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世界を視野に拡大する『Pococha』。その急成長にはデータアナリストが上流から関わる組織設計強化があった

2023.09.27

DeNAの事業の中でも急成長を遂げているサービスのひとつがライブコミュニケーションアプリ『Pococha』。日本(以下、JP)に続きアメリカ(以下、US)、インド(以下、IN)にも展開し、グローバルサービスとしての地位を着々と築いていっています。

この急成長の裏で重要な役割を担っているのが「データアナリスト」。UGC(User Generated Content=ユーザー生成コンテンツ)ゆえの複雑性と多様性がある中で、正しい意思決定をするにはデータ分析の力が欠かせません。高度な分析スキルはもちろんのこと、事業を深く理解する力があり、PdMとともに伴走できるデータアナリストは圧倒的な存在感を放っています。

では実際に、『Pococha』のデータアナリストたちは、日々どのような想いで仕事に向かっているのか。

前線で活躍するデータアナリストの湯沢 祥大(ゆざわ しょうた)、風間 智裕(かざま ともひろ)の2人と、US PdMを担当する小前 友哉(こまえ ともや)に話を聞きました。

事業の現場と近い距離で並走する

──まずは、みなさんの今のお仕事と『Pococha』にジョインした経緯を教えてください。

▲ ライブストリーミング事業本部Pococha事業部US事業推進室 プロダクトマネージャー 小前 友哉(こまえ ともや)

小前 友哉(以下、小前):私は、PdMとして『Pococha』の企画開発を担当しています。USのプロダクト全般を担当しているほか、JPの一部領域のPdMも担当しています。

2019年に新卒入社し、データアナリストとしてゲーム、『Pococha』の担当を経て、今に至っています。

▲ ソリューション事業本部ストラテジックマーケティング統括部アナリティクス部ライブストリーミンググループ データアナリスト 湯沢 祥大(ゆざわ しょうた)

湯沢 祥大(以下、湯沢):私は、2022年8月にデータアナリストとして中途入社しました。『Pococha』でUSの分析を主に担当してるほか、分析チーム全体のマネジメントも一部担当しています。

元々コンサルティングファームで会計の仕事をしていたのですが、そこでデータ分析に関するプロジェクトに参画したときに、データ分析のおもしろさに目覚めました。

ただ、意外とコンサルって事業現場との距離が遠くて、その部分で自分の中で違和感がありました。

たとえば、ある企業の企画担当者が社内の分析担当者に相談して、その分析担当者がコンサルに相談するみたいな形で中間ステップが多くなる。「もっと現場との距離が近い場所でデータ分析がしたい」と思い、DeNAに転職してきました。

▲ ソリューション事業本部ストラテジックマーケティング統括部アナリティクス部ライブストリーミンググループ データアナリスト 風間 智裕(かざま ともひろ)

風間 智裕(以下、風間):私もデータ分析がやりたいと思い、2022年に新卒としてDeNAに入社しました。

入社後、『Pococha』のデータアナリストとしてライブストリーミング事業のデータアナリストに配属され、USとJPの一部領域に加え、INのプロダクトの分析を担当しています。

就職活動を始めた頃は、分析を専門に受託している会社を見ていたのですが、たまたまDeNAの説明会に参加したことをきっかけに路線変更しました。自分が分析した結果が活かされ、形になっていくのをすぐそばで見ることができるデータアナリストの仕事に魅力を感じています。

自己組織化したチーム実現に向け、データアナリストも領域単位で分割

──『Pococha』は2017年1月にリリースされて以来、成長を続けている印象です。『Pococha』の現状について教えてください。

小前:『Pococha』はユニコーン企業に匹敵するペースで成長し、日本では既に業界トップクラスの利用者数になっています。現在は日本でのさらなる市場拡大とグローバル展開を進めるために、プロダクトの改善と組織の拡大を進めています。

──具体的にどうやって組織を拡大しているのでしょうか。

小前:『Pococha』はチームトポロジーを参考に組織設計し、拡大を進めています。

具体的には、エンジニアチーム、PdMチーム、データアナリストチームなど、職能で横断的な組織を作るのではなく、ストリームアラインドチームと呼ばれる自己組織化したチームを実現するために、企画・開発チームを特定の責任領域で分割し、アジャイルに企画・開発ができることを目指しています。

2022年秋頃から移行を開始し、開発組織(エンジニア・PdM)の移行は進んでいて、2023年1月頃からデータアナリストも各開発チームに入り込んでいけるように組織設計を行っています。

──開発組織に加えて、データアナリストも領域単位で動けるようにしたのはどんな意図があったのでしょうか?

小前:各開発チームがフルスタックな状態で企画・開発を推進していくためには、施策立案時のデータ分析と施策後の効果検証を短いサイクルで精度高く推進する必要があり、それを進めてくれるデータアナリストが必要不可欠でした。

また、組織が大きくなるにつれて、全ての領域の状況をデータアナリストメンバーの一人ひとりが把握するのは現実的ではなくなってきたので、認知負荷を減らすためにも各データアナリストが深く関わるチームを絞りたいという意図もありました。

データアナリストが各開発チームに入ることで、スピード感と質(より深い分析、意思決定における深い部分への関与)を向上させることができていると思っています。

──組織設計の変更について、データアナリスト目線ではどう感じていますか?

湯沢:以前よりも『Pococha』の各領域の深いところまで踏み込んで分析ができている印象はあります。施策の検討段階から入り込むのはもちろん、その上段の『Pococha』の各チームが何を目指していくかの議論から並走して動けるようになったので、各チームに対するアウトプットの質やスピードが上がっていると思います。

とはいえ、各チームに入ったデータアナリスト同士の繋がりがなくなったわけではありません。各チームで得た知見を共有し合うなど、むしろデータアナリスト全体のパフォーマンスが向上していると感じています。

他チームとの連携で、様々な視点での分析が可能に

──直近の具体的な業務について教えてください。

風間:小前さんやUSチームのメンバーと一緒に『Pococha』USのグロースのための施策検討をしています。 直近では、新規ユーザーのアプリ継続率を上げるための施策検討を行っていました。

US は新規ユーザーの継続率に改善の余地が多くあります。そのため、その課題をどうやって解決するのかについて、PdMである小前さんとUS事業責任者と共に、現状の解明及び施策検討を密に議論をしながら進めてきました。

──どのように進めたのでしょうか?

湯沢:継続率に影響する要因の仮説を出して、その仮説検証を行うというサイクルを週単位で回しました。

大まかな進め方と仮説設定をしたうえで、データアナリストが仮説の妥当性(解くべく問いに繋がる仮説になっているか)をチェックし、仮説の解像度を上げつつデータ分析を進めるという流れを繰り返しました。

また、事業責任者やPdMだけではなく、コミュニティマネージャーから各ライバーが新規リスナーに対して抱いている印象のヒアリング結果を共有してもらったり、マーケターからは直近の広告戦略やどういう属性のユーザーが流入しているか共有してもらうなど、各分野のメンバーと協力して進めました。

──色々な専門性を持つメンバーと協力することでさまざまな視点から分析を進めることができたと。

湯沢:はい。数字から見える状況と、実際にアプリ内で体感しているライバー・リスナーのUXを紐づけてうまく仮説構築する必要があり、各分野のメンバーと会話しながら進めるのは非常に重要でした。

具体的な例で言うと、分析開始当初は、新規ユーザーはライバーから積極的にコミュニケーションを取ってもらうと『Pococha』の楽しさを感じられて継続するという仮説の元、インストール初期のコミュニケーション量と継続率の関連性を分析していました。

一方で、「右も左も分からない状態の新規ユーザーは、いきなりライバーからコミュニケーションを取られると萎縮してしまう。むしろ最初は配信枠に入ってもコメントなどのコミュニケーションはそこまで取らない。でも、魅力のあるライバーの配信を視聴すると継続率があがるのでは?」という仮説が各メンバーと話していく中で上がり、分析した結果、コミュニケーション量が多くなくとも他の要因でアプリを継続する層が一定数いることが分かりました。

これはかなりシンプルな例ですが、データアナリスト以外の視点を随時取り入れながら、新規ユーザーにとって『Pococha』の何が魅力的なのかを定量的に見えるようにしていくのにやりがいを感じています。

風間:またマクロの確認として、日本のリスナーとの各アクティビティの構造比較も行っています。たとえば、お気に入りのライバーをフォロー(SNSのフォローとほぼ同じ)したリスナーの継続率がUSでは日本の倍以上高いことが分かりました。

今は、このような仮説検証結果や日本とUSの比較を通して、別の仮説検証や施策にどう繋げるかを議論しているところです。

たとえばフォローの話であれば、なぜフォローした人の継続率がそこまで変わるのかを深堀りしつつ、並行してフォローを促進するようなコミュニケーションを各ライバーに促す実験的な施策を検討しています。

英語でのコミュニケーションにはやや苦戦していますが(笑)、そこも含めてグローバルに挑戦している事業に関われることにやりがいを感じています。

──グローバルサービスとして多くのユーザーの方々にデライトを、という想いが伝わってきます。多角的な視点で仮説検証をされる中で、いま課題に感じていることはありますか?

湯沢:ストリームアラインドチームの中で、「こういう分析をやって施策につなげましょう!」といったデータアナリストからの積極的な提案がまだまだできていないことです。組織の体制が変わって、提案できるチャンスが増えているのに、そのチャンスを活かしきれていないと感じています。提案に必要な情報をまとめる時間が取れていないというのもありますが、データアナリスト全体で提案まで持っていけるような仕組みをまだ構築できておらず、今後最重要で検討していきたいポイントです。

小前:現状でも、多くの分析を進めて意思決定の推進を担ってる欠かせない存在になっていますが、更にその領域までデータアナリストが越境してくれると頼もしいです。

湯沢:そのためにも、データアナリストの仕事の取り込み方を変えていきたいと思っています。ただ、データアナリストからの提案を推進していくための仕組み作りは道半ばですし、データアナリスト全体の理想的な仕組みを求めていくと、どうしても人員が足りないのが現状です。仕組み作りを一緒に進めてくれて、かつ自分でも分析・施策提案をを推進してくれるような人を確保すべく、採用活動も進めています。

ネットワークサイエンスの活用と、データサイエンティストとの密な連携

──最近ではネットワークサイエンスなどの取り組みもしていますよね?

風間:はい、コミュニティの熱量を定量的に測る目的で、ネットワークサイエンスを活用した取り組みを開始しています。

ライバーとリスナーの相互関係を簡易な集計処理のみで定量把握しようとすると変数も多く、またそれらが相互に複雑に関連するため難しい。しかしネットワークグラフを用いて相互関係を可視化すると、そのコミュニティがどんな成長過程を辿って来たか、また現状のコミュニティの状況が適切なのか、などを視覚的に把握できるようになります。それにより、グラフの構造自体を定量的に把握することもできるし、事業部メンバーが施策の効果や仮説出しを直感的に把握しやすくなります。

また、当社にはKaggleのGrandMasterやMasterのデータサイエンティスト(以下、DS)が多数在籍しています。DSメンバーとも同じデータの専門性を武器にする仲間として密に連携し、事業理解がより進んでいるデータアナリストが問を立て、DSメンバーが高度なスキルを活かして解を出す。そのような連携した提案もより増やしていきたいです。

小前:PdMの視点からもネットワークサイエンスを利用した取り組みに注目しています。『Pococha』は良いコミュニティをつくることを重視しているのですが、なかなか定量的に表現するのが難しいと思っています。「良いコミュニティが増えているか」と言われても「良いコミュニティってなんだ?どういう定義なんだ?」となりますよね(笑)。

ネットワークサイエンスが進めば、施策を打った際、あるコミュニティに注目した場合にその施策でコミュニティサイズが大きくなったり、質が良くなったりしているのを可視化されたグラフ構造で見ることができるので、施策を多面的に評価できるようになり意思決定の質を上げれるのではないかと考えています。なので、このような新しい技術を利用した取り組みにも期待しています。

──みなさんが導き出す『Pococha』の良いコミュニティがどんなかたちで結実するのか、今後の活動が楽しみです。では最後に今後の目標を教えてください。

湯沢:現状は、事業部メンバーの増加にも伴い、依頼ベースの分析が多いのも事実です。そういった分析は、より効率的に行う方法を追求しつつ貢献していく。その上で、事業部の今の課題をきちんと把握するためのKPI開発や、先程述べたような事業の未来に向けた分析を増やしていきたいと思います。

このように、事業に深く入って事業課題をPdMと一緒に解決していく分析難易度は高く、時間もかかります。そのためのデータアナリストは全然足りていません。

このようなビジョンに共感し、一緒に事業推進していけるメンバーを募集しています。事業拡大に向けたデータ活用をぜひ一緒にやっていきましょう!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

編集:今西 美樹 撮影:小堀 将生

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