ライバーとリスナーが一緒になってライブ配信を盛り上げるライブコミュニケーションアプリ『Pococha(ポコチャ)』。今やDeNAの主力事業の一つとして成長を続けるPocochaチームに、4ヶ月前、PdM(プロダクトマネージャー)としてジョインしたのが、今井 龍之介(いまい りゅうのすけ)です。
今井は大学時代に独学でプログラミングの勉強を始めたことをきっかけに仲間と起業。その後、事業の責任者として一からサブスク事業を立ち上げるなど、大きな裁量と権限、そして野心を持ってきたであろう今井がなぜ今DeNAに身を置いたのか──。
そこには『Pococha』でしか実現できない大きな夢がありました。
酸いも甘いも、スタートアップで味わってきた
──ユニークなキャリアを歩んでこられたと聞いています。
大学時代から、一貫してスタートアップに身を置いてきました。
元々は、高校が全寮制でアルバイトができなかったので、株式投資で小遣い稼ぎをしていたんですね。ビギナーズラックでけっこううまくいって、「投資っておもしろい!」と感じて、金融の道に進むつもりでした。
ただ大学に入ってからは、座学よりも友だちと遊びながら覚えたプログラミングでアプリやWebサービスをつくるほうが楽しくなって。「実社会で誰かの役に立ったり喜ばれたりするプロダクトやサービスをつくっていきたい」と考えるようになりました。
そこで、プロダクト開発力を高めたいと思ってアルバイトを始めたスタートアップで、iBeaconを使ったポイントアプリなどをつくったり、企業から受託開発のディレクションや実装をしたり、大学の後輩と営業のクラウドソーシングサービスを立ち上げたりしていました。プロダクトの基本設計やUXの設計もやっていましたね。
──その後も、順風満帆にスタートアップを立ち上げ続けてこられた。
いえ。決して順風満帆ではないです。大学を出たあとすぐに某ベンチャーキャピタルのアクセラレータープログラムに事業アイデアが採択されて会社を興しましたが、2年経っても事業化できず解散してしまいましたから。資金調達もしながら、まったくうまくいきませんでした。
結論から言うと、プロダクトをつくることはできても、事業をつくる力が自分には足りなかった。かなり落ち込んで、引きこもった期間もありました。
──なるほど。
しかし、その後入社した会社でまた新たな事業を起こしました。海外のサブスクリプションサービスから着想して、月額7980円で毎日ランチが食べられるサブスク事業を当時の社長へ提案、責任者として事業を立ち上げたんです。
──その事業の成果はいかがでしたか?
めちゃくちゃ伸びました。サブスクが注目され始めたタイミングと重なって、ユーザーが一気に増え、毎週のようにWebやテレビなどのメディアにとりあげられるほどでした。
ただ、サービスのローンチが2019年9月。サービス開始から半年後の2020年3月頃から新型コロナウイルスが蔓延し、サービスを止めざるを得ない状況になったんです。スケールする事業に合わせて規模を拡大させていた約50人のチームを泣く泣く解体しました。
──図らずも、2度目の挫折になってしまったのですね。
まだまだ伸ばし続けられる事業だと確信していましたからね。とても歯がゆかったです。それでも、まだグロースフェーズを味わいたくて、別のスタートアップ企業で2年ほど働いた後、今年2月、DeNAに転職しました。
──一貫してスタートアップに身を置いてきた今井さんが、なぜDeNAを選ばれたのでしょうか?
転職先を考えるうえで、大きく2つの軸がありました。
1つめは、20代後半のキャリアを考えたときに「自分が一番成長できる場所に身を置きたい」と思ったこと。
そしてもう1つは、「本当に大きな課題解決や価値を生み出すプロダクト・サービスに携わりたい。ウソ偽りなくユーザーファーストなプロダクトをつくりたい」と常々考えていたからです。多彩な業務を展開し、優秀な人材が集っているとよく聞くDeNAは、挑戦の場として大きな魅力を感じました。
──DeNAはユーザーファーストなプロダクトづくりをしていると感じていた、ということでしょうか?
具体的には、今私がPdMをしている『Pococha』なのですが。『Pococha』のメンバーと面談を重ねる中で、プラットフォーマーとして真摯にユーザーに向き合い、居場所をつくっていることを知りました。
あと、ごく身近な友人がライバーだったことも、『Pococha』で働きたいと思う大きなきっかけになったと思います。
自らを成長させるべく、グローバルで戦えるDeNAへ
──身近なライバーの方を通して、今井さんには『Pococha』はどのように写っていたのでしょうか?
まず、まったく知らない事業領域だったんですね。けれど知っていくにつれ、その友人のようなライバーが数多くいて、彼、彼女たちを熱狂的に支持するリスナーの方々が存在する。それが市場として右肩上がりで伸びている事実にとにかく驚かされました。
あとは何よりオンライン上で「多くの方々に大切な“居場所”をつくっている」のが素晴らしいなと思ったんです。
──居場所とは、ライバーやリスナーの方々が育んでいるコミュニティのことでしょうか?
そうです。ライバーの友人はリスナーの方々を本当に大切に感じていました。そしてリスナーの方々にとって心地よい居場所づくりをする意識で配信をしていたんです。リスナーの方々も本当に楽しんで、そこにいて、つながる、という世界。
『Pococha』は極めて価値あるプロダクトで、だからこそ伸びているんだなと感動したんです。
──面接でもその話で盛り上がったそうですね。
転職活動をしていた中で、面接が最も楽しかったのがDeNAでした。
しかも、事業部長の水田さんとの面接は、これまで受けたどの面接よりレベルが高く圧倒的で、ワクワクが止まりませんでした。
──そのレベルの高さはどのようなところから感じたのでしょう?
プロダクトと事業の設計が緻密で、とてもクリアでした。
「『Pococha』は国づくりをしている感覚で設計している」「ひとつの小さな機能を実装するときも、リスナー、ライバー、事務所など多方面の利益・不利益を必ず洗い出す」とか。
正直、「国づくり」と言われたときはその意味がわからず、何を言っているんだろう?と戸惑ったのですが、『Pococha』にジョインしてプロダクトの企画に触れる機会が増えるほどにその複雑性を目の当たりにして、国づくりという言葉に納得感を抱くようになりました。
いずれにしても、面接の段階で「僕が水田さんと同い年になったときに、このような事業をつくれるのか」と考えたときに無理だと思ったんです。だからこそ、このチームに身を置いたら成長できそう、楽しめそうだと確信しました。
──やはり、成長できる環境が重要なポイントだったと。
はい。その意味では、ITの領域においてグローバルで戦える事業であることも大きかったです。アニメやゲームのコンテンツ以外のWebサービスで、日本発のそんなプロダクトってほぼないと思うんです。
そこにグロースのタイミングから挑戦できるなんて他では得られない経験だし、より一段と成長できるだろうという魅力を感じましたね。
「永久ベンチャー」は伊達じゃない
──現在、今井さんはPdMとしてどのような業務を担当しているのでしょう?
まだ入社して4ヶ月なのでたいして語ることはできませんが、今は配信画面のUI/UXの設計をはじめ、アイテムに関する企画やサインアップ率を上げるための企画を担当しています。
──実際にDeNAに、『Pococha』チームにジョインしてみた感想はいかがですか?
これは楽しさでもあるのですが、めちゃくちゃ難しいなと震えています(笑)。
これまでもいくつかのアプリやサービスを立ち上げてきましたが、基本的には単機能の業務ツールが多かった。だからユーザーの属性定義もニーズも比較的シンプルなものでした。
しかし、『Pococha』は違います。ライバーとリスナーの方々にゆだねる部分が極めて多い。そこから生まれるコミュニケーションやつながりは運営側が精緻にコントロールなどできないし、するべきでもない。要は使い手の不確実性をいかに考慮してサービスを設計し、運営するか。より慎重な判断や丁寧な対応が必要です。
──まさに「国づくり」のように、上からトップダウンでしばりつけたら、不満が出るし。かといって、自由すぎるのもおかしなことになる。
はい。とても難しいです。ただ、チームみんながそれを楽しんでもいるんですよね。
入社前後で一番ギャップを感じたのが、DeNAの人たちの「熱狂度の高さ」なんです。優秀な人が多いのはわかっていたけれど、売上的も社員数的にも「いわゆる大企業の風土なんだろうな」と入社前は思っていました。
しかし、私が見た限り『Pococha』のチームは本当にスタートアップ企業かのような雰囲気なんです。
──具体的にはどういうところに熱狂を感じました?
ひとつの機能を実装するときにも、マネージャーもメンバーも関係なく、みんなが喧々諤々の議論をします。
「ユーザーにとってどうか」「このタイプのユーザーにとっては?」「ライバーの人たちはどうだろう?」と多方面から見て議論するのはもちろんのこと、哲学書や心理学の書籍を持ち出して、さまざまな角度から話を進めていったりもする。『Pococha』のことを永遠に語っていられるんじゃないかと思うくらい、議論が尽きることがないんですよね。
しかも、その議論の内容にも驚きがあって。売上の議論がないんです。
──売上の議論を優先しないと?
『Pococha』は、ユーザーとコミュニティ視点を徹底しています。市場や競合を踏まえてマーケティング視点で見栄えがいいからとか、売上利益のKPIから企画を練ることはまずない。
「ライバーとリスナーのコミュニティにどんな影響を与えるのか?」「『Pococha』らしい選択なのか?」この軸を大切に、徹底的に議論するんです。ノイズのない、こうした熱狂度にも大いに刺激を受けています。
グローバルで勝ち切るプロダクトに
──PdMとして、今後達成したいことは?
IT業界において、グローバルで勝ち切れる日本初のプロダクトにすることが、大きな夢です。
あと先にあげた居場所づくりの部分ですね。現代社会の問題でもある孤独や虚栄心を感じさせず、自分のありのままをさらけ出してコミュニケーションできる居場所として、『Pococha』をより多くの人に届けたいです。
──今井さんが感じている、DeNAにフィットする人ってどんな人ですか?
PdMでいうと、グローバルで勝てるようなプロダクトにしていきたい、『Pococha』の素晴らしい価値を届けたい、という気持ちが大事だと思います。でも、生半可な気持ちではなく、言葉では表しきれないほどの半端ない熱狂度を持った人。
とにかくスタートアップよりもスタートアップらしい環境ですし、視座がすごく高いメンバーばかりなので、本気で挑戦したい人には最高の場所だと思います。「上場しよう!」ではなく「グローバル取ろう!」と動き出しているわけですからね。
──スタートアップの醍醐味を、スタートアップとは比にならない高い目標に向かって味わえると。
DeNAって「永久ベンチャー」を掲げていますが、あれは本当だったんだなと(笑)。今が一番醍醐味を味わえる事業フェーズだと思うし、できることならば、もう少し早くジョインしたかったなと思っています。だから今、少しでも興味を持った方は、悩んでる時間がもったいない。この楽しさを、ぜひ早く一緒に味わってほしいです。
Pococha(ポコチャ)の最新情報は公式Twitterアカウント(@pococha_jp)でお届けしています。ぜひご覧ください!
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。
聞き手:箱田 高樹 執筆:日下部 沙織 編集:川越 ゆき 撮影:小堀 将生