DeNAには、社員が自身の可能性を拡げるチャンスを掴み、その挑戦を後押しする風土があります。
2017年に制度化した2つの人事制度、「シェイクハンズ」は異動先の合意を得れば所属部署の上長を通さずに異動でき、「クロスジョブ」は他部署の仕事を兼務することができる制度です。2020年には社内の人材ニーズを見える化した社員専用ジョブボード『OpenQuest』も立ち上がり、自分らしいキャリアを描けるよう支援しています。
新しい部署で新たな挑戦をしているメンバーたちは、どのような経緯をたどり、何処を目指すのか。そこに、制度はうまく機能するのかーー。
実際に制度を利用した3人が、座談会で本音を聞かせてくれました。
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シェイクハンズとクロスジョブ、制度利用後の3人の現在
伊藤 菜奈(以下、伊藤):まずは自己紹介を。私はシェイクハンズ制度を使ってヘルスケア事業部から子会社の『IRIAM』に異動し、プロダクト開発チームとイベントチームを兼任しています。プロダクトマネージャー的な業務とイベントの企画・運用をする業務で割合は半々。業務を効率化するためのシステムを作る左脳っぽい仕事が半分、楽しいイベントを作る右脳っぽい仕事が半分という感じです。
山崎 悠人(以下、山崎):私は現在ソリューション事業本部のeスポーツ部(※1)に所属しています。前は法務コーポレート本部コーポレート企画部と取締役会室に約4年所属し、全社的なコーポレート業務を担当していました。
クロスジョブを利用して1年間eスポーツ部と兼務した後、シェイクハンズで完全に異動。今はeスポーツ大会・イベントの制作運営のディレクターとして案件を推進しています。コーポレート部門での経験も活かし、各メンバーが最大限に力を発揮するための、部署の管理体制強化にも取り組んでいます。
桜井 悠子(以下、桜井):私は横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)の広報グループで、公式YouTubeチャンネルの運用業務をしています。YouTubeの媒体を活用して、既存ファンや新規ファンにベイスターズの魅力を伝える役割です。
以前はマーケティング統括部マーケティングサービス部(※2)に所属していましたが、クロスジョブを利用してベイスターズに兼務、出向しました。業務割合は最初は3割で開始して、クロスジョブの期限の3ヶ月が経ったところで半々、最近は完全に主務に切り替えています。
伊藤:山崎さんにはコーポレートのときに何度かお世話になっていて、お名前もよく拝見していたので、今はeスポーツ部に在籍していると聞いて驚きました。
※1……eスポーツ。DeNAのeスポーツ事業の取り組みに関するフルスイングの記事はこちら。
※2……マーケティング統括部マーケティングサービス部。桜井が取材を受けたnote記事『【ファンフルエンサー】DeNAの考える新たなインフルエンサーマーケティング』はこちら(前編・後編)。
山崎:確かにコーポレートからeスポーツというギャップはあるかもしれませんが、eスポーツ部のマネージャーからは驚かれることもなく、温かく受け入れていただけました。
桜井:私の周りにクロスジョブやシェイクハンズを利用して、まったく違う仕事に就いた人はいないので、今日お二人と話ができるのを楽しみに来ました。
伊藤:もともとDeNAは、エンタメから社会課題解決まで事業ドメインが幅広く、通常の異動でもまったく毛色の違う部署に行くことは珍しくないと思いますが、制度を使うことで自分からそういう道を選べますよね。
山崎:エンタメと社会課題解決の両輪で事業展開をするとき、ゲーム事業の人材がその経験を活かして、楽しみながら社会課題を解決するプロダクトを作る。“人の循環によるシナジーの発揮”を会社として打ち出していますよね。
部署異動という手段で、新たな挑戦をする理由
伊藤:私は入社してから5年間、ずっとヘルスケアで社会課題解決に挑戦していました。携わった事業は全てBtoBtoCだったのですが、ヘルスケアでのさまざまな経験を通して、toCをやってみたいという想いが強くなり、それを今『IRIAM』で実現できています。ユーザーととことん向き合う事業を経験したかったので。
桜井:伊藤さんと同じです。私もやりたかったことを、今、実現させてもらっています。本社でYouTubeマーケティングやインフルエンサーマーケティングの領域を専門に、ゲーム事業を中心に事業横断的に携わってきました。その自分のやりたい領域は変えずに、ずっと関わりたいと考えていたベイスターズに舞台を移しました。
山崎:前職もコーポレート系の仕事でしたが、私はもともとゲームが好きでDeNAに入社したら、いつかはゲームに関係する何かしらの仕事がしたいと漠然と思っていました。
全社的な業務をしていたので、事業の情報を得るために社員専用ジョブボード『OpenQuest(※)』を見ていたところ、偶然eスポーツ部の募集を見つけたんです。それが入社2年目を過ぎたくらいのタイミングです。
※……OpenQuest(オープンクエスト)。DeNA社内専用のジョブボード(求職サイト)。OpenQuest運営チームへのインタビュー記事はこちら。
コーポレートの仕事は自分に向いているし、やりがいもある。けれど事業の現場での経験も積んだ方が、より事業目線でコーポレート業務に向き合うことができる。ゲームに関係する仕事もしてみたいと想う気持ちもあり、試してみようとクロスジョブから始めました。
桜井:私も前職からずっとマーケティングの仕事に就いています。DeNAに入社したときからいつかベイスターズに関わりたいという想いはありましたが、勝手に狭き門だと思い込んでいたんです。入社して5年が経ち、マーケティング領域でさまざまな経験を積めたと感じたタイミングで、30歳の節目を迎えたこともあり、新たな挑戦がしたくなりました。
転職も考えましたが、私がまだやり残していることがDeNAにあるかもしれないと思ったときに『OpenQuest』の存在を思い出しました。久しぶりに見てみると、ベイスターズでもマーケティング領域の求人が出ていたので、もしかしたらチャンスがあると思って。
伊藤:私もヘルスケアでやり切った感覚が強く、次の挑戦を求めて、転職も視野に社内外をフラットに見ていたんです。ありがたいことに、私が外の機会を探しているという噂を聞きつけたのか、『IRIAM』の代表取締役 増田 真也(ますだ しんや)さんから「外の機会と比べてもかなりおもしろい事業だから、一度話を聞いてみて」とお話をいただけて。
それまで、バーチャルライブ配信サービスである『IRIAM』への異動を考えたことはなかったのですが、中の人に話を聞いてみたら「おもしろそうだな」とわくわくして。私はどうなるか想像できない方がおもしろいと思うタイプなので、シェイクハンズで飛び込んでみました。
事業領域の広さゆえ、カルチャーギャップの捉え方
山崎:制度の利用は『OpenQuest』で募集ポジションを確認して、「話を聞きに行きたい」ボタンを押すことから始まりました。
早速連絡が来てeスポーツ部のマネージャーやメンバーと話してみた上で、当時の所属部署の上長に相談しました。驚きもありましたが、話し合いを重ねて最終的には後押しをしていただいて、挑戦者を応援するカルチャーが浸透していることを改めて実感しました。
制度を利用した異動はスムーズだったのか、お二人の経験も気になります。
伊藤:ヘルスケアで異動直前は、マーケティング業務を担当していて、半年ほど前から次の挑戦ではプロダクトをやりたいという気持ちを上長に伝えていました。異動のタイミングは相談を重ねて、決定に対しては背中を押してくれる感じは結構強かったですね。シェイクハンズではありますが、引き継ぎなどもあるので2カ月のクロスジョブを経て、完全に異動しました。
桜井:私はお二人とは違って、現在ベイスターズでの所属部署の本部長へ直談判しました(笑)。面談という名のプレゼンの時間を設けていただいて、自分がベイスターズでどんなバリューを発揮できるか、どんな事業貢献ができるかを話した感じです。その熱意を汲み取っていただいた結果、ベイスターズへクロスジョブとして出向することになりました。
当時の私は、どんな形であれ出向したいと考えていたので、クロスジョブを利用することに躊躇はなかったです。クロスジョブは試用期間に近く、万が一カルチャーフィットしないなどの可能性を考えると、おすすめしやすい制度かなと。
伊藤:DeNAは今本当にたくさんの事業ドメインがあるので、カルチャーの違いは少なからずありますよね。
桜井:たとえば、ベイスターズは基本対面でのコミュニケーションを大切にしているので、リモートよりも出社する人が多いですね。自分からアジャストしていくところで、はじめは苦労がありましたがだいぶ慣れてきました。自分の新たな挑戦を受け入れていただいた恩があるので事業貢献という形で返すまで頑張らないと。
山崎:カルチャーや考え方の違いは感じました。全社コーポレート業務は会社の最後の砦として、制度やルールを現実の現象に当てはめ慎重に判断していく業務が多いです。一方、事業部ではメンバーが自分の強みを活かして、やりたいことを企画してどうやって実現するかを柔軟に考えていく。先ほど伊藤さんが言ったような左脳的と右脳的の違いはありますよね。
マインドセットの変化が必要で、自分は左脳派の人間と思っているので、どうしたら右脳的に柔軟に考えられるのかは今も課題です。とはいえ、DeNAの一員として部署が異なっても「DeNA Quality」という共通価値観が浸透しているので“「こと」に向かえる”心理的安全性はカバーされていると感じます。
伊藤:カルチャーの話で言うと『IRIAM』は、それこそ別の会社に転職したと感じるレベルでDeNAとはかなり違います。
ヘルスケアでは中長期の経営計画や事業計画から逆算してどういう戦略を敷くべきかという考え方をずっとしてきましたが、『IRIAM』では「売上を見ない」という話をされて驚きました。もちろん売上をまったく見ないということではなく、「売上ではなくまずユーザー・コミュニティを見よう」というメッセージだと理解しています。
『IRIAM』はコミュニティファーストをとても大事にしていて「売上が出るからこれをしましょう」と言う人は誰もいません。toCをやりたかった私にとって、すごく学びになっていますし、「私がやりたかったことはこれだな」と日々感じています。
シェイクハンズ・クロスジョブを成功させるために
伊藤:私は異動して後悔するのが一番嫌だと思い、しっかり事前の情報収集をしました。疑問や不安がなくなるまでお話を伺わせてもらって、『IRIAM』に異動しても後悔しないだろうと確信できた瞬間に「行きます」と返事ができました。
桜井:私も事前の情報収集、特にすでに本社からベイスターズに出向している人へのヒアリングに時間をかけましたね。出向を決める前にきちんと解像度を上げる作業はすごく大事だったなと思います。
山崎:振り返ると、熱意と中長期的なキャリア感を持つことが大事かなと。
シェイクハンズの相談をしたときも、元の部署の上長や本部長から、異動したい理由や中長期的なキャリア感、コーポレート業務への関心などについて深く聞かれました。コーポレート領域は自分の強みでもあるので、将来的には事業部での経験を活かして、両方を行き来できるキャリアを目指していると熱量をもって伝えたんです。
伊藤:最初はキャリアのことを考えて、『IRIAM』でどういう経験を積むのがいいか考えていましたが、ジョインした結果すごくハマって。事業に対して情熱を持てる状態になり、今はキャリアから逆算した経験は考えず、とにかく事業を伸ばすことに集中したいと思うようになりました。不確定な未来のほうがおもしろいし、むしろキャリアにとっても伸び代があるのではないかと。
桜井:とにかく今はベイスターズに今自分ができる精一杯のことをやって恩を返すことが先決。ただ、軸としてマーケターとしてのレベルや経験値を上げていきたい想いは強くあります。
マーケティング領域の中でも様々な役割や手法があり、たとえば、広告運用、広報、ブランディングなど。自分の適性にも合って一番やりがいを感じる今の担当領域をやりながら、他のマーケティング領域も積極的に経験し、スキルバッジを増やしていきたいです。
伊藤:異動した部署でバリューを発揮することが、私を受け入れてくれた『IRIAM』にも、送り出してくれたヘルスケアにも、報いることができると思っていて、それも1つのモチベーションになっていますね。
山崎:クロスジョブでの兼務がすごく大変なときもありました(笑)。どちらの部署からも「今これをしてほしい」と言われたときにどうするか。自分のキャパシティの中で、それぞれの上長との調整も含めて、仕事をマネジメントする力もクロスジョブを通して身に付いたように感じますね。
桜井:タイムマネジメントについては、カレンダーで時間を区切ってそれに忠実に動いていました。ある日は渋谷から横浜、横浜から横須賀へ梯子するときもありましたね(笑)。
山崎:桜井さんがマーケティング領域の中にもいろいろあると話したように、コーポレートの中にもいろいろな領域の業務があり、その中には私がこれから学んでみたい領域もあります。とはいえ、まずは事業部で一人前になることが目の前の目標です。
また、事業としてDeNAのeスポーツへの取組みの認知もこれからです。伊藤さんが『IRIAM』に情熱をもって向き合っているように、私もeスポーツの領域で、事業を伸ばすために情熱を持って取り組む。結果として成果を上げることで、自分のキャリアの選択肢も拡がっていくと考えています。
キャリア支援の使い方、描くキャリアは人それぞれ
伊藤:私は新卒採用に関わることもあり、学生さんからよく「DeNAでこの事業に携わることができますか?」といった質問をもらいます。事業が多いので、最初の配属で必ずしも希望が叶うとは限らないけれど、シェイクハンズという制度があるという説明はよくしていますね。
山崎:入社面談のときに、HRの方から制度の紹介と、入社後に幅広いキャリアを描けるという話を長時間、熱量高くしてくださって、その言葉に嘘はなさそうだと(笑)。それがDeNAに転職する後押しになりました。
伊藤:私は事業ドメインが多種多様なことがDeNAの魅力だと思っていて。社会課題解決からエンタメまで幅広く事業があって、転職しなくても新たな挑戦の機会を社内で見つけることができるし、お二人の話に『OpenQuest』を通じて、今までは埋もれていた機会を知れたとあったように、機会を可視化して制度化していることは、すごくポジティブだと思います。
山崎:『OpenQuest』はキャリアチャレンジを促す仕組みとしてすごくいいですよね。ジョブ募集を眺めるだけで、今社内でどんな事業が進められているのか、どんな人材が求められているのかわかるし、募集している事業部の熱量も伝わってきて勉強になるし楽しいです。プロダクトとしてのUXも優れていて、まさにDeNAの強みが発揮された仕組みだと思います。
桜井:私の経験からあえて課題を言うとすれば、すごくいい制度がそろっているからこそ、各制度の存在や特徴が社内外でさらに広く認知されると、よりDeNAメンバーの活躍の機会が広がるのかなと思います。その意味で今日こうやって実際に制度を利用したメンバーが実体験を通して発信できるのはいい機会ですね。
伊藤:DeNAに新卒入社してから初めての異動で、環境を変えて新しい挑戦をすることは、非常に勇気がいることだとわかりました。それを転職という形でするのか、会社の制度を使って後押しを得てするのかと言えば、後者のほうが挑戦のハードルは下がりますし、ことも進みやすいと思います。
山崎:最近は人手不足や優秀人材確保の観点から、人事制度改革を行う会社も増えていますが、制度理解が浸透せず形骸化してしまうこともあるかもしれません。一方DeNAのように制度の意義や挑戦者を応援する考え方がマネージャー層にも本音で浸透し、キャリアチャレンジを心の底から後押ししてくれる、そんな会社は多くないと思います。
起業支援についてはどう思いますか?
伊藤:起業は目的ではなく手段だと思うので、現状は利用を考えたことはないですね。独立支援制度もシェイクハンズの延長線上にあると思っていて、会社の枠を飛び越えて挑戦できる制度を用意しているのはすごく魅力的だと感じます。
起業したいというマインドを持つ人は多いし、南場さんがよく言われている“DeNAギャラクシー”は会社の枠組みに囚われない、今の時代に合った考え方だと思います。
山崎:私も成果を出して会社に貢献することを通じて、自分のやりたいことができるようになると思っています。今のところ起業は考えていませんが、卒業生をつなぐ試み『DeNA ALUMNI』も進んでいて、送り出すだけでなく、関係性を保ちながら支援できるのはいいですね。
桜井:私も特に現状で起業は考えていないですが、やはり社内で起業の選択肢があるというのは魅力的ですね。
DeNAにはそういったキャリアの挑戦を支援する会社としての風土があって、本当にさまざまな活躍の機会が用意されています。今後入社される方々にもうまく利用してもらいたいですね。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。
執筆:さとう ともこ 編集:若林 あや 撮影:小堀 将生