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DeNAのモノづくり体制を最高にチャレンジングな環境にしていく|私の所信表明 小林篤@nekokak

2018.08.29

所信表明。それは自分の考えや、信念、方針などを広く伝えること。

時代を動かしたどんな大きな変革も、最初はたった1人の強い信念からはじまりました。確かなビジョンと哲学に裏打ちされた本気の言葉は、時代を変えるほど大きな力を持つのです。

DeNAで各部を率いるリーダーたちの「所信表明」を公開するこのシリーズ。第1回はシステム本部長でありインターネット上ではネコカク(nekokak)として知られる小林篤(こばやし あつし)が語ります。

彼の所信表明は「DeNAのモノづくりを最高にチャレンジングな環境にしていく」というもの。

小林が信じるもの、求める人材、そして見据える未来とは。

「総合モノづくり体制」を支える6要素

はじめまして、小林です。「nekokak(※1)です」と名乗ったほうが、一部の方には伝わるかもしれませんね。

私がシステム本部長に就任したのは2018年の4月。しっかりと成果を出していくのはまだこれからですが、就任以来私はDeNAだからこそのモノづくり体制とチャレンジについてずっと考えてきました。

本日はそのお話をしたいと思っています。

※1...小林はGithubやTwitter等インターネット上で「nekokak」のハンドルネームを使用し活動。社内でも親しみを込めて「ネコカク」さん「ネコさん」と呼ばれている。

株式会社ディー・エヌ・エー執行役員システム本部本部長 小林篤(@nekokak)
法学部法律学科からエンジニアへ転身し、2011年にDeNAに入社。Mobageおよび協業プラットフォームの大規模システム開発、オートモーティブ事業本部の開発責任者を歴任。2018年より執行役員としてDeNAのエンジニアリングの統括を務める。

モノづくりに必要な体制と聞くとどんな要素を思い浮かべますか?

開発、デザイン、プロダクト。ネット系企業における「モノづくり」でよくフォーカスされるのはこんな3要素ですよね。

イノベーティブな「開発」を、優れた「デザイン」で形にして、画期的な「プロダクト」にしていく。

それらがそろえばビジネスはスケールし、社会にインパクトを与えることができるという図式です。

だからモノづくりにおける目指すべき指標や議論のスタート地点としてこの3要素が重視されてきました。「こんなプロダクトをつくろう」、「そのためにはこれくらいの開発体制や技術が必要だ」、「UXを考え尽くしたプロダクトをつくろう」とか。

これって、論点を絞って議論を進めるにはいいと思うんですが「それだけではないんじゃないか」と感じていたんです。

なぜなら、DeNAのモノづくりの強みはこの3要素だけではない総合力で発揮されていることに気づいたから。

実際、DeNAは開発、デザイン、プロダクトと並びインフラ、セキュリティ、品質管理のレベルがとても高いんです。これらを加えた6要素がお互いを支え合い、総合力でのモノづくり体制を実現しています。


▲nekokak考案の図をもとに作成

付け加えた3要素は、通常エンドユーザーから意識されることはほとんどありません。

「バグがない」「落ちない」「安全である」。こうしたシステム構築基盤まわりに支えられた当たり前品質というのは、エンドユーザーの方々にしてみたらあたりまえのことですからね。

裏を返せば、あたりまえであるがゆえに不具合があったときには印象が悪くなる。あるいは、もう二度と利用されなくなる。大きな機会損失となるトリガーがこの領域でもあるわけです。

もちろん「モノづくりを支えるのはこの6要素がすべてだ」ということではありません。

モノづくりは、マーケティングや法務などビジネスセクション含め様々な役割が機能し合って達成されますが、今回の主張をわかりやすくするための簡易的な図であるとご理解ください。

当たり前品質は、当たり前に実現できない

私のもともとの軸足はシステム構築基盤でなく開発にあります。エンジニアとして3社で開発のキャリアを積み、7年前にDeNAに入社しました。それからはプラットフォームのAPI開発といったサーバサイドのシステム開発をやっていたんです。

けれど、DevOps(※2)の流れとともに運用に踏み込む機会が増えてきたんですね。するとDeNAでは、あたりまえ品質の部分を担当しているエンジニアが皆、かなりレベルが高いことを痛感するようになりました。

※2....デブオプス。ソフトウェア開発手法の1つ。開発(Development)担当者と運用(Operations)担当者が連携・協力する手法。

たとえば、サービスを立ち上げたまではいいけれど、運用のシステムがしっかりとつくれていなくてスケールできなかった、という話はよくあると思います。

けれどDeNAなら、立ち上げ前にインフラ側のエンジニアがしっかりと開発側と運用に関する議論を重ねます。

またこれは実際に、ある企業のエンジニアの方と話していたときのことです。自社サービスをオンプレからクラウドに変えるというので「なぜそのプラットフォームを選んだのですか」と聞いてみました。

すると返答は「上からの指示で」だったんです。DeNAならありえない。

プラットフォームとしてこれを使いたい。開発側がそう言ったら、インフラ側がまず前のめりに議論にのってくる。「Aがいい。Bならどうだ。なぜCを考えない」と皆が同じ階層に立って、ベストプラクティスを探します。そして、仕事は必ずやりきる。

システム開発を手がけていたとき、そんなインフラ部門の仕事ぶりに常に接していました。

DeNAには、信じられるプロフェッショナルたちがすべての部署にいて、互いを支え合っている。これって「あたりまえのこと」じゃないんですよね。

システム構築基盤はますます重要になる

いま、このシステム構築基盤の重要度がますます高くなってきています。

背景にあるのは、IT分野のモノづくりの複雑化、高度化が進んでいること。開発、デザインといった領域で、数年前とくらべて表現の幅がずっと広がりました。

ガラケーからスマホへ。AndroidとiOSというアプリケーションの誕生。それに伴い表現方法、デザインの手法なんかも、どんどん複雑になって高度になってきましたよね。

最近では、IoTなども加わりデバイスの開発にまでその領域は広がりを見せています。それで開発やデザインに必要な専門性が重層的になっていっている。

その流れでインフラ、セキュリティ、品質管理も複雑化、高度化が進んでいっているんですが、これはIoTのセキュリティや品質テストで考えるとわかりやすくなりますね。

たとえばスマホゲームアプリのシステム開発の品質テストでしたら、今まで通りオフィスでテストできます。

ですがIT技術の応用範囲が広がり、オートモーティブ関連のシステム開発となると、オフィスのみではテストできません。


▲AIを活用したタクシー配車アプリ『タクベル』(※2018年12月5日に『MOV』に名称変更)のネットワーク構成図

どこにリスクがあってどんなバグが考えられるか、というテスト対象が道路の上にまで広がっているわけです。

そうなると、実際に車を走行させて生のデータを取りながら確認を進めていく必要が出てきますよね。

タクシーメーターなどの機材を車に運び込んだり、安全にテストを実施するために事前に入念な計画を立てたり、といった工程も品質管理の担当者が理解し、準備できないといけない。

このようにITが進出する領域が広がるにつれ、より複合的で高度なスキルが求められるようになってきているんです。

求められるのは高い専門性と他領域への踏み込み

そんな背景があって、これからのシステム構築基盤系エンジニアには2つの力が求められると思います。

1つ目は「高い専門性」。2つ目は「他の領域への踏み込み」です。そしてDeNAはこれらの力を伸ばせる環境であると思います。

まずは「高い専門性」。

先に述べたように、複雑化、高度化するモノづくりの中で求められるのは、深いレベルまで知り抜いた知見です。かつてのように一人でセキュリティもインフラもというスタイルでカバーするのは難しくなっている。

たとえばセキュリティでいえば、システムのアーキテクチャまできちんと理解したうえでシステム設計をやれる。そんな高い専門性を持った真のスペシャリストが必要になってくるんです。

DeNAにはプロコン(※3)上位にあがるような才能ある人材が揃っていて、スペシャリスト集団になっています。ここはさらに突き詰めていきたい。切磋琢磨することで、お互い飛躍的に力を伸ばすことができると思っていますから。

※3...プログラミングコンテスト

▲オートモーティブ事業本部基幹システム開発部。様々なバックグラウンドで専門性高いメンバーが揃う。

そして2つ目の「他の領域への踏み込み」。

これはGoogleが提唱したSRE(※4)に近いスタイルですね。インフラやセキュリティの専門性を持ったうえで、事業開発やデザインなど他の領域の課題にもどんどん踏み出していく感じです。

その点、DeNAはそうした姿勢が常に求められる環境です。

DeNAの事業ポートフォリオはとても多岐に渡っていますし、これからも変わり続けていくでしょう。だから常に新しい領域の技術なり知見なりをキャッチアップする必要があります。

そしてこれから新しい事業を成功させていくには、自分の担当領域に閉じずそれらの知見を他部署や全体に積極的に還元していかないといけないですね。

オートモーティブで培った知見をウェアラブルを活用したゲームなどの開発に活かせるときもあるはず。スペシャリティの深さを保ったまま、仕事の幅を広げられる。

そんなチャレンジングな環境がどんどん内から生まれ出てくるところも、DeNAでインフラの仕事をする醍醐味です。

※4....サイト・リライアビリティ・エンジニアリング(Site Reliability Engineering)。webサイトやサービスの信頼性向上を目的とした取り組み、価値の向上を進める考え方・方向論。

R&Dにビットバレー ますますチャレンジを続ける

今までの「DeNA」「インフラ」のイメージをいい意味で変えていくようなチャレンジをこれからどんどんしていきます。「おもしろい」「ワクワクする」ってやっぱりモノづくりで大事だと思うんですよ。

これは僕がDeNAですごくやりたいと思っていたことなんですが、システム本部として2018年8月にR&D部門を創設しました。

世の中のイメージとして、DeNAは先端技術への投資のイメージはなかったのではないでしょうか。長い目での研究開発というか。そこに踏み込みたいと思っていたんです。

DeNAらしさにもこだわって、しっかりと事業につながるようなR&Dを考えています。研究開発に携わったメンバーが、そのままスライドして新規事業のメンバーになるとか。たとえばそんなスタイルができたらおもしろいなと。

それから、チャレンジは自社内に閉じなくて良いと思っています。その一例なんですが、創業以来渋谷に長く拠点を構えているIT企業でタッグを組んで「SHIBUYA BIT VALLEY」プロジェクトというのを始めました。

タッグを組んでいるのは事業上は時にはライバルになりえる会社同士なんですが、このプロジェクトの目的である想いが共通しているんです。「渋谷がIT分野の世界的技術拠点となる後押しをしたい」という目的ですね。

まずは9月に「BIT VALLEY 2018」という大きなテックカンファレンスをやります。今後も、テックカンファレンス以外にも渋谷から新しいイノベーションが生まれていくような仕掛けを自社の利害関係抜きでチャレンジしてみたいなと思っています。

この渋谷から、さらにワクワクするサービスが多く生み出されていく。渋谷をそんな場所にしたい。そんな近い未来を想像すると、やっぱりモノづくりってもっともっとおもしろくできるし、なっていくと思うんですよね。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:箱田高樹 編集:榮田佳織 撮影:小堀将生

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