DeNAの「人」と「働き方」の " 今 "を届ける。

対話から生まれた結束力。「kencom×ほけん」エンジニアチームの強さ

2021.04.12

病気を治す「シックケア」から楽しく健康な「ヘルスケア」への転換を目指す、DeNAのヘルスケア事業

その中でゲーミフィケーションなどを取り入れ、日常から楽しく健康になれるよう保険会社様と一緒に取り組んでいるヘルスケアサービス『kencom×ほけん』のシステム開発・運用を行っているのが、DeSCヘルスケアシステム部システム・ソリューショングループです。

ヘルスケア領域の最前線で活躍するユニークなエンジニアチーム。実は「この1年でチームの雰囲気が大きく変わった」と言います。

いったい何が起きていたのでしょうか――。

成長を続けるエンジニアチームのカルチャーと、成長過程のサービスだからこそ得られるモノづくりの醍醐味。さらには彼らが思い描く“未来像”を聞きました。

「エンジニア」と「健康」の共通点

――『kencom×ほけん』はどのようなアプリなのでしょうか?

平山 貴之
▲DeSCヘルスケアシステム部システムソリューショングループ グループマネージャー 平山 貴之(ひらやま たかゆき)
2010年にDeNAに中途入社。広告システム開発やゲーム開発を経て2018年にDeSCヘルスケアにジョイン。サーバーサイド開発経験を元にエンジニアリングマネージャーを務めている。2児の父で趣味は沖釣り。

平山 貴之(以下、平山):DeSCヘルスケアにはすでに健康保険組合向けアプリとして広く利用いただいている『kencom』があります。これをベースに生命保険各社の生保商品サービスとして活用してもらえるようカスタマイズしたアプリが『kencom×ほけん』です。

特定の生命保険会社のサービスを通じて『kencom×ほけん』を使えるようになり、「楽しみながら健康になれる」わけです。

――万が一のとき保険金を受け取る従来型の生命保険とは違い、保険に入ることで「楽しみながらどんどん健康になって病気になるリスクが低くなる」。そんなイメージですか?

平山:はい。また、それぞれの生命保険会社と協力し、各社の実現したいことを組み入れているので、同じ『kencom×ほけん』でも各社で異なる内容になっています。

だから生命保険会社からみれば、他社とサービスを差別化することもでき、営業ツールとしても有効的に活用いただいています。また契約者の方々の行動データをもとにして、新たな保険商品の企画・設計やサービスの向上にも活かせます。

システム開発・運用に取り組みつつ、サービス企画担当部門と協力して、ユーザーやステークホルダーそれぞれに向けてサービス独自の価値を考え抜き、提供しています。

――各社の顧客データも活用するわけですよね?

王 岳宏
▲DeSCヘルスケアシステム部システムソリューショングループ 王 岳宏(おう がくこう)
2018年に中途入社、前職はSaaSプロダクトの設計・開発・改善に携わる。入社後はDeSCヘルスケア株式会社に出向。サーバーエンジニア、テックリードとして『kencom×ほけん』の開発とアーキテクチャ改善を行う。

王 岳宏(以下、王):はい。契約者のライフログデータを分析して活用しています。大切な個人情報を取り扱うことになるので、セキュリティ面の強化を重要視しています。

裏返すと、そうしたセキュリティ面のテクノロジーの信頼度、そしてDeNAの社会的な信用度の高さもあって、こうしたアプリを運営できている自負もあります。

――なるほど。チームのメンバー構成について教えてください。

平山:分野ごとに3チームに分かれていて、サーバーサイドが6名、フロントエンドが2名、アプリが3名のチーム編成です。サーバーサイドに、ビジネスロジックの実装も担当してもらっています。赤木さんも王さんもサーバーサイドのエンジニアですが、王さんにはリードエンジニアとしてチームの推進にも寄与してもらっています。

――皆さんは、希望してこのチームにジョインされたのですか?

赤木 里騎
▲DeSCヘルスケアシステム部システムソリューショングループ 赤木 里騎(あかぎ りき)
2019年に新卒入社。美容系の新規事業を経験後、『kencom×ほけん』エンジニアチームにジョイン。GCPとGo+GKEによるサーバー構築に四苦八苦しながら日々成長する。趣味はパスタ料理。最高のパスタをつくるために日々研鑽を積んでいる。最も得意なのはチーズクリームスープスパゲティ。

赤木 里騎(以下、赤木):はい。私は2019年に新卒で入社後、約1年前にこのチームに異動してきました。ヘルスケア事業を志したきっかけは、大学院生の時に、頑張りすぎて体調を崩したことなんです。

その時に健康に関する本もたくさん読んで「健康ってロジックで考えて解決できる領域が多いな」と感じました。睡眠とか運動とか、ちょっとした日々の行動を変えると確実に成果が現れる。それが面白いなと感じたのが大きいですね。

あとは開発環境に興味を持ったのも理由ですね。入社前には動的型付け言語のみを扱っていましたが、入社後の研修と最初の配属先でGo言語に対する理解が深まりました。次の配属先としていくつかの選択肢がありましたが、『kencom×ほけん』はGo+GKEという環境(※1)でシステムが構築されていたんです。親しみが出てきたGoを利用することができ、さらにGKE(k8s)という全く知見のない経験もできる環境は、チャレンジングで知的好奇心をくすぐられるチームと感じました。

※1…… GKEは、Google Cloud PlatformのKubernetes (k8s)のマネージドサービスです。

王:私は2018年に中途採用でDeNAに入り、以来このチームで活動しています。私も健康に興味があって、日々、歩数や睡眠時間、血圧などをスマホに同期して自分の健康管理をしています。また『kencom×ほけん』はBtoBtoCのプロダクトなので、前職のBtoBサービスの開発経験も活かせるし、自分が興味のあるサービスを自分の手でつくれることに惹かれました。

――やはりその他のメンバーも健康への意識が高い方が多いですか?

平山:そうですね。ヘルスケア事業に関わるメンバーたちは、比較的家庭や子どもを持った方が多く、他の部署と比較すると年齢層も少し高め。必然的に健康への意識も高くなると思います。

この事業に興味を示す方は、健康に関する社会的課題を感じた、家庭を持つことで自分の健康意識が上がった、といった理由が多いですね。

1年で大きく変わったチーム。そこに隠された秘密とは

――健康意識の高い方が多いということですが、チームの雰囲気やカルチャーについてはどうでしょう?

赤木:透明性の高い人が集まっていると感じます。コロナ以降、基本的に皆リモートワークですが、オンラインでのコミュニケーションが活発で、業務の進捗状況もその都度共有されるし、資料の開示も早いので、すごくスムーズに連携ができています。

王:個人個人で動くのではなく、ワンチームで「こと」に向かえていますよね。

平山:『kencom×ほけん』のエンジニアチームはこの1年で大きく変わりましたね、本当に。

――変わったと言うと、1年前はどのような状態だったのですか?

赤木 里騎

平山:当時はシニアエンジニアが多かったんです。その後、赤木さんをはじめ、若手メンバーが増えていきました。

王:そう。赤木さんがジョインした時期は、実のところチームとして課題がありましたよね(笑)。

多くの仕事が属人化していて、「隣のメンバーが何をしているのかもよくわからない」状態。そもそも走りながらこのサービスを構築していたので、「システム全体を把握している人」もいない。全体的にオーナーシップが欠如している状態だったと思います。

平山:チームをどう改善していくかという中で、メンバーがそれぞれアイデアを出し合い、試行錯誤しながらもスピーディーに立て直しをしていきました。

赤木:また1年前と言えば、コロナ禍最初の緊急事態宣言の頃でフルリモートになった時期。ゼロから飛び込んだ僕には、皆さんの人となりもわからない、そんな状態のままでは業務に支障をきたすと不安を感じたタイミングで、平山さんから「雑談ベースのひと言コーナーみたいのやってみる?」と声が上がったんです。

平山 貴之

平山:ちょうどチームは、さっき言った「属人化」などの課題感を持っていましたからね。そこで、オンライン上でのコミュニケーションを増やすためにSlackで雑談チャンネルをつくったり、あえて雑談するためだけのミーティングをしたり、相手を知るコミュニケーションを重ねていきました。軽い気持ちで始めてみたのですが、やってみるとこれが効果絶大でしたね。

赤木:年齢や役職関係なく、仕事以外の話もすることで、色々な気づきがありました。皆さんの話題の幅もすごく広いです。平山さんはよく魚の話をされていますよね。

平山:釣りをして料理するのが趣味なので、魚のさばき方の話とか。カツオを釣りに行ったら、隣の人がマグロを釣っていて驚愕した話とか(笑)。王さんはセミのことを熱く語ったこともありますよね。

王:そうでした。子どもと夏にセミ取りに行ったら、めちゃくちゃ詳しくなったんですよ(笑)。

王 岳宏

赤木:実は王さんに初めて会った頃は、「怖い方なのかな」って思っていました。でも、この雑談タイムで人となりが知れたり、「Zoomしましょうか?」と気軽にチャットしてくださったりしたおかげで印象が変わり、とても話しやすくなりました。技術的な相談もめちゃくちゃしやすくなりましたね。

――普段の何気ないコミュニケーションが、日々の業務も円滑にしてくれるのですね。

平山:エンジニアって、何かを話す時に、事前にプレゼンテーションの資料を準備した方が話しやすい、という人が割といて、一人が資料をつくり出したことをきっかけに、今では、皆勝手に資料まで用意して雑談タイムを楽しんでいます。

今では評判を聞きつけてチーム外からゲストが参加することもよくあります。この前は、役員の方が来て、「自身がハマっている自転車という趣味の魅力」の話をされていましたね。

――チームの信頼感や心理的安全性を醸成するために、有用だったわけですね。その他に取り組んだことはありますか?

平山:チームの意思決定をスピードアップするために、王さんに私の権限を一部委譲しました。

王:それまでは都度相談したり確認したりしていたことが、権限をもらったことで業務が進めやすくなり、同時に開発スピードも格段に上がったと思います。

――権限委譲することでチームが大きく変わる確信があったのですか?

平山:一緒に仕事をする中で、王さんの考えている事も理解していたし、任せてみたらきっと大胆に動いてくれる期待はありました。でも、それによってチーム全体にどう影響を与えるのか、といったところまでイメージを描けていたわけではありません。あくまでも結果論。頼もしいメンバーが揃っていたからこその結果です。

あと他にもお互いの領域を超えるような取り組みとして、担当領域を超えた短期留学もありますね。

――短期留学?

王:興味があれば、他の領域に挑戦することができるという施策のひとつです。先日の「DeNA TechCon 2021」で発表しましたが、あえてはっきり領域を分けず課題に挑む。それが僕らチームの考え方です(※2)。

※2……「DeNA TechCon 2021」より。「MonorepoとOneTeamでMicroservicesの課題に挑む」動画はこちら

赤木:大きなチームだと担当領域がきっちり分かれていることが多いと思うのですが、少数精鋭のチームだからこその面白い取り組みだと思っています。

私もサーバーサイドのエンジニアでありながら、今はフロントエンド側に短期留学しています。個人で開発する場合は一人でサーバーもフロントも書きますが、業務レベルでフロントのコード(web)を見るのは初めての体験。今回短期留学をしたことで、フロント側のエンジニアの方に聞かなくても『kencom×ほけん』のフロントのコードを自分で追える範囲が広がりました。また、APIのちょっとした修正が生じたとき、フロント側の手間を取らせることなく比較的気軽に自分で修正できるのはよい体験になりました。

また、フロント側からするとサーバー側での実装はブラックボックスのようなものです。今回の短期留学での取り組みを活かし、これからはどちらもコーディングできるエンジニアになりたいと思っています。

――エンジニアとして視野を広げることもできるし、全体的な品質も上がる。これも平山さんの狙いですか?

平山:いえ、これもそんなきれいなロードマップを描いていたわけではないです(笑)。フロントエンドエンジニアから技術の幅を持たせたいっていう意見があって、各個人とチーム、それぞれが向かいたい方向性を実現するためにどうするのが最適なのかを考えた結果、このような短期留学という一つの形ができました。

――立ち上がって間もないプロダクトだからこそ、組織としても完成形になっておらず、皆で試行錯誤しながらつくり上げていると?

平山:そうですね。チャレンジしたい意欲を拾い上げて、施策に落とし込んでいくことで、とてもよいチームになったと思います。

いい意味で、お互いに領空侵犯をしている形です。エンジニアとして各自得意分野は持っているものの、そこだけに留まるのではなく、他の分野にも気軽に足を踏み入れながらお互いに協力し合えている。ちょっとくらい境界線越えても事故にならなければ問題ないし、それ以上のメリットがあると感じています。

王:自由な裁量があるから、エンジニアとしてもチャレンジしやすい環境だと感じます。新しい技術にもチャレンジできるので、学び、メンバーと切磋琢磨しながら進めています。新機能の開発も技術負債の返済も、チームメンバー皆で調査と検証を繰り返しながら挑戦しているところです。

赤木:あと、このチームの振り返り会も特徴のひとつかと。振り返りを共有して終わり、ではなく、問題があればどう改善するのかまできちんと議論する。私のような若手の発言にも真摯に向き合ってくれて、とてもありがたいと思っています。

先日も、振り返り会での発言がきっかけで改善されたことがあったんですね。「作業に集中する時間が細切れになっていて効率が悪い」と声をあげたところ、ミーティングの時期や頻度、進め方を変えることができ、まとまった時間が取れるようになりました(※3)。

※3……「若手から見たリモートワーク時代のチームビルディング」の記事はこちら

王:曖昧な状態を残しておきたくない、解決して前に進みたいという考えのメンバーが多いからだと思います。何か問題が発生しても、気軽に声を上げられる雰囲気がありますね。

平山:DeNAのカルチャーでもある「誰が言ったかではなく何を言ったか」という考えがチームに根付いている。「こう思っていたのですが……」と後々言われることがないのも、オープンに話せている証拠ではないでしょうか。

無限の可能性を秘めたヘルスケア領域

――さまざまな変化を経て現在のチームをつくってきたというのが伝わってきます。今後の皆さんのビジョンを教えてください。

赤木:世の中に大きなインパクトを与えるような取り組みをしたいと思っています。『kencom×ほけん』以外にも、認知症や子宮頸がんなど、DeNAにはヘルスケア領域のさまざまな事業に携わるチームがあります。たとえば我々が扱う健康領域のデータを創薬領域に活かしたり、横のつながりを強固にすることで、大きなシナジーを生み出せる可能性が高いと考えています。

王:データの活用もそうですし、開発チームのナレッジをシェアしながら、いいサービスをつくり、提供価値を高めたいですね。

平山:健康って、体重が減るとか、肌が綺麗になるとか、人や文脈によってさまざまな側面がある。明示的に健康になりたい、という強い欲求がなくても、楽しんでいるうちに健康になれるようなサービスをつくる、というのは結構な野望だと思っています。

――では最後に、その大きなビジョンを実現するために、どんな方に加わってほしいと思われますか?

赤木:私は、素直で透明な心を持った人、ですね。自由闊達な議論を交わす上で、それはとても大切な要素だと思います。そんな方と一緒によりよいモノづくりをしていきたいです。

王:確かに。我々が取り組むのは個人の開発ではなく、チームでの開発です。最低限のスキルがある上で、協調性と改善意欲のある人がいいですね。

平山:すごくハイレベルな開発スキルや知見よりも、チームや事業のビジョンやミッションに共感できることが重要だと思います。健康に興味がある方、健康への世の中の意識を変えたい方とワンチームで取り組み、挑戦し続けたいですね。

DeNAエンジニアの発信・登壇内容・Blogなど、最新情報は公式Twitterアカウント(@DeNAxTech)で発信しています。ぜひご確認ください!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※本インタビュー・撮影は、政府公表のガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインに沿って実施しています。

聞き手:箱田 高樹 執筆:日下部 沙織 編集:川越 ゆき 撮影:内田 麻美

open menu