2018/03/08

ルーティンワークはロボットに、創造的な仕事は人間に。月128時間の事務作業を減らしたRPA導入の全貌

「面倒な仕事は、ロボットで自動化できたらいいのに」

 

働く中で、そう考えたことはありませんか? 面倒なルーティンワークはロボットに任せ、創造的な仕事は人間がする。そんな“近未来”的な世界が、テクノロジーの進歩により徐々に実現してきています。RPA(Robotic Process Automation ※)によって。

 

DeNAでは2017年4月からRPA導入のプロジェクトをスタートし、社員データの登録や稟議申請などを自動化して業務効率化に繋げています。IT戦略部 業務改革推進グループの大脇智洋(おおわき ともひろ)と塩田可奈子(しおだ かなこ)、システム開発グループの国賀由慎(くにが よしのり)が、このプロジェクトに“フルスイング”しているメンバーたち。トータルで月間128時間もの工数削減に成功したというRPA導入を、どうやって実現したのでしょうか?

 

※……パソコン上のソフトやブラウザで行う業務を、ロボットを使うことで自動化するソフトウェアロボティクスのこと。

 

「転記」「繰り返し」「リサーチ」は、RPAにおまかせ

――RPA導入のプロジェクトは、どんな目的でスタートしたのでしょうか?

 

大脇:2つの目的があります。

 

1つ目はルーティンワークをロボットに担ってもらい、人間の作業工数を削減すること。2つ目はミスが許されない作業を自動化し、正確に実施することです。

 

――RPAに「向いている作業」「向いてない作業」はあるのでしょうか?

 

大脇:向いている作業としては、あるシステムから別のシステムに情報を移す「転記」。作業の手順が決まっていて、それを何度も実施する「繰り返し」。それから私たちはまだ着手していませんが、WEBから情報を収集してくる「リサーチ」などが向いていると言われています。

 

逆に、人間による高度な判断が必要なものや、例外が多い処理などは向いていません。

 

IT戦略部 業務改革推進グループ グループマネージャ 大脇智洋
新卒でSIerに入社し、商社や通信企業のシステム開発・運用などのプロジェクトに従事。2006年より会計系コンサルファームにて、JSOX導入、IFRS導入、業務改革などのプロジェクトに従事。2012年よりDeNA IT戦略部に参画。グローバルでの経営管理基盤の統一プロジェクトに参画した後、「Slack」の全社展開や「RPA」を活用した業務改善のプロジェクトなどに従事。

 

大脇:複雑なロジックを組めば後者の業務も自動化できます。しかし、ビジネス要件に応じて業務フローや判断基準がすぐに変わり、そのたびにRPAをメンテナンスしていては工数が膨大になってしまう。そうなると本来の目的である業務効率化に結びつかなくなってしまうわけです。

 

各作業の概要や頻度、所要時間を“見える化”

大脇:私たちは、DeNA社内の業務のうちRPAに向いていそうなものをピックアップして、自動化を推進していきました。

 

▲RPAツールである「Blue Prism」の設計画面。このツールはプログラムを書く必要がなく、GUIで処理フローや各種設定を定義できるのが大きな特徴だという。

 

――どうやって、自動化する業務をピックアップしていきましたか?

 

大脇:まずは各部署のメンバーに対して、RPAの概要や得意・不得意な業務を説明しました。そのうえで、担当している業務のうちRPAに任せたらうまくいきそうなものをリストアップしてもらったんです。それがこちらです。

 

▲自動化の候補となる業務がリストアップされた表。

 

――たくさんありますね!

 

大脇:そうですね。リストアップ表には、業務プロセスの名前や概要、稼働開始日、実施サイクル、実行日時、所要時間などが書かれています。この情報をもとに、自動化の難易度や削減できる工数などを判断し、RPAを導入するための優先順位を決めていきました。

 

まず着手したのは、簡単に自動化できる作業

――始めに自動化したのは、どういった作業ですか?

 

塩田:まずは自分たちの部署の作業で試してみようという方針になり、私のチームが担当していた「新入社員のアカウント作成」を自動化しました。これは、新入社員の情報を「サイボウズ デヂエ8」というツールに登録する作業です。

 

IT戦略部 業務改革推進グループ 塩田可奈子
新卒でITコンサルティング会社に入社し、不動産ビルデータ移行やECサイトの検索エンジン運用などのプロジェクトに従事。2012年にISO審査会社に転籍し、国内クレジット制度や東京都の温室効果ガス排出総量削減義務等の検証業務を担当。2013年よりDeNA IT戦略部に参画。ヘルプデスクでのサポート対応、購買・計上業務を担当後、現在はRPAの他に会計系システムの運用、kintoneの要件定義・設計などを担当。

 

――IT戦略部の業務はさまざまなものがありますが、「新入社員のアカウント作成」を自動化する方針にしたのはなぜですか?

 

大脇:私たちは「最初は簡単なところからスタートして、早い段階で動くものを作る」という方針を採りました。まず始めてみなければ、RPA導入にあたり注意すべき点が見えてこないだろうと考えたからです。

 

塩田:自分たちの部署の作業で試してみようという方針に沿って、「新入社員のアカウント作成」を自動化しました。作業自体は、「サイボウズ デヂエ8」の入力フォームに貼りつけていくだけです。工数自体はそれほど多くないのですが、例外的な処理がほとんどないため自動化しやすく、RPA導入の手始めとして試すにはちょうど良かったんです。

 

大脇:この作業で得た知見をベースにして、開発の標準ルールやRPAの導入方針書などを作成していきました。

 

自動化の基準は「月あたり3.5時間」かかるかどうか

大脇:次に、IT戦略部で工数がかかっている作業を自動化していきました。

 

――どのような基準で「工数がかかっているから自動化すべき」と判断しましたか?

 

大脇:判断基準は、1年でロボット開発のコストを回収できるかどうかです。開発には平均で45時間ほどが必要でした。それを12か月で割ると、1か月あたり3時間半程度かかることになります。その時間以上を削減できる工数のタスクを、自動化していったのです。

 

――費用対効果を考えることが大切なのですね。その基準で次に自動化の対象にしたのは、どんな作業ですか?

 

塩田:「IT購買の稟議申請」です。社員から、購買申請用のワークフローとして使っているkintone上にパソコンなどの購買申請があがってきたら、IT戦略部のメンバーがその情報をNetSuiteという会計システムに登録して発注するというものです。

 

その作業は定常的に発生していて、なおかつ月あたり3.5時間以上かかっていたので、ある程度の効果が見込めると考えました。

 

――この作業に工数がかかっていたのはなぜですか?

 

塩田:稟議申請の情報を、1伝票ずつ手作業で入力していたからです。その作業を、申請の数だけ繰り返す必要がありました。作業自体はkintoneからNetSuiteへ転記するだけなので、人間よりもロボットのほうが早いし正確なんです。

 

画面の仕様変更に耐えられる作りにしておく

――国賀さんはシステム開発グループで開発の舵取りをしているそうですが、RPA導入にあたり気をつけるべきはどういった点だと思いますか?

 

国賀:クラウドツールの操作を自動化するのには、注意が必要だと思っています。というのも、クラウドツールは定期的に改善されていくのが良い点ですが、画面の仕様が急に変わった場合、ロボットが動かなくなるケースがあるからです。

 

IT戦略部 システム開発グループ 国賀由慎
前職は Linux を中心としたインフラエンジニア。一般企業や教育機関でのインフラ設計/構築/運用支援に従事。DeNA に入社後、IT戦略部で開発者向けツールの導入/運用/サポート・社内システムの開発を担当。

 

――どういう場合にその事象が起きるんですか?

 

国賀:例えば、RPAの中で「画面の上から5番目の要素を操作する」という記述をしている場合、画面に表示される項目の順番が変わってしまったら誤作動を起こしてしまいます。それを避けるため、画面の仕様が変わってもある程度耐えられる作りにしておくことが重要です。

 

大脇:今の段階ではRPAは画面変更の影響を大きく受けるため、人間が介在しなければいけない部分が大きいです。ですが今後は「クラス1」「クラス2」「クラス3」というフェーズを経てRPAが進化し、どんどん人間が担う作業が少なくなっていくと言われています。

「クラス1」というのは人がロボットにルールを教え込ませて動くという段階です。「クラス2」というのはAIを活用することで多少の画面変更や非定型のデータがあっても、問題なくRPAが動くというもの。徐々にこれが世の中に出始めています。「クラス3」では、大量データを基にした機械学習などにより、業務の分析・改善、意思決定まで自動化されていくと言われています。

 

今後は「クラス2」や「クラス3」のRPAの動向も追っていき、可能ならば取り入れていきたいですね。

 

自動化する前に、現状の業務フローを見直す

――他に、自動化するにあたり知っておくといいノウハウはありますか?

 

大脇:何度も実施する処理は、なるべく共通化部品することが大事だと思っています。例えば、ログインやログアウトなどアプリのどんな処理にも必要な動作は、共通部品化して使い回せるようにします。

 

もう1つポイントがあります。RPA導入の効果を高くするには、現状の業務フローを見直して最適なものに変えることが重要です。

 

例えば、先ほど話していた「IT購買の稟議申請」の場合、計上に必要な勘定科目コードや取引先コードなどをNetSuiteに入力する必要があります。しかし、今までは表計算ソフトに書かれている変換表を見て人間がコードの値を判断して入力していたので、kintone上にはその情報がもともとありませんでした。

 

この作業を自動化しようとすると、変換のためのマスタ情報をずっとメンテナンスする必要があり効率が悪い。そのため、kintone側に会計の情報も持たせるような作りに変更しました。

 

 

――逆に言えば、RPA導入がきっかけで業務フローが可視化・整備される、という副次的な効果もありそうですね。

 

塩田:そう思います。RPA導入では、パソコンのキッティングをリース会社に依頼するシートの送付作業も自動化しました。

 

この業務は、もともと誰がいつやるかが明確にルール化されておらず、なんとなく運用している状態だったんです。でも、自動化するならば運用フローを整備する必要があったため、それを機にルールを明確化しました。

 

私はこの業務の実施も担当していたので、すごく楽になったことを実感しました。それに、周りのメンバーからも好意的な反応をもらっています。

 

自動化によって、人間が創造的な作業に集中できる

――今後の計画について教えてください。

 

大脇:経理や人事などバックオフィス系の業務で時間がかかっているものを、今後は自動化していきたいです。

 

例えば、勤怠システムに勤怠情報を入力していないメンバーがいる場合、その調査とリマインドを人事部のメンバーが行っており、膨大な工数になっています。この作業が自動化できれば、トータルで100時間以上の工数削減になります。

 

それから、新しいスタッフが各事業部に入る際にSlackのアカウントを申請する作業が大変なので、それを自動化できないかということも検討しています。アカウント申請って、自分が本来担うべき業務とは関連性が薄いですし、なるべくやりたくないじゃないですか。そういった業務をどんどんロボットに任せていきたいです。

 

――そうなることで、各メンバーがクリエイティブな作業に集中できる環境になっていけば嬉しいですね。

 

大脇:そうですね。RPAを導入することで、本来はやりたかったけれど、工数の関係でこれまでできていなかったことが、徐々に実現していければと期待しています。

 

塩田:パソコンのキッティング依頼作業のように、人間がやらなくてもいい作業はたくさんあるはずです。そういったものを少しずつなくしていけたらいいなと思っています。

 

国賀:RPAの導入は、まだまだ世の中に広がってない先進的な取り組みです。もちろん前例が少ないからこその苦労や大変さはありますが、その領域を切り開いていくことに大きなやりがいを感じています。

 

 

まとめ

RPA導入によって業務を効率化するコツ

①「転記」「繰り返し」「リサーチ」などの業務は、RPA導入できる可能性が高い

②各作業の概要や頻度、所要時間を“見える化”する

③簡単に自動化できる作業から着手する

④「開発コストを一定の期間内に回収できるか」を意識する

⑤画面の仕様変更に耐えられる作りにしておく

⑥自動化する前に、現状の業務フローを見直す

 

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執筆:中薗昴 編集:下島夏蓮 撮影:鈴木香那枝