする人とはどんどん繋がり合いたい。ぜひ声をかけてきてください。

執筆: 箱田 高樹 編集:榮田 佳織 撮影:杉本 晴

open menu