2018/04/03

必要なのは、インプットの量ではなく解像度。『逆転オセロニア』を支える企画の極意

プランナーや商品企画、ディレクター、編集者。まだ世の中にない、新しい施策を考える職種の人たちが求めてやまないスキルがあります。企画力です。良い企画を生み出すことは、サービスのオリジナリティや満足度を高めることに直結します。

 

しかし「企画力が欲しい」と漠然と考えても、そのスキルは身につきません。業界を研究し、適切に情報をインプットし、思考フレームワークを習得してこそ、効率的に良いアイデアを出せるようになります。では、企画職の第一線で活躍する人たちは、どんな方法でそのスキルを身につけているのでしょうか。

 

今回の主人公は、『逆転オセロニア』(※1)のディレクター(※2)として企画職のメンバー20名以上を統括する坂田裕貴(さかた ひろき)。インターン時代から同作に携わり、より良いタイトルに育てるために“フルスイング”し続ける彼は、どんな“企画の極意”を持っているのでしょうか?

 

※1…オセロとトレーディングカードゲームの要素を組み合わせた対戦ゲームアプリ。
※2…『逆転オセロニア』ではディレクターが全体方針を立てた上で、その方針に従ってプランナーが具体的な企画に落とし込んでいきます。場合によってはディレクターが自分で企画を作るケースもあります。

 

因数分解した要素を組み合わせ、アウトプットを生む

ーー坂田さんがディレクターとして大切にしていることは何ですか?

 

坂田:いくつかありますが「抽象化と具体化をくり返すこと」は非常に重要だと考えています。世の中にある具体的な要素を抽象的なレイヤーに落とし込んでストックしておき、具体的な企画としてアウトプットするというか。

 

DeNA Japanリージョンゲーム事業部第一開発部 『逆転オセロニア』総合ディレクター 坂田裕貴
2015年DeNAに新卒入社。内定者時代から新規事業立案などを行う。また『逆転オセロニア』プロデューサー香城と同アプリの開発を進め、リリース後に運用責任者を担当。その後、総合ディレクターを担当し現在に至る。DeNAの次世代経営層を育てる「ネクストボード」の1人。

 

例を挙げると、2017年9月に『逆転オセロニア』の中でアニメ『DEATH NOTE』との連動企画を実施しました。その担当が僕だったんです。

 

この作品は幅広い世代の方に知られているコンテンツですが、多くの人は『DEATH NOTE』と聞いた時に何を思いつくかというと、アニメの具体的なシナリオや内容というよりもむしろ、夜神月やL、弥海砂などのキャラクターたちだと僕は考えました。

 

それと同じ時期に、知り合いと一緒に銀座を歩いていたら、その人が道端にいた占い師を見て「占いって面白いよね」と言いました。そのとき「人はみな『自分が何者であるかを理解したい』という欲求が強いのではないか」と思ったんです。

 

哲学のような学問の中でもよくトピックになる内容ですが、その本質は「あなたは●●です」と第三者に言われることで「自分自身の存在価値を感じて承認感を得る」ことにあるというか。

 

つまり、両者の情報を抽象的なレイヤーまで分解すると、前者は「個性豊かなキャラクターたち」、後者は「人は第三者から【自分が何者であるかを意味付けしてもらえること】をかなり心地よく思う」という要素を持っています。

 

これを組み合わせると「回答者が『DEATH NOTE』に関連した2択の質問に答えていくと、どのキャラクターに似ているかを診断できる」という企画に落とし込めると考えました。こうしてできたのが『DEATH NOTEキャラ診断』なんです。

 

▲実際の診断画面。

 

局所最適が必ずしも正解ではない

――そういった考えができるようになったのは、坂田さんが『逆転オセロニア』に関連したさまざまな経験を積んできたからかと思います。インターン時代から同作に携わり、社員になってからはプランナー、その後ディレクターになったそうですが、昔と今とで「良い企画」に対する考え方は変わりましたか?

 

坂田:局所最適が必ずしも正解ではないという考えが強くなりました。

 

――というと、具体的には?

 

坂田:例えば、ゲームバランスを崩すような強いキャラクターを登場させると、高いニーズが生まれてプレイヤーに使われます。短期的には売り上げが伸びるわけです。でも数年間のスパンで考えると、それはベストの施策ではありません。ゲームとしての深みがなくなってしまうからです。

 

『逆転オセロニア』は対戦ゲームなので、バランス設計はプロダクトの面白さに直結します。「このキャラクターを持っていれば100%絶対勝てる」というものを作ってはいけないんです。

 

これはあくまで一例ですが、ゲーム全体のバランスをどう取っていくかはディレクターになってから強く意識するようになりました。イベントやキャラクター単体で見るのではなく、1つのプロダクトとしてどう面白くしていくか、の判断軸を持つようになったというか。

 

目線を上げるには、情報の量と種類を増やす

――それは言うなればディレクターの“大局観”だと思うのですが、どうすれば養えるのでしょうか?

 

坂田:その方法は「目線を“増やす”こと」しかないと僕は思います。

 

僕はプランナーからディレクターになった際、入ってくる情報量が格段に多くなったんです。ディレクターになるとゲームタイトル全体のことを考える必要があるからだと思うんですけど、その結果として大局観が身につき、良質な意思決定ができるようになりました。

 

つまり、目線を上げるにはインプットする情報の量や種類をまずは増やさないといけません。自分が担当するゲームタイトルの情報はもちろんそうですし、それ以外の情報もそうです。

 

 

――情報量を増やすためにどんなことを意識していますか?

 

坂田:会社の中で自分が閲覧可能なデータは全て見るようにしています。DeNAが運用している全サービスがどれくらいの数字を叩き出しているのか、どんな施策をやっているのかを。

 

――膨大なインプット量ですね……。

 

坂田:情報を深く多く取り入れた上で、自分なりの解釈や意味付けを持つこと。それが、ひいては目線が上がることに結びつくと考えています。

 

インプットの“解像度”を上げる

坂田:あとこれは僕の持論なんですが、インプットの“解像度”を上げることも重要です。実は、情報を入れること自体は多くの人がやっていると思うんです。

 

なぜなら、SNSのタイムラインを見ると山ほど情報が流れていますし、街を歩けば無数の広告があり無数の人がいて、それぞれ髪型も服装も違っています。情報の量という意味だと、本当は自分の身近にたくさん転がっているんです。

 

でも、それら全ての意味を解釈しながらインプットするのはすごく疲れるので、多くの人は漠然と眺めてしまうんですよ。その1つひとつの意味を考えながら見ることを、僕は普段から心がけています。

 

例えば駅に広告が貼られていたら「こういうクリエイティブや文字色、写真を使っているのはどうしてだろう」と考えますし、コンビニに行っても「棚に陳列されている商品は、どうしてこの順番になっているんだろう」と考えるんです。

 

――頭の中でずっと分析しているんですね。

 

坂田:企画の種って、世の中に溢れているんです。五感がある限り、いろんな情報が入ってきますから。それを上手に解釈して自分なりのストックにすることが重要だと思います。

 

他業界でやっていることを、ゲーム業界に取り入れる

ーー他に、良質な企画を出すために意識していることはありますか?

 

坂田:アイデアのほとんどって、すでに世の中に出ています。だから、斬新なアイデアを出すことよりも、斬新な組み合わせを生み出すことの方が大事です。そのために心がけていることは、全く違う業界からアイデアを得ることですね。

 

他のゲームがやっていた施策を自社のゲームで実施しても、どうしても既視感が出てしまいます。でも、他業界では当たり前のことでもゲーム業界であまり試みられていないことって、斬新な施策になりやすいんです。

 

例えば先日、日本マクドナルド株式会社とのコラボ企画(※)を実施しました。これは『逆転オセロニア』をマクドナルドの店舗で遊ぶとゲーム上とても有利になり、かつゲームプレイヤーはミッションをクリアすると店舗で使える無料のクーポン券が手に入る、というものです。

 

※本キャンペーンはすでに終了しています。

 

飲食業界ではO2O(Online to Offline:インターネットなどのオンラインから店舗などのオフラインへお客さまを呼び込むこと)的な施策は当たり前のものになっています。でも、ゲーム業界ではリアル店舗との連動企画は比較的珍しい。

 

だからその切り口を持った企画をゲーム業界で実施すれば、目新しさがあると考えました。しかも、日本マクドナルド株式会社は全国に約2900店舗もある人気チェーンですし、インパクトが大きいです。

 

花束が欲しいと言う人に、花束“以上”の価値を届ける

坂田:あとこれは僕がチームメンバーに言っていることなんですが「お客さまが○○を求めているから○○をやります」という考え方は、企画職に就いている人は極力してはいけません。

 

なぜかというと、それは女性から「誕生日プレゼントに花束が欲しい」と言われた時に花束を渡すような行動だからです。

 

相手が本質的に求めているものは「花束そのもの」ではなくて、もしかしたら気持ちが伝わるような渡し方とか、場所やシチュエーションなのかもしれません。もしかしたらプロポーズをして欲しいと思っている可能性だってあります。

 

何が言いたいかというと、企画職ってお客さまから「○○が欲しいです」と言われたときに「○○をあげます」と返答する仕事ではないんです。「何で欲しいのか」「どういうシチュエーションで欲しいのか」まで考えて、相手が本当に喜んでくれるソリューションを提供するのが企画職の役割だと思います。

 

ーー坂田さんがそれほど企画のことを真剣に考え、“フルスイング”できるのはどうしてなんでしょうか?

 

坂田:今こうして『逆転オセロニア』に携わらせていただいていることに、すごく感謝しているからです。

 

ソーシャルゲームは数え切れないほどのタイトルが生まれては消えていくので、1年続くのすら相当珍しい。そんな中、2年以上も愛されるタイトルが作れているのは本当にありがたいことです。

 

大前提としてお客さまの支持があるからこそ成り立つものですし、会社からゲームタイトルを維持できるだけのリソースを配分してもらえるからこそ制作を続けられます。それは当たり前のことではないですし、今後もそうできるように努力し続けなければいけません。

 

ーー『逆転オセロニア』に対する愛があるんですね。

 

坂田:『逆転オセロニア』はインターン時代からずっと携わっているタイトルですし、リリース後しばらく成長が伸び悩んだ時期もあったので、余計に「ここまで続けてこられて良かった」と思いますね。

 

それに関連した話をすると、2周年を記念してオセロニアンの祭典というイベントを開催したんですが、最後にプロダクトのアップデート情報を流したんです。『逆転オセロニア』はここで終わりじゃないよ、今後も面白くなっていくよ、とオセロニアン(オセロニアを楽しんでくださる方々)みんなに伝えたいと思って。

 

 

情報を出したとき、それを見ていたお客さまたちが本当に感動してくださっていて、かつステージ上にいる演者の方々までも泣きそうになっていたんですよ。それを見たときに、企画冥利に尽きるというか、自分が予想していた期待感を越えるものを提供できたという実感がありました。  

 

自分たちの考えた企画によって、目に見えるような形で誰かが喜んでくれる。それは本当に嬉しいことですし、僕の原動力になっています。

 

 

まとめ

坂田さんの企画の極意

①因数分解した要素を組み合わせ、アウトプットを生む

②局所最適が必ずしも正解ではない

③目線を上げるには、情報の量と種類を増やす

④インプットの“解像度”を上げる

⑤他業界でやっていることを、ゲーム業界に取り入れる

⑥花束が欲しいと言う人に、花束“以上”の価値を届ける

 

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執筆:中薗昴 編集:下島夏蓮 撮影:鈴木香那枝