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DeNAメンター育成制度に革命を。“永遠のベータ版”としてプログラム化、日本最強を目指す

2022.11.25

入社年の近い先輩社員が新人を指導・サポートするメンター制度。新人教育のスタンダードとして、広く採用されていますが、DeNAはこの制度を大きく改革。それが『メンター育成プログラム』です。

属人化されがちなうえ、ブラックボックスになりがちなメンターとメンティーの関係を見直すために有志での活動を開始。世の中にありふれた育成ロジックを、誰しも実践的に活用できるよう体系化、仕組み化させました。

一体、どんなプログラムなのでしょうかーー。

プログラムの立ち上げから運営に携わる3人は「いわば暗黙知の最たるメンター制度を、形式知化してノウハウにしたもの」と言います。

今回DeNA卒業生であり起業家。またこのプログラムの第一発案者でもある坂井 風太(さかい ふうた)を交え、プログラムを基に新卒育成を担う小川 篤史(おがわ あつし)、平子 裕貴(ひらこ ゆうき)に、その実態を聞いてみました。

「コーチングコミュニティ」発足

――みなさんの自己紹介と『メンター育成プログラム』とのかかわりについて教えてください。

平子 裕貴(以下、平子):私の主務は技術統括部エンジニアリング室で、エンジニアが働きやすく、成果を出しやすい環境づくりを目的として横断的に事業に関わっています。そのなかでも主にエンジニアの配属や育成、配置転換に携わっています。

 平子 裕喜
▲技術統括部Engineering Office 兼 ヒューマンリソース本部人材企画統括部  平子 裕喜(ひらこ ゆうき)
2013年DeNA新卒入社。ゲーム、オートモーティブ領域でエンジニアリングマネジメントを経験後、2018年にヒューマンリソース本部へ異動。振り返ったときに充実していたな、楽しかったなという組織をつくりたいという想いのもと、エンジニアの経験を活かし、新卒育成・マネージャー強化施策・コミュニティづくりを推進。現在はその領域を展開すべく地域活性化起業人としても挑戦中。

2018年からエンジニア新卒採用にもジョインするようになり、エンジニアにとってもメンターがすごく大事だと実感していました。2019年ごろからは新卒育成も手がけるようになってからは特に育成に課題を感じていて。しかし、なかなか思うように進まないという悩みをもっていました。

平子を紹介したフルスイングの過去記事はこちら(1/2/3)。

小川 篤史(以下、小川):私は現在HR本部に所属していて新卒採用・育成を推進しています。そうするなか3年ほど前から、どうやって新卒生の育成をしていくのかを思案していて、結果メンターを介した新卒育成のアプローチをやっていくことになったんです。

 小川 篤史
▲ ヒューマンリソース本部人材企画統括部 新卒部部長 小川 篤史(おがわ あつし)
2016年DeNAに新卒入社。ブラウザゲームのプランナーとしてキャリアをスタート。その後リードプランナーやDeNA Games Tokyoにてプロデューサーを経験。2022年にヒューマンリソース本部 新卒部部長に就任し、新卒採用チームを牽引。新入社員研修のマネージャーも担う。

後の坂井さんが『メンター育成プログラム』の詳細をつくり、私は「DeNA」という会社がどういう「人」へ育てていきたいのか、またそれを採用候補者まで落とし込んだときに齟齬がないよう議論を重ねました。

新卒部で新たなプロジェクトとしてYouTube施策を始めたばかりなのですが、今回お話するテーマである、人材育成についての回の再生回数も多く、世間的に注目度が高いと感じています。

小川を紹介したフルスイング過去記事はこちら(1/2/3)。

▲2022年8月からスタートした新卒部によるYouTubeチャンネル『事業家のDNA〜事業家を目指すあなたへ〜』。

坂井 風太(以下、坂井):私はDeNAとデライトベンチャーズから出資を受け、今年の8月にこの人材育成領域で独立をしました。DeNAにはインターン含め約8年の在籍を経て、卒業した今もDeNAの人材育成に深くコミットしています(※)。

※……坂井がDeNAでの経験を振り返ったフルスイング記事はこちら

 坂井 風太
▲ 株式会社Momentor 代表取締役 坂井 風太(さかい ふうた)
2014年新規事業部でのインターンを経て、2015年DeNAに新卒入社。DeNAトラベル(現エアトリ)に配属後、2016年にゲーム事業部へ異動。有名IPタイトルのモチーフ選定職、新規機能開発リーダーを経て、2017年に小説投稿サービス『エブリスタ』に異動。サービス責任者、組織マネジメント、事業統括を担当。2019年に株式会社エブリスタならびにDEF STUDIOS株式会社の取締役に就任。2020年に株式会社エブリスタ代表取締役社長後、経営改革とM&Aなどの業務を経験。2022年8月DeNAとデライトベンチャーズから出資を受け、人材育成領域にて起業。現在も業務委託社員としてDeNAの人材育成に関わる。

――メンター制度を見直す機運はどのように出てきたものなのでしょうか?

坂井:理由を一言でいうと、正直なところDeNAが採用ほどには「人材育成」が強くないことに課題感を抱いていたためです。

優れた人材が揃っているがゆえに、どこかで「人は仕事だけで育つもの」との意識が強く、根付きすぎていた。「育つ人は勝手に育つものだ」だったり「育たない人はダメなのでは?」だったり、という思い込みがあったんですよね。

――『メンター育成プログラム』はどのようにつくり上げたのですか。

平子 :有志のメンバーで、まずは「コーチングコミュニティ」を立ち上げることから始めました。新入社員の育成に関して、“マネジメント層の意識にチャンスがあるのでは?”と感じていそうなメンバーに声がけをしていったのです。そして、一旦はコーチングの考え方をブラッシュアップしようと、毎週朝9時半から朝会を開催しました。朝会ではお互いの状況を開示したり、おすすめの本の読書会をしたり。

実際にメンターがメンティーと面談している場にも定期的に出向いて、情報収集もしていました。

――どのような情報を集めたのでしょうか?

小川 :所属部署や上長が変わったタイミングで伸びた人がいる一方で、伸び悩んでいた人もいました。

定量的なデータをもとにヒアリング対象にあてをつけた上で、具体的にどんな時期に、どんな声がけをしていたかを定性的に調査していったのです。

・嫌な思いをしたり、うれしいと感じたりしたのはどんなときか。
・今振り返ってみたときに、よかったと思うのはどんなことなのか。

などと自分の育成環境を俯瞰して捉えてもらう調査を徹底的にすることで、確信に変わっていきました。

人材育成の領域は、俯瞰して捉えなければ生存者バイアスが働きやすい領域です。丁寧にヒアリングを進めました。

「配属ガチャ」より「上司ガチャ」問題

坂井 風太,小川 篤史

――DeNAに限らず、人材育成に課題のある企業はかなり多い気がします。

坂井:そうですね。今私はDeNAのみならず、多くの企業の人材開発や組織開発のコンサルを手がけていますが、同じような課題を抱えている企業は実に多いと体感しています。

このような思い込みに至りがちな理由は2つあると思っていて、1つは創業メンバーが“無自覚になりやすい”ことです。市場や事業と一緒に成長してきているから、自分で道を切り開いてきた感覚が強すぎる。だから「人は勝手に育つ」が、当たり前だと思っている傾向にあるのではないかと。

人が成長することにおいて、実際はメンターに限らずに、身近な周囲の先輩や仲間による影響も極めて大きい。ずっと市場と向き合っているからこそ、人から受けた影響は忘れがちになると思います。

2つ目は、そもそも人は“自分の成長に対する無自覚”があります。どんなときに自分自身が停滞していたのか、どんなときに成長できたのかを俯瞰して考える機会がほとんどないんです。だからつい先鋭的な思想に染まってしまいやすい。

「放置される方が伸びる」とか、逆に「厳しい指導をした方が伸びる」などの極端な育成論ケースに振れやすいですね。

かくいう自分も陥っているかもしれない。常に本当にこの育成方法は正しいのか?時代によって変わっていくのではないか?と考え、学習を続けるようにしています。

――メンターや周囲の先輩の影響は、新卒育成の成長速度に大きな違いがある、と。

坂井:そのとおりです。この思い込みを脱しないと、企業が成長するうえでの大きな足かせにすらなり得ます。

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▲2022年時点のDeNA新卒育成に関する資料の一部①。

私は同期の新卒生を対象に、数年後あきらかにハイパフォーマーとローパフォーマーの差が出るのはなぜなのかを分析しました。すると、おもしろいほど「人」によって変わっていたんです。

それは部署を異動した瞬間に伸びたり、落ちたりする人がもちろん多かった。しかし、よく目を凝らしてみると「マネージャーや先輩が変更した瞬間」をターニングポイントとして、パフォーマンスが変わる人が極めて多かったんですよ。

――普段接している上長との関係性、コミュニケーションがパフォーマンスを左右するわけですね。

坂井:世間一般では「配属ガチャ」という言葉もありますけど、「上司ガチャ」の方が大きい。そう感じています。

「自分は何もできないダメな人間だな……」と思わせるのも、「自分はまだまだ成長できそうな気がする!」と思わせるのも、周囲の人次第です。だから、普段接している人のコミュニケーションを変えることが重要だということに帰着したのです。

――難しいのは、メンターとメンティーのような関係は、意識しないととても見えづらい。それでいて属人化されて、自己流で行われていることが多いことですよね。

坂井:さらに問題は、その属人化したメンタリングを受けたメンティーが、今度は次のメンターとして、悪しきメンタリングを再生産する恐れがあることです。だからこそ、思い切って手をつける必要がありました。「悪貨は良貨を駆逐する」と言いますが、この状況を放っておくと、組織のマネジメントのキャパシティーが不可逆的に狭小化していく恐れがあります。

属人的なうえ、暗黙知化しているメンターのノウハウを、形式知化して磨き上げていく必要を、強く感じた。DeNAが課題感を持っていた「人材育成」に本格的に取り組むことになった経緯ですね。

徹底的なデータ分析とインタビューの積み重ねで体系化

坂井 風太,小川 篤史,平子 裕喜

――やはり、人の成長は、人による影響が大きいと。

坂井:いいメンターは、適切なコミュニケーションをとっていますね。けれども、その手法は共有知になっていない。センスのよい人が一人いても、その人が離脱したら組織がガラッと悪化してしまうリスクもあります。だからこそ、本来あるべき育成方法を体系化すべきだと思いました。

――データ分析にインタビューなど、ものすごく工数をかけたのですね。

坂井:これまで人材育成の基盤構築に工数をほとんどかけていなかったことのほうが問題だったと思います。「優秀な人を採用すれば勝手に活躍する」というほど、人間や組織は単純なものではないかなと。マネージャーがメンバーのカウンセリングに工数の3~4割も割いてしまう例もありました。

「人材育成」というと、なんだか事業に向かっていないような印象を持たれることもありますが、むしろ“純粋に事業へ向かう時間を増やすための武器が人材育成”だと考えています。だからこそ工数を割いてでも、人に関する問題をできるだけ取り除きたかった。最初に時間と手間をかけてでも体系化した方がいいと考えたのです。

自分自身の経験を踏まえても、ほかのメンバーに手早く仕事を任せられるような体制にすることで、事業成長につながる一手を打てるようになったと感じています。

理論と実践を積み上げ、サーベイを取得。“共通言語化”に落とし込む

――具体的にプログラムの内容を教えてください。

坂井:特徴としては、メンタリングに関する「理論基盤」と「実践方法」をセットとして、ノウハウとしての積み上げであること。そして「サーベイをとっていること」ですね。

土台となっているのがまず理論基盤。いわゆるスタンダードな人材育成理論をピックアップして、“共通言語化”できるようにナレッジを共有しています。

▲2022年時点のDeNA新卒育成に関する資料の一部②。

小川:「オーセンティックリーダーシップ論(※1)」「認知行動療法理論(※2)」「リアリティショック理論(※3)」……などといった本当に基礎的な人材育成の知識です。

小川 篤史

後に新卒1年目のメンティー全員も参加している、「メンターコミュニティ」もつくりました。そこでは育成と情報収集の場として、たとえばメンターに対して理論基盤を深く理解しているファシリテーターを置き、起こっている問題やうまくいったノウハウを共有するなどの運用を続けています。

メンターの誰しもがこのベースを理解し、“武器”として持ってもらえるようオープンな環境です。

2022年時点のDeNA新卒育成に関する資料の一部③
▲2022年時点のDeNA新卒育成に関する資料の一部③。

※1……オーセンティックリーダーシップ(Authentic Leadership)。ハーバードビジネススクール教授、ウィリアム・W・ジョージ(William W. George)氏が唱えた、倫理観や自分らしい信念、行動に根ざしたリーダーシップを発揮するという概念。 ※2……認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)。人が感じる感覚である「認知」に働きかけ、自身の思考を客観視して心理的ストレス反応を軽減させる心理療法の一種。 ※3……リアリティショック(Reality Shock)。組織心理学者E.C.ヒューズ氏が提唱した概念で、 高い期待と現実との間に生まれるギャップから引き起こされる衝撃のこと。

――確かに”共通言語化”までされていないケースがほとんどですよね。意識の高いメンターは、個人的に知見を得ているだけであったり。

平子:私たちもコーチングコミュニティのときからみんなで学術書をたくさん読みましたが、分かったようで分からない(笑)。腹落ちしないと実践に使えないというケースも多いと思うのです。

坂井:現場よりもHRの方が課題意識をもち、ガリ勉で学び、理論を伝えるけれど、事業部側は「また理想論だけ言って……」「何だよティール組織って……」「リアリティショック?知らないな」と、まったく腑に落ちていないといったようなシーンもよく見られる。

ほかにも、組織サーベイを取り入れて「このスコアが低いです!」と言われても、原因が判断しづらく、「結局どうすればいいの?」とアクションにつながらないまま終わってしまうんですよね。

平子:たとえば新しく組織に入った社員で、理想と現実のギャップが引き金となる「リアリティショック」に陥ったとします。

「リアリティショック」という言葉が“共通言語化”できていれば、「最近うちのメンティーが、リアリティショックを受けていて」と、言われたときに「それは、能力の高い先輩と自分を比べてしまうことで、自分は何もできない人間だ……と思い込んでしまうロールモデルストレスで潰れかかっているのでは?」という対話ができるようになる。

そのような対話が生まれることで、きちんとした状況判断と対応が可能になるんです。

――そして現場としては、具体的な対応方法が知りたいと。

小川:だからそれぞれの状況に対して、ベストプラクティスの収集をして、実践方法を蓄積しています。

さらに「サーベイ」を続け、必ず状況と紐づけた、アクショナブルなノウハウを積み上げている。たとえば「リアリティショックに引っかかっているし、仕事の意義を自ら見い出せていないから、ジョブクラフティングしよう」という対処法までを提案することができます。

もっとも、このプログラムの真に意義あるところは、“永遠にアップデート”されるところです。

――“永遠にアップデートされる”、とは?

坂井:メンターコミュニティは、メンタリングの解決につながるナレッジを展開する場であるとともに、蓄積されることで、常に新しいケース、対応法が更新されていくわけです。

人材育成における理論基盤をしっかり身につけたとしても、対人やケースによって当てはまり方は違う。少しずつカスタマイズする必要があるし、多様性が求められている現代はなおさらです。とくに今は、コロナ禍入社の新入社員の育成に直面していますが、時代と共に変わるはずです。たとえば、起業願望の強い人に対する育成方法のノウハウが必要な時代がくるかもしれない。

しかし我々は現場のうまくいったノウハウも、いかなかったテクニックも、情報収集する仕組みを整えたからこそ、暗黙知を形式知化できます。更新する前提だからこそのプログラムですね。

――プログラム自身が問題解決もできるし、新たな問題も発見できると。

平子:まず共通言語化したことによって、世の中の最先端の育成に関する悩みはすべて収集できるようになっています。

平子 裕喜

DeNAが、「とにかくチャレンジだ!」と士気高揚していた2019年に、「セキュアベース理論(※)」を採り入れました。

それまで挑戦と安全がスイッチのように考えられていたのが、セキュアベース理論のおかげで、“挑戦と安全はシーソーの用にバランスをとるもの”というパラダイムに変わったのです。よく安全性を意識するとそれだけになってしまいますが、安全を高めたのであれば、よりチャレンジできるよね、という会話ができるようになった。

概念やフレームワークだけではなく、本当に使える武器を皆でつくり続けている感じですね。

※……セキュアベース(Secure Base)。心の不安感を緩和する安心・安全感を与える存在や居場所のこと。

小川:理論基盤があるからこそ、武器もアップデートできていると思います。

何か問題が起きたときに、理論基盤があることで、どの順番で問いを立てるかといった整理をすることができる。これがないと「適性が違うのでは?」とか、「会社の文化と合っていないのでは?」などと”個人の感覚”に寄ってしまい、議論が散らかりやすい。

理論基盤があれば、その関係者が「まずはリアリティーショックの可能性を考えてみよう」「リアリティーショックではないとしたら次は……」というように、“どうしたらもっと人が活きるのか”という視点で問いがピン留めされます。

そしてその問いに基づき対処を試行錯誤する中で、新たな武器・実践知が生まれます。場合によっては理論基盤がアップデートされるような発見にもつながるんです。

――ロジックを組み立て体系化する。とてもDeNAらしいですね。

坂井:私たちはこの『メンター育成プログラム』を“永遠のベータ版”だと言っています。決して完成されたプログラムではない。だからこそ、いつの時代にも対応できるものになっている。

DeNAは「再現性」が大好きなカルチャーなんですよ。しかし、我々は“永遠のベータ版”だと思ってやっているので、再現性のある理論を構築はするけれど、永遠に未完成。それもまたDeNAのカルチャーですね。

平子:いまは最善のプログラムでも、いつか正しくなくなるときがくると思っています。だからこそ、時代に即した形に変容できるようにしておきたい。

高い成長意欲と挑戦意欲をあるがままに活かすプログラム

坂井 風太,平子 裕喜,小川 篤史

――DeNAへの就職を考えている新卒候補者の方々にとっても『メンター育成プログラム』は魅力的に映るのでは?

坂井:メンターや先輩に人知れず潰される、なんてことは起きにくくなったのではないかなと思います。

かつての「人は勝手に育つでしょう」という考え方は10人しかいないスタートアップ企業だったら最適だと思います。そういう人材だけ採用すればいいですし。でもDeNAはコングロマリット企業です。自分たちの育成方法とか、成長支援が間違っているのではないか、という常に疑う心を持っていないと、人を潰してしまう可能性がある。なにより、マネジメントのキャパシティーが広がっていかない。

しかも我々はIT企業です。なぜ新卒が就職先にIT企業やITベンチャー企業を選び、入社を決めたのかを考えたときに、成長実感を得られて、そこにいるとキャリアが高められるという“キャリアの安全性”があるからだと思うんです。だからそれを感じられなければ、どんどん人が流出してしまう危機感を我々は持ち続けねばならない。

心理的安全性だけでなく、キャリア安全性という概念も重要視しなければいけない時代なんだろうなと思っています。

平子:でも、ここで大事なことは「人は仕事で育つ」という考えを捨てたわけではない。

人の才能が発揮される阻害要因を取り除くために、このプログラムは同時にしっかりと走っている。むしろ、「人が仕事で存分に育つ」ためのプログラムです。

小川:成長したいという想いで会社選びをする人は引き続き多いように感じています。一方で、これまでどういう環境だと自分は成長し得るのか、ということがブラックボックスになっていることが多かった。

それに対して、今私たちが掲げている思想と「DeNAの環境はこうです」と一気通貫して説明できるようになったのがいいことだと思います。

――阻害要因は排除した。しかし、本人がきちんと走らなければ成長はない?

坂井:育成を“してあげる”ためのプログラムではない。

このことは改めて伝えておきたいです。障壁となるものはすべて取り除くけれど、成長できるかどうかは本人次第ですからね。

――今後の展望は?

小川:我々は、日本最強の人材育成組織を目指しています。さらに、この『メンター育成プログラム』はもちろん永遠に更新し続けたい。だからこそ、このプログラムをよき実験台にして、より磨いていきたいという仲間がほしいですね。

平子:特にエンジニアは入社予定の新卒社員の規模が去年から倍増して、約70〜80人規模になってきています。まだ規模は大きくなるかもしれません。より体系化や武器化の必要が出てきているので、一緒に構築していけると楽しいと思っています。

坂井:DeNAの次の柱となる事業を私がつくります!というような人材を求めているし、そうゆう人材を殺さずに、最大限の力を発揮してもらうための土壌をさらに整えておきたいですね。

小川 篤史,坂井 風太,平子 裕喜
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。

聞き手:箱田 高樹 執筆:日下部 沙織 編集:若林 あや 撮影:小堀 将生

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