世の中にある"当たり前"の壁を超える。DeNAならではのリサーチマインドで社会イノベーションを創出する | フルスイング - DeNA

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CULTURE

20.04.14

世の中にある“当たり前”の壁を超える。DeNAならではのリサーチマインドで社会イノベーションを創出する

少量の血液検体から得られるデータをディープラーニングで解析し「14種類のがんを早期に発見する」というAI×ヘルスケアの取り組みを行っている研究施設『ハルミラボ』。

PFDeNAがなぜ研究開発ラボを持ったのかを聞いた前編に続き、後編では新しい事業創出のために必要なこととは何かに言及。ゼロからの取り組みに、均質ではない専門家集団で挑むからこそ大事にしていることを聞きました。

ラボ設立はゼロからのスタート

——ラボを設立するうえで、最も大変だったことは?

西沢:私ではない別のメンバーですが、ラボを作る場所探しからのスタートだったんです。何しろゼロからなんで。設備的にも満足な物件を探す必要があったのですが、そんな経験値を持っているメンバーなんてそうそういない(笑)。

神田:ライフサイエンス系のラボでは特殊な試薬や廃棄物も使いますし、ビルの一角にあるため消防法も関わってきます。「1つの建造物の中にエタノールが80リットル以上あってはいけない」「高度な換気処理機能が不可欠」といった具合に、法的な規制もあるんです。

西沢:加えて、私たちは臨床検体を取り扱うので、それらを保管するための堅牢な設備が必要になる。患者さんの血液検体はとても貴重ですから。匿名化しているとはいえ、癌種などの臨床情報を取り扱いますので、高度な情報セキュリティシステムも不可欠です。

神田:設備の構築といった仕組み面だけでなく、コミュニケーション面でも最初は大変でした。

——コミュニケーション、ですか?

神田:ええ。グループメンバーのバックグラウンドがバラバラで得意なことも異なる。とても個性的なんですよ。

たとえば、私はずっとアカデミアにいて、大学医学部の研究室で10年くらい、難病の診断や治療のためゲノム解析の研究を続けていて、2018年の9月にDeNAへ移ってきています。

西沢:一言で研究といっても、神田さんはゲノム情報から特定の変異を見つけるようなデータ解析が専門ですよね。私の専門は、細胞や動物を使った評価モデルの構築と機能性の評価でした。アカデミアと企業という背景の違いも、コミュニケーションスタイルの違いにつながっている気がします。

神田:そして他のメンバーは、大手製造業で研究機器の開発をしてきた方や、臨床検査の会社で研究から製造まで幅広く関わってきた方など、異なる領域の知見を持ったメンバーが揃っているんです。

そんな背景を持つメンバーと、これまでヘルスケアに関わってこなかったDeNAのメンバーが、最高のサービスを最短で届けるにはどうしたらいいかを話し合うわけです。

西沢:ある意味カオスですね(笑)。

西沢×神田対談

神田:ホントそう(笑)。そんなメンバーとコミュニケーションをして痛感したことは、それぞれの背景によって、各々が持つ「当たり前の感覚」がまったく違うという点でした。

 

「健全な綱引き」がイノベーションの芽を生む

——「当たり前の感覚」とは、どういうことでしょう。

西沢:例えば「時間」の感覚でしょうか。

研究開発サイドとしては、これくらいの検討期間が必要だと思う。一方で事業サイドは、競合や市場の状況から、このくらいのタイミングでは次のステージに移っていないと困る、と。これはある意味、どちらも正しくて、どちらかが間違っているわけではないんです。研究者として時間をかけて突き詰めていきたい気持ちは正しいし、一方で市場環境は刻々と変化していくので、市場に出すタイミングは極めて重要。この状況は前職の製薬会社時代にも経験しているのですが、DeNAの場合はそのバックグラウンドに非常に幅がある上、今回のプロジェクトはPreferred Networks(以下、PFN)さんと合同で進めているところもあるので、感覚の違いはより一層でしょうか。

神田:ある実験プロセスを自動化するところに、軽く1ヶ月以上かかったりしますが、実際の研究経験がないメンバーからは「こんなに時間がかかるの?」と驚かれることがありますからね。

機器をセットしても、いきなり患者さんの血液で検討はできないので、まずは水でシミュレーションする。繰り返し検討を行ってようやくいけるかな?というところで、血液サンプルに切り替えるけれど、そのままスムーズに最後までいくのは稀。「粘度が高すぎてうまく流れなかった」「泡が立った」「撹拌が足りなかった」。このような本当にちょっとした理由で、正確なデータがとれなくなります。

——それでは「当たり前の感覚」が合う人たちで仕事をしたほうがやりやすいのでは?

西沢:すでに世の中にある事業を改善していくような時にはそうかもしれませんね。ただ今回のように、新しい事業を世に出していこうという時、先ほど神田さんも言っていたように、何が正解なのかが見えないんですよ。

そんな時、これまでの経験値が前提になってしまうことがあるんですよね。それって実はけっこう怖くて。なので私としては、今回のようなビジネスにおいては、「当たり前の感覚」が違う人たちと是々非々で議論することがすごく大事なんじゃないかなと思っています。

この辺りは役割分担の考え方にもつながっている気がします。主とした役割はあるものの、正解がわからないからこそ、きっちり役割を規定しにくい。メンバー単位だけでなく、組織単位でもそうです。「ここまでがPFDeNAの役割で、ここからはPFNさんの役割」というようにきっぱり分かれるわけではないんです。行ったり来たりというか、彼らの解析結果を見て、こちらでも「こういう検体をさらに追加した方がよさそうだね」とか「ここはデータを取り直した方がいいかもね」といった話をしながら、システム全体としてさらに良くしていくにはどうしたらいいかを話し合っています。

そういう意味で、神田さんのような方の存在は大きいんです。ラボにおけるデータ取得に関しても、ディープラーニングを使ったデータ解析に関しても、両方の知見があって、両方の言葉・価値観が理解できる。こういう境界を超えられる人がいるかどうかは、新しいことをやっていく上では特に大事だと思います。

神田:西沢さんは前職でがんの研究をずっとやってきたので、それが議論に活きているところがありますよね。たとえば、あるがん種を別のがん種と誤って判別してしまった時、がんの成り立ちや組織の形状から新たな解決策の可能性を提案してくれる。私とはまた違った視点からデータを見ていて、なるほどって思うし、ありがたいですね。

私は現在の仕事に就いて、前よりずっと「自分から話すようになったな」と感じるんですよ。

神田 将和

——アカデミア時代はあまり話さなかったのでしょうか?

神田:研究でも話すことは大事なので、もちろん話はするんです。ただ、経験値を積むにつれ、自分の専門分野では自分が1番詳しくなっていくので、相手に聞くよりも相手から聞かれることに偏っていった、という感じでした。それがここでは違う。

そもそも自分の専門分野に閉じていられないんです。私だけの力では解決できないことが多いので、異なるバックグラウンドを持った人たちに頼る必要が出てくる。なので、自分から話すことが増えたんでしょうね。結果、これまで自分が気づいてなかったことにも気づけるようになりました。そういうのって新鮮だし、幸せですね。

西沢:面白いですね。私たちって、均質な専門家集団ではないんですよね。個々の専門家がそれぞれの得意分野で手を取り合ってなんとか進めている感じ。でも、何だろう。だからと言って完全に相手任せにはしないというか、信じてはいるけどツッコミは入れる、みたいなところはありますよね。「言ってることはわかるけど、でも、それってこうはできないんだっけ?なんでダメなんだっけ?」みたいな(笑)。

神田:ありますね。そうこうしているうちに、自分の専門の枠から外れてきたりして......。なので、自分の専門性があるところだけやっていればいいってことにもならない。必ずしも自分の経験値が十分でないことでも、メンバーの中で最も自分ができそうなら手を挙げてやる。時にはやりきれない部分も出てきますが、みんな私がその専門家でないことは分かっているので、色々と手助けしてくれます。

西沢:手助けしつつ、ツッコミも入れると(笑)。

西沢×神田対談

神田:プロフェッショナリズムはリスペクトしながらも、他のメンバーも皆、「こうしたらもっと良くできないか」と、別のプロの視点を交えた議論が再び始まる。

西沢:言わば「健全な綱引き」ができるムードがあるんですよね。私は、専門性が接する部分、異なる2つの専門性の“境界面”みたいなところにこそ、イノベーションの芽があると思います。そういう部分って不安定でコミュニケーションも面倒なんだけど、このチームはそういうのを楽しむ雰囲気がある。世の中の不確実性が高まり、変化の度合いもスピードも激しくなっている中、こういう健全な綱引きができる環境って、実はけっこう大事なんじゃないかなと思うんですよね。

 

新しい事業を創出し続けるために

——今後、どのようなビジョンでこのラボを運営していこうと考えられていますか?

神田:やはり、まずは粛々と解析を続け、事業化を成功させること。

加えて、ラボ設立や実験系起ち上げの苦労を「大変だったね」という単なる笑い話で終わらせず、今後の新しい事業のための経験値として、次につなげていきたい。そうした経験が蓄積されていくのが大事かなと。

——経験値をベースにもっと磨ける。もっと良くしていこうというわけですね。

神田:ええ。ライフサイエンス領域に理解があって、この領域で事業をやるにふさわしい文化がDeNAにはある、ということを、我々はもっと築き上げていかなければという想いが強いです。私のようにアカデミアで経験を積んだ人間のキャリアの選択肢として、DeNAが自然に入ってくるようになるといいなと思っています。

西沢:そうですね。DeNAならではの「リサーチャー(研究職)」をつくれたらいいなと考えています。単に研究をする人ではなく、社会価値と事業化を強く意識して、自ら研究を企画し、必要なデータを泥臭く創造していけるような人。世の中にある“当たり前”の壁を超えるようなデータを生み出していく、そんなリサーチャーがDeNAっぽくてかっこいいかなと思っています。

神田:そういう働き方をしたい人はぜひ参画してほしい。

西沢:はい。新しい知見を持ち込んで、「健全な綱引き」に参加してほしいですね。

 

 

西沢 隆

株式会社PFDeNAヘルスケア事業部 研究企画・開発グループリーダー

西沢 隆

1980年、栃木県佐野市生まれ。1999年京都大学農学部入学。同大学院卒業後、2005年新卒で大手製薬会社に入社。がん領域での新規標的分子探索の研究開発に従事する。2011年オープンイノベーションを目的とした子会社へ出向。東京大学先端科学技術研究センター、および国立がん研究センターとの共同研究プロジェクトに従事。2019年1月DeNAヘルスケア事業部へ転職。

神田 将和

株式会社PFDeNAヘルスケア事業部 研究企画・開発グループ

神田 将和

1976年、山口県防府市生まれ。博士 (医学)。鳥取大学大学院 医学系研究科生命科学専攻。埼玉医科大学 ゲノム医学研究センター研究員・助教、順天堂大学 難病の診断と治療研究センターにて原因が明らかになっていない希少疾患のゲノム解析を中心とした研究に従事し、2018年9月DeNAライフサイエンスへ転職。

 

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

 

執筆:箱田 高樹 編集:八島 朱里、フルスイング編集部 撮影:杉本 晴

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