DeNAには優秀なデータサイエンティストがそろっていると言われています。先日も世界最大級のAIコンペティション「Kaggle(カグル)(※1)」にて開催されたゲームAIの国際コンペティション「Hungry Geese」で、弊社所属の田中一樹とquantum社の大渡勝己(DeNAでも強化学習の研究開発に従事)のチームHandyRLが優勝(※2)いたしました。
新卒でDeNAを選んだデータサイエンティストは、どこでDeNAに興味を持ち、どんな経緯を経て入社に至ったのか。そしてDeNAにどんな期待をし、実際入社してみて仕事内容、働き方はどうだったのか……。
そこで入社3年以内の新卒データサイエンティスト3名に、入社前〜就職活動中〜入社後のストーリーについて聞きました。
※1……主催者がデータと課題を提供し、参加者は3ヶ月程度の期間内でもっとも性能の高いAIをつくることを競い合う、世界最大のコンペティション。
※2……https://dena.com/jp/press/4774
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データサイエンスを社会に役立てたい
ーー皆さんの具体的な仕事内容について、それぞれ教えてください。
佐藤 倫(以下、佐藤):私は現在Mobility Technologiesに出向し、タクシーアプリ『GO』にまつわるデータ分析を行っています。具体的には、タクシーのGPSなどの動態データや地図データを組み合わせ、タクシーが今どの道にいるのかという問題(マップマッチ)や、何分で目的地に到着できるかを予測する問題(到着時間予測)に主に携わっています。
ーー出向はご自身の希望からでしょうか?
佐藤:入社時に「データサイエンスを社会に役立てたい」という想いがありました。タクシーアプリを効率化することでアプリユーザーの皆さまや乗務員の方の役に立てることに魅力を感じ、入社後1ヶ月で出向し現在に至ります。
ーー吉田さんはいかがでしょうか?
吉田 知貴(以下、吉田):私はシステム本部のデータサイエンス部に所属し、主に社外の最適化案件に携わっています。公開できない業務も多いのですが、たとえば、関西電力株式会社の石炭燃料運用をAIで最適化する案件などです。現在、これらの案件を含むソリューション事業はALGO ARTIS社としてスピンオフされていますが、DeNAとしては引き続き協力しているため、私も継続して携わっています。
ーーそれはいつからですか?
吉田:入社後、約二週間の全体研修を終えてすぐに今の部署に配属されて、すぐに今の案件にアサインされました。理由としては、その案件のアセスメントが始まったばかりだったこと、私が学生時代に最適化をやっていたからだと思います。
ーー笹木さんは?
笹木 陸(以下、笹木):私が現在携わっているプロジェクトは、社外・社内あわせて3つあります。その内2つでは、外部顧客の課題解決や、外部顧客と共に新たな価値をもつサービスを作り出すために、データを活用した企画の提案やデータの分析・AIモデル開発など技術的支援を行っています。残り1つは社内のサービスで、ユーザー体験を向上させるためにデータサイエンスの活用を検討しています。
ーーどんな役割を担っているんでしょう。
笹木:サービスが目指す方向性や現在の抱えている課題をもとに、具体的なAIモデルの課題設定を行う、つまりサービスを運営する事業部とKagglerとの間の橋渡しを行っています。
もともとは新卒で入社してから2年間、Kagglerの方と同様に実際に手を動かしてより高い精度のAIモデルを開発したり、既にリリースされたサービスのデータを分析するという業務を担っていました。しかしその中で、技術の素早い進歩や、多くの試行錯誤が必要といったAIプロジェクト独特の不確実性や困難さを感じました。そこで、プロジェクトの計画や企画段階から開発するメンバーが携わることでスムーズな開発ができるのではないかと思い、プロジェクト開発の上流から行うチームに異動し現在に至ります。
サマーインターンに参加。働きやすそうだと確信し本選考へ
ーーみなさんがデータサイエンティストを目指したきっかけを教えてください。
吉田:高校生くらいまでは特に目指す目標もなく、大学で情報工学科に入学しました。情報工学科で学んでいるうちに機械学習に興味を持ち、機械学習を使った職に就きたいと思いました。
佐藤:小学校より自分は理系だと思っていたので大学は理工系に進もうと考えていましたが当時は電気電子系を志望していましたね。
笹木:大学時代途中までデータサイエンスにはまったく興味が無く、モノづくりが好きで航空宇宙工学を専攻していました。
2010年代からにわかに盛り上がりだしたAIブームの流れで、データがあればどのような分野でも活躍できることにわくわくしたこと、PC1台でどのようなモノづくりでもできてしまうIT技術やプログラミングにハマっていたこともあり、データサイエンス関係の研究室に入ったことが大きな転換でした。
ーー学生時代はどんな勉強をしていたんでしょうか。
吉田:高校時代は「大学への数学」や「数学の底力」など、数学ばかりやってました。高校卒業後は、BASIC、C、Java、C++とプログラミングを独学で学びました。大学では、学部の講義に加えて「はじめてのパターン認識」や「PRML」「ESL」で機械学習を学び、「Convex Optimization」や「機械学習のための連続最適化」で最適化を学びました。とはいえ、主に凸関数の連続最適化だったので、今やっている案件のヒューリスティック最適化とは分野が異なりますが。
笹木:AIブームの時期にさまざまなAIモデルや技術が矢継ぎ早に出てきて、その流れに遅れないために、自分でそれらをつくる・使える技術、具体的にはプログラミングやアルゴリズムに関して勉強していました。
佐藤:大学入学後に初めてプログラミングに触り、情報系へと志望が移っていき最終的にAI系の研究室に入ることとなりました。研究室に入ってデータサイエンスという単語を知ったくらいでそれまではあまり意識をしていませんでした。
ーー研究室では何を?
佐藤:バイオインフォマティクスという生命系と情報系の分野でタンパク質に関するAIの研究をしていました。
ーー就職活動中のことをお聞きします。なぜDeNAを受けようと思ったのでしょうか?
吉田:学生支援の就活サイトのイベントで大学にいくつかの企業が来ていて、そこでDeNAがAIをやっていることを知り、サマーインターンに応募したことがきっかけです。1ヶ月のインターンに参加して、社内の雰囲気が良く働きやすそうだと思って本選考にも応募しました。
佐藤:バイオインフォマティクスの研究をしていく中でDeNAが創薬の分野に挑戦しているのを知り、また学会で創薬を担当している方とお会いしたことで興味がわきました。
笹木:もともとDeNAに対してはMobageと野球の印象しか無く、特に就職への意識はしていませんでした。しかしデータサイエンティストを専門枠で採用開始したことを知って興味を持ち、事業領域やビジョンを深く見ていくと、“永久ベンチャー”というビジョンを掲げ、さまざまな分野に幅広く手を伸ばしていることを知りました。
「この会社にはいろいろなおもしろいデータがある。それらを組み合わせれば、データサイエンスでよりおもしろいサービスができる」と確信して受けました。さまざまな分野の、多様なデータに触れられるという環境に憧れた、ということですね。
Kaggleはあくまで付加価値。やっていないことに不安はなかった
ーー就職活動前、活動中のDeNAの印象について教えてください。
佐藤:とても優秀な方が集まっている印象でした。Kaggleをやってなかったこともあり、自分には手が届かない会社だと思っていたのですが、先輩からの後押しもあり受けてみることにしました。
吉田:就職活動前はDeNAがAIをやっていることを知りませんでした。就活中はDeNA=Kaggle集団というイメージで、入社したら自分もKaggleをやらなければいけないと思ってましたね。
笹木:就職活動前は、ロジカルな人が集まってKaggleなどの専門的な活動を行っている方々というイメージが強かったです。
活動中には、立場や経歴に関わらず組織がフラットで、データサイエンス経験が浅い方に対しても誠実に接し、フランクに意見交換していたという印象を持ちました。私もKaggleをやっていませんでしたが、Kaggle経験やこれまでの成果とは関係なく、筋の通った意見を発することが求められている組織だなと感じました。
ーーみなさんKaggle未経験だったのですね。DeNAにはKaggleの印象があったかと思いますが、受けるにあたってKaggleをやってないことに対して不安はありました?
吉田:はい、不安はありました。内定をもらってからも入社までの時間でKaggleをやらなければいけないという使命感に駆り立てられましたが、研究が忙しく結局ほとんど取り組むことができませんでした。
佐藤:正直に言うと入社前日まで不安がありました。Kaggleが苦手な人に対しての圧力などがあったりするのではないかと恐怖していました。
笹木:私の場合、DeNAにはデータサイエンスを実応用してサービスを作りたいという気持ちで入社したので、Kaggleはあくまで付加価値。やっていないことに不安はありませんでした。実際にプロジェクトを回していいものにするためには幅広いスキルが必要で、そちらの方に強みがあったと当時の自分は、なぜか自信を持っていました(笑)。
メンターへの憧れから入社後Kaggleに取り組んだ
ーーでは実際入社してみてどうでしたか。入社前の印象、同じところ違ったところなど、教えてください。
吉田:インターンで雰囲気は知っていたので、社内の雰囲気、同僚との関わりやすさ、関わる社員の能力の高さ、ほどよく仕事を任されるところなど、印象は特に変わらなかったです。また、インターンでもそうでしたが、過干渉にならず、ほどよい関わり具合で業務を任せてもらえるので、自分で仕事をしている感があるのがいいですね。
佐藤:Kaggleが強い会社というイメージでしたが、実際入ってみるとKaggle をしていない人も多く在籍し、みなさん多大な技術力や積極性などを有していました。私のメンターは入社前はKaggle Expertでしたがその後半年ほどでMasterになっており(現在はGrand Masterになっていますが)、メンターへの憧れから入社後Kaggleに取り組むようになりました。
ーー自然とKaggleに触れる環境があるという感じですか?
佐藤:Kaggleをやっていない人が入社しても、Kaggleのための計算機や業務時間をもらえます。それに周りには先生となるKagglerが多数いるので、入社前はKaggleをやってなかったという人にも取り組みやすい、すごくいい環境だなと思っています。
ーー同僚、先輩、上司…一緒に働く人はどんなタイプの人が多いでしょうか?
佐藤:プロダクトの価値を高めるためにできることをとにかくやりまくる人が多いです。自らでデータを探索して課題やそれを解決する施策を立案し事業部へ上げる、そういった意欲高い人が多いです。
笹木:データサイエンス部に関して言えば、優秀なKagglerたちが理路整然とデータサイエンス技術に関して議論しているのかと思っていたのですが、実際はもっとカオスな状態でした。年齢、立場や役割に関わらず、現状をよりよくするためにフィードバックをし合える想像以上にラフな組織だと思いましたし、純粋にデータサイエンス技術の向上に興味関心を持つメンバーが集まっているのだなと感じました。
ーー学生時代にしていたことは実務にどのように役立ちましたか。
吉田:業務が最適化案件ということもあり、ヒューリスティック最適化を行うためのプログラミングの知識、基本的なアルゴリズムの知識が役に立ちました。インターンの課題準備などでは、機械学習の知識を使いました。
佐藤:学生時代は関連研究や最新手法のサーベイを良くしていましたが、その文献を漁る姿勢はいかされていると感じています。
1年目から1人の戦力として案件を任される
ーーDeNAのデータサイエンティストとして、今後どんなキャリアビジョンを描いていますか?
吉田:まずは、自分の活躍できる分野・場所を見出すことです。「自分の強みはこれ!」と自信持って言えるようになり、その分野に自信を持って頼られるような人材になりたいです。
佐藤:エンジニアリングに関してもスキルアップさせ、プロダクトの初めから最後までを一気通貫に取り組めるような力をつけたいです。将来的には社会に貢献できる、特に医療や高齢化・温暖化など今後または現在直面しているような社会課題の解決の一助となるようなデータサイエンティストになりたいです。
笹木:世界にはまだまだデータサイエンスを含むAI技術で解決できる課題が山ほどあると思います。特に日本においてはさまざまな課題が既に顕在化しており、これらをAIで解決できれば間違いなくデライトを届けられるはずです。近年のDX化やデジタル化と共に集積されるデータも増え、それに伴ってAIで解決できる課題、新たに提供できる価値も間違いなく増えると確信しているので、旗振り役となって課題を解決し、顧客を笑顔にできる人材になりたいです。
ーー入社してみて感じた、DeNAならではのやりがいや働き方の特徴について教えてください。
吉田:言われたことをただやるだけの下っ端として働くのではなく、1年目から1人の戦力として案件を任されるようなやりがいを感じています。
働き方という点では、リモート勤務なのでかなり働きやすいです。聞きたいことがあればSlackに投げればよいし、必要に応じてZoomミーティングをすればリモートでも不便はまったく感じません。上下関係を強く感じることもなく、社員間のコミュニケーションがしやすいのがとても働きやすいです。Slackのtimesの文化(社内版Twitterのような位置付け)は、コミュニケーションのハードルをさらに下げてくれていると思ってます。
佐藤:優秀な人材が集まり、かつ勉強する時間や環境を整えて成長する場を与えてくれていることに私はとても魅力を感じています。たとえばKaggle を学生時代はやらなかったですが今こうして打ち込めているのもDeNA に入っていなければなかったと思います。
笹木:DeNAには、さまざまな分野で、それぞれ専門能力を持つ、優秀で尖った人が溢れています。互いの専門は違えど尊重し合い、プロダクトを共につくる中で利用者や顧客に対し最大限のデライトを届けるという方向にメンバー間で知見を出し合って徹底的に磨き上げながら進んでいます。
その結果、完成したプロダクトに対しポジティブなフィードバックが返ってきたときに、笑顔にできるモノづくりができてよかったと感じます。そこで関わったメンバーが成長した姿でまた出会い、よりいいプロダクトを作り上げる、この繰り返しで成長しているんだなと実感しています。
Kaggleより向上心や学習意欲の方が重要だと思う
ーーどんな人がDeNAに合うと思いますか?
吉田:1年目から仕事を任されたい人、自分自身の成長させたい欲のある人、自分で考えて行動できる人ですね。同僚には、KaggleだけでなくAtCoderをやっている人や、フロントエンドに興味を持ってWebページを作っている人などもいるので、自分なりに何かやりたいことを持っている人の方がいいかもしれません。
ーーKaggleは必須ではないということですね。
笹木:そうですね。それより、向上心や学習意欲が高いということの方が、データサイエンティストとして活躍するのに重要な要素だと思います。いま最先端の方法やトレンドも数年後に廃れていることはしばしばなので、とても大変ですが継続的にキャッチアップする必要があります。入社後興味がわいてくれば、Kaggleに挑戦するのは悪くないですし、環境は整っています。
佐藤:私自身、学生時代にKaggleをやらずに入社したことに前日まで心配していましたが、なぜか知らないうちにKaggleに取り組んでいますし(笑)、今後もスキルを積んでいきたいと思っています。というのも、Kaggleに取り組むことでコードの資産やさまざまなデータのハンドリングなど今後の業務に活きる部分は大きいと思うからです。
吉田:そうですね。私もKaggleをやらずに入社しましたし、入社後はKaggleはほどほどにという感じです。Kaggleにこだわらず、いろいろ模索して自分の強みが出せる場所を見つけていけばいいかと思います。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。
編集:フルスイング編集部 撮影:小堀 将生