「人が組織を使う時代です」南場智子が起業家に宣言した"全力支援"――IVS2026スピーチより

2026.07.24

「組織が人を使う時代はとっくに終わっていて、人が組織を使う時代です」

2026年6月27日、南場智子がDeNAの代表取締役兼CEOに就任しました。まさに「ファウンダーモード」です。その決断の裏には、起業家たちとの出会いで再燃した挑戦心と、四半世紀やり残してきた宿題がありました。それは、「事業を生み、育て続けるための構造化」です。

大胆に挑み、泥臭くやり抜く。固体ではなく流体の、変化に強い組織をつくる。DeNAのアセットを、志ある起業家に開放する。2026年7月3日、IVS2026(京都)に登壇した南場が宣言した、スタートアップへの「全力支援」と「社会人として最後の大仕事」。そして、自ら立ち上げたシリコンバレー起業支援プログラム「DelightX」。その熱い講演内容を全文でお届けします。

「このまま終わっていいのか」。やり残した宿題は、事業を生み出し続ける「構造化」

こんにちは。ファウンダーモードとして、先日6月27日に社長に就任しました。きっかけはいくつかありますが、大きな転機は起業家たちとの接点です。

今年1月3日、サンフランシスコの起業家たちによる志を語る会を覗かせてもらいました。正月ボケは一瞬で吹き飛びました。「いかん、私もネジを巻かなきゃいけない」。

今のDeNAは、創業時から掲げる「永久ベンチャー」であり続けられているのか。理想と現実との乖離はないか。私は一度、次の世代へ経営を託した身です。「歴史を逆行させるようなことはしたくない」とずっと言い続けてきました。けれど、自問自答しました。「本当にこのままでいいのか」と。そう思ったらもう、メラメラと挑戦心が燃え上がって来ました。

DeNAはこれまで、さまざまな領域で革新的な事業やサービスを生み出してきました。

『モバオク』『Mobage』『怪盗ロワイヤル』といったヒットはもちろん、横浜DeNAベイスターズも、お預かりしている立場ではありますが、スポーツ界に新しい風を吹かせたと自負しています。

ライブストリーミング事業の『Pococha』も大きな柱です。全体で約400億円規模に育った当社ライブストリーミング事業のうち、4分の3をこの『Pococha』が担っています(※)。ゼロから自社で生み出したサービスが大きな存在感を持っています。他にも、タクシーアプリ『GO』の前身となった『タクベル』や、全世界累計2億ダウンロードを突破した『Pokémon Trading Card Game Pocket(以下、ポケポケ)』など、挑戦は途切れることがありません。

このように革新的なサービスを生み出していますので、会社の調子はもちろん悪くない。今でも、いちばん好きな事業会社はDeNAです。そして、こういったプロダクトを生み出してきている強さの源泉は何かというと、人材力です。

人材力こそ、私が経営者として最も注力してきた領域です。創業以来「数で妥協しても、質では絶対に妥協しない」を貫き、新卒採用の説明会もいまだにすべて私自身が登壇しています。新卒採用も中途採用も、時間とエネルギーを惜しまず、突き抜けたタレントを集め続ける。これだけは合格点だと自負しています。

彼らに経営資源を配分し、あとは自由に任せる。すると、勝手に次から次へと事業が生まれる。超優秀なチームがあれば、トップの大きな戦略など関係なく成果は出るんです。『ポケポケ』も『Mobage』もそう。私自身の関与は小さい。

よく「DeNAの本業って何ですか」「スポーツですか、ゲームですか」と聞かれますが、違います。私たちの本業は、「次から次へと事業を生み出し、新しいDelightを届け、育てること」そのものです。

では、何ができていないのか。それは、多様な人材が事業を生み、育てることを仕組みにするーー構造化です。これまで次々と事業を立ち上げ育ててきた一方で、それを構造化する力が著しく弱かった。そのまま四半世紀が過ぎてしまいました。これが私の大きな弱みであり、反省。やり残した宿題とも言えます。「これをやらずに卒業できないな」と。

だからこそ、戻ってきました。優秀な個人の偶然に頼るのではなく、事業が必然的に生まれ、育つ「構造そのもの」を構築する。それが私のやり残した宿題です。

固体ではなく流体。南場智子が語る変化に強い「循環型エコシステム組織」をつくる

これが私たちのイメージする構造です。

左側の0→1、社内の新規事業やスタートアップ投資。ここは「Velocity(ベロシティ)」が命です。つまり、速さ。高い回転数で次々と挑戦し、我が社のリソースを注ぎ込めば発展させられる事業に対して投資やM&Aを行い、とことんグロースさせてチャンピオン事業に育てる。これをメカニズム化するのが、今の私の宿題です。

DeNAには、大胆に挑み、泥臭くやり抜く優秀な人材がたくさんいます。これまで通り彼らの挑戦を止めずに、新しいDelightを届けるというアクティビティを止めずに、全体を構造化して底上げする。

そして、高いベロシティでの挑戦を絶え間なく行うなかで、「これだけの大きなDelightを世の中に届けるんだ」という志、Vision(ビジョン)を持つ収益事業をどんどん育て上げて、その成果を次の挑戦に還元する。いわば循環型生命体のような、エコシステム型の組織をつくっていこうと思っています。

技術の変化が速い今、「AI時代に最適な組織とは何か」という議論が世界中で盛んです。ジャック・ドーシー氏とルーロフ・ボサ氏が発表したエッセイ『From Hierarchy to Intelligence(階層から知能へ)』を読んだ人は多いと思いますが、海外の著名な起業家の発言なども、組織論は相当なペースで論旨が変わっています。同じ人物の発言を時系列で追ってみても見立てはどんどん変わっています。「この人が言うのは正しい」と信じ込んで組織をつくり込むのはリスクでしかない。正解は、変化に強い組織をつくるということではないでしょうか。

変化に強いものは、固体より流体です。私のイメージする組織は、その時々の環境に応じて柔軟に進化する生命体のような存在です。

シリコンバレーを見れば明らかです。半導体から始まり、インターネット、クラウド、モバイル、Web3、そしてAIと、担ぐ技術や主役は目まぐるしく変わっています。それでもシリコンバレーというエコシステムが常に瑞々しいのは、一つひとつのスタートアップが高回転で挑戦を繰り返し、成功を次の挑戦へ循環させているからです。

そのイメージを持ってDeNAも動的な組織になっていきたいと思っています。

キーワードは、「挑戦」と「ベロシティ」と「ビジョン」。青臭いと思われるかもしれませんが、私の社会人としての最後の大仕事として、この循環型の組織を実現させます。

今日はこの構造の左側に位置する0→1の営み、その中でもスタートアップとの関わり、スタートアップのバリューアップにDeNAがどう関わっていくかを、実際の例を用いてご紹介したいと思います。

『AI社長』×『リーダーズAI』──スタートアップとDeNAの共同戦線

デライト・ベンチャーズのポートフォリオから、株式会社THAの西山朝子さんが手がける『AI社長』の事例を紹介します。西山さんがDeNA在籍時に副業で立ち上げたこのサービスは順調に成長しています。こちらは新規ユニークユーザー数(NUU)のグラフです。ユーザー数は直線的な伸びではなく、まさに2次曲線的カーブを描いています。

『AI社長』は、経営者の思考をAIに学習させ、忙しい中小企業の社長に代わってAIが的確に回答してくれるサービスです。社内ツールからいつでも経営判断に触れられる手軽さが受け入れられ、今や大企業からも熱い引き合いをいただいています。

DeNAでも、子会社社長を兼務している住吉政一郎(グロース事業本部 本部長)が導入しています。彼が言うには、「自分もAIとの対話で考えが研ぎ澄まされる」と。メンバーにとっても、住吉の経営哲学をいつでも確認できる「AI住吉」の存在は非常に大きいようです。

ただし、大企業への導入には、厳格なセキュリティ基準やマルチテナント対応など、複雑な要件が伴います。THAの西山チームが開発リソースに苦慮していた際、DeNAから犬塚佳樹(DeNA AI Link)のチームが開発支援に入りました。そうして生まれたのが大企業向けブランド『リーダーズAI』です。

中小企業向けはTHAの『AI社長』、大企業向けはDeNAの『リーダーズAI』。この棲み分けでマーケットを広げています。大企業が求める複雑なエンタープライズの要件をDeNAの知見で補い、事業を加速させる。リーダーズAIは既に事業として回り始めています。

私もスタートアップの集まりから大企業の経営層のセミナーなど、あちこちで「AI社長」を宣伝して回っています。出資先のためなら、どこへでも飛んでいきます。DeNAの営業部隊ももちろん動いています。

圧倒的な生産性の出資先『カウシェ』に、知見を注ぐ

もう一つご紹介します。門奈剣平さん(株式会社カウシェ 代表取締役)率いる『カウシェ』です。デライト・ベンチャーズの出資から関係が始まりました。

彼らへの支援で特筆すべきは、AI活用の浸透です。社内の知見を共有する勉強会を実施したところ、カウシェの皆さんは即座にAIを武器として使いこなし、徹底した効率化を実現しました。見てください、この圧倒的な生産性を。

社員一人当たりの月次粗利は約1,300万円(2026年5月時点速報値)。上場企業の中でもトップ10に入る水準と聞いています。さらに驚くべきはユーザーの熱量。「これは本当にECサイトか?」と疑いたくなるような、SNS並みの月間滞在時間17.4時間を記録しています。

カウシェで実施の外部サービス(fastask)におけるN=1,599でのアンケート調査。2026年1月実施

DeNAは彼らの独立性を尊重しつつ、現在は精鋭約10名がガッツリとサポートしています。たとえば井口徹也(ゲームサービス事業本部 本部長)は当社側の『ポケポケ』責任者ですから、顧客体験サイクルの構築に知見を注ぎ込み、住吉は『Pococha』の立ち上げとグロースで培った知見でコミュニティの活性化を後押しする。DeNAの知見と彼らの突破力が組み合わさって、すさまじい化学反応が起きています。

カウシェは現在、仲間を絶賛募集中です。急成長するスタートアップに興味がある方は、ぜひ門を叩いてみてください。

日米のスタートアップの差は「回転数」と「夢の大きさ」

私はアメリカ西海岸(シリコンバレー周辺)によく行くのですが、西海岸のスタートアップと日本のスタートアップ、人材の質にはまったく差がないです。日本も今、国を挙げてスタートアップ政策を推進しています。いまや若者の専売特許でもありません。

先日、大いに尊敬するとある大企業の社長が会長になられたとのことで、「起業しましょう」と持ちかけました。この方が立ち上がるなら米国VCから巨大な資金を引っ張ってきたい。本当にすごいことになるかもしれません。

余談ですが、日米の差が顕著に感じられるポイントが二つだけあるんです。

一つは、回転数です。ベロシティ。西海岸は回転数が速い。それも雑に回すのではない。「Truth Seeker(トゥルースシーカー)」という言葉がよく使われますが、頭の中で悶々と考えているのではなく、真実を確かめるための検証へ動きます。オンラインも活用しながら1日10人、20人に会い、また顧客となりそうな企業の現場へ足を運び、アイデアをアップデートしていく。行動だけでなく、「これはダメだ」と見切るスピードや、次のアイデアをつかむスピードも圧倒的に速いです。

もう一つの違いは、壮大な夢を語っても笑われないことです。日本では「なぜそんな荒唐無稽なことを」「できるわけがない」「どうせ巨大な競合に取られてしまう」と否定されがちです。しかしアメリカでは、大きな夢を語っても笑われることはなく、むしろ面白がられます。逆に、こじんまりとした夢の話をしていると「頑張ってください、次の方……」と流されてしまう。そうした土壌の違いを感じています。

0→1の領域においてトゥルースシーカーとして行動力を伴いながら回転数を上げ、大きな夢をつかみにいく挑戦を全力で支援したい。DeNAのリソースが役に立つのであれば、惜しみなくバックアップさせていただきます。

囲い込まない。『GO』が証明した全力支援とEXITのかたち

「DeNAの中にスタートアップを取り込みチャンピオン事業を育て上げることがゴールですか」というと、全然違います。それだけではありません。

それは、起業家自身が最終的に決めることです。自分の夢を追求してください。IPOであれ、別の形のEXITであれ、DeNAは全力で支援します。「人材や事業を囲い込まない」。これが私たちの全力支援のスタンスです。

その好例が、素晴らしい上場を成し遂げた『GO』です。中島宏さん(GO株式会社 代表取締役社長)と川鍋一朗さん(GO株式会社 代表取締役会長)が率いるGOは、当社と日本交通さんが対等な株主として入り統合した会社です。

2015年、当時DeNAの中島さんがオートモーティブ事業を立ち上げ、タクシーアプリの『タクベル』を開始しました。当社が持つ最大のアセットの一つに、横浜DeNAベイスターズの地元である神奈川という地盤があります。何か新しいトライアルを始める際も、「ぜひ横浜で試してください」「まずは神奈川から始めてみませんか」と、とにかく温かく支援してくださる地盤です。

この地盤を武器に、中島さんの率いる『タクベル』は、2017年から神奈川県タクシー協会と実用実験を開始し、2018年にリリースしました。私たちはプロダクトには自信を持っていましたが、営業面では神奈川の皆さんに支えていただき、底上げをしていただきました。当時は日本交通グループの『全国タクシー』と熾烈な競争を繰り広げていましたが、2020年に川鍋さんとがっちり握手を交わしたわけです。

我々のプロダクトを磨き込む力と、日本交通グループさんが持つタクシー業界のネットワークという力が組み合わさって、『GO』という強力なサービスに成長しました。

かつて熾烈な競争を繰り広げていた2社が対等に事業統合し、これほど成功している例は、日本のテック企業では類を見ないのではないでしょうか。これは間違いなく、中島さんと川鍋さん、そして社員の皆さんの並々ならぬ努力の賜物です。統合後も、私たちはIT基盤などの面で変わらず支援を続けており、元当社社員も数多く関わっているため、今でも非常に親密な関係が続いています。

彼らはDeNA内の事業ではなくIPOという独立の道を選びました。それで良いのです。GOは日本一のタクシーアプリになって大きなDelightを提供しているわけです。そして当社がオートモーティブ事業に投資した100億円は結果的に約400億円のリターンになって返って来ました。大成功だったと言えるでしょう。

私が社長に就任する以前からIRでもお伝えしていますが、私たちは営業利益とキャピタルゲインの双方を、企業の真の収益として定義しています。慈善事業をしているわけではありません。スタートアップを全力で支援し、大きく成長させることでキャピタルゲインを得て、それを土壌に還元し、次の挑戦へと循環させていく。DeNAがまさに日本のスタートアップエコシステムの推進力となれるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。

どうしてもやり遂げたいグローバル挑戦――「DelightX」

もう一つ、どうしてもやり遂げたいことが、グローバルの挑戦です。

素晴らしい人材が続々と参加し、日本のスタートアップ界は確かに拡大しました。しかし、ここからが勝負です。目指すはグローバルの頂点。世界を獲るスタートアップを、もっともっと生み出したい。DeNAも道半ばではありますが、これまでの成功と失敗から得ている知見を余すことなく共有し、皆さんと共に「グローバルサクセス」を生み出していきたいです。

特に、その思いを誰よりも強くしたのが、この人、Kiyo(小林清剛)さんとの出会いです。十数年前にシリコンバレーへ渡り、そこを拠点に起業家として走り続けている方です。彼との出会いが私をもう一度「挑戦者」のど真ん中へと引き戻してくれました。

現地では日本人移民起業家のコミュニティを支え、慕われ、地元紙では日本人移民起業家の「ゴッドファーザー」として取り上げられています。

以前は「日本人の起業家がアメリカで日本人とつるむのは格好悪い」という風潮がありました。しかし、中国系やインド系の起業家コミュニティを見てください。彼らは現地のコミュニティに深く溶け込みながらも、仲間同士で強固に助け合っています。西海岸で勝ち抜くには、使えるネットワークは何でも使い、情報は泥臭く取りに行く覚悟が不可欠です。それなのに、なぜか日本人のコミュニティだけが発展していませんでした。

その風潮をKiyoさんが変え、互いに助け合うコミュニティを築き上げました。彼自身は「時間の99%は自分の事業に注ぐが、残りの1%は他の起業家支援に充てている」と謙虚に話します。しかし、彼の仲間たちに会ってみると、Kiyoさんの支援は実に力強く暖かく、Kiyoさんについて語るときに涙を浮かべる人もいるほどです。

彼の1%は、私の100%にも匹敵する。個人でここまで情熱を捧げて誰かを救おうとする人がいるのに、私たちが何もできていないのは恥ずかしいことではないか。そう強く感じさせられました。

今回、Kiyoさんが率いるAIを活用したグローバル採用プラットフォーム『Noxx(ノックス)』をDeNAグループへ迎え入れました。DeNAという組織のど真ん中で、Kiyoさんには全力で腕まくりをしていただきます。0→1の領域を、Kiyoさんと住吉がリードして回していくことになります。

このKiyoさんとの対話から生まれたのが、「DelightX(デライトエックス)」です。私はサンフランシスコに行くたびにシェアハウスに身を置くのですが、そこで朝食を共にしながら議論を重ね、去年の1月に「よし、デライト・ベンチャーズで形にしよう」と、構想が決まりました。

「DelightX」というのは、サンフランシスコのベイエリアで起業に挑戦したい日本人・日系人のための、 現地滞在型、かつ、AIスタートアップの起業支援プログラムです。

日本のスタートアップは、まず国内で成長し、上場後に『さあグローバルだ』と動くケースが一般的です。しかし、実はこれが非常に難しい。上場後は大胆な勝負に踏み込みづらくなりがちです。上場してからでも挑戦は可能だし、本来はそのための上場なのですが、現実的には多様なバランスの中で結果として挑戦が中途半端になってしまう。私自身、経営を通じてその難しさを身をもって知りました。

そこで、会社を立ち上げる前の段階から「グローバルで旗を上げるんだ」と決意している優秀な起業家を選抜し、サンフランシスコへ送り出すことにしました。現地で起業し、拠点を移して挑んでもらう。そんなプログラムを立ち上げました。

このプログラムには、大きく三つの売りがあります。

一つ目は、現地のシリアルアントレプレナーやトップティアVCとのネットワークです。私はここ4、5年、西海岸を頻繁に訪れ仲間づくりをしています。見かけによらず内向的なので、数より質。少ないながらも心から信頼できる仲間と関係を深めてきています。彼らに「日本からグローバルで大成功する起業家を出したい」と相談すると、皆多忙を極める人たちなのに、全員が手を差し伸べてくれます。そして、このプログラムの参加者に全員が何時間も向き合って惜しみなく知見を共有し、相談に乗ってくれます。

二つ目は、最強メンター陣です。Kiyoさんをはじめとする『日本人起業家コミュニティ』が、皆さんの伴走者となります。日本人ならではの壁にぶつかり、それを泥臭く乗り越えてきた先輩たちが「同じ苦労はさせたくないから」と支援してくれる。中心にいるのはKiyoさんと内藤聡さん(DelightXメンター ※)です。彼らは本当にきめ細かく、ときに厳しく指導してくれます。

三つ目は、「その地に立つ」という経験そのものです。シリコンバレーという土壌に身を置き、空気を吸うこと。私がここでどれだけ語っても、「南場がそんなことを言っていたな」で終わってしまうでしょう。現地のミートアップに飛び込み、情報交換や助け合いの輪の中に入ってみてください。「自分たちのスピード感や野心では、まだまだ足りない」と痛感するはずです。その気づきこそが、変革のスタートラインです。

資金調達もサポートします。移民起業家としてシリコンバレーという激戦区で勝負するのは、日本より厳しい面もありますが、成功を収めればスケールの違う世界が待っています。この経験は、起業家としてのキャリアにおける一生の宝物になるはずです。そういうプログラムです。

メンターである内藤さんの名著『シリコンバレーによろしく』には、まさに「この地に立つ」重要性が描かれています。彼自身、お金もコネも英語もない、何もない状態から現地へ飛び込んだ。あの頃の彼を支えていたのは、圧倒的な「根性」です。私の中のヒーローですね。これから挑戦する皆さんには、ぜひこの本を読んでほしいと思います。

「DelightX」では第3回目の募集が始まりました(詳細はこちらをご覧ください ※7月時点の情報です)。興味のある方は募集要項を見て、ぜひ挑戦してほしいと思います。

※2017 年リモートワーク向け賃貸事業Anyplaceをスタート。ジェイソン・カラカニス、YouTube 共同創業者スティーブ・チェンらから出資を受け、全米主要都市を中心に事業を展開。2018 年、「Forbes JAPAN 30 UNDER 30(世界を変える30歳未満30人の日本人)」に選出。

「組織が人を使う」時代は終わった。DeNAを使い倒せ

最後にデライト・ベンチャーズについて説明させてください。デライト・ベンチャーズは一言でいうと独立系VCとCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の「いいとこ取り」をしています。

デライト・ベンチャーズには複数のファンドが存在し、DeNAが100%出資しているものからマイノリティ出資までさまざまですが、すべて投資判断はデライト・ベンチャーズが独立して行い、DeNAが介入することはありません。ただ、DeNAのアセットが有益だと判断すれば、全力で支援します。DeNAの支援を引き出すことも、デライト・ベンチャーズの重要な役割です。

世界で挑戦する日本の起業家への応援は、DeNAグループ全体で取り組んでいきます。たとえば『shizuku AI』には、米VCのアンドリーセン・ホロウィッツに並んでDeNAが出資を行いました。中国市場に関しては、地政学的な環境から出資が難しい場面も存在しますが、私たちは現地で深いネットワークを築いてきました。現地のビジネスに関するアイデアの共有や、キーマンの紹介など、事業支援という面では十分に連携できる体制が整っています。

ここにいる皆さんにとって「DeNAグループとは何なのか」。その答えは、「AI × 事業創造プラットフォームとして、私たちを思う存分使い倒してほしい」。この一点に尽きます。

組織が人を使う時代はとっくに終わりました。これからは、人が組織を使い、その力で未来を切り拓く時代です。DeNAは、皆さんの挑戦を加速させるためのプラットフォームでありたい。だからこそ、私たちを存分に使い倒し、世界を驚かせるイノベーションを起こしてください。

皆さんの未来を信じています。

本講演の動画はこちらでご覧いただけます。

※本記事は2026年7月3日に実施された「IVS2026」でのスピーチ内容であり、情報は7月時点のものです。

執筆・編集:難波 静香 撮影:小堀 将生

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