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CULTURE

18.04.13

「AIがなくてもビジネスが成り立つなら、その方が良い」AI研究者が語るサービスへのAI導入成功に必要なコト

「○○社がサービスにAIを導入」

 

各種メディアに、こういった見出しが躍ることも珍しくなくなりました。多くの企業がこの技術に大きな可能性を感じ、AIを用いた新しいサービスの検討を続けています。しかし、成功の定石はまだまだ確立されていません。誰もが最善の方法を模索している最中です。

 

DeNAでもAI活用事業の研究開発及び分析基盤の構築・運用を行う「AIシステム部」を発足し、同領域に力を入れています。この部署では多種多様なバックグラウンドや強みを持つエンジニアが集まり、研究・開発に“フルスイング”しているのです。

 

その屋台骨の一角を担うのが、加藤大雅(かとう ひろまさ)、内田祐介(うちだ ゆうすけ)、森紘一郎(もり こういちろう)。

 

AI領域の先端を担う彼らだからこそわかる“AI導入成功のコツ”はあるのか。今回はその秘密を解き明かします。

 

「事業に近い環境で仕事をしたい」と願っていた、空気力学の専門家

――まずは3名がDeNAに来た経緯について聞かせてください。加藤さんは前職でどういった仕事をしていたのですか?

 

加藤:大学で6〜7年ほど助教をしており、エアロダイナミクス(空気力学。空気の流れや空気中を運動する物体にどのような力が作用しているかを扱う学問)について研究していました。

 

空気の流れを分析・予測するため、シミュレーションに機械学習やニューラルネットワークの一種を用いていました。つまり、ツールとしてAIを活用していたんです。

 

システム&デザイン本部AIシステム部AI研究開発グループ 加藤大雅
米国の大学を卒業後、フランス、ベルギーの航空宇宙業界で7年間勤務し、国内の大学教員を経て2017年にDeNA入社。現在は自動運転社会を見据えた無人配送システムの地図基盤システムの開発を担っている。

 

――大学の助教というキャリアを捨ててまで、DeNAに来たのはどうして?

 

加藤:順を追って話すと、私は助教になる前にフランスやベルギーの航空宇宙スタートアップで7年間勤務していました。

 

日本と海外は航空宇宙業界の文化がかなり違っています。日本では航空宇宙開発は国が主導するケースが多く、民間企業が主導するケースはほとんどないです。しかし海外では、民間のスタートアップが数多く立ち上がっているんですね。私はそれに大きな魅力を感じていました。

 

つまり、大学の助教をやっていましたが、アカデミックな環境ではなく事業に近い環境にいつか戻りたいというマインドを持っていたんです。

 

そんなある日、DeNAのAIシステム部のことを知りました。「AIを事業領域に適応しようとしている会社が日本にもある」ということに大きな魅力を感じ、DeNAへの入社を決めたんです。

 

エンジニアとして、より刺激のある環境に移りたかった

――内田さんはどうでしょうか?

 

内田:私は前職、大手通信事業者の研究所で長年画像認識や検索に関する研究に携わっていました。研究だけではなく、事業部にてスマートフォンやプリインするアプリの企画開発、ユーザーテストやUX検証、新規事業の検討なども行いました。

 

システム&デザイン本部AIシステム部AI研究開発グループ 内田祐介
2007年大手通信会社に入社。同社の研究所にて、画像検索および画像検索に関する研究に従事し、高速な画像検索ライブラリを開発、実用化。2016年に社会人学生として博士号を取得(情報理工学)。2017年にDeNAに入社、最新の技術から新たな価値あるサービスを創造すべく、深層学習を中心としたコンピュータビジョンの研究開発に従事。電子情報通信学会学術奨励賞、FITヤングリサーチャー賞、映像情報メディア学会技術振興賞受賞、国際学術会議にてBest Paper Awardを2度受賞。

 

同社のキャリアの後半で、ちょうど事業部に所属していた時期に働きながら社会人博士を取得しました。その後研究所に戻ったのですが、戻ってみて強く感じたのが「変化のなさ」だったんです。

 

以前に研究所にいたときと同じようなことをしていて、自身の成長が止まっているのではないかという危機感を抱いていました。特に、大企業ではマネジメントが求められるようになってくる一方、自身のキャリアとしては、エンジニアリングもできる研究者、研究ができるエンジニアにチャレンジしたいと考えるようになりました。

 

――そのタイミングで、DeNAのことを知ったと?

 

内田:はい。当時はまだAIシステム部の立ち上げ時期で、自身がどのような価値を発揮していけるのか不安だったのですが、事業に近い領域で研究開発が行えるとのことで「新しいチャレンジができそうだ」と考え、転職を決めたんです。

 

転職して感じたのは、周りにいるエンジニアのスキルの高さです。もちろん自分の専門分野については自信はありますが、それ以外の分野で自分より圧倒的にできる人がたくさんいる。それは自身の成長機会という観点で、非常に恵まれた環境だと感じますね。

 

深層学習の可能性をもっと追究したかった

――森さんは?

 

森:前職では、電機メーカーの研究所で音声合成の研究開発に携わっていました。音声合成とは、テキストを音声にする技術、コンピューターに言葉を喋らせる技術です。

 

システム&デザイン本部AIシステム部AI研究開発グループ 森紘一郎
電機メーカー勤務を経て、2017年にDeNAに入社。AIシステム部において主に深層学習に関する研究開発に従事。2002年から人工知能やゲームプログラミングに関するブログを執筆。一番長い専門は音声処理であるが、自然言語処理・コンピュータビジョン・強化学習・認知科学など人工知能に関する分野に幅広く興味を持っている。

 

私は最新の深層学習を応用した研究開発がしたかったんですが、大きな事業再編がありその研究開発が続けられなくなってしまったんです。そこで、より深層学習の可能性を追究できる環境に移りたいと思いました。そのタイミングでDeNAのことを知ったんです。

 

選考フローでAIシステム部のメンバーからお話を聞く機会をいただき、DeNAの良さが理解できたのは、非常にありがたかったですね。

 

――入社してみて前職との環境の違いなどはありましたか?

 

森:いくつもありますが、一番驚いたのはスピード感を持ってさまざまな領域にAI導入を進めようとしていることです。

 

DeNAのAIシステム部では、すごい速さでプロジェクトが立ち上がって実証実験まで進み、ビジネスとしてのOK・NGの判断が早期に入ります。その事業決定のスピードは大きな魅力だと思いました。

 

それから、DeNAを選んだ決め手はもう1つありました。実は、AIシステム部の内田さんと濱田(晃一)さんのことを以前から知っていたんです。面識はなかったんですが、彼らがWeb上で発信している情報を見ていました。

 

その内田さんがブログでDeNAに移ったことを書いていたので「優秀なエンジニアが多い会社なんだな」と感じていました。それも転職の決め手になりましたね。

 

チームメンバーとの距離感の近さが、モチベーションを生む

――AIシステム部は事業との”距離感”が近いことが特徴だと聞きました(https://fullswing.dena.com/ai/)。それを実感することはありますか? また、その有用性はどこにあると感じますか?

 

森:比較になってしまいますが、前職企業では企画・営業担当者、研究担当者、開発担当者のいるオフィスがそれぞれ別々になっていました。

 

そのためか、事業サイドから「○○を研究してください」と依頼研究を受けてそれを一定期間研究開発し、期末に成果をまとめて報告するというプロジェクトが多かったんです。

 

一方、DeNAでは同じプロジェクトを担当する企画・ビジネス・開発メンバーが同じフロアにいて物理的に近い。それに、毎週の定例会で進捗や課題を話し合ったり、Slackというチャットツールで議論できたりと、心理的な近さもあります。それが良いなと思っているんです。

 

それから、事業サイドだけではなく他のエンジニアとの距離も近いです。この前とても嬉しいことがありました。自分が研究開発していた技術を他のメンバーがアプリケーションに組み込んで「こんなアプリができました」と見せてくれたんです。

 

身近にいるメンバーからフィードバックをもらえると「もっと改善しよう」という意欲が湧いてきます。

 

AIを“使わないこと”を最初に考える

――研究に従事する者だからこそわかる“AI導入成功のコツ”はありますか?

 

内田:逆説的ではあるんですが「AIを使わないことを最初に考える」のが重要だと思います。これは『仕事ではじめる機械学習』という本の受け売りなのですが、世のなかにあるプロジェクトで「本当にAI導入が必要なのか?」を疑問に感じるようなものって多いじゃないですか。

 

――AIブームだからこそ「なんでもかんでもAIを適用する」という流れはありますね。それは良くないと。

 

内田:AIがなくてもビジネスが成り立つなら、その方が良いんです。だから、丁寧に調査・検討したうえで「本当にAIが必要なもの」だけをAIで解決することが重要だと思います。AI導入そのものを目的化しないというか。

 

 

例えば、AI導入の目的は「人間がやっている仕事を自動化すること」が多いですよね。でも、工数削減を目的に業務を自動化しても、もし認識精度がいまひとつで結局人間がもう一度確認する必要があるならば、工数削減には寄与しない可能性もあります。

 

要するに、AI導入によって本当の意味で効率化できる工数がどれくらいあり、その結果人間の負担をどれだけ減らせるのか。それを明確にしたうえで自動化することが重要だと思います。

 

その課題は、本当に技術で解決すべきものか?

――加藤さんは、AIのサービス適用にあたり意識していることはありますか?

 

加藤:内田さんの話と近いんですが、技術で解決すべき課題とそうでない課題の切り分けをすることですかね。

 

例えば、私はオートモーティブ事業本部が推進しているロボネコヤマトのプロジェクトで、AIによる地図情報の解析を担当しました。その過程で「現場で働く宅配ドライバーだからこそ知っている暗黙知(この道路は○○という理由で宅配トラックを止めない方がいい、など)」をどうシステムの仕様に落としこむかに苦心したんです。

 

そのとき実感したのが、エンジニアはどうしても技術“だけ”で解決したくなるんですけど、それがベストの解決策ではないケースもあるということです。

 

要するに、わざわざアルゴリズムを組まなくても、営業所のオペレーションを変えて解決した方が良いこともある。なるべく色々な方向からソリューションを探すようにしないとダメなんです。

 

――エンジニアの視点だけではダメというか。

 

加藤:その視点だけだと、行き詰ってしまうように思いますね。でもそういった多様な視点が持てるのも、事業サイドとの距離が近くてさまざまな情報が日常的に入ってくるからこそです。そうした情報をきちんとインプットしたうえで、どういう切り口で解決すべきかを考えるのが大事ですね。

 

ふり返りの徹底が、未来の成功をつくる

――森さんは何かありますか?

 

森:AI事業って、やってみないとわからない部分が大きいです。成功するものもあれば失敗するものもあります。私自身、まだ入社1年未満なんですが、R&Dのプロトタイプ開発時点で終了したプロジェクトをいくつか経験しました。

 

その経験を通して大切だと思ったのは、トライした後に失敗の理由をふり返ることです。何が問題だったのか。どう改善すればいいのか。それを分析したうえで、次に活かそうという意識が必要だと感じました。

 

――どのような形でふり返りをするのでしょうか?

 

森:マネジメント、技術的な難易度、市場規模、市場の変化など、複数の観点から失敗の理由をチェックします。このふり返りにおいても、事業サイドもエンジニアサイドも分け隔てなく、みんなで同じ視点を持って意見を言い合っていますね。

 

事業に貢献するためのAI

――最後になりますが、AIシステム部で研究に“フルスイング”できるモチベーションとは何なのでしょうか?

 

内田:「事業の成功に結びつけるための研究開発である」ということがモチベーションになっています。自分の技術をちゃんと必要としてもらえている実感が湧くというか。

 

それに、同じ目標に向かって頑張っている人たちが事業部にもいる。だから、自分も負けないように頑張らないとと思えるのはありますね。

 

加藤:私が携わっているオートモーティブ事業は、まだまだ手探りな部分が大きい領域です。多くの企業が車の移動に関する技術に取り組み始めていますが、正解はまだない。でも、だからこそその領域にチャレンジする楽しさがあると感じています。

 

それから、DeNAって組織に無駄がないんですよ。AIシステム部だけをとってみても、多種多様な領域の専門家が集まっていますし、勉強会を開催してもオーバーラップすることがない。必ず誰かの発表から何かしらの学びを得られる。

 

その無駄のなさというのは、プロジェクト構成メンバーの担当業務についてもそう。各メンバーの業務内容が有機的に関連し合っているからこそ「自分がやった仕事がプロジェクトでどう役立つのか。誰の助けになるのか」が見えやすい。それが仕事のしやすさとか、やる気につながっています。

 

森:AIって世の中ですごく盛り上がっていますけど、事業という観点では先の見えない部分もまだ大きいと思うんです。でも、先が見えないからこそ多くの可能性がありますし、手探りで自分たちで作り上げていく感覚が楽しいです。

 

AIシステム部はまだ新しい組織なので今後たくさんのチャンスがあると思いますし、周りのメンバーも優秀で有益な情報交換やディスカッションができています。みんなの力を合わせれば、今までになかったような新しい価値を提供できるんじゃないかという期待感が、すごくありますね。

 

 

まとめ

サービスへのAI導入成功に必要なコト

①同じプロジェクトを担当する企画・ビジネス・開発メンバー同士で密にコミュニケーションをとる


②AI導入そのものを目的化しない


③技術で解決すべき課題とそうでない課題の切り分けをする


④トライした後に失敗の理由をふり返る

 

執筆:中薗昴 編集:野田竜平 撮影:小堀将生

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