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DeNAの幅広い事業領域で冴えわたる。知財グループの攻めと守りの戦術

2023.09.04

DeNAが多岐にわたる事業領域で、新しい喜びと驚きを創り出していくために欠かせないのが、知的財産グループの存在です。

競合他社がひしめく中で、知財における自社のポジションを定め、特許出願を推進しながらリスク回避し、ビジネスを成功に導くことがミッション。事業部とタッグを組んで、知財戦略を立案し、アイデアに磨きをかける知財のスペシャリスト集団です。

一口に知的財産の仕事と言っても、事業内容やフェーズによってその業務内容はさまざま。

知財文化の浸透に貢献してきたグループマネージャーの梅木 啓行(うめき ひろゆき)、ゲーム、AI、新規事業で知財戦略を担当する高澤 佳宏(たかざわ よしひろ)が、DeNAだからこそ経験できる知財の仕事の醍醐味を語ります。

DeNAの知財スペシャリスト、その仕事と業務領域

――知財の専門家として活躍する、お二人の経歴からお聞かせください。

梅木 啓行(以下、梅木):私は大学で有機化学を専攻した後、新卒で電機メーカーの知的財産部に入り、5年間、担当製品の特許権利化業務をしていました。知財には特許出願以外にも仕事があるので、もっと幅広く業務をしながら、いろいろな事業・製品分野を見ていきたいと思っていたときに、DeNAとご縁があり、2012年に入社しました。

高澤 佳宏(以下、高澤):1社目は電機メーカーで、3年ほど特許の仕事をしていました。特許の仕事をしている中で、分野としてはソフトウェアやITがおもしろそうだと感じていて、個人的にもゲームやパソコンが好きだったこともあり、そういう業界に入りたいという思いがありました。そんなときにDeNAが知財メンバーを募集していたため、チャレンジして2019年に入社しました。

――お二人は理系から新卒で知財部門に進んだとのことですが、特殊な選択のように思います。

▲法務コーポレート本部法務部知的財産グループ グループマネージャー 梅木 啓行(うめき ひろゆき)
大手電機メーカーの知的財産部を経て、2012年にDeNA入社。DeNAの知財部門の立ち上げに参画し、以来、DeNAグループ全体の知財業務を推進している。

梅木:確かに、特殊な立ち位置かもしれません。特許の仕事には技術的な理解が求められる一方で、法律などの文系的な知識も必要になります。理系と文系の境界領域で仕事をできるのが知財のおもしろいところですね。

高澤:僕も大学院では数学専攻だったため、知財のちの字も知りませんでした。たまたま参加した企業の説明会で、特許の仕事があることを知って興味を持ったんです。技術を論理的に文章で表現することや、抽象化して考えることは、数学を学ぶことで培った思考に共通していると感じ、とても心魅かれました。当時は数学の道に進むことも考えていましたが、そこで方向転換をして今日に至ります。

――お二人はこれまで、DeNAでどのような仕事に携わってきたのでしょう?

梅木:私が入社した2012年は、DeNAが知財部門の機能を強化して知的財産活動を推進しようというタイミングでした。そのため、職務発明規程(※)を整備したり、各事業部で特許や商標出願の啓発活動をするなどの経験ができました。

※……職務発明規程。従業者等が職務上なした発明(「職務発明」)について、使用者等が特許を受ける権利を承継した場合の対価等について定め、使用者等と従業者等との間の利益調整を図る制度。

これまでDeNAにはゲーム関連を中心に約500件の登録特許があり、商標登録も数百件にのぼります。事業部に入って「このアイデアは特許が出せそう」とか、「他社の特許を侵害しないように注意したほうがいい」などのアドバイスをしていく中で、会社全体として知財意識が根付いてきました。

高澤:私は、梅木さんたちが作り上げてくれたDeNAの知財文化を引き継いで、ゲーム、AI、新規事業の知財業務をメインで担当しています。事業担当者と打ち合わせをしながら、特許出願や商標出願、必要に応じてそれらの調査業務をおこなうことを担当しています。

梅木:高澤さんたちが事業状況などを踏まえつつ、より有効な権利となるように戦略的に考えてくれているのでとても頼もしいです。

――知財戦略を考えるうえで重視するポイントはありますか?

高澤:事業ごとに自社の知財的なポジションをどこに置くかはすごく意識しています。ゲーム、ヘルスケアなど、多岐にわたる事業分野で、どういう特許を取るのが自社にとってベストかを考え、ひとつの事業で数十件の特許出願をすることもあれば、出願しなくてもいいなどの判断をすることもあります。

事業のフェーズを見ながらそれらを判断していくのですが、たとえば、ゲームの企画段階であれば、根幹となるシステムでしっかり特許を出しておいたほうがいいし、リリース後のイベント等でも特徴的な仕組みを特許出願という形で権利化することもあります。

▲法務コーポレート本部法務部知的財産グループ 高澤 佳宏(たかざわ よしひろ)
電機メーカーの知的財産部を経て、2019年にDeNAへ入社。以来ゲームを中心に、AI、スマートシティ等の知財業務全般を担当している。  

――ゲーム内のイベントも特許出願の対象なのですね。

高澤:そうなんです。事業部ではプレイヤーに楽しんでもらうためのアイデアを出して、DeNAらしいイベントを企画しているので、その仕組みを権利化することで他社には真似できないものとなります。

だから、特許を出して終わりではなく、タイトルをリリースした後も事業部と定例会を開いて、今後の施策やイベントなどをヒアリングしています。特許性のありそうな企画だと思ったら、特許出願の準備をすることと同時並行で、他社の権利に抵触しないかの特許調査も進めていきます

未知の分野も続々、知財戦略を一から立案

――DeNAならではの特徴的な仕事はありますか?

梅木:大手メーカーなどでは1製品分野を専任で担当することが多いと思いますが、DeNAの知財メンバーでは、担当分野の縛りはあまり設けず、複数の事業を担当します。

やはり会社として主力事業が変遷していった歴史がありますし、新規事業やM&Aでこれまで知見がなかった分野に参入することも多いので、各メンバーがさまざまな事業分野に対応できることが大事だと思っています。

高澤:大企業では知財戦略の専門部署や商標部署等がそれぞれ独立していたりしますが、当社では担当者が全て行っています。社内の事業ごとに特色があるので、それぞれに異なる戦略を考えていくことが、難しさでもあり、おもしろさでもありますね。

AIやNFT(非代替性トークン)など新しい技術を使ったサービスやプロダクトも多くあるので、その技術を専門書を読むなどして学習したり、技術者にその技術のことを質問しながら進めたりと、未知の領域へも挑戦していくことに、とてもやりがいを感じます。

――これまで経験した中で特に印象に残っている仕事を教えてください。

梅木:過去にゲームを短期間でたくさんリリースするというプロジェクトがありました。短期間でゲーム仕様のリスク判断や出願検討等を一気に進めなければならず、なかなか大変でしたが、その分、知財の実務能力がかなり鍛えられました。その後、会社の事業拡大に伴ってオートモーティブだったりヘルスケアだったりと未知の分野に取り組むことになるのですが、なんとか対応できたのも、そのときの経験があったからだと感じています。

高澤:私が印象に残っている仕事は、他社特許の回避です。入社して1年も経たない頃、事業部からあるゲームのアイデアがきたのですが、そのゲームの仕様はすでに他社によって特許化されていたため、特許を回避しなければと思ったんです。「特許に抵触するのでダメです」と突っぱねることは簡単ですが、私もゲームが好きなので、「このゲームスキームは絶対におもしろいからなんとかして実現させたい!」という気持ちでした。

そこで、回避案を事業部と一緒に複数考え、これなら特許回避できると思う順に段階付けをして、その中で回避の確度が高そうなものをさらにブラッシュアップさせ、第三者の特許事務所の先生に確認いただき意見も取り入れながら、これなら回避できていると自信を持てるところまで持っていけたのはうれしかったですね。

――事業部との関係では、サポート役にもなるし、リード役にもなる難しい立場。専門家としての心の持ち方はあるのでしょうか。

梅木:高澤さんの事例でもそうですが、特許の専門家としての立場だけでは、「特許侵害は回避してください、以上。」でおしまいになってしまいます。そうならないために、事業部側の考え方を理解して同じ立場に立ち、「こういう仕様であれば特許リスクを低減しつつ、やりたいことも実現できるのではないか」という提案をします。

コミュニケーションも同じ目線に立つことが大事で、単なるストッパーになってしまうと、事業部の協力も引き出せません。一緒にものづくりをしていく一員として、事業が止まるリスクを低減し、DeNAの特徴のあるサービスやプロダクトを世に出していきたいと思っています。

プロとしての責任、ユーザー目線の期待が原動力

――知財グループのカルチャーをどのように感じていますか?

梅木:一人ひとりが主体性を持つDeNA全体のカルチャーが、知財グループにもあります。複数の事業を担当するだけではなく、新しい事業が次々と立ち上がり、そのときどきで業務がダイナミックに変動するので、未知の分野にチャレンジしていくマインドを持っていますね。

高澤:DeNAに入社してすぐに専門家として仕事を任せてもらえました。たとえばゲームの分野では、各タイトルの定例で、事業部の方とメインでやり取りすることはもちろん、質疑応答の回答も一任してもらえたんです。その経験のおかげで自然と責任感が身に付きました。

――DeNAの知財業務で新たに獲得したスキルはあるのでしょうか。

高澤:プロダクトやサービスに対して、適切な知財戦略を立てる力は、DeNAに入ってから身に付いたと思います。企画の段階から事業に関わることができ、特許出願したほうがいいのかどうか、また、商標を取ったほうがいいかを発明者や事業部と一緒に考えていく環境があるからこそ、得られたスキルだと思います。

梅木:ひと言でいうと、対応力です。一人の知財担当が扱う事業が幅広く、会社がM&Aで新規分野に着手するなどの事案もあり、まだ知見がない状態から戦略を立てるという場面が多々あります。技術をキャッチアップして知識を身に付けて実践する、ということを何回も繰り返しているのでどんどん鍛えられます。

――常に新しい事業や技術に関わり、知財戦略でものづくりに参画することにやりがいが詰まっているように感じました。お二人が考える今後の目標はありますか?

高澤:今の時点で有効な知財戦略も、1年後には古くなっています。M&Aや事業統合などが活発な会社でもあるので、そのときどきに最適な知財戦略を立てていくことが目標です。

梅木:私の目標も高澤さんと同じです。グループ会社を含めて、改めて知財の啓発をしていくことや、事業部からの依頼に応えていくことはもちろんですが、知財グループとして、こちらから知財戦略を提言していく機会をもっと増やしていきたいと思っています。

――最後に、どんな人がDeNAの知財グループに向いていると思いますか?

高澤:エンタメが好きな人です。自分がゲームやライブ配信をすごく好きということもあり、ユーザーとしての立場で「この機能すごくいいよね」という気づきから特許出願に結びつくことも少なくありません。エンタメが好きなら仕事自体も楽しめると思いますし、事業部とのコミュニケーションもスムーズに進められると思います。

梅木:先ほど対応力の話をしましたが、幅広い事業をやる会社なので、さまざまな仕事が降ってきます。この環境をおもしろがってチャレンジできると思ってくれる方は、ぜひ一緒に働きましょう。静かな環境で専門性を突き詰めたい人には、落ち着かない職場かもしれませんが(笑)。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:さとう ともこ 編集:榎本 麻紀恵 撮影:小堀 将生

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