コーポレート企画部が、契約書をあえて「紙と電子」で両立させたワケ | フルスイング - DeNA

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CULTURE

20.08.24

コーポレート企画部が、契約書をあえて「紙と電子」で両立させたワケ

リモートワークに代表されるように、コロナ禍でワークスタイルは様変わりしました。そんな中、「不要論」まで叫ばれたのがハンコ文化と紙の契約書です。

DeNAコーポレート部門もこの課題に早期から着手。4月にはメール上の合意のみで契約を成立させ、物理的な押印・署名を先送りにして取引を進める「メール合意」システムを採用、5月以降は電子契約システムを導入し「紙と電子」の併用へと移行しました。

もっとも、「完全電子化」「ハンコ廃止」などを謳う企業もある中、「紙との併用」はやや保守的なのでは?の問いに、「いいえ。それにこそDeNAらしさがあり、我々の強みでもあると考えています」とコーポレート企画部の正木宏枝と井桁由貴は語ります。「紙と電子」を選ぶに至った理由を聞きました。

コロナ禍で見直した「当たり前」視点

――お二人は、普段どのような仕事を担当されているのですか?

正木 宏枝
▲経営企画本部法務・コーポレート統括部コーポレート企画部 正木 宏枝(まさき ひろえ)
2012年入社。オフィス移転プロジェクトを機に総務部にジョイン後、ジョブローテーションで文書管理のメイン担当に。役員秘書との兼務などを経て現在コーポレート企画部で文書管理業務を中心に、規程管理や会議体運営なども担当。

正木 宏枝(以下、正木):いわゆるコーポレート部門の仕事になります。中でもメインとなるのが契約書や文書の管理業務、またそれに付随する業務改善を手掛けています。キャリアとしては、総務や役員秘書などを経て、今に至ります。

井桁 由貴(以下、井桁):私も幅広くコーポレート部門の業務に携わりつつ、正木さんと同様、契約書管理や印章管理などを担当しています。

――井桁さんも入社後、一貫してコーポレート関連の仕事を?

井桁 由貴
▲経営企画本部法務・コーポレート統括部コーポレート企画部 井桁 由貴(いげた ゆき)
2018年新卒入社。入社後はオートモーティブでの自動運転サービス開発や実証実験運営、技術広報などを経て、2019年12月に経営企画本部へ異動。現在は契約書・印章管理業務などを担当している。

井桁:いえ。入社後最初の配属はオートモーティブ事業本部で、自動運転サービスの開発業務をしていました。

開発業務に携わる中で、協力企業様や自治体との契約書のやりとりをはじめ、実証実験参加者との同意書のやりとりなど、捺印や契約まわりの業務が多数ありました。けれど当時は取引の基本を十分に理解できておらず、「なぜ?」と疑問に思うことが多かったんです。それで、契約まわりの知見を深めたいと思い、半年前にコーポレート企画部にジョインさせてもらいました。

正木:そういう意味では、今回のコロナ禍での業務変革は「捺印とは?」「契約とは?」といった、取引の基本を改めて見直すいい機会にもなりましたよね。

 

新たな捺印申請ルールへの移行ステップ

――実際、コロナ禍でどのように捺印申請のルールを変えていったのでしょう?

正木:DeNAでは3月後半から社員のほとんどが出社せず、自宅勤務になりました。もちろん、その間も契約業務は発生していましたが、本来ならば出社して行う書類の押印・署名や郵送業務といった一連の対応が難しくなっていました。

井桁:リモートワークが推奨される中、 コーポレート部門では最小限の人数で手分けして出社して乗り切っていましたね。

――世間的にも「ハンコを押すために出社するのはリスキーだ」という声があがりましたよね。

正木:そうですね。感染が拡大する一方で、やはり手分けをして物理的な印鑑を押す限界も感じていました。ただ、契約まわりの動きが滞ることで事業そのものに影響が出ることはどうしても避けなければならない。対応方法を検討していくうちに、「そもそも物理的な印鑑って絶対必要なんだろうか?」という議論が出てきたんです。

――そもそも論から考えざるを得なくなったと。

正木:はい。私自身、契約書に日常的に触れる業務の中で、捺印は重要かつ不可欠なものと当たり前のように感じていましたが、「盲信しているだけかな」と考えるようになりました。ただ印鑑が諸悪の根源のように世の中で言われたのは、悲しかったですね(笑)。

いずれにしても事業を推進していくために、我々コーポレート部門のスピーディな判断が求められていましたし、何より社員や取引先を含めた関係者の方々の安全確保と感染被害防止を最優先に調整を始めました。

井桁:新たな捺印申請ルールへの移行ステップを設け、まずは特例措置として契約書の物理的な郵送、押印/署名業務を新型コロナの状況が落ち着くまで先送りにし、その間「メール合意」で取引を進めるスキームを4月にスタートさせました。

――「メール合意」で取引を進めるというのは、契約書に印鑑のないまま取引を開始するということですか?

正木:はい。3月下旬に法務部や経理部と細かくスキームを調整し、当社と相手方の双方がメール上で契約締結の意思確認を行ったエビデンスを残すことで契約合意の証跡とし、それをもって取引を進めることを認める特例措置を出しました。

法的観点、税務観点で問題がなく、漏れのないようにフローを設定し、各ステップで我々の目が入るよう意識的に厳しめのスキーム設定を行いました。

――厳しくした理由とは?

正木:リスクマネジメントやコンプライアンスにまつわる部分は、固く厳しくしておいたほうが、むしろスピーディーに伸び伸びと事業ができる、という設計思想からです。拡大解釈が生じないよう、想定リスクを全て洗い出し、ルールに細かく盛り込むことが、ひいてはビジネスを推進することにつながると考えました。

――なるほど。ガチガチにするくらいのほうが、むしろDeNAのカルチャーとフィットするわけですね。

井桁:そうですね。そして4月7日の緊急事態宣言のタイミングで、すべての社員に向けて、内容を共有し、物理的な契約書と捺印のやり取りを原則ストップさせました。そして私たち捺印担当も原則在宅勤務に移行しました。

――この流れのまま「電子契約システム」を導入したわけですか?

正木:いいえ、実は電子契約に関しては2019年から、コロナ禍とはまったく関係のないところで動き始めていたんです。

 

契約すべてを洗い出し、リスクを「見える化」

――電子契約はコロナ禍の前からすでに準備されていたということですか?

正木:実は、2019年の夏頃に電子契約を導入する話が浮上し、メリット・デメリットを挙げながら検討は重ねていました。ただ、当時はまだリスクが高いという判断で、最初から前向きというわけではなかったんです。

DeNAでは、ゲームからヘルスケア、スポーツなどと事業が多岐に渡ります。また、子会社から一部契約書管理の委託を受けていることもあり、一律に新しい契約フローに変えるのも難しいだろうと。全体最適になる仕組みを構築する必要がありました。

――本格的に検討しはじめた時期は?

正木:2020年の1月からです。これもコロナ禍とは別に「リモートワークを推進していこう」という機運が高まっていたんですね。そこで、あらためて「電子契約を再検討しよう。リスクをコントロールしながら進めていこう」と。

そのタイミングもあって、井桁さんにもジョインしてもらい電子契約のフローをつくりあげていこうというところだったんです。

井桁:そうですね。昨年12月に異動して、2020年1月から電子化の準備を進めていました。そうしたら、新型コロナの感染拡大がどんどん進んで……。もともと進めていたプロジェクトを後押しするような形になったんです。

――電子契約の導入準備は、どこから手をつけたのでしょう?

井桁:一番最初は「捺印が必要な契約書類には、実際どんな種類のものがどれくらいあるのだろう」と、過去の契約書データを抽出、分析するところから始めました。

前述のとおり、各事業部、間接部門ごとにどんな契約書があるのか、たとえば「NDA(秘密保持契約)」なのか「業務委託契約書」なのか「ライセンス契約書」なのか――。 それらをすべて洗い出して整理したんです。

――「整理」とは、どのように?

井桁:それぞれの契約にどんなリスクがどれくらいあるのか、各業務の内容や取引金額などと照らし合わせながら、法務と連携して明らかにしていきました。

正木:それこそ「捺印の意味とは?」という本質の部分に行き当たるのですが、捺印した紙の契約書は、万が一訴訟などになった場合に契約の成立を立証するのが比較的容易です。

しかし電子契約はまだまだ裁判例などが少ないこともあって、未知数のリスクがありえる。そのため、一つひとつ井桁さんが洗い出して整理してくれた契約書を法務と共有しながら、電子契約が可能なものとそうでないものに仕分けしていったんです。

この“洗い出し”には、井桁さんのスキルがとても活きましたね。「分析に強い」という。

――井桁さんはデータ分析が得意領域なんですか?

井桁:大学時代に都市計画を学んでいて、人口データなど複数のデータをまとめ類型化する、といったことをしていたんですね。その経験と、あとは事業部時代に「自動運転」の実証実験データを扱ったりもしていたので、多少は慣れていました。

とはいえ、「じゃあ、今回はこの部署のこの契約を……」と業務フローとリスクを二人で細かく洗い出していくのは、なかなか骨の折れる作業でした(笑)。

正木:また井桁さんの「事業部の現場を知っているからこその視点」もとても役立ちましたね。

井桁:事業部にいるときは、さまざまなステークホルダーとやりとりをしていたので、一言に「電子契約OKです」と言ってしまうとイレギュラーばかりが発生することになるだろう感じていました。各事業に応じて柔軟な対応が必要になることは想像できたので、検討の前段階として、現場の声を拾い上げるためのヒアリングを提案しました。

正木:繰り返しになりますが、DeNAは多岐にわたる事業を展開していて、中には個人のクリエイターさんと多く契約がある部署もあります。

そうした部署こそ「スピーディーかつ簡便になる電子契約はニーズが高いだろう」と当初思っていたのですが、実際にヒアリングしてみると、むしろ「電子契約に抵抗がある方が多いだろう」という声も上がってきて。

井桁:個人のクリエイターさんの中には、職人気質の方も多く、「新しいスキーム」や「アプリ」に対して抵抗のある方も少なからずいらっしゃると。また、事業部によってはトラディショナルなビジネススキームを好む企業があったりして……。

ようは業務と取引先がバラエティに富むのと同じくらい、契約方法についての考え方も多様。だから、「一律に電子契約で」と伝えるのは間違いなく混乱をきたすと確信しました。

正木:事前に洗い出した傾向と対策や、電子化した場合のフローイメージも用意したのですが、事業部からは「そもそもそういう問題じゃなくて……」と想定外の指摘を受けたり(笑)。ただ私たちも、全体最適化させることを目的に動いていたので、無理なく計画的にスタートできる「紙と電子の併用」がベストだという結論にいたれたのは、ヒアリングの成果だなと感じています。

 

デライトを追求し、堅実かつ柔軟な「紙と電子」を選択

――「全体最適化」とはいえ、さまざまな事業を展開するDeNAにおいて、今回の電子契約システムの導入はなかなか大変だったのはないですか?

正木:最終的に、契約書をすべて電子化するのではなく、「紙と電子を併用する」ことになりましたが、それは各事業部の特性を踏まえ、全体最適になるフローを構築した結果です。ユーザーデライトを突き詰めた結果、とも言えるかもしれません。またフォーマットは「Adobe Sign」を使うことになりましたが、こちらも現行のワークフローツールや文書管理システムとの連携やできるだけ混乱なくスタートできることを意識してのことでした。

井桁:現在は電子契約と紙の契約の2つで、現場が選べるようになっています。取引先によって柔軟に対応できるよう周到に用意できたことは、DeNAにマッチした選択だったのではないかと思います。

それから、今回の電子契約導入にあたり、社内に「正しく伝える」ということも強く意識しました。説明資料を作る過程では、認識のズレが生じないよう慎重に言葉を選び、正木さんやプロジェクトメンバーとZoomで密にやり取りしながら丁寧に言語化しました。また、オンラインでの講習会も数回実施し、トータルで200名くらいの方々に参加いただきました。DeNAにマッチした新たな捺印申請ルールが構築できたのではないかと思います。

正木:電子化が目的ではなく、あくまで安全で事業を遂行しやすいことが目的でしたからね。そういう意味では「ことに向かう」というDeNAカルチャーを意識しながら進められたことは大きかったと思います。

――お二人のカラーの違いも、補完関係にあってすごくよいコンビだったのかなという気がします。

井桁:それは感じましたね。法務とのやりとりは正木さんに任せっぱなしでしたが(笑)。

正木:私も現場の感覚とフローの作り込みは、井桁さんにお任せでした。あとは行き詰まるたびに、上長が「ダメだったらもとに戻せばいいから、まずは導入に向けて動いていこう」と言ってくれたのが、大きな後押しになりました。一見ネガティブに聞こえるかもしれませんが、ひとまず走って怖がらずにやってみよう、と力強くチャレンジできたのは、この言葉があったからだと思います。

――電子契約システムの導入は、お二人のスキルや視座を高める機会にもなった気がしますが、新たに見えたビジョンなどはありますか?

正木:コーポレート部門の領域で、まだまだ「当たり前」だと思いすぎて改善できていないことがありそうだなと感じました。またそれらをAIなどを使って自動化なども含めて実現できたらいいなと。そうした「先」まで見据えて日々を過ごしたいと思うようになりました。

井桁:契約業務を体系的に理解・把握するとても良い経験を積んでいると実感しています。今後また事業部に戻るとしたら、迷いなく契約まわりの業務を進めることができるという自信もつきました。なので、私が得た知見を、もっと多くの現場の方々に伝える機会があればなと思っています。

正木:確かにコロナ禍でのさまざまな取り組みは、自分の仕事に「自信」を持つきっかけになっていると感じます。厳しい状況だからこそ磨かれるものがあるとも言えるかもしれませんね。

 

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

 

執筆:箱田 高樹 編集:フルスイング編集部 Zoom撮影:内田 麻美

 

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