2018/08/10

DeNAを卒業した僕が、AI創薬で新たなチャレンジをしに戻ってきた理由

病気と闘う患者さんにとって、有効かつ安全となるよう新薬を創るプロセス。

 

その中でも、最も大切な過程のひとつが「リード化合物の最適化」です。

数十万に及ぶ化合物ライブラリーから新薬の候補化合物を選び、合成と測定実験を繰り返しながら最適化させていく——。

 

複雑な過程を必要とするため、長い年月と膨大なコストがかかっています。ここにAIを活用し、コストダウンとスピードアップを測ることでイノベーションを起こす。それが今年1月にDeNAが発表した「AI創薬」というプロジェクトです。

 

国内外でも珍しい、AI×製薬プロジェクト。ヘルスケア事業部の伊藤康太郎(いとう こうたろう)は、この最前線で、プロダクトマネージャーを務めています。

 

意外なことに、以前はMobageのプラットフォームを開発していたエンジニアでした。さらに一度、DeNAを退社したのちに戻ってきた出戻り社員です。なぜDeNAに戻ってきたのか? チャレンジングな事業にあえて挑む理由とは? 伊藤に本音を聞きました。

 

出戻り、AI×創薬でPMを担う

DeNAのヘルスケア事業部でプロダクトマネージャー(以下、PM)をしている、伊藤康太郎です。

 

株式会社ディー・エヌ・エー ヘルスケア事業本部AI創薬グループ 伊藤康太郎
2008年にDeNAにWebディレクターとして中途入社。ディレクターからエンジニアに転向し、Mobageプラットフォーム開発のグループリーダーに。2015年DeNAを退職し、スタートアップ企業に転職。3年弱の勤務を経て2018年3月に再びAI創薬のPMとしてDeNAに中途入社。

 

僕の担当領域である「AI創薬」。製薬企業との共同研究を通して、DeNAが培ってきたAI技術と製薬企業のデータや知見を融合しながら、化合物の最適化プロセスの大幅なコストや時間短縮につながる技術開発をする。

 

それが、私たちのミッションです。

 

ひとつのプロジェクトあたり、数千化合物を合成・測定し、そのプロセスに3年以上の時間と、10億円単位の研究開発費がかかることも稀ではありません。各製薬企業も開発の成功確率を上げるため、このフェーズには大きな投資をかけています。

 

これをAIで支援する。アルゴリズムを見出して、この膨大な時間と費用を、仮に半減できたら1年半と5億円が削減できます。研究開発期間の短縮により、クスリが世に出るまでの期間も短かくなる可能性が高まり、結果として、治せる病気、救える命が増えるかもしれません。

 

この春からスタートしたプロジェクトですが、とても意義のある挑戦をしている、という自負があります。

 

もっとも、僕自身は「AI」の専門家でも、「製薬」の専門家でもなかった。もっと言うと、DeNAを一度辞めた経験もあって、このプロジェクトのために戻ってきた人間なんです。

 

DeNAは「ストレッチできる場所」

新卒入社した会社ではWebディレクターをしていたのですが、受託制作が多く「自分でサービスをつくる仕事がしたい」と考えるようになり、DeNAに中途入社しました。

 

 

当時はゲームの領域がメインでしたが、自社で多くのサービスをつくっていることが、DeNAを選んだ理由のひとつ。加えて、システム業務を内製していることも大きな理由です。前職の現場で「ディレクションやPMをするにも、システムやプログラムの中身を知っていた方がずっとスムーズになる」ということを実感していましたから。

 

 

DeNAならば、未経験でも「自社サービスをつくるエンジニア」としての道がひらける可能性がある、と目論んでもいました。

 

2年目に異動願いを出し、狙い通り、未経験のエンジニア職へ転向。ゼロからのスタートでしたから、最初はもちろん大変。とにかく現場で周囲の方に聞きながら学んでいくしかなかった。

 

ただディレクター目線を持ちながらシステムづくりを手掛けると、実用最小限の設計やコードを書くことができるので、それは武器になりました。そして、このときにあらためて感じたのは「結構無茶ぶり、というか大胆な仕事の任せ方をする会社だな」ということです。

 

その時点で経験が浅くても、できると判断されれば、どんどん難しい仕事を任せてもらい仕事量もスピードも求められる水準が高い、と感じました。

 

ただ同時に、プロジェクトを終えるたびに、その時は無理だと思ってもスキルがしっかりと身につき、自分がストレッチできていることがわかるんです。

 

「負荷のかけ方がうまい」というか、こいつならギリギリできそうだという見極めが上手く、仕事を通して人を伸ばすスタイルがしっかり根付いているんだなと実感しました。その結果、入社5年目には国内外のメンバー30名を率いるエンジニアのマネージャーとなり、サービスの設計や進行管理、新人育成にいたるまで、色々と任せてもらえるようになりました。

 

けれど、入社7年目になる時、一度DeNAを飛び出しました。ひとつは、大学時代の友人が起ち上げたスタートアップに誘われたこと。もうひとつは「今はDeNAにいるべきじゃないな」と感じるようなマインドが、当時の僕の中に芽生えていたからです。

 

「DeNAらしくなくなっていた」自分に気づき、転職

DeNAに入社して6, 7年も経つと、ノウハウや経験が積み上がってきて、仕事に余裕が出て安定してきたんですね。悪く言うと、惰性でも仕事ができてしまうようなマンネリ感というか。

 

 

元々、学生時代からベンチャー志向があり、いつかは……と思っていたところで、大学時代の友人から一緒に働かないかと誘われて。

 

どうしようかとかなり悩みましたが、「安定していていい」なんてマインドで仕事を続けても後悔が残りそうだし、「DeNAらしくない!」と思い、ワガママ言って卒業させてもらうことにしました。

 

こうして2015年に友人のスタートアップにジョイン。DeNAと比べたら小さな会社だったので、色々なことを経験させてもらいましたね。エンジニアの業務だけでなく、AWSでインフラ構築したり、カスタマーサポートやユーザーインタビュー、プロダクトマネジメントをしたり、果てはオフィス引っ越しまで。スタートアップならではの貴重な経験でした。

 

仕事にはやりがいがあり、事業は右肩上がりに成長をしていましたが、徐々に自身の価値観やチャレンジしたいことと会社が掲げるミッション・バリューにギャップを感じるようになりつつもありました。そうして、事業規模を拡大させ、自身の役割は果たしたなと思えるタイミングまでやり切ってから、3年弱で卒業することに決めたのです。

 

チャレンジへの情熱が再燃

次の転職活動では、ゼロベースで様々な選択肢を検討しました。ありがたいことに他社からもいくつかお誘いを頂いたものの、新たなチャレンジをする場としてDeNAを選びました。

 

▲集中して作業したいときは社内のカフェで。

 

実は、元同僚たちと退職後もずっとつながっていて、3年間会う度に「いつでも戻ってきて」と言われていました。それがまず、すごく嬉しくてDeNAでもう一度チャレンジしようと考えるきっかけになりました。

 

一方で、当初は「戻って活躍できる場所なんてないのでは」とも感じていて。やめてから3年が経ち、DeNAは「オートモーティブ」「ヘルスケア」「エンタメ」などに力を入れ、事業が多様になっていましたから。

 

自分のスキルセットは、今のDeNAには必要ないのでは、という不安もあったんです。その気持ちを率直に人事担当者に打ち明けてみたら、「できることはことはたくさんありますよ。むしろ伊藤さんのスキルセットを求めていたんです!」と応えてもらえたんです。

 

AIや創薬の知見はなくとも、ソフトウェアエンジニアリングのベースがあり、エンジニアと対等に話せる。またプロダクトマネジメントの経験や、スタートアップで外部の様々な人たちと協働をしてきた経験があれば十分だと。

 

AI創薬プロジェクトは、大きな社会的課題を解決する、とても挑戦しがいのある領域。学ぶべきことがたくさんあって大変ではあるけれど、仕事を通してストレッチしていくのはDeNAっぽいとも思えた。色々考えているうちに「AI創薬で自分の力を発揮することができるなら」とお願いしたのです。

 

今のプロジェクトでは、製薬企業などの共同研究先はもちろん、IT創薬や医療系データ解析コンテストの優勝者、元製薬企業のプロダクトマネージャーなど、本当に様々なバックグラウンドをもつ優秀なメンバーが揃っています。

 

▲チームの定例会議の様子。様々な経歴をもつメンバー達で議論する。

 

こうした人たちが自分の専門分野で「おもいっきりフルスイング」してコトに向かえるよう、あらゆる手を尽くして環境を整えるのが僕の役割。

 

目指すべき方向や開発目標を決めたり、共同研究パートナーや社内関係部門環境との窓口となったり、チームの約束事を整理したり、開発プロセスを整えたり、と様々なことをやってます。

 

当面は、AI創薬プロジェクトがインパクトある成果を残せるよう全力を尽くしたい。そして、ゆくゆくは自分と同じような役割を担える、プロダクトマネージャーを育てて増やせたらいいな、という密かな野心もありますね。

 

紆余曲折あったものの、今、僕はまたここにいるという訳なので、2周目のDeNAライフを全力で楽しもうと思います。

 

 

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※本記事掲載の情報は、2018年8月10日時点のものです。

執筆:箱田高樹 編集:下島夏蓮 撮影:杉本晴