男女にかかわらず訪れる、出産、育児、介護などのライフイベント。仕事との両立をはかるために、DeNAは社員の多様なニーズに合わせて、制度を常にアップデートし続けています。
例えば、男性の育児休業。政府が2025年までに男性育児休業取得率30%を目指すなか、DeNAは2021年にその値を超えています。DeNAメンバーが福利厚生などの制度をより利用しやすく、バックアップしているのが「DeNA LIFE DESIGN PROJECT」です。
「取りにくい雰囲気はぜんぜんなかった」「取って当たり前の風土がある」と話すのは、2カ月の育児休業を取得したビジネス職の平原 賢司(ひらはら けんじ)、エンジニア職の坂本 啓太(さかもと けいた)です。
現在、業務に復帰して仕事と育児を両立する二人と、「DeNA LIFE DESIGN PROJECT」の運用を担うヒューマンリソース本部の久見木 裕子(くみき ゆうこ)に、「DeNA LIFE DESIGN PROJECT」を通じたDeNAの働き方と風土を語ってもらいました。
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ライフイベントの多様なニーズに応えるプロジェクト
──「DeNA LIFE DESIGN PROJECT」とは、どのようなプロジェクトですか?
久見木 裕子(以下、久見木):ライフイベントと仕事の両立支援という観点で、さまざまな制度を検討・運用しているプロジェクトです。もともとは女性社員の産休・育休をサポートする目的で「DeNA Women’s Council(DWC)」として2012年に発足しましたが、2019年に男女に関わらず、社員のライフプランのサポートする体制へのアップグレードのため「DeNA LIFE DESIGN PROJECT(以下、DLDP)」へとリニューアルしました。
DLDPでは男女に関わらず、社員のいろいろなライフプランのニーズに対応できる仕組みづくりをしています。2018、2019年はちょうど社内で男性社員の育児休業(以下、育休)の取得が増え始めた時期で、従来の制度ではマッチしない部分をどうフォローしていくかを考えてきました。
──制度取得の相談窓口も兼ねているのですか?
久見木:はい。育休を取りたい人に制度の説明や休職から復職までのサポートをしていますが、また男性社員は取得の時期や期間もさまざまで、より個人の状況に合わせたサポートが必要だと感じています。
その人がどのような制度の取得ができるか、他の制度との組み合わせ方など、ベストな状態で制度を利用できるように一緒に検討したり、フォローをする役割もあります。
平原 賢司(以下、平原):育休制度の内容は社内用のポータルサイトで見ることができますが、わからないことが出てくる度に直接久見木さんに質問をしていました。
坂本 啓太さん(以下、坂本):平原さんはちょうど私の1年前に育休を取っていて、久見木さんへ質問した内容や育休を取得した経緯・感想などを、まとめて共有してくれていたのでありがたかったです。
──直近の育休取得率はどうなっていますか?
久見木:女性社員の取得率は以前からほぼ100%です。2021年度の実績で女性社員は64名(※1)、男性社員は29名(※2)が育休を取得しており、男性社員の取得率は約33%と全国平均の12.65%(※3)よりも高い水準です。DLDPとして、育休の取得率については目標値を明確には設定していませんが、育休を取りたい人が全員ちゃんと取れるように支援することを目指しています。
※1……2021年度中に1日以上産休・育休を取った人、20年度中に子どもが生まれた場合も含む。
※2……2021年度に子どもが生まれて、育休を取得した人数。
※3……厚生労働省「雇用均等基本調査」による2020年度の男性育休取得率。
──周囲のメンバーも育休を取っていますか?
坂本:私が申請する少し前に、上長が1カ月ぐらいの育休を取得していたので、伝えやすかったですね。
平原:DeNAでは育休は当たり前の選択肢で、男性も取れるものだと認識されていると思います。
久見木:最近はマネージャーで育休を取得するケースも増えてきているので、スムーズに取得するためにチーム内でも調整する文化がありますね。
男性の取得が増えたのはこの数年ですが、その前から取得することに対してネガティブな雰囲気は一切ありませんでした。周囲が当たり前に取っているので自分も、と連鎖的に男性育休の意識が高まっている部署もあります。
育休の取り方も、人それぞれ柔軟に
──平原さんは、いつどのような形で育休を取得されましたか?
平原:2020年の夏に第一子が生まれて最初の1カ月間は、ベビーケア休暇(※1)制度と積立休暇制度(※2)、有給休暇を組み合わせて休みました。その後、一度業務に復帰して、2020年11月末から翌1月末までの約2カ月間、育休を取得しました。
久見木:積立休暇制度は、2019年に条件が緩和されて、子の看護以外での育児関連の用途でも利用できるようになりました。
※1……ベビーケア休暇。配偶者が出産した際、年次有給休暇とは別に、出産予定日または出産日前後に5日間の有給休暇を取得することができる制度。
※2……積立休暇制度。育児・学校行事・介護・私傷病・不妊治療・妊娠等のライフイベントに安心して臨める仕組みとして、未消化の有給休暇のうち、失効する有給休暇を1日単位で毎年10日を上限に(最大60日)積立て、用途を限り利用することができる制度。
──他の制度と組み合わせてアレンジした形ですね。業務に合わせて分割したのですか?
平原:第一子ということもあり、当初は長期で取ろうと考えていたのですが、コロナ禍でフルリモートが可能(チーム方針による)になったので、業務と両立できるかもしれないと考えました。結果的に、最初の1カ月は他の制度を利用して子どものケアのために休み、一時的に業務に復帰した後、育休を取りました。
──坂本さんはいつどんなタイミングで育休を取りましたか?
坂本:第二子の誕生日から5日間の「ベビーケア休暇」を取り、そのまま育休に入って、2021年11月末から翌年1月末まで取得しました。第一子が保育園に入園する前に妻が体調を崩して、もっとできることがあったかもしれないと後悔したので、第二子では必ず取得するつもりでいました。
お互いの両親が祖父母の介護や仕事があり、コロナ禍で往来を控えなければならないなど、サポートを受けづらい状況もありました。第一子が生まれて最初の2、3カ月はすごく大変だった記憶があって、妻の出産直後から2カ月間休みました。
──男性育休は制度があっても、取得しづらい会社がまだ多いと思いますが、お二人はスムーズに取ることができましたか?
平原:はい。妻の妊娠がわかった直後から、育休を取る前提で上長とコミュニケーションをしていたので、実際に取得するときにはその予定に合わせて業務を考慮してもらい、希望どおりに取得できました。DeNAは多様性を尊重する会社だというのは、男性育休でも同じです。
坂本:チームのフロントエンドエンジニアは私1人なので、業務を抜けても大丈夫だろうかという気持ちもありました。ですが、妻が妊娠4カ月のときに、上長に育休取得を申し出ると「坂本くんが安心して取れるように業務を調整するよ」と言ってくださって、本当に温かい気持ちになりました。
もし、あと1カ月育休を取りたいと言っても、快く調整してくれたと思いますが、自分が携わりたいプロジェクトがあり、リモートワークが可能な環境も整っているので復帰を決めました。
周りの知人に2ヶ月育休を取得することを話すと、そんなに取れちゃうの?と驚いた反応がかえってきて、世間的にまだ取得しづらい会社が多いのかなと思いました。
育休中は育児に専念が鉄則?
──育休中はどのように過ごされましたか?
坂本:おむつ交換とミルクのループでした。ひたすらおむつ交換をして、買い物や家事をしていたら2ヶ月あっという間でした。最初の2、3週間は会社に提出する事務手続きの書類も書きました。
平原:自分もそうだったことを思い出しました(笑)。
──育児に関する情報交換の場はありますか?
久見木:DLDPの支援ではありませんが、Slackに「team-子育て」という、育児のSlackチャンネルがあって、そこでざっくばらんに話せる環境がありますね。
坂本:男女問わず社内の誰もが参加できて、みなさんが自身の体験を話しているのですごく参考になります。育休を取得した話もSlackに投げられていて、それを自発的にスプレッドシートにまとめてくださった方もいて、とても参考になりました。
久見木:習い事はこんなのがいいんじゃないかとか、このベビー用品のアイテムがよかったとか、そもそも育休はどうやって取ればいいんだろう、など社員同士でさまざまな情報交換やフォローなどをする場となっています。もともと社員が個人で立ち上げたチャンネルですが、違和感なく多くの社員が集まっています。
平原:チャットツールは発言しなくてもよくて、流し読みするだけでもいいので、参加しやすい雰囲気です。
久見木:DeNAにはこのような環境や風土があるので、育休に対しては全社的に「みんな取って当たり前」という認識です。育児制度を利用することに対してネガティブな意見やハードルが高いということは、あまり感じないですね。
──育休中はメールや業務連絡を見ないものですか?
坂本:まったく見ませんでした。
平原:私も見ませんでした。緊急連絡用にプライベートの連絡先を伝えておいたのですが、業務のメールは一切なかったです。
久見木:休業中はあくまでも育児に専念してほしいので、会社のメールを見ることは控えてもらいます。Slackは業務以外のコミュニケーションの場でもあり、チーム子育てのチャンネルを見たり書いたりしてほしいので利用OK。
ただし、相手にわかるようにステータスを「育休中」と書いてもらうように伝えています。
──男性育休を取得して、ご家族の反応はいかがでしたか?
坂本:最初に妻に2カ月の育休を取ると言ったときは、取得できることに驚いたみたいで「取って何をする?」と言われて、「あの、いや、育児……」みたいなやり取りでした(笑)。取り終わったときには「ありがとう」と言ってくれたので、すごくうれしかったです。
平原:私の場合は第一子だったので、お互いに何をすればいいかわからずでした(笑)。コロナ禍だったこともあり、家に友人を呼ぶことも難しく、妻にしてみれば私以外の大人と対面で話す機会はなかったと思います。仕事を気にすることなく一緒に過ごせる時間は大切だったと思うし、妻もそう言ってくれたのがよかったですね。
ハイブリッドワーク導入で“子育てパパ”躍進
──復帰後が仕事と子育ての両立の本番だと思いますが、現在の働き方は?
坂本:リモートワークがメインです。朝、保育園に送りに行くのが自分。夕方、迎えに行くのが妻です。夕飯は家族で一緒に食べて、子どもをお風呂に入れた後に、仕事に戻ることもあります。
妻が上の子を習いごとに連れて行っているときは、私が下の子を抱っこ紐で抱えながらミーティングにも参加しますが、それもチームはOKで、むしろ泣き声が聞こえたら嬉しいハプニングみたいな感じで受け入れてくれるので、非常に働きやすい環境です。
平原:私は17時半以降は打ち合わせを入れないようにしています。子どもが保育園から帰ってきてから寝るまで、妻と一緒に育児や家事をしています。全社共有のカレンダーで17時半以降をブロックしているので、どうしてもというときは相談がくるようになっています。
久見木:男性社員でも子どもの保育園へお迎えに行く理由で、スケジュールをブロックしている方も多いですね。以前は女性社員が時短で働き、保育園に迎えに行くケースが多かったのですが、リモートメインのハイブリッドワークになってからは、仕事を30分から1時間抜けるだけで迎えに行けたりしますので、男性社員も家事・育児に注力しやすくなりました。
──リモート+出社のハイブリッドワークになってからは、「時短勤務」を使わない方も増えているのですか?
久見木:そうですね。2020年4月の時点では育児時短を利用している女性社員が50名ほどいましたが、現在は約25名で半数です(※)。リモートワークが主体となったことで、通勤時間も削減されているので、時短勤務でなくても、働けるようになっている理由が大きいですね。
一方で、男性社員で育児時短を取得するケースも見られるようになり、パートナーと一緒に育児をしようという姿勢がうかがえます。
※……時短勤務制度を利用するDeNA女性社員の人数は、2022年4月の時点では約25名。
DeNAメンバーの声を聞き、進化する「DLDP」
──育休を取得して仕事のモチベーションなどに変化はありましたか?
平原:時間をもっと賢く使わなければいけないなと思っています。以前だったら時間を気にせず、業務のキリのいいところまで仕事をして帰っていましたが、子どもが保育園に入園してからは、17時半までにボリュームのある仕事を終わらせるやり方に変わりました。
坂本:コロナ禍で全社的にリモートワーク推奨になったとき、全社員向けのメールに「小さいお子さんのいらっしゃる家庭では、業務中でも育児に時間を使うことを遠慮しないでください」とメッセージがあって、すごく心が軽くなりました。
よし、おむつ替えも仕事も両方頑張ろう、と(笑)。
──福利厚生も常にアップデートするのはDeNAらしいですね。
久見木:単発ではなく、アップデートしながら10年近くも続いているのが、このプロジェクトの特徴です。
育休の取得サポートには早期から取り組んでおり、復職直前の新米ママを集めて、会社状況のアップデートを行ったり、先輩ママをパネリストに招いて復職後の両立状況などをざっくばらんに対話したり、新米ママ同士が交流したりする「復職ワークショップ」というイベントをしています。このイベントは2012年から始まって、今年で10回目を迎えました。
男性の両立支援に関しては、まだあまりナレッジがないので、お二人をはじめ、メンバーみなさんの声をもっと拾っていきたいですね。
平原:誰に相談すればいいのか、わからない人もいるかもしれませんね。
久見木:たしかに男性には見えづらいかもしれません。育休周りについて、社内ツールで質問いただいた場合は直接やり取りさせてもらうことができますが、上長経由で相談がきたりすることも多いです。
いずれにしても、働き方が多様化し、それにともない制度も変わっていくので、今まで以上に全社に周知する機会を増やすことは必要ですね。この数年で介護に関する問い合わせも徐々に出てきているので、常に社員一人ひとりのニーズに沿った支援・制度に見直していきたいと考えています。
国の方針としても、今年2022年4月から男性の育休取得促進で制度の変更があります(※)。「DLDP」としては、これからも支援を必要とするそれぞれのメンバーの声を汲み取り、仕事とプライベートの両立について幅広くサポートできる制度を目指していきたいです。
※……2021年3月に育児・介護休業法が改正。希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、特に男性の育児休業の取得促進を目的に雇用環境の整備を2022年4月1日から段階的に周知を進めるように事業主に義務付けられた。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。
執筆:さとう ともこ 編集:若林 あや 撮影:小堀 将生