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17.10.25

SHOWROOMで生まれる感動が、僕の原動力|CTO 佐々木康伸インタビュー【前編】

アーティストやアイドル、タレントなどの配信が無料で視聴でき、誰でもすぐに生配信が可能な双方向コミュニケーションのライブ動画ストリーミングプラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」。このサービスの立ち上げに携わり、テクノロジーの屋台骨を支え続けてきたエンジニアがいます。SHOWROOM株式会社のCTO 佐々木康伸です。

 

決して順風満帆なことばかりではなかったSHOWROOMの開発・運営。時には、苦しい局面を迎えたこともあったといいます。けれど、どんなときも彼は強い情熱を持ち、知恵を絞り、数多くの課題をフルスイングで乗り越えてきました。

 

前編・後編の2回に分けてお届けする本インタビュー。前編は、SHOWROOM誕生秘話やサービスが辿ってきた道のりについて佐々木が語ります。彼を突き動かした、エンジニアとしての“信念”は何だったのでしょうか?

 

SHOWROOMが産声をあげた日

――どのような経緯で、佐々木さんはSHOWROOM開発に携わるようになったんですか?

 

佐々木:2013年7月の上旬に、DeNAに入社して間もない頃の前田裕二さん(現・SHOWROOM株式会社 代表取締役社長)がエンジニアを探していたんです。彼のオーダーは「泥臭く頑張れるエンジニア」でした。僕がそういう要素を持っていたので、声がかかったんです。

SHOWROOM株式会社 CTO 佐々木 康伸
ITベンダー企業を経て2008年に株式会社モンスター・ラボに入社し、自社の音楽配信サービスやソーシャルアプリの開発を行う。2010年DeNAに入社後、Mobageの開発・運用や音楽アプリGroovyの開発に携わる。2013年に代表の前田裕二とSHOWROOMのサービス立ち上げ。2015年にDeNAからSHOWROOM株式会社として分社化。

 

――それを機に、SHOWROOMプロジェクトに参画したと。

 

佐々木:そうですね。プロジェクトに参画したら、彼から非常に熱いメールが送られて来ました。その後、7月12日に対面で彼と話して、翌日にはプロジェクトのキックオフ。非常に速いスピード感で進んでいきました。 

 

――SHOWROOMのサービスコンセプトはすんなり決まったんですか?

 

佐々木:そうですね。前田さんは、当時に中国で流行っていたライブ配信のビジネスモデルを日本でも実現しようとしていて。日本で行うには中国と異なる法的課題もありましたが、その解決方法等を含めていかに日本式にローカライズするかを一緒に検討していきました。

 

――どのような方法で、サービスコンセプトをブラッシュアップしていきましたか?

 

佐々木:ひたすらホワイトボードにサービスコンセプトを書いて、前田さんとデザイナーと僕の3人で徹底的に話しあうのを1週間くらい続けました。コミュニケーション量も多くて、すごく濃い時間でした。夜の誰もいないオフィスでひたすら議論したりして。とにかく楽しかったですね。

▲当時の写真。 

 

――サービスコンセプトの策定ではどんなことを重視しましたか?

 

佐々木:視聴者の心の動きを徹底的に考えることです。最初にどういった気持ちでサービスを利用し始めて、どういう機能があると気持ちがどう変化するのか。ひたすらブレークダウンして検討しました。その徹底したUX重視の思想は、サービス立ち上げ当時から現在までずっと変わっていないですね。

 

開発を成功させるため、エンジニアとして大事にしたこと

――サービス開発では、エンジニアとして何を重視しましたか?

 

佐々木:SHOWROOMって、プロジェクトが開始してからリリースまで4か月くらいなんですよ。さらに、プロトタイプを作って社内承認が出て、実際に開発が始まったのは8月から。開発期間は3か月くらいしかなくて、かなりギリギリなスケジュールだったんです。そのタイムラインでリリースするために、気をつけた点としては3つあります。

 

1. 最低限の機能だけ作る。注力する部分とそうでない部分を明確にする

佐々木:これは、MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)という考え方です。サービスを提供するにあたり「これだけは落とせない」という機能だけをまずは実装しました。でも、ただ機能を削ぎ落とすだけではなく、「視聴者に提供したい体験は何か?」を常にブレずに考えるようにしていましたね。

 

だから、観客のアバターの動きやギフトのアニメーション・音など、配信画面のUI・UX向上にはとにかく時間を使いました。そこが優れていないと視聴者は楽しめないので。逆にそれ以外の機能は、かなり突貫でシンプルな機能だけを実装したことを覚えています。

 

2.技術的に不明確な点は、事前調査によってある程度クリアにしておく

佐々木:SHOWROOMに携わる前は、ライブ配信のアーキテクチャを考えたことなんてなかったので、「配信サーバーにはどんなプロダクトを使うべきか?」「CDN(Content Delivery Network:コンテンツをWeb上で配信するために最適化されたネットワーク)を用いるべきか否か?」などをきちんと事前調査しました。

 

でも、この調査もやり出すとキリがなくなるので、コスト面と運用実現性の目処がある程度立ったら、切り上げる踏ん切りの良さも必要だと思います。

 

3.最低限のスケーラビリティを担保&かかるコストを考慮しておく

佐々木:仮にサービスのトラフィックが増えても、サーバーを増やしたりパッチを当てたりすればスケールできるような作りにしておきました。負荷試験も事前にしっかりやりましたし。

 

それから、動画配信のサービスの場合、運営にあたりどれくらいのコストがかかるのかは絶対に調査しておいた方がいいです。使用できる予算を元に、オンプレにするのか、クラウドにするのか、クラウドの場合どのサービスを使うのかを慎重に検討した方がいいと思います。

▲SHOWROOM社内の一画には、ギターやベースなどの楽器がズラリ。

 

苦しかった時期、いかにして踏ん張ったか

――SHOWROOMは開始当初から順調でしたか?

 

佐々木:いえ。今だから言えますけど、最初はなかなか軌道に乗らなかったんです。実は3か月目まで全く売り上げが伸びなくて、サービス終了の候補になっていました。あの時期は本当に大変でしたね。僕らは諦めていなかったですけど、「これやばい」みたいな雰囲気は社内にありました。

 

――苦しい時期でも踏ん張れたのは、どうしてだと思いますか?

 

佐々木:それはきっと、SHOWROOMメンバーが負けず嫌いだったからじゃないでしょうか(笑)。みんな、絶対にサービスを成長させようという気持ちが強かったんですよ。だから、周りにどんなことを言われても、挫けなかった。

 

それから、苦しい局面でも、サービスを成長させる施策のアイデアが山ほど出ていたのは大きかったと思います。あれやろう、これやろう、これもやりたい、あれもやっちゃおうみたいな。だから、ポジティブな気持ちで仕事に向き合えていましたね。

 

――その時期に実装した機能の中で、SHOWROOM飛躍のきっかけとなったものはありますか?

 

佐々木:事業が急成長できたのは、視聴者と配信者が一緒に盛り上がれるイベントを導入したことが大きいと思います。SHOWROOMって、配信者だけではなく、視聴者も一体となって場を盛り上げることで完成するサービス。だから、両者の熱量が高まる仕組みを設けることがカギなんです。

 

それに関連してすごく印象に残っているエピソードがあって、第一回目のイベントをやったとき、最終日に配信者の女の子全員が号泣していたんですよ。最後の最後まで誰が勝つかわからないという状況で、「ここまで応援してくれてありがとう」って視聴者のみんなに感謝しながら。それを観ている視聴者も「本当に頑張ったね」ってお互いに称え合って。僕自身、そのシーンを観てめちゃくちゃ感動してしまったんですよね。

 

――泣けますね。視聴者が参加する“きっかけ”を作ること。それがSHOWROOM成長の秘訣だったんですね。

 

SHOWROOM新規事業の取り組み

佐々木:実は現在、新規事業が動いています。完全に新規のアプリを開発しているんです。これは、僕1人だけでこっそり開発を進めています。

 

――SHOWROOMの運営はとても上手くいっていると思うのですが、あえて新規事業に手を出すのはどうしてですか?

 

佐々木:ずっと今の事業“だけ”でいけるかというと、そうではないと考えているからです。上手くいっているときこそ、色んなことにチャレンジする文化や体制を作っておかないと、いざというとき絶対に困るなと思っていて。だから、今のうちからやっているという感じですね。次の種をまいておくというか。

 

――具体的には、どんなアプリを作っているんですか?

 

佐々木:動画を使って友だち同士でコミュニケーションできるアプリを開発しています。

 

――なぜ、“友だち同士”に着目したんですか?

佐々木:世の中にライブ配信をする人がなかなか増えないのは、「恥ずかしい」という課題があるからだと考えたためです。見ず知らずの視聴者に顔や声を晒すのって、慣れていない人にとってはけっこう抵抗があるじゃないですか。

 

それって、“パブリック”な場所に自分をさらけ出すからなんですよね。だから、まずは“クローズド”な場所。つまり友だち同士で動画によるコミュニケーションをするところからスタートすれば、ライブ配信に対する心理的障壁がかなり低くなると考えたんです。

 

例えば、自分の考えを文章に書く場合、ブログで世界中に発信するよりも、友だちにLINEやメールで送る方がずっと気楽じゃないですか。それと同じです。だから、まずはクローズドなライブ配信に慣れてもらって、次のフェーズとしてオープンなライブ配信に結びつけられればいいなと思ってサービス設計をしています。

 

実はこれ、海外で流行っているアプリを参考にしているんです。Skypeをもっとカジュアルにしたようなビデオチャット。それがアメリカのティーンの間で流行っていて。絶対にそういう形式のサービスが日本でも来るなっていう直感があるので、自分でも作り始めたという感じですね。

 

――SHOWROOMが、もともと中国で流行っていたサービスからアイデアを得たのとすごく似ていますね。佐々木さんは、海外で流行っているサービスの情報はなるべくキャッチアップしているんですか?

 

佐々木:していますね。アプリのランキングとか、めちゃくちゃ見ていて。人気が急上昇しているアプリは必ず触ってみて、なんで流行っているのかを分析しています。これは、新サービスを立ち上げたいと思っている方にはすごく有効な勉強法なので、おすすめです。

 

CTOとしての技術的トライアル

――CTOとして、SHOWROOM開発における技術的トライアルは何かしていますか?

 

佐々木:大きく分けて2つの技術的トライアルをしています。まず1つ目は、アーキテクチャの改善。今、SHOWROOMってPerlで作られているんですよ。サービス立ち上げ当時はDeNAでPerlが主流だったので、その流れで。

 

でも、だんだんと技術的負債も溜まってきているのと、Perlだけでのエンジニア採用はけっこう厳しい部分もあるので、マイクロサービス的に各機能を徐々に疎結合にして、既存アーキテクチャに依存しない開発ができるような取り組みをしています。

 

すでに一部のAPIはGoogle App Engineで動いていたり、新規開発している機能にはScalaを使っていたりと、より良いアーキテクチャになるよう改善し続けている最中ですね。

 

それから2つ目としては、新たな技術へのトライ。VRのライブ配信は継続してチャレンジし続けているのと、AI(人工知能)を使ってCS改善や大量の動画データの分析などができないかを検討しているところです。

 

SHOWROOMに携わるすべての人が、自分を支えてくれている

――佐々木さんのキャリアにおいて、SHOWROOMはどういう意味を持つサービスだと思いますか?

 

佐々木:自分の人生において大きなターニングポイントになったサービスだと思います。ゼロから作って、運用して、さらに会社を立ち上げて組織作りして。ITサービスのありとあらゆる体験をしたことで、今まで見えていなかったことが少しずつ見えてきました。

 

そういう意味で言うと、自分の成長とSHOWROOMってすごくリンクしているかもしれないです。SHOWROOMがダメなときは自分もすごく落ち込むし。調子いいときは自分も成長できるし。そういうサービスに出会えたのは、すごく幸せなことだなと思います。

 

――苦しいことも山ほど経験したと思いますが、それでも頑張ってこれたのって、なぜでしょうか?

 

佐々木:きっと、仕事していて面白いからでしょうね。「こういうサービスが世の中にあってほしい」って自分で考えて生み出したものだから、今後もずっと残ってほしいって気持ちがすごく強いです。それに、たくさんの視聴者が楽しんでくれていたり、配信者が頑張ってパフォーマンスしてくれているのを見ると、「絶対に潰せないな」って強く思いますよ。

 

――SHOWROOMに携わる人たちが、佐々木さんを突き動かしている、と。

 

佐々木:そうですね。配信者や視聴者だけではなくて、協力してくださる関係者の方々や、社員のみんなもそう。そういった人たちの笑顔を見ていると、頑張らなきゃって思えるんです。だから、僕がフルスイングできるのは、SHOWROOMに携わるすべての人たちのおかげですよ。心からそう感じています。

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