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働くママが発揮すべきは「フルパワー」ではなく「フルバリュー」|3児の母、DeNA法務部小船戸のマイルール

2018.10.02

「いつもスピーディーに対応してもらい、本当に助かっています!」「法務に関するざっくりした相談でも、的を絞って答えてくれる、とても頼もしい人」 日々、一緒に働くメンバーからの信頼も厚い、DeNA法務部第一グループの小船戸 瑞枝。

『キン肉マン・マッスルショット』などのゲームコンテンツをはじめとするサービスの契約やライセンス管理など、法務関連全般が小船戸の業務領域です。そして彼女にはもうひとつの顔が。実は、3人の子供を持つ母でもあるのです。忙しい中でも、仕事と家庭を両立させるヒケツは、「限られた中でフルパワーを出すのではなく、フルバリューを出すこと」と語ります。

制約がある中でもフルバリューをだす工夫とは? ワーママのみならず、多くのビジネスパーソンの働くヒントにもなりそうな、彼女の7つのマイルールに迫りました。

10の力を出すことは難しい。でも……

——3人いるお子さんは、それぞれ何歳なんですか?

小船戸瑞枝(以下、小船戸):上が8歳、真ん中が6歳、一番下が3歳です。末っ子にまだ手がかかるのは当然ですが、いろいろ自分でやりたがる真ん中や長女は、またそれはそれで手間をとられて(笑)。今は時短勤務で16時30分には退社させてもらっているので、助かっています。

——一方で、事前に社内にヒアリングをすると、小船戸さんの法務部での仕事ぶりを絶賛する声が多かったんです。「レスが早い」「仕事が的確」「話しやすい」とか……。そんなパワフルな働き方ができる秘密に迫りたい、というのが、今回のインタビューの狙いです。

小船戸:おっ。ありがとうございます(笑)。けれどパワフルっていわれると……少し違うんですよ。

——どういうことでしょう?

小船戸:私は時間が限られている以上、以前と同じ量の仕事をすることは難しいと思っているんですね。だから、出産前に10の仕事ができていたとしたら、今は7くらいにまでセーブさせてもらっている。最初から仕事も育児も100%力を出し切るのは、あきらめています。

ただ、そんな中でもそれなりに評価をいただいているのだとしたら、私が「仕事量は3割分減ったけれど、手がける7割のバリューはこれまで以上に出そう!」という意識が強いから、かもしれません。

——あ、なるほど。仕事はパワーじゃなくてバリューにフォーカスしている?

小船戸:ええ。時間だけじゃなくて、家に帰ってからも家事や育児で体力を使いますから、パワーはなかなか(笑)。けれど、時間は短くなっても、仕事の質を上げて、これまで以上に成果を出すことって、工夫次第でできると思っているんです。

——その工夫について具体的に教えてもらってもいいですか?

小船戸:特別なことはないと思いますよ。ただ、子育てをするようになった結果、身についたルールというかスキルみたいなものはあったりしますね。たとえば「仕事は必ず、最初に3つに仕分けする」とか......。

——3つに仕分ける、とはどういうことでしょうか?

小船戸:法務担当の私のところには、他部署から、契約やライセンスに関する疑問、質問や相談ごとがSDP(※1)を通してどんどん入るんですね。限られた時間の中で、入ってきた順にただ手がけると効率が悪くなる。そこで

1)すぐに返信する案件
2)上司に相談したあとに対応する案件
3)検討に時間がかかると予想される案件

と、案件が入ったらすぐにこの3つにフォルダ分けして、数字順に対応するんです。

※1....法務案件管理ツール

——仕事の優先順位をつける感じですね。

小船戸:はい。ただ、あくまでスピード重視の優先順位なんです。たとえば、私は前職でネット系の広告代理店の法務部にいたこともあって、広告関係の案件は最も得意としているんですね。誰かに相談せずとも、たいていの質問や相談はすぐに答えられる。だから3つに分けるうち「1)すぐに返信する案件」になる。

——そこからスピーディに返信していくと。

小船戸:そう。サクサクとタスクが消えていきますからね。一方で、それ以外の案件だと上司など、他の人と相談しなければ答えられない案件も当然ある。こうした案件を最初に手をつけてしまうと、相談する上司のスケジュール調整が大変だったり、ひとりでムダに悩む時間が増えたりします。実はその間に1の案件をたくさん手がけられたはずなのに、時間と体力を消耗しちゃうわけです。

——とにかく即レスできる、1の仕事からどんどん終わらせたほうが時間も体力も有効に使える。確かに合理的ですね。

小船戸:私はそう感じています。そのためにも最初に仕分けしてしまうのが大切というわけです。

——ところで、先ほど「子育てしてから、身についたスキル」とおっしゃっていましたが……。

小船戸:「お昼寝してほしいのに寝ないー!」とか「ごはんを食べてほしいのになんで食べないの!?」とか。子どもって全くこちらの思い通りに動いてくれないじゃないですか(笑)。とくに3人もいると大変で…...。「やれることから片付けなければ、他をやる時間がなくなる!」という意識が自然と芽生えて。気がつけば、家事も育児も、そして仕事も案件ごとに優先順位をつけるクセがついていたんです。

——なるほど。育児が仕事にも良い影響を及ぼすわかりやすい例ですね。

——ルール2はどんな背景があるのでしょうか?

小船戸:仕事を自分ひとりで囲い込まず、部署内でオープンに共有することは、とても意識しています。仮に私しか内容を理解していない案件があるとして、時短勤務の私がいない夕方にその問い合わせが入ると、確実に仕事が滞る。

——そうすると、バリューなんて確実に出せない、と。

小船戸:そのとおりです。けれど、自分が手がけている案件が何で、どんな進捗状況かを部内でオープンにしてあれば、私がいないときでも別の方が対応できますよね。当たり前のことですが、仕事は滞らず、皆がハッピーです。

——ただ同じ部署の人にしたら「小船戸さんのせいで、仕事が増えた…...」なんて思われる心配はないですか?

小船戸:あ、そういった不満をできるだけなくすように工夫できるところが、DeNAのいいところだと思うんですよ。というのも、実は法務部長(※2)が社内の育児部長も兼務していて、働きながら子育てをする社員に対してとても理解がある。部長自身も育休をとったくらいですから。

※2....DeNAの法務部長の詳しいインタビュー記事は「法務・経理はビジネスを推進する当事者。存分に活躍できる場をつくる|私の所信表明 法務部長×経理部長」

——それはすごい。

小船戸:そう。実は「時短で子育てしながら100%の力で仕事に取り組むのは難しい。だからバリューで勝負しよう!」というのは、そんな部長の実感で、私も影響されたんです。だから「チームの仕事は皆でオープンにしてシェアしてすすめよう」という共通認識があります。


▲毎朝のチームMTGでは各自の案件共有が行われる。

私だけでなくチームのメンバーが手がけている案件は、すべてその概要と進捗がグループウェアでシェアされている。別の誰かが急病や親族の介護、あるいは別の理由で早退や欠勤したときは、別のメンバーがすぐに対応できるようになっているんですよ。

——なるほど。仕事を属人化させずシェアして互いを支え合うことが、ムードとしても仕組みとしてもしっかり浸透しているわけですね。

小船戸:はい。法務部がそもそも「お客様に商品やサービスでデライトを届けることが自分たちの目的だ」という意識を共有していることも大きいです。法律の専門家として門番のような役割を社内で担う、というよりも「良い製品、サービスを世に出すための法的なアシストをする」という意識を全員がもっている。

だからこそ、「以前こんな先例がここにあったよ」「似たような案件を手がけたからこの資料使って」とナレッジの共有も頻繁にあります。こうした日々の積み重ねが、支え合うことを当たり前にしているんだと思います。

——次のルールは……小船戸さんの趣味ではないですよね(笑)?

小船戸:いやいや。確かにもともとゲーム好きなので趣味でもありますが、仕事なんです(笑)。法律や先例に詳しいだけでは法務の仕事はできません。その対象となるサービスやゲームが実際にどのようなしくみで、どのように動くのかを理解していないと、誤った判断やアドバイスをしかねませんからね。加えて実は企画、制作などの他チームとのコミュニケーションツールでもあるんですよ。

——ゲームをやり込むことがコミュニケーションになる?

小船戸:そうなんです。やはり自分たちの手がけているサービスをわかっている人間なら話が早いし、話しやすいと思うんですね。先述の通り、一般的に法務部って最後の門番というイメージを抱かれがちです。けれど、それではお客様に商品やサービスでデライトを届けるという本来の目的から遠ざかってしまうと思うんですね。


▲ゲームチームとの定例では、ゲームのガチャやイベントの話で盛り上がることも。

——普段から気軽に話し合えるような関係性が事業部と法務部の間にあれば、スピーディに製品づくりやリリースにつながると。

小船戸:そのとおりです。だからこそしっかりとゲームをやり込んで、普段から雑談をしたり、相談しやすい空気をつくっています。まあ、実際は「あのガチャ、ほしいキャラがゲットできなかった(泣)」という1ユーザーとしての意見も多いですけどね(笑)。

——「2手3手、先を読む」とは、まるで藤井七段ですね。

小船戸:そんなすごいものじゃないんですけどね(笑)。ただこちらへの問い合わせがあったとしたら、「本当はこういう意図があって聞いているのでは?」と相手の求めているものを想像して戻すようにしています。

「『書類がほしい』といわれたら“書き方の注意”まで記してメール。問い合わせのやりとりが発生しないようにする」「問い合わせ内容にだけ答えるのではなく、関連しそうな資料やサイトのURLを貼って、参考までに…...と伝える」といった風にです。

——それは一体どういう効果が?

小船戸:出し戻しが減ります。メールならば、一往復で終わればそれだけ時間節約になる。ひとつの仕事に出し戻しがあると工数が増える。それは自分にとっても負担が増えるし、相手にとっても面倒ですよね。法務チームはとくに“サービスのために”という意識が強い。事業部門の人たちには、なるべく本来のサービスづくりに時間と労力を割いてほしいと思っているんです。

——そういう意識があるから「小船戸さんは返答が的確で仕事しやすい」という評価、バリューを生んでいるわけですね。

小船戸:だとしたら、うれしいですね。とくに時短勤務の今は、私の帰宅後に「ここを確認したいだけなんだけど……。」といった出し戻しを発生させて翌日の対応になるのは申し訳ないし、何より相手や自分の時間に対して、もったいないなと感じているからでもあるんです。

——仕事のみならず、家事に関してもルールを持っているんですか?

小船戸:そういう意味では「家電は使い倒す」ことですね。まずはずせないのがドラム式洗濯乾燥機と食器洗浄機。子供が3人いる5人家族ですから。いかに効率的にそれぞれを使うか、常にローテーションを考えて稼働させています。

——ちなみに鉄板のローテーションは?

小船戸:洗濯機ならまず帰宅直後に1回め。お風呂のタイミングで2回め。夜寝る前に3回めとまわすことで、5人分をムダなく終わらせるようにしています。あとおすすめはルンバで、ものすごい優秀ですね。彼は(笑)。仕事中に自宅のフロアをきれいにしてくれる、というだけが彼のバリューじゃないんです。

——掃除する以外にもバリューがあるんですか……?

小船戸:ルンバは床にものが置いてあると動いてくれないんです。かつて子供たちに「床にモノをおかないで!」と注意しても聞かなかったのに「ルンバが走れなくなるから、床に物を置かないでね!」と伝えると素直に片付けるように。床にモノをおかないクセをつけてくれました。

——なるほど。ルンバに人間が動かされているわけですね。

小船戸:結果オーライですね。

——オンとオフの切り替えは明確なタイプですか?

小船戸:私はそうですね。仕事は仕事、オフはオフで集中したほうが、それぞれでバリューが出せると考えているタイプです。また意識的にオンとオフを切り替えるスイッチも用意していますね。

——スイッチとは?

小船戸:通勤電車とエレベーターです。まず普段のウィークデイは通勤電車の社内で「会社についたら、まずあれとあれをすませてお昼までにこれを…...」と予定確認することを日課にしています。そうやって頭を徐々にオンタイムに仕上げていって、会社のデスクについたらすぐ仕事に向かえる状態をつくっています。

——エレベーターも同様ですか?

小船戸:はい。逆に夕方、オフィスの下りエレベーターに乗った瞬間は仕事のことをシャットダウン。そこから「保育園に迎えにいったら、洗濯機まわして夕飯はこれとあれで…...」と切り替えるんです。事前の段取りをすることで、オンとオフと切り替えている感じですね。

——ちなみにオフのときはどう過ごしているんですか?

小船戸:大切にしているのはまず「睡眠」ですね。とにかくおやすみの日はよく寝ます。よく主人と話すのが「子供ができると親ってインフラになるよね」ということ。稼働しているのが当たり前で、自分が倒れたら家がまわらなくなる。そのためにもしっかり寝て、体力を奪われないようにしておくのが大事かなと。あとは長女のバレエレッスンの付き添いをしたり、家族みんなでパン作りをすることもあって、気分転換になりますね。


▲子どもへの絵本の読み聞かせもリフレッシュの時間になるのだそう。

——日曜深夜にはひっそりと楽しみがあると聞きましたが。

小船戸:もともとアニメが好きなのですが、とくに今季は日曜夜に好きなアニメがありますから。月曜日からまたがんばるぞ! と英気を養っています。

——最後のこのルールは……! 漫画が相当お好きなんですね(笑)

小船戸:はい、もともと少年漫画が大好きで、思考にも影響を及ぼしているのですが(笑)いま時短で働いていて思うのは、時短勤務って少年漫画でいう修行シーンと同じだなってことなんです。短い時間で成果を出そうとするのは、やっぱり相当な負荷があるしすぐには結果が出ない。けれど、負荷があるからこそ、少し子供が手が離れたとき、これまで以上にスピーディに、効率よく仕事ができるようになる。そんな気がするんですよね。

——子育てがある種の負荷になって、筋力がつくと。子育てそのものも自分自身のバリューになる。

小船戸:はい。同時に、保育園の送り迎えにしろ、食事にしろ、日々の子供たちとの時間を大切にすることの価値も感じています。「3歳のこの子の表情、この瞬間って、今しか見れないな」とか「通園の途中のこんな会話って、この子が成長したときに思い出すんだろうな」とか、子供たちの成長の瞬間に立ち会える喜びもある。育児でも仕事でも、かけがえのない経験をさせてもらっているなって、感じています。法務という専門職を身につけ、育児だけでなくキャリアも着実に積み上げていきたい方、ここに活躍できる場所があります。ぜひDeNAの法務部にジョインしていただきたいですね。

株式会社ディー・エヌ・エー  経営企画本部法務・コーポレート統括部法務部第一グループ

小船戸 瑞枝

新卒でネット広告代理店に入社後、法務部の立ち上げから携わり、4年勤務。2008年DeNAに中途入社後、EC・広告運用の契約周りの法務担当。三人目の産休をあけて、現在はゲーム・エンタメのサービス全般を担う法務担当として活躍している。

執筆:箱田高樹 編集:下島夏蓮 撮影:杉本晴

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