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エンジニアの力で新ビジネスを生む!「横浜DeNAベイスターズ」をめぐるモノづくり

2022.08.28

DeNAが抱えるスポーツ事業の中でも、最も注目度が高く観客動員数も多い「横浜DeNAベイスターズ」。

運営は株式会社横浜DeNAベイスターズ(以下YDB)が担っていますが、親会社であるDeNAもDX支援など積極的に関わっています。

そもそもはプロ野球球団とITベンチャーという風土も事業内容も違う二企業。お互いの得意分野、苦手分野を補完しつつ最適解を求める道筋を、DeNAから出向中の岡本 康佑(おかもと こうすけ)と、横浜DeNAベイスターズビジネス統括本部マーケティング戦略グループ・佐合 勇規(さごう ゆうき)の対談でお届けします。

“お客さまのために何ができるか”を考える仲間

▲横浜DeNAベイスターズ経営戦略室システム開発グループ 岡本 康佑(おかもと こうすけ)
2019年3月にDeNAへ中途入社後、横浜DeNAベイスターズに兼務出向。一貫してベイスターズのシステム開発支援にあたっている。横浜に自宅も構え日々横浜愛を強めている。好きなものは空いているサウナ。

ーー経歴から教えていただけますか。

岡本 康佑(以下、岡本):前職は大手メディアでIT基盤システムエンジニアをしていました。たまたま転職を考えていた時に友人に誘われてDeNAに来ることになりました。

プロ野球球団に興味があったこともあり、スポーツ事業部に所属しながらYDBに出向することになりました。ちょうど丸3年になります。

佐合 勇規(以下、佐合):僕は前職ではIT系企業の法人営業を担当していました。YDBではチケットを販売・企画する部署で4年くらい経験した後、グッズ販売などのMD部を経て現職であるマーケティング戦略グループに配属されました。

ーお二人の関わりを教えてください。

岡本:YDBに来た当初は、現場の盛り上がりに対して、システム周りでの課題があり、それを解決していくのが僕たちのチームのミッションでした。その中のひとつが「BAYSTARS ID」の基盤作りです。YDBのサービスはチケット・グッズ購入からファンクラブ、野球教室など多岐に渡ります。それぞれのサービスに個別にIDが存在していて、それをまず「BAYSTARS ID」に統一するというプロジェクトが立ち上がりました。

佐合:IDを一本化することでお客さまも便利になりますし、そのデータをマーケティングに活用することで、よりベイスターズを楽しんでもらうことができる工夫に繋がります。今となっては当たり前のサービスですが、2019年の時点では一本化が難しかったんです。そのようなYDBが抱える課題を、システムの力で岡本さんたちに解決してもらっています。

岡本:YDBのシステムエンジニアは5名(兼務もあり)で、全員DeNAからの出向組です。小さなチームで球団の基盤を支えています。仕事内容はただコードを書くだけではなく多岐に渡り、各種システム制作をお願いするベンダーさんの選定なども行っています。

ーー全員DeNAからの出向なんですね。

佐合:最近はビジネス側にもDeNAから出向している人が多くなりました。DeNAとYDBの協業というより、”お客さまのために何ができるか”を考える仲間という感じです。

ーーとはいえ、それぞれの会社にカルチャーの違いはありますよね?

岡本:ない、と言ったら嘘になりますね(笑)。僕も出向当初は「文化の違いがあるな」と感じることもあったので。

佐合:YDBは興行で成り立つリアルエンタメの会社。DeNAはエンジニアが基盤の会社という印象なのでギャップはあります。

1試合で約3万人が来場。球団の運営は失敗が許されない

▲横浜DeNAベイスターズビジネス統括本部マーケティング戦略グループ 佐合 勇規(さごう ゆうき)
2016年に横浜DeNAベイスターズへITベンダから中途入社。チケット部、MD部を経て現職はビジネス統括本部マーケティング戦略グループリーダー。

佐合:私たちには目の前にお客さまがいるので、「30%くらいの完成度でもいいから、一度当てて反応を見て……」というのは許されません。限りなく100%に近い状態で表に出さないとお客さまが離れていってしまう。

岡本:僕もYDBに来るまでは意識したことがほとんどなかったのですが、現場があるということは直接お客さまと繋がる機会も多く、生半可なものを出したら現場が混乱してしまいます。その状況を目の当たりにしていくうち、「(新たな試みを)小さく出して改善していこう」なんてことは言えなくなりました。

佐合:オンラインとオフラインの大きな違いなのかもしれないですね。試合がある日は、球場内外で数百人単位のスタッフが動きます。新規の企画をしても全員に浸透しなかったり、テクニカルすぎてもオペレーションを担当する現場がついてこれなかったりと、クオリティコントロールが非常に難しい。

岡本:WEBでちょこっと試すのとは全然違います。球場で働くアルバイトの方、警備員まで同じオペレーションで行うというのは簡単ではありません。

佐合:そうですね。本当にたくさんの人に支えられていると思います。1試合で約3万人が来場する。チケットの表示方法がわからない方への説明や道案内など、それだけ人が集まるとトラブルも多岐に渡り対処法もさまざまです。お客さまから見たら、どんな立場であれ同じ制服を着ている人はベイスターズの人ということになります。日々いろいろなことがある中で、平準化したサービスを提供していくのは本当に難しいんです。

岡本:そうですね。DeNAのサービスの中でも他にはないと思います。「チケットを売って、購入してもらったらそれが売上になる」。簡単そうに聞こえるかもしれないですが、とても奥深いということを日々感じています。

佐合:僕は入社時チケットの部署にいたので、そこで運営の全てを学んだと言っても過言ではありません。

岡本:そんな姿を近くで見ていたので、僕はすぐに結果を求めるようなことではなく、じっくり腰を据えて研ぎ澄まされたサービスを出していくようにシフトチェンジしました。すべてはお客さまファースト。そこに気づけなかったら、僕は今ここにいないかもしれないです(笑)。

エンジニアリングのバックグラウンドが新しいビジネスを生む

ーー今抱えている課題は何でしょうか?

佐合:365日のうち試合は多くても75日しかない。他の290日くらいは何もないんです。その間にどう野球を楽しんでもらうか、ファンを喜ばせることができるかを日々考えています。

岡本:球場のキャパは決まっているので、「球場に来てください」と言ってももうすでにパンパンです。別の軸でベイスターズを好きになってもらわないといけない。

ーー新しいサービスなのか、今あるサービスを磨くのか。どちらでしょうか?

佐合:個人的には新しいサービスですかね。野球の楽しみ方は千差万別です。DeNAが参入した当時、「野球をしっかり見なくてもいい、スタジアムを居酒屋のように使ってください」という、“ながら観戦”という新しい体験を生み出しました。このような新しい価値が必要だと思っています。

岡本:コロナで凹んでしまったところを取り戻すことも重要です。その上、どれだけ野球を通してそれ以外の部分でもファンになってもらうかを考えています。

ーーそういったサービスは、エンジニアも一緒に考えるのですか?

岡本:そうですね。僕らはただシステムを守る、コードを書くだけではなくもっとビジネス寄りです。エンジニアリングのバックグラウンドを使いながら新しいビジネスを生む。エンジニアとしてテクニカルな部分を磨き続けることをやりがいに感じる人もいると思うのですが、僕らが一緒に働きたいと思っているのは「喋り」が上手なエンジニアです。

佐合:「喋り」ですか(笑)!

岡本:システムがわからない人たちでもわかるように伝えること、逆にビジネス側から求められていることを理解してシステムに落とし込むことが重要なので、「喋り」の技術が必要だと思っています。

ーーコミュニケーション力が高いエンジニア、ということですね。

岡本:もちろん技術力も大切です。プロダクトを最初からつくり、運用も経験した人材を求めています。どういうトラブルが起きるかなど経験がある方がいいと思うので。

佐合:あとは野球愛ですか?

岡本:そうですね! 野球愛がないと続けられないと思います。なんだかんだみんな野球が大好きです!

ーー現状、働き方はどうでしょうか?

岡本:ほぼ出社なしのリモートワークですが、試合がある日は別です。リアルなお客さまの反応が見たいので、球場に足を運びます。その日だけ夜が遅いかな(笑)。

この経験は日本中で12社でしかできない

ーーやりがいや面白さはどこにありますか?

佐合:プロ野球の世界は広いように見えますが、日本中探しても12球団、12社しかないんです。実は狭い世界。情報も簡単には落ちていないし、なかなか手に入らない。そんな狭い世界なのに、世界的な有名アーティストのどんなライブ公演よりも多く集客する。こんな大きな興行は他にはありません。

岡本:年間約228万人(2019年)を動員するんですよ。それだけ人がお金を払ってリアルに楽しんでくれる。自分が野球好きならなおさらです。どのように工夫すればより面白くなるのか、より楽しくなるかという自分の観戦体験を、そのまま仕事に活かせます。

佐合:YDB自体は小さな会社です。横断プロジェクトが多いので岡本さんが言うように、「喋り」や技術の力で組織に縛られずに働けるのが楽しさややりがいに繋がると思います。

岡本:そうですね。佐合さんが所属するマーケティングのチームだけではなく、チケットや直接選手に関わるようなプロジェクトも抱えています。それを一つ一つ解決していく。この経験は他では絶対にできないことなので、僕らもすごく楽しんで仕事ができていると思います。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。

執筆:小池 遥 編集:フルスイング編集部 撮影:小堀 将生

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