病気を治す「シックケア」から楽しく健康な「ヘルスケア」へ。健康寿命を伸ばす成果を届ける|DeNA私の所信表明 瀬川 翔 × 米山 拡志
2019.03.01
DeNAの各部を率いるリーダーたちのビジョンや哲学を表明する「私の所信表明」シリーズ。
第6回目となる今回は、2019年4月にCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)に就任したネコカク(nekokak)こと小林 篤(こばやし あつし)。
2018年8月にはエンジニアの研究開発、技術投資を支援するR&D部門を創設、また渋谷をIT分野の世界的技術拠点にすることを目的とした「BIT VALLEY」プロジェクトなど、社内外でいくつもの新たな取り組みを起こしてきた小林が、いまなぜCTOに就こうと思ったのか。
ゲーム、ヘルスケア、オートモーティブ、スポーツなどさまざまな事業を展開するDeNAのCTOとして、目指すビジョンを語ります。
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そもそもDeNAはECサイト事業からスタートして、モバゲーなどネットサービスを中心に事業を展開してきた会社です。そこからゲーム、ヘルスケア、オートモーティブなど事業が多角化していく状況のなかで、扱う技術も多岐にわたり、すべての技術を把握するのは無理があります。そのためDeNAには約4年にわたりCTOが不在でした。
しかし昨年、技術系唯一の執行役員としてさまざまな課題解決に取り組む中で、エンジニアのパフォーマンスが上がる仕組みづくりや、技術投資の拡充といった改善を主導する立場の人間が必要だと思ったのがきっかけです。
また、DeNAは「技術の会社」と言われていますが、誰が技術組織のマネージメントをしているのかが明示できない状況にあり、その結果、事業単位の散発的な発信に留まってしまっていました。DeNA=技術の会社というコアなメッセージを発信し続けるためCTOに就くことを決意したのです。
CTOの大きな役割は、エンジニアやクリエイターがパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を用意することです。
エンジニアのデバイスを使いやすいものに変更するなど業務環境を整備したり、既存制度の活用促進のため見直しを図ったり。現場のエンジニアにヒアリングして課題を把握し、関係部署と連携してエンジニアが働きやすい環境を継続的にアップデートしています。
まずは3年後、DeNAがエンジニア組織、モノづくりの組織としてどんなチームでいたいのか、どんなカルチャーを醸成したいのか、その結果どんなアウトプットを出せるようにしていきたいのか。方向性を示したロードマップを周囲と連携しながら作成しているところです。
DeNAが培ってきたモノづくり体制をさらに強化するためには、失敗してもいいよ、という文化が大切だと思います。
失敗は、うまくいかないやり方を学ぶチャンスです。失敗体験があると、「このまま進むと問題が発生しそうだな」といった勘も働くようになる。失敗させないようにフォローすると、失敗の仕方がわからない。これは、成功体験だけでは得られないスキルなんです。
私はマネージャーにも「どんどんチャレンジして、失敗して」と伝えています。ただし、「倒れるなら前のめりに」と条件をつけていますが(笑)。
とはいえ、最近は他企業との協働案件も多く、失敗しにくいのが現状です。その状況で、どううまく失敗させるかがCTOとしての課題ですね。若手エンジニアにははさまざまなプロジェクトで経験を積んでもらい、マネージャーがフォローする。そんなサイクルを回していきたいです。
来月、6月1日(土)、2日(日)、ミュージシャンの亀田誠治さんが実行委員長を務める「日比谷音楽祭」が東京・日比谷公園で開催されるのですが、そのミュージックフェスのスマホアプリ開発をDeNAが担当、音楽とITの異色のコラボが実現しました。
DeNAは事業会社なので、その事業にひもづいた開発を当然やっていきます。それは当たり前のことですが、エンジニアのパフォーマンスをより進化させるために事業や収益にこだわらないプロジェクトをやりたいと前から思っていたところ、ご縁あって参画することになりました。
今回のスマホアプリの開発は、事業に紐づいているわけではなく、お金をいただくわけでもないので収益にはならない。ただ、プロジェクトに参画したエンジニアは開発経験を積めるだけでなく、亀田さんや佐藤オオキさんの率いるnendoをはじめとしたトップクリエイターたちと一緒に仕事ができます。こうした体験は、社内の仕事だけでは決して味わえません。
もちろん開発期間の関係などでやりきれない部分もありますが、そういう事業・収益にとらわれないチャレンジの場を定期的に用意していきたい。通常の事業開発のなかではできないことをプロジェクトのなかで経験するという機会を創出し、エンジニアの探究心を刺激し続けたいです。
さらにもう1つ、DeNAの発展には、新卒採用が重要です。それは、技術が好き、モノづくりが好きな優秀な若手が毎年入ってくることによって、血の循環ではないけれど巡りがよくなるから。
先輩社員も刺激を受けるだろうし、それらが合わさることでモノづくりのカルチャーが作られていく。新しい価値観や考え方、スキルを持つ彼らはDeNAの新しいパワーなんです。
また、若い優秀な力を、いかに難しいプロジェクトにアサインし、周りのメンバーでフォローしながら強い力にしていくか、というのも大切です。
4年くらい前の話ですが、協業案件が立ち上がる際、プラットフォームの開発チームを当時入社2年目の若手エンジニアと経験豊かなシニアエンジニアで構成し、とあるプロジェクトに当たってもらいました。
経験を積んでいないメンバーと積んでいるメンバーをあわせたチームですが、その成果は私の期待を上回るものでした。若手はシニアエンジニアから技術を学び、シニアエンジニアは若手の挑戦意欲を見て刺激を受ける。お互いに良い方向に作用した結果です。
だからこそ、新卒採用は妥協せずに進めるべきですね。現在は2021年卒のサマーインターン募集をしているのですが、一次面接に私が出ていくこともあります。
今の世の中、モノづくりをしたい、インタネットサービスを作りたいと思ったら、いくらでも情報は転がっていてやりたいという熱意があればできます。
「やりたい人はやっているよね」という前提で、そのモノづくりをきちんとアウトプットしている人、技術・モノづくりが好きで、そのサイクルがまわっている人を採用していくという方針を定めました。
DeNAにどんな魅力があって興味を持ってもらうのか、アイデアを出すところから力を入れてやっています。学生に対してDeNAが新卒採用にかける熱意が伝われば嬉しいです。
DeNAは、チャレンジしようとする人を否定しない、熱量を持って新しいプロダクトに取り組むことに共感し、それを後押しする社風です。もちろん周囲の「なぜ?」にしっかりロジックを持って伝えることが大切ですが(笑)。
事業・プロジェクトが変わると、会社が変わったのかというくらい雰囲気も違います。社内にいて、異なる環境下で経験が積めるのは他にはない魅力だと思います。
私はこれまで約4年ごとに転職をしてきました。全力疾走して自分がエンジニアとしてアウトプットを出す、かつ新しい刺激も受けながらとなると、ひとつの事業に留まった場合、ある一定の段階で限界がくると思います。
けれどDeNAにはそれがない。やりきったタイミングで自分が挑戦したいと思うチャレンジが毎回現れる。やりきって、俯瞰したときに新たなチャレンジを提供する風土もある。そうしていたら、今年で8年目を迎えました(笑)。
技術は深く、幅は大きく。今までのDeNAにはないプロジェクトや挑戦の場を実現し、エンジニアができる体験を拡げていきたいですね。
もちろん新たなモノづくりの具現化には、会社として事業として、ビジネスサイド、バックオフィス等いろいろな人の理解と協力が不可欠です。
CTOとして、今後もDeNAのモノづくり体制の強化、技術力の向上を目指すとともに、日本全体のモノづくりの発展にも貢献したい。僕自身が率先していろいろな物事を進めていくことで、みんなが普通に意思と情熱を持って走れるんじゃないかなと思っています。
執筆:薗部 雄一 編集:川越 ゆき 撮影:杉本 晴
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