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ITと食で、世界を健康にする|ベースフード×DeNAヘルスケア対談

2020.01.28

1食で1日に必要な栄養素の3分の1をパンやパスタでとれる「完全栄養食」を開発し、サブスクリプションモデルで提供するベースフード。同社の創業者 橋本 舜(はしもと しゅん)さんが、DeNAのOBであることをご存知でしょうか?

一方で、一般消費者向けの遺伝子検査サービス『MYCODE』や「楽しみながら、健康に。」をテーマにしたヘルスケアエンターテインメントアプリ『kencom』など、テクノロジーの力を用いて、健康長寿社会を実現しようとしているのが、DeNAヘルスケアです。

今回、同じ“根”と親しい“ビジョン”を持つ2人が、「フルスイング」であらためて顔合わせ。「世界をもっと健康にする」にチャレンジし続ける両社の目指す未来と勝ち筋、またそこに宿る"DeNAらしさ”についての対談をお送りします。

ベースフードは“ズルい”

瀬川 翔(以下、DeNA 瀬川):実は私、ベースフードは「ずるいな」って、感じているんです。

橋本 舜(以下、BF 橋本):ずるい(笑)。

橋本 舜(はしもと しゅん)
▲ベースフード株式会社 代表取締役 橋本 舜(はしもと しゅん)
東京大学卒業後、新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社。新規事業を担当し、社会課題と向き合う中、健康維持・病気予防の個人および日本社会における重要性を強く認識。その後退職し、「健康を当たり前にする。」をビジョンとするベースフード株式会社を設立。栄養士や食品会社と協力して、日常の生活に違和感なく取り入れられる「美味しい完全栄養食品」の開発を進める。

DeNA 瀬川:もちろんいい意味でです(笑)。「1食で1日に必要な栄養素の1/3がすべてとれる完全栄養の主食」という新しいプロダクトは、単純にワクワクします。DeNAのヘルスケア事業を通じて届けるデライトとは、また違った“ワクワク感”がありますよね。

BF 橋本:健康というと正しいかどうかだけの議論になりがちですが、食は楽しさが伝えられるのがいいなと思っています。

DeNA 瀬川:でも、食ってファッションやコスメと同じで、個人の好き・嫌いやトレンドに左右される。だから、ともするとすぐに飽きられてしまうことも多いと思うんです。

BF 橋本:トレンドを追うとそうなりますね。一過性のブームになって定着せず飽きられる……。

瀬川 翔(せがわ しょう)
▲株式会社ディー・エヌ・エー執行役員 ヘルスケア事業本部 本部長 瀬川 翔(せがわ しょう)
大阪大学大学院工学研究科修了。2010年株式会社ディー・エヌ・エーに入社。Eコマース分野での新規事業立ち上げ、事業責任者を経て、2015年5月よりDeNAのヘルスケア事業に参画。2017年8月よりヘルスケア事業の子会社である株式会社DeNAライフサイエンスの取締役副社長COOに就任。2018年4月より現職。

DeNA 瀬川:そう。でもベースフードのような「1日に必要な栄養素がすべてとれるパン・ヌードル」はそうなりづらい。ファッションで例えると、トレンドを安く提供するのではなく機能的な質の高い定番を提供する感じで、「嫌い」な人が少ないし一度気に入ってもらえると長く愛用してもらえる。その戦略がうまいなと思うんです。

完全栄養の主食、ベースヌードルとベースパスタ

BF 橋本:行列ができる飲食店のようにならないことは意識していますね。ベースフードは一過性のブームではない、社会に価値が伝わることを大切にマーケティングを展開しています。もっとも、このスタンスは、DeNA時代に自動運転技術を活用したプロジェクトの仕事をしていたことが活きているんです。

DeNA 瀬川:オートモーティブ事業ですよね?

BF 橋本:はい。「インターネット×AIを活用して自動運転タクシーの普及を目指す」というと「タクシー運転手の雇用を奪うのか」「AIであらゆる仕事を奪う気か」と少なからず不安を抱かれるんですね。

けれどDeNAが目指すのは、もちろん仕事を奪うことではありませんでした。人口減少で既存のタクシーやバスでの移動が制限されつつある過疎地などで、高齢者が自由に買い物や病院に行けるようにロボットタクシーを普及させ、豊かで楽しい社会にしたかった。その社会課題への視点と狙いを、実証実験などを通してしっかりと伝えることに注力してきました。

ベースフードも同様に、忙しく働く人々が「栄養の知識や時間の余裕がなくても健康に気遣った食事を簡単にとれないか」という発想、課題感が根っこにあって生まれた食品だということは、当初から一貫して伝えてきたつもりです。

瀬川 翔(せがわ しょう)

逃げずにやりきる。DeNAの“凄み”

BF 橋本:DeNAヘルスケアの事業を外からみると、やはり「DeNAって大人のプレイヤーと組むのがうまいな」と感じています。世の中に大きなインパクトを与えるためには、やはり規模感を踏まえたアプローチが必要になりますよね。

DeNA 瀬川:特に、ヘルスケア分野はDeNAのようなIT企業だけでは解決できない課題の方が多い、という自覚があります。ですので、「こういう課題を解決していくのに誰と一緒に取り組むのが一番スピード・実現性の観点でよいか」というのを考えながら事業を進めた結果、企業やアカデミアの方々と連携・協業していることが多くなっています。

ベースフード×DeNAヘルスケア対談

BF 橋本:DeNAはマッキンゼー出身の南場さんが率いる組織だけに、戦略を描き伝える力が並外れているし、それでいてスタートアップ・ベンチャーのような行動力とITの高いスキルを持った社員がそろっていると感じます。

ヘルスケアのような変革が求められている領域には、その戦略と行動力はとても頼りになるし、既存のプレイヤーにとっても組みたくなる相手として映っているのかなと思います。

あとは「逃げずにやりきる」という行動指針が社員に根付いていることも強いですよね。

橋本 舜(はしもと しゅん)

アウトサイダーだからできることがある

BF 橋本:外に出て実感するのは、DeNAの事業に対する視座の高さなんですね。常に高い目標を掲げ、本気で取り組む。瀬川さんたちが健康長寿社会の実現に向けてヘルスケア領域に新しい事業を投入し、医療費や社会保険料の削減といった社会課題を本気で解決しようとしているのはまさにそれで……。

瀬川 翔(せがわ しょう)

DeNA 瀬川:「熱量が高い」人は確かに多いです(笑)。

ヘルスケア事業は、南場はもちろん、現場のメンバーの「この分野をやりたい」という想いが磁石のように集まって生まれた事業です。私は途中から参画したのですが、当時本気で世の中を健康にしていこうという気概のあるメンバーが集まってるんだなと刺激を受けたのを覚えています。

ヘルスケアという言葉は共感されやすいけれど、今健康な多くの人たちにとっては「これがないと絶対困る」という緊急度が高いものではない。だからこそ、どうやってその中で課題解決・事業化していくのかは他の領域よりもある意味チャレンジングだし、時間もかかります。そこに立ち向かえるだけの熱量のある仲間が集まらないと「やりきる」なんてできないかもしれませんね。

ただ、もちろん健康に対する意識や想いの強いメンバーだけでは世の中のニーズとズレたサービスを作り上げてしまうリスクもあります。だから私が事業部に入ったとき、あえてゲーム・エンタメを手掛けていたメンバーに来てもらうようにしました。

BF 橋本:まさにDeNAのゲーム事業部にいた頃の私ですね(笑)。

DeNA 瀬川:まだ若いからって健康管理にも無頓着で健康診断結果も悪いというメンバーが、「自分でも使いたくなるヘルスケアサービスってなんだろう」という発想でゲーミフィケーションを取り入れたあるサービスを起案してくれて……。

それがサービスを届けたいお客様に使ってもらえて、その方々の健康行動に影響を与えられたなと感じられたときは嬉しかったですね。やはり「エンタメ×ヘルスケア」のような社会課題の両輪を真面目に手がけているのはDeNAの強みだし、絶対に成功させたいと強く思いました。

BF 橋本:ずっとDeNAに感じているのは、もっとゲームと新規事業がタッグを組んでいろいろな事業を手掛けたら、他では見られない、社会貢献と楽しさが両立するユニークなサービスが生み出せるんじゃないかってことなんですよね。あと「アウトサイダー」だからできることがある、と教えてくれたのもDeNAでした。

DeNA 瀬川:アウトサイダー?

橋本 舜(はしもと しゅん)

BF 橋本:たとえばオートモーティブ事業に携わっていたときに感じたのですが、クルマメーカーの方は、お客様である「運転する人」に目が行きがちです。だから自動運転の技術を使って「いかに運転をラクにするか」「いかに運転による事故を減らすか」の方に意識が向いていたと思うんです。

しかし、そもそもクルマを運転しない渋谷で働く若いIT社員は、「六本木まで地下鉄に乗らず楽に行けたら便利だな」とか「仕事をしながら移動できたら最高だな」といった地点から発想できます。

ITを武器に交通や健康などの異分野に参入することは、アウトサイダーの立場から着想を得て新しい市場を生み出すことができる。そうしたイノベーティブな発想が出やすい状況にDeNAはいると感じるんです。

5年後、10年後の未来をつくる、新しい目線を持つ

DeNA 瀬川:ところで、右肩上がりで成長しているベースフードが、いま直面している課題はありますか?

BF 橋本:これまでの話にもつながるところですが、レイヤーをあげる時期かなという気はしています。これまではスタートアップとして「0→1そして1→10」で事業を立ち上げて、なんとか形になりました。けれどベースフードは、先程の例でいう健康や食事に対して「意識の高い方」ばかりではなく、そうではない大勢の方々にこそ、手にしていただきたい商品です。

だから今後は「10を100に」するため、大手の食品メーカーや広告代理店が行っている事業スタイルもしっかり学び、スケールさせていく必要があると感じています。DeNAヘルスケアとしてはどうですか?

瀬川 翔(せがわ しょう)

DeNA 瀬川:私たちはやはり時間軸ですね。繰り返しになりますが、ヘルスケア領域は「サービスを作って使ってもらったら、すぐに顧客を健康にできました」みたいな単純な事業ではないし、そうあるべきではないと思っています。顧客やステークホルダーの方々のニーズや課題に、5年、10年、あるいは20年という長いスパンでしっかりと寄り添い・継続的に取り組んでいくことこそが大切です。

とは言っても、DeNAがまだ20年、ヘルスケア事業だとスタートして5年なので、その「想い」を組織全体からメンバー一人ひとりが実行していけるか、し続けられるかが今後試されているなと思います。

BF 橋本:それはまさにDeNAでオートモーティブ事業をやっているときに感じたところでもありますね。プロジェクトを1年かけて立ち上げた後、「これから5年、10年かけて開発を続けてからリリースして社会に広めましょう」というフェーズに入った。このときに、自分の役割は一区切りついたと考えてしまったんです。

というのは、長いスパンに不安を抱いたというよりも、「リリースして社会に広めるときには、もっとユーザー向けのマーケティングの知見が必要になる」と感じ、「それまでの時間をそのために使わないといけない」と焦ったんです。そんな思いもベースフードという「to C」向けのプロダクトで独立してみようという後押しになりました。

DeNA 瀬川:ベースフードで得た橋本さんの知見が、またいつかDeNAのオートモーティブ事業に還流することがあるかもしれませんね(笑)。

BF 橋本:DeNAに少しでも恩返しができると嬉しいです。1社で解決できる社会課題には限界があるので、今後何らかの形でご一緒できる機会をつくりたいですね。

また健康の問題も、個々人の信じるものに左右されて、科学的にまっすぐ進むことはなかなか難しいと感じています。社会課題解決という大きな志を持つ両社で、さまざまなしがらみを超えてよりよい未来を目指していきたいです。

DeNA 瀬川:目指しているところは同じだと思うので、ぜひそのビジョンに対してまっすぐに、お互い進んでいきましょう!

ベースフード×DeNAヘルスケア対談
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:箱田 高樹 編集:八島 朱里、川越 ゆき 撮影:小堀 将生

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