デザイナーを目指す学生を対象にしたウィンターインターン「デザインコース」が、2021年2月6日(土)、7日(日)の2日間にわたって実施されました。
これからの時代、デザインはビジネスや事業において重要な役割を果たすことになります。DeNAでも「デザイン経営」を掲げ、全社で取り組んでいます。その中心を担うデザイナーには、つくり上げたクリエイティブをユーザーへどのように届け、世の中がどう変化するかまでのストーリーをデザインする力が求められます。
課題の抽出からサービスを発案、UX/UIをとことん考え、サービスをつくり上げるところまで一貫して行った実践型インターンシップ。未来のデザイナーである学生たちは何を学び、何を感じたのでしょうか。
今回、インターンシップ参加者の中から受賞した学生3名と、DeNAデザイン本部本部長兼執行役員、増田真也(ますだ しんや)とのオンライン座談会が開かれました。ウィンターインターンの企画から実施までを担当したデザイン本部、徐 愛琳(じょ あいり)と共に、デザイナーのキャリアについて語ってもらいました。
熱い冬の思い出、ウィンターインターンで得たもの
徐
みなさん受賞おめでとうございます。ウィンターインターンはどうでしたか?参加した感想をお聞かせください。
松本
スピードのある2日間でした。1日目は案が決まらなくて不安でしたが、2日間でちゃんとひとつのサービスを完成までさせることができたのはすごくいい経験でした。
長岡
濃かったです。新規事業のアイデアを考えて提供するまでを2日間でやると聞いてどうなることかと。メンターの支えやいろんな方からのフィードバックがあって、サービスを考えてデザインするまでに必要なすべてのことが学べました。
皆川
フィードバックや寸評が充実していてすごく学べました。2日間の期間中はもちろんですが、その後もフィードバックをいただき、成果物を自信を持ってポートフォリオに載せることができました!まずミニマムにつくってから大きくするといった実際の事業の始め方など、現場のナレッジが伺えてとても面白かったです。
徐
今回の課題は、「コロナをきっかけに対面コミュニケーションができなくなった領域でのサービスを考えてください」でしたが、正直なところ、私たちメンター陣でも難しいと思いました。最後の1秒まで、みなさんのカーソルが動いているのを横で見ていましたが、粘り強さや諦めずにつくり終える根性が素晴らしいですね。普段から、みなさんそれぞれの視点で、社会で何が起こっているのかに関心を持っていることがわかりました。
インターネットサービスのデザイナーを選ぶ理由
徐
ここからは、みなさんに事前に考えてきていただいた質問を増田さんに聞いてもらおうと思います。まずは長岡さんからお願いします。
長岡
増田さんは学生時代にデザインの勉強をされていましたが、ネットサービス事業に携わることになった経緯が知りたいです。
増田
僕が学生の頃は、まだインターネット企業があまりなくって。mixi(ミクシィ)ができて、この面白さは“今後くる”とは感じていました。ただ、自分はデザインよりも企画や文章を書くことが得意だったから、出版社のインターネット部門に入って編集の仕事などを始めました。
でも、当時雑誌って売れても20万部とか30万部だったんです。そんなときにDeNAがモバゲーを立ち上げて、まだスマホじゃなくてガラケーの時代だったけど、たった一日で数百万人が見ていたんですよね。華やかに見えるのはマスコミだったけど、実際に影響力がありユーザーを動かせるのはインターネットだと気づいて、インターネット業界でやっていくことを決めてDeNAに入ったんです。
徐
松本さんからも同様の質問があるそうです。
松本
はい。環境デザイン学科出身でIT業界で活躍されている増田さんは、空間デザインからIT業界を目指す自分に重なりました。IT業界でデザイナーとして働こうと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
増田
最近になって自分の中で関係があったのかもしれないなと思うのが、空間デザインや建築は数学的なところがあって、僕もCADで図面を書いたり構造計算ですごく数字を使っていました。テレビの視聴率や雑誌の発行部数は、実際に何人が見ているか正確にはわからないけど、インターネットのアプリやWebサイトは、1人単位、1秒単位まで人の動きが数字で出てきます。結構そういう話に苦手意識を持つデザイナーも多いとは思うのですが、自分は抵抗なく入っていけたような気がします。
徐
より多くの人に自分のつくったものを届けたいという想いがあったんですね。
増田
DeNAに入ったときは、まさにそうでしたね。自分がつくっているものをより多くの人に見てもらう、今で言うと「デライトを届ける」という言葉になるけど、それが実現されるのはどこだろうと考えると、やっぱりインターネットだったし、当時モバゲーを伸ばしていたDeNAでした。
徐
今、増田さんがみなさんと同じ大学生だったら、IT業界を選んでいると思いますか?
増田
完全にITです。今後よりIoTや車の自動運転などが進んでいくと思いますが、その中心はインターネットやソフトウェアであるという見方を僕はしています。その根幹にいたほうがいいと思うから、僕は迷いなくインターネットです。
徐
増田さんの中では、就活においてそういう選び方の軸があったのですね。
増田
僕がDeNAに入ったときは、美術大学の出身者やデザイナーでインターンネット業界にいく人は少数派でした。ユーザーを見て企画やUXを考える視点を必要としている今のインターネット業界に対して、自分たちがどうインパクトを与えられるか考えると、デザインを学んでいる学生さんはみんな強みが活かせると思うし、バリューが出せると思っています。
デザイナーに求められるもの、それは事業を引っ張る力
徐
次は、皆川さんからも質問をお願いします。
皆川
ずばりUX/UIデザイナーには、どのような力が求められていると思いますか?
増田
DeNAではという観点で語ると、徐さんたち若いメンバーにもよくする話ではあるけれど、今の時代、サービスを引っ張っていくのは絶対にデザイナーです。UIをつくれる、UXを考えられるだけじゃなくて、サービスを引っ張っていける人材になってほしいです。
僕らが学生の時は、まだまだテレビの影響が強くて同じものを見ている大量生産・大量消費の時代でしたが、今はインターネットが出てきて、みんなが自分の好きなものを見て好きな物を買うような時代になりました。選択肢は無数にあって、好みは細分化されているから、単純によいものをつくれば売れるという時代ではなくなり、その人たちを深く見て捉えるモノづくりが必要になっています。そういう時には、そういった視点を持ったデザイナーがそのサービスやプロダクトの中心にいなければいけないと思っています。
DeNA自体も、日本全体も、そういうプロダクトづくりができるためには、UX/UIだけではなく、今回のウィンターインターンでしたようなKPIの話とか、数字をどうするという話も理解しながら、その事業を引っ張っていく人間になってほしいと思っています。
徐
デザインだけをしていればよい訳じゃない、というのは私も普段から感じています。
皆川
私自身も、きれいなものだけをつくる、かっこいいものだけをつくるというデザイン観は納得できなくて、事業を引っ張るところにすごく共感できたので頑張ろうと思いました!
どうなりたいか、デザイナーのキャリアの考え方
徐
増田さんは、デザイナーのキャリアをどう考えていますか。
増田
最終的にどういう会社でどういうデザイナーになりたいかということが重要だと思います。自分の名前で売っていくデザイナーになりたいのか、多くの人に使ってもらえるサービスを引っ張っていけるデザイナーとして働きたいのか。DeNAはインターネットの会社で事業会社だから、後者であり、自分たちはサービスをつくって事業をやっています。その先に直接ユーザーの方がいるので、僕たちはその人たちが求めているものをつくるべきだと考えています。
徐
DeNAでは、社員全体が「ことに向かう」姿勢を大事にしています。プロダクトやサービスを誰のために、何をするためにつくるのかというと、ユーザーさんのため、その課題を解決するため。自分がかっこいいと思うものをつくるのは、自分に向かっていますよね。「ことに向かう」姿勢を大事にしながらも、そのために自分のやりたいことが主張できる方をUX/UIデザイナーとして求めているということでしょうか?
増田
そうですね。領域は決めずにUX/UIデザイナー以上になってほしい。
徐
DeNAではいろんな業種の人と働きます。入社当初、私はデザイナーだからとデータの話や戦略の話は控えていましたが、DeNAではそれはダメで、デザイナーとして発言しなさいという風潮があります。発言したことに対して、「デザイナーが何言ってるの?」と言われることは一切なく、みんながことに向かって議論しているので、デザイナーもそういう力をつけておく必要があると思います。
増田
結局のところ、何に困っているかを正確に理解できないとよいデザインにはならない。それを、ビジネスの話、契約の話、エンジニアの話だからと思考を閉じてしまったら、自分のアウトプットがいいものに繋がらないんですよ、絶対に。苦手意識を持っていても果敢に立ち向かって理解していくことが、最終的に自分のアウトプットのよさにつながるという考え方です。
徐
最後に松本さんからの質問をお願いします。
松本
UX/UIデザインを中心に様々なデザイン経験を積みたいと考えていますが、5年後、10年後の自分のキャリアについてどのように見通しを立てるべきでしょうか?
増田
重複しますが自分がどういうデザイナーになりたいかです。デザインはあくまでも何かを実現するための手段であり、役割です。事業をよくするため、ユーザーの生活をよくするために、チームの中で自分が得意とする手段。松本さんが何をやりたいのか、より多くの人の生活をよりよくしたいのか、自分の名前を売りたいのかによって、築いていくキャリアは違うんじゃないかなと。もちろんデザイナーであることにプライドを持ってほしいですけどね。
松本
私は自分一人ではできない仕事がしたいという思いが強いです。自分の名前を売るよりも、事業会社でエンジニアさんやマーケターさんと協力してものをつくるほうが自分に合っているので、そっちの方向に進もうと思っています。
増田
もしインターネットに業界を絞られているなら、UX/UIデザインの枠を越えていかに自分がバリューを出す範囲を広げられるかどうかは大事になってきますね。そのプロダクトを束ねたものが経営になってくるので、僕が行っているようなことになるし、そういうキャリアを描いてもよいんじゃないかな。
徐
5年後、10年後にどういう自分になっていたいかを考えるには、自分より5歳ぐらい上で凄いと思う人は何をやっているのか、その人たちはどういうスキルを身に付けているかを洗い出していくと、自分に足りないものが見つけられますね。
増田
目標なしに一年がむしゃらに走ってしまうと、私どこへ向かっているんだろうとか、これでよかったっけと不安になってしまう時がくる。中長期的な目線で自分のキャリアや人生を考えて、逆算的に考えて5年でこうなるから1年目はこれでいいと納得できれば、精神衛生上もいいキャリアの積み方につながるんじゃないかな。
5年後自分がどうなっていたいかで、その力を得られる場所を探していくと、5年後に満足感・納得感が得られると思います。
徐
最後に、デザイナーを目指す学生さんに増田さんからメッセージをお願いします。
増田
自分たちが思う以上に、今後デザイナーは活躍しないといけません。インターネット業界のためだけでなく日本のために。日本にはまだまだ不便なことがたくさんあって、それも含めて全部インターネットが解決できるはず。インターネットはこれからあらゆる産業の中心になっていくし、その中でも非常に必要とされているのがデザイナーだと思います。
徐
DeNAは会社としてデザインを大事にしていると、私も入社して感じました。UXはデザイナーが考えることだと思っている人もいるかもしれませんが、DeNAでは誰もがユーザーさんのことや体験のことを考える基本の姿勢があるから、デザイナーとして働きやすく、やりがいが感じられています。
増田
学校ではなかなか教えてもらえない、めちゃめちゃハイレベルな超実践を今回のインターンシップでも体験してもらえたかなと思っています。サービスやプロダクトをつくる楽しさを、未来のある人たちに感じてもらいたくて実務レベルの経験ができるインターンにしています。今回参加した学生さんも、この記事を読んだデザイナー志望の学生さんにも、自分たちが事業を引っ張っていくという意気込みでいろんなチャレンジをしてほしいです。
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※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
執筆:さとう ともこ 編集:山川 奈緒
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