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デジタルマーケティングで子宮頸がん検診の啓発へ。エンタメで積み上げたノウハウで社会課題の解決に挑む

2020.03.31

ロシュ ・ダイアグノスティックス(以下、ロシュ社)とDeNAヘルスケアのコラボレーションで生まれた子宮頸がん検診の啓発プロジェクト「Blue Star Project」。このプロジェクトのまとめ役、リーダーの西村 真陽(にしむら まさや)とメンバーとの対談を通して、プロジェクトベースで働くことの意義や面白さを紐解いてきた本連載。

最終回の対談相手は、ゲーム・エンターテインメント事業本部ゲーム事業部Publish統括部マーケティング部デジタルマーケティンググループに所属する庄嶋 洋祐(しょうじま ようすけ)。社会人になって以来、一貫してデジタルマーケティング(以下、デジマ)を手掛けてきた庄嶋にとって、女性特有のがんに特化した本プロジェクトへの参加はどんな機会、経験になったのでしょうか。

物腰の柔らかさとは対照的に、語られる内容はとてもストイック。ミッションに向かってどう自身の役割を最大化させるか。庄嶋の淡々とした語り口から「プロジェクトベースで働くこと」の実態が見えてきます。

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DeNAにいるからこそ出会えたテーマ

西村 真陽(以下、西村):庄嶋さんは新卒からデジマ一筋でしたよね。時々、代理店さんよりも詳しいんじゃないかと感じることがあるのですが、そのキャリアは自分で選んだものですか?

庄嶋 洋祐
▲株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部ゲーム事業部Publish統括部マーケティング部デジタルマーケティンググループ 庄嶋 洋祐(しょうじま ようすけ)
インターネット広告の代理店で約5年従事した後、2017年にDeNAに入社。Blue Star Projectではデジタル領域での広告出稿を担当。普段は主にゲーム/エンタメ事業のデジタルマーケティングに携わる。

庄嶋 洋祐(以下、庄嶋):そうですね。新卒でインターネットの広告代理店に入社してからずっと広告運用をやってきました。でも、DeNAに入ったのはゲームやエンタメが好きだったからで、自分もエンタメをつくる人間になりたいという想いがあります。今後、どのようなかたちでもいいから「つくる」ことに携わっていきたいと思っています。

西村:なるほど。ではこのプロジェクトについて聞いたとき、最初はどう感じましたか?

庄嶋:まずは「ヘルスケア事業部ってこんなことやってるんだ」という驚きがありました。ゲームの分野でも「マーケティング領域をDeNAで担当する」ということ自体はあって、海外で開発されたタイトルの日本におけるマーケティングを請け負う例はいくつかあるのですが、ヘルスケア事業においてもそんな関わり方があるんだ、と。

西村:ではBlue Star Projectへの参加が決まったときはどう思いました?他にも仕事があるなかで、少なくとも庄嶋さんの「エンタメをやりたい」というWillに繋がる内容ではなかったわけですが……。

西村 真陽

庄嶋:その点については、確かにエンタメではないけれど、ネガティブな意識はまったくなかったんです。「DeNAにいるからこそできること」ってあるじゃないですか。自分の発想からは絶対にたどり着かなかった選択肢なので好奇心も湧きました。

西村:そう言ってもらえて嬉しいです。普段ゲームのデジタル広告を担当している人が子宮頸がん検診を受けたくなるような広告をつくるって、ちょっとイメージしづらいですよね。

庄嶋:以前は子宮頸がんのことなんて考えたこともなかったし、身近な印象もなかったんです。でもこの話を受けた後、当時付き合っていた彼女に検診を受けたことがあるか聞いてみたら、受けたことがあると言っていて。意外と身近なものなんだなあと思ったりしたんです。

経験とコミット量が仮説を導く

西村:当時……?その話はあえて深堀りしないでおきます(笑)。プロジェクトに参加してどんな感想を持ちましたか?

庄嶋:今回「子宮頸がん検診の普及」という社会的意義のあるテーマと「横浜市の女性」というターゲットを絞った案件に対し、ゲーム事業を通じて積み上げてきたDeNAのデジマのノウハウをどう活かし成果につなげていくか。目標に対する費用感やクリエイティブの見せ方など、どうコントロールしていくかが一つの課題でした。

さまざまな見地から検討していったのですが、普段担当しているゲームなどの案件ではエリアをここまで限定することがなく、その点が懸念されましたね。もしターゲットを絞り過ぎてコストが高くなるようであれば、隣接する市などにも少しずつ広げることもできるよう、「地域ターゲティングが“市単位”まで切れるメニュー」を優先してFacebook、Instagram、GDN(Googleディスプレイネットワーク)などを選び施策を打っていきました。

結果として目標とするサイトへの送客数を達成でき、一番深い階層と考えていた「検診機関一覧ページ」への送客数も予想を超える数字でした。検診機関一覧ページへのアクセスは、プロジェクトの内容を理解し、子宮頸がんに関する危機意識が高まってから到達するものだと思うんです。良い成果が出せて本当によかったです。

ブルースタープロジェクト

西村:庄嶋さんが普段担当しているゲームとヘルスケアはまったく違う領域ですよね。にも関わらず目標を達成できたのは庄嶋さんの「コミット量」のおかげではないでしょうか。プロジェクトが始まったときから、庄嶋さんは相当な量のデータを多角的に見てくれましたよね。

マーケティングでどんな手を打つかは、結局のところ、仮説を立てながらPDCAを回していくしかない。デイリーレポートから見える傾向から仮説を導いていくわけですが、それは「センス」のような曖昧なものではなく、どれだけその数字を常に見ているかだと思うんです。今回良い結果が出たのは、庄嶋さんのコミット量があったからこそだと思っています。

庄嶋:今回のプロジェクトは普段とは異なり地域を絞った案件だったので、実施する施策が上手くいくのだろうかという不安がずっとあったんです。そんなふうに言ってもらえると救われます(笑)。

一方で、前職での通販コスメや健康食品を扱っていた経験もBlue Star Projectに活かせていると思います。もちろん子宮頸がん検診に比べれば、意識レベルも世の中の人がどれくらい身近に感じているかも違うとは思いますが、今回は子宮頸がんの知識や事実を視覚的にわかりやすく伝えることを意識してマーケティングを行いました。

ブルースタープロジェクト

西村:プロジェクトの開始2週間後には媒体ごとの反応や良し悪しがかなり見えていました。それらを踏まえ、数ヶ月単位でどの媒体に出していくかを改めて練り直し、小さな改善を積み重ねていきましたよね。罹患者が増えていることを示すグラフなど、子宮頸がんのファクトを見せる方針もスムーズに決まっていき、早期に目標とするレベルまでもっていくことができました。

庄嶋:もちろんそれははじめから狙い撃ちしたものではなかったのですが、いくつかある訴求の中の一つに加えたという感じです。でも結果的にそれが一番反応が良く効果的でしたね。

庄嶋 洋祐

西村:庄嶋さんに限らず、このプロジェクトのメンバーはみんな独自の目線でいろんな提案をしてくれるんですよね。自分の持っているものを惜しみなく使い、なおかつ新しい知識を率先して吸収し、それらをマージしてアプローチしてくれる。

DeNAのプロジェクトは全体的にこういった傾向にあると思います。ゴールから逆算して必要なセクションを用意し、それぞれにスペシャリストを招請する。期待される役割が明確で、やるべきことがはっきりしています。メンバーの期待以上のアウトプットの積み重ねでプロジェクトが成り立っていると実感します。

「何をするか」よりも「誰と何をするか」

ブルースタープロジェクト

庄嶋:私は「何をするか」よりも「誰と何をするか」をより強く意識するタイプなのですが、Blue Star Projectに参加したことで、普段は関わることのないさまざまな事業部の方たちと関わる機会を得て、新たな刺激をもらう場面がいくつもありました。

西村さんを見ていて感じるのは、巻き込み力の高さ。パフォーマンスに対しても気持ち良く「ありがとう」と声をかけてくれるし、社会的意義のあるプロジェクトの一員として「こと」に向かえたことは、とてもいい経験になりましたね。

西村:本当に嬉しいです。仕事のモチベーションが一気に上がりました(笑)。とは言っても時間には限りがあるわけで、忙しい中でどのように本業とのバランスを取り、なぜ同じ熱量でこのプロジェクトに臨むことができたのでしょうか。

庄嶋:今回、ゲームとヘルスケアという異なる領域ではありますが、デジマという側面では同じ「こと」。普段と同様に、同じ熱量でプロジェクトに向かい、「こと」に取り組んだという印象です。

西村:やるべきことを常に定めて仕事に向き合う庄嶋さんらしい言葉ですね。

庄嶋:だからちょっと仕事が増えたかな、くらいで、特別何かを意識してバランスを取ることはありませんでした。

西村:では質問を変えて、プロジェクトを通して変化したことはありますか?

庄嶋:デジマという観点では、変化したことは特にないですね。どんな案件であっても仕事に取り組む姿勢は変わらないので変化はありませんでした。ただゲームなど普段担当する案件では、地域をここまで絞って配信することはなかったので、今回のような意義性の高いテーマであれば、局所的なマーケティングも積極的に使える可能性があるのではと感じました。

西村:例えば今後どんな施策をやってみたいですか?

庄嶋:今回は子宮頸がん検診の大切さを啓発することが目的だったので、サイトにたどり着いてもらうことまでが一旦のゴールでした。しかし、そこから実際に検診を受けてもらうところまでがこのプロジェクトの本当のゴールです。なので、検診施設に足を運んでもらえるような施策を行い、検診を受ける方を増やす取り組みにチャレンジしたいです。人を動かすのって難しいのでハードルは高いですが、各分野のプロが集まるこのプロジェクトならできると思っています。

庄嶋 洋祐

「Blue Star Project」連載を終えて

西村:子宮頸がんのほとんどは性交渉を通してヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに感染する事が原因で、体質や遺伝ではありません。HPV感染から子宮頸がんになるまでにはおよそ5年から10年かかるため、少なくとも2年に1回定期検診を受けていればがんになる前の状態で発見する事が可能です。

がんに近い子宮頸がんの前段階(高度の前がん病変)を含めると、最も罹患率が高いのが私と同世代の20〜30代の女性です。「自分と同世代の検診意識を高めたい」と思ったのがこのプロジェクトの始まりでした。

今でこそ何十名ものメンバーが集まるBlue Star Projectですが、最初は私一人でした。アイデアのヒントを得ようと周囲の仲間に想いを伝え、そのつながりで延べ20人の女性にヒアリングさせてもらったり、婦人科に同行させてもらったり……。そのおかげで少しずつ女性の検診に対するインサイトが見え始め、施策を考えられるようになりました。

私がこの連載で伝えたかったこと、それは「働くって楽しい」ということです。働く対価はお金だけではありません。思いついたアイデアをかたちにするためにとことん考え、周囲を巻き込み、ミッション達成に向けて道筋を描く。決して簡単ではないけれど、そこには共に成長できる仲間との出会い、そして何より「働く楽しさ」が詰まっています。

私は新卒採用の面接官もしていますが、多くの学生から「社会に出るのが不安だ」「仕事が楽しめるか自信がない」という声を聞きます。不安になる気持ち、わかります。当時私もそうでした。今回、一人でも多くの学生に「働くって楽しい」ということが伝わったならば、これ以上の幸せはありません。

最後に、Blue Star Projectの立ち上げにご協力いただいた皆様、ヒアリングに応じてくださった皆様、そして何より日々頑張ってくれているプロジェクトメンバーに心から感謝します。

Blue Star Projectの挑戦は、まだまだ続きます。

横浜DeNAベイスターズ主催試合にて、『Blue Star Project Women's ナイター』が開催される予定です。当日は、大型ビジョンを含む各種ビジョン、ブース出展、関連グッズの配布等を通じて、ご来場の皆さまに「Blue Star Project」の取り組みをお伝えするほか、始球式を含む試合前の各種イベント等も予定しています。詳細はこちらをご確認ください。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:山田宗太朗 編集:川越 ゆき 撮影:内田 麻美

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