DeNAの「人」と「働き方」の " 今 "を届ける。

圧倒的なお客さま視点でプロダクトを改善していく。変わりゆくカスタマーサービスの役割とは

2019.10.24

DeNAのモノづくりの要となるシステム本部。2019年4月の組織再編では、システム本部品質統括部内に、品質管理部と横並びでカスタマーサービス部が合流しました。これから両者の強みを活かし、出荷前から出荷後までトータルでの「デライト品質」を強く推し進めていきます。

1年前のモノづくり対談『上流からの品質管理で障害が80%も減。DeNAが目指す、当たり前品質を超えた「デライト品質」とは?』で「デライト品質」のビジョンを語ったnekokakこと小林 篤(こばやし あつし)と三村 宏康(みむらひろやす)が再び対談。

「デライト品質」を実現する、カスタマーサービス(以下、CS)の戦略と方針に迫ります!

品質管理とCSはより経営と密に連携すべき


▲(左)株式会社ディー・エヌ・エー 常務執行役員 CTO 兼 システム本部長 小林 篤(こばやし あつし)@nekokak 法学部法律学科からエンジニアへ転身し、2011年にDeNAに入社。Mobageおよび協業プラットフォームの大規模システム開発、オートモーティブ事業本部の開発責任者を歴任。2018年より執行役員としてDeNAのエンジニアリングの統括を務め、2019年より常務執行役員 CTOとしてより経営レベルでの意思決定にかかわることと、技術・モノづくりの強化を担う。

小林 篤(以下、nekokak):三村さんとの「モノづくり対談」はこれが2回目ですね。前回は我々が目指す「デライト品質」のビジョンをお話しましたが、あれから1年経ち、いよいよ「どのように『デライト品質』を実現していくのか」をより具体的にお伝えできる段階になったと思います。

三村 宏康(以下、三村):そうですね。「デライト品質」とは、お客さまにデライトを届けられる品質、つまり「お客さまに驚きと喜びを感じていただけるような品質」を指すDeNAの造語。

DeNAは世の中にデライトを届けることをミッション・ビジョンに掲げていますが、デライトはそもそも概念的なもの。何をもってお客さまにデライトを届けるのかはそれぞれの部門でアプローチが違いますが、品質統括部としては品質の側面からデライトを届けていきます。前回の対談からちょうど1年ですが、そのビジョン自体は変わっていませんね。

nekokak:変わったことといえば、組織体制。これは、まさに「デライト品質」を実現するための組織改革といえますね。

三村:はい。今年4月に、カスタマーサービス部がシステム本部配下になりました。組織構造でいうと、システム本部の下に品質統括部があって、その中に品質管理部とカスタマーサービス部(以下、CS部)が並列に存在する感じですね。

nekokak:私は、品質統括部は品質統括“本部”にしてもいいのではと思っているんですよ。それくらい、品質管理部とCS部は経営と密に連携すべきだと思います。

三村:確かに「デライト品質」を実現するために、CS部だからこそ知りうる圧倒的なお客さま視点が欠かせないですね。

サービスの品質を「出荷前は品質管理部が、出荷後はCS部が見る」という二分化した考えでは「デライト品質」は実現できないと考えました。出荷前にお客さま視点でのテストを行い、出荷後もお客さまの声をサービスの改善に反映させることが必要だと思っていたんです。

nekokak:わかります。三村さんがそう思ったのはなぜですか?

三村:障害1つとっても、それぞれの部署で重み付けが異なる状況を改善する必要を感じていたからですね。たとえば、品質管理部で重篤と捉えている障害であってもお問い合わせに結びつかないものがあったり、逆に軽微な障害であっても問い合わせが多いものもあったりします。

それらを事前にお客さま視点で検証できているのが理想。現在はCS部の観点を品質管理部の検証項目に取り込むなどの創意工夫を重ねています。

nekokak:「デライト品質」はどちらか一方の部門では成しえない。それぞれの経験が豊富な担当がコラボレーションする意義は大きいですね。

三村:品質管理部は数値や仕様の妥当性を見ることが業務ですが、CSではお客さまにとって理解しやすい内容かを見るなど、観点が大きく違いますから。

nekokak:"出荷前品質”を見る品質管理部と"出荷後品質”を見るCS部が1つの部署に統括されたことで、出荷前から出荷後までトータルで品質を見ることができるようになりましたね。

SVは誰よりもディープなユーザーであれ

nekokak:三村さんとよく話題にするのは、「事業部がつくるプロダクトに対して、CS担当者と彼らを統括するスーパーバイザー(以下、SV)自らが、いかに担当しているサービスを理解・体験しユーザー視点を持てているか」が重要だということ。これができていれば、よりお客さま視点での改善提案が行え、その積み重ねが「デライト品質」につながるんじゃないかと。


▲株式会社ディー・エヌ・エーシステム本部品質統括部統括部長 兼 カスタマーサービス部部長 兼 品質管理部部長 三村 宏康(みむら ひろやす) 1995年マイクロソフトに入社し、2011年までR&Dにてマネージャーを務める。その後2011年より検証会社で役員を務め、2017年DeNAに入社。システム&デザイン本部品質管理部QCグループにてグループリーダー、品質管理部部長を経て現職。

三村:ええ。CS担当者がお客さま目線をどれだけ持てるかだと思いますね。たとえば、DeNAのサービスの1つにタクシー配車サービスの『MOV』があります。「CS担当者がいかに『MOV』をお客さま視点で普段から利用しているか、そして数ある競合他社のサービスもディープに使い倒して理解しているか」で改善提案のレベルは大きく変わってくると思います。

nekokak:CS対応として、マニュアル化はお客さまに一貫性を持った回答をするために重要。ただ、実際に案内するときにマニュアルのまま定型文を読むのではなく、サービスやプロダクトをよく知ったうえで、自分の言葉できちんとお客さまに寄り添って話せることが大切ですね。

三村:先日、DeNA China(※1)に行ってすごくいいなと思ったのは、CSチームが自分たちの担当しているサービスを徹底的にプレイしていて、お客さま視点を持てていること。実際に自分でプレイしていると、「これはお客さまからすると不便かもしれない」など気付くことがあると思います。

nekokak:CSが持っているお客さま視点の情報は非常に重要ですよね。現場レベルで言うと、僕がMobageの開発マネージャーをしていた時から、CSが発信する問い合わせアラートというのがありました。問い合わせアラートが来るとエンジニアは「こんなにお客さまから問い合わせがあるのは何か問題が起こっているはずだ」と、システムアラートと同じくらい危機感を抱きます。

三村:問い合わせアラートは、今はDeNAの全サービスに広げていますね。DeNAの事業が多角化する中で、守るべき品質ラインは大きく異なります。品質統括部としては、事業部の各サービスを深く理解し、さらに事業部に対してより高い品質を求める機能を持たなければなりません。

※1.....上海にある、DeNAの中国現地法人。

カスタマーサービスをより戦略的に組織再編

nekokak:今年10月に行ったCS部内の組織変更は、まさにサービスやプロダクトにコミットすることが狙いですよね。

三村:はい。今までのCSの組織体制は、投稿の審査、サポート業務などの“機能”別に編成していました。そうなると1つのサービスやプロダクトの品質にコミットするという意識はどうしても希薄になります。

そこで、サービス・プロダクト単位でCSの組織体制を再編しました。品質管理はすでにその体制になっているので、品質管理とCSが1対1でコミュニケーションしやすい状態になる、というのも狙いの1つですね。

nekokak:CSがプロダクト単位の組織になれば、SVの役割も変わってきますよね。

三村:はい。SVには「サービス・プロダクト全体で今、何が起きているのか」を見ることが求められます。

nekokak:お客さまの声は経営レベルの意思決定にも欠かせません。事業部に対してしっかりと意見を言えることが今まで以上に求められます。もちろん、今までもそうしてきましたが、よりお客さま視点で的を得たものにしていくという意味も込めてですね。

三村:そう思います。

nekokak:リリース前のタイミングでユーザー体験の課題をすべて見つけて潰していくとか、CSのアウトプットのクオリティも高めていきたいですね。

三村:CSが企画書の段階からチェックしたり、コンテンツ自体を見るようにしたりしていくつもりです。

nekokak:CSがリリース前からプロダクトに関わって「CSチェックが通らないと絶対に出荷させない」というぐらいになれば、顧客目線での「デライト品質」を届けることができますね。

「デライト」を届けプロフィットを生み出す組織に

nekokak:今後はCSマネージャー(東京勤務新潟勤務あり)に求められる要件も変わってくると思いますが、どんな方に来て欲しいですか?

三村:担当するサービス・プロダクトを誰よりも愛し、お客さま視点で改善提案が出せる人ですね。そのためには担当するサービス・プロダクトだけでなく他社のものも含めていろんなサービスをお客さま視点で使い倒し、比較検討できることが必要です。そして、なぜそのプロダクト・サービスがいいのか定性・定量データを元にロジカルに説明できる能力が求められると思いますね。

nekokak:自分の役割を限定せずに、開発部隊とともにお客さまにいかに「デライト」を届けるかに向かうことがDeNAのモノづくりのカルチャー。もしCSレポートが現場で軽視されるようなことがあれば、積極的に働きかけていってほしいし、まっすぐに「デライト」を追求できる方に来て欲しいですね。

三村:これから「デライト品質」を実現していくにあたり、CSはお客さまよりも高いお客さま視点を持ち、VOC(※2)の代弁者としての役割を担っていくことになります。

類似サービスを使い倒し、自社サービスがNo.1になるために必要な機能を考えるプロフィットを生み出せる改善能力を持った役割を担う気概で来ていただけると嬉しいです。

※2.....Voice of Customer お客さまからの問い合わせ対応時などに得られる、お客さまの声のこと。

nekokak:今は感度の高い人にとってCSは面白い領域といえますよね。

三村:はい。世界標準的なツールを取り入れて行っているので、できることも増えています。AIチャットボットの導入も始めるので、それらをうまく使いながらお客さま視点のモノづくりに取り組んで行ってほしいなと。最新技術を取り入れてCSを効率的にまわしていく感度の高さもほしいですね。

nekokak:CSがモノづくりに入り込める今が面白い時。「デライト品質」を一緒に作り上げていってくれる方、お待ちしています!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:さとう ともこ 編集:榮田 佳織  撮影:本山 隼人

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