

会社に入ってそれぞれの部署に配属されても、同期同士のつながりはとても強いもの。特に2019年度入社のエンジニア職は結束が固く、新入社員研修の担当者も「例年に増して繋がりが深い」と目を見張ります。そんな研修担当者と19新卒のエンジニア2名にどのように絆を深めたのか、その関係から何を得たのか、を研修時期を振り返り語ってもらいました。
前編では、入社してから行われた研修プロセスについて、後編では配属マッチングから配属後までをくわしく聞きました。
一緒に過ごす時間が長い研修中だったからできた、LT会が生んだ絆

清水 良太郎(しみずりょうたろう)早稲田大学大学院修了後、2019年に新卒入社。研修期間を経て、2019年秋よりゲーム・エンターテインメント事業本部にてサーバーサイドエンジニアを担当。
三軒家 佑將(さんげんや ゆうすけ)京都大学卒業後、2019年に新卒入社。研修期間を経て、2019年秋よりゲーム・エンターテインメント事業本部にてサーバーサイドエンジニアを担当。
——19新卒の横のつながりが強いということですが、きっかけは何だったのでしょう?

平子 裕喜(以下、平子):三軒家君が提案してくれたLT(ライトニングトーク)会がとても印象に残っているけど、どう?
三軒家 佑將(以下、三軒家):全体研修で、同期の1人から「LTをやってみたい」と話があがりました。彼は大学で量子コンピューターの研究をしていて、それについて同期から質問されることが多かったらしいんですね。それならみんなの前で発表したいし、他の人の研究についても聞きたいという希望があったんです。それで、やろう!と。
平子:最初は研修終了後の時間でやっていたけど議論が活性化しているのがいいなと思って、途中からエンジニア研修にLTを組み込みました。
清水 良太郎(以下、清水):初回のLT会は、とにかくモチベーションが高かったですね。話したい!という気持ちの強い人が積極的に発表していました。内容もレベルが高くて素直に感心しましたし、刺激を受けました。
——初回を終え、音頭をとった三軒家さんが感じた手応えや、感想などを聞かせてください。

三軒家:まずは単純に楽しめました。博士課程や修士課程を修了した人が何人かいるんですが、特にスパコンを研究していた人の話をすごく新鮮に感じたのを覚えています。僕も話すのが好きなので初回で発表しました(笑)。興味深い話題が多く、初回から手応えは感じました。
清水:同期たちに興味を持ったのと同時に、自分のことも知ってもらいたくなりました。僕はソフトウェアエンジニアリングは未経験だったこともあり、経験のある人たちを前に技術の話をすることは若干腰が引けていたんです。
でも、学生時代のAI分野での研究やインターン、アルバイトなどで得た知見の中から興味を持ってもらえそうなものを探し出して、3回目のLT会で初めて話をしました。
——発表後のメンバーの反応や、発表の前後で何か変わったことはありましたか?

清水:メンバーからの評判も上々で、発表したことで自分に自信を持てましたし、またテーマを見つけて話したい、という意欲にもつながりました。
平子:技術的な話だけでなく、趣味やプライベートの話もあって。そういった話題の幅広さから、研修中とは違う側面が見えておもしろかったです。やっぱりこのLT会があったから、互いの理解も絆もより深まるきっかけになったんじゃないかな。
三軒家:経験者や未経験者が入り混じって同じ研修プログラムをやるので、助け合うことも多かったし、何より一緒にいる時間が長かったですしね。
不満が生まれることはわかっていた。それでも一律研修にした意義

——エンジニア研修はどんなことをしていたんですか?
清水:研修期間はいくつかのフェーズに分かれていました。最初の2週間は、Ruby、JavaScript、 Go、Swift、Kotlinの5つの言語を使って簡単なアルゴリズムの実装を繰り返しました。
第2フェーズでは、元Google社員の外国人講師ティムさんによる座学が1週間。授業形式もありつつ、講師の周りに皆が集まり対話形式で進行していくスタイルで、ざっくばらんな雰囲気でした。
三軒家:その後の第3フェーズでの課題は、5つの言語でWebアプリやネイティブアプリをつくるもので、 1言語につき約2週間。全体で2ヶ月くらいでしたね。
清水:そして第4フェーズで、最終課題である自由課題をやりました。期間は4週間。まずは何をつくるのか、どの言語を使うのかを決め、技術選定をします。設計図なども作り、ティムさんや平子さんからレビューをもらう。OKが出たら制作に入ります。80項目ぐらいの詳細な技術要件があり、それを満たしたものをつくって諮問を受け発表して卒業、といったプロセスです。
——なかなかハードな研修に聞こえますね。

三軒家:僕は学生時代からプログラミングをかじっていたし、アルバイトで実務の経験もあったので、最初のフェーズはそんなに苦労しませんでした(笑)。第2フェーズの座学も、データ構造のについて詳しく学べ、とても勉強になりましたね。
清水:第1フェーズは試行錯誤しながらも自由にやることができて楽しめたものの、第2フェーズでは、経験のなさがあだになって、みんなの話していることがわからないなど少しつらい期間でした。ただ、補習を行ってもらえたり、LT会による横のつながりのおかげで、不明な点を気軽に聞いたりできる環境だったのは助かりました。
ちなみに僕は三軒家君のことを「師匠」と呼んでいました(笑)。彼のそばにはできる人たちが集まるんですよ。彼らの話を聞くことで、より成長スピードを早めたかったので、意識的に近くにいるようにしていました。
三軒家:第3フェーズでは、ネイティブアプリの制作と、そのアプリが使うサーバの制作という2パートの作業に取り組みました。僕はクライアントサイドは全くの未経験だったので、新鮮な気持ちで向き合えたし、サーバーサイドとの違いを知ることもできました。
平子:研修生の技術力は一律ではないですし、研修内容は全員一緒ですので、すでに経験値のある人から不満が出るかもしれない、と想定していました。でもその中でもどこかに学びを見つけてもらったり、こちらも何が与えられるのか、ということを考えながらの進行でした。
ありがたかったのは、経験ある人たちが率先して教える側に回ってくれたことですね。研修生内で集まってディスカッションをしたりなど、その状態そのものが学びになっているな、と感じていました。
三軒家:研修で一番良かったのはやっぱりその部分だと思っています。僕以外にも経験者は何人かいて、彼らとディスカッションをしながらどう実装するか、良いコードとは、などの話をする中で、最近読んだ技術書を教え合うなどの情報交換もしていました。
ちょうどその頃、LT会が研修の中に組み込まれることになったんです。それまでは学生時代にやっていたことや趣味についての発表がメインでしたが、組み込まれたことで研修の課題に対するアーキテクチャの話題などを話すようになりました。
平子:LT会も何がすごいと言うと、自発的に始めてくれてそれが盛り上がったことです。結果的に、研修に入れましたが研修を行う方から「LT会の時間です」とやったらここまで盛り上がらないと思うんですよ。
三軒家、清水:それはそうかも(笑)!
平子:だよね。

——最後の自由課題のフェーズはどうでしたか?
清水:一番楽しかったですし最も自分が成長できたように思います。というのも、研修期間中は割と自由な時間が多かったので、それを利用してプライベート時間に半年で6個のアプリを作って、実際にリリースしたんです。
一線で活躍している人たちに教えを請うことができる環境で、動くモノをつくる過程で出てくる課題をクリアする対策法を学ぶことができたし、それを活かして自分のモノづくりができる。幸せでしたね(笑)。その期間中に制作したアプリのうちの1つをLT会で発表し、それがTech Talkでの登壇につながりました。
——Tech Talkとはどういう会なのでしょうか?
平子:月に1度開催されている、DeNA所属のエンジニアが集う勉強会です。大体4人ほどが登壇し、技術的な事柄を皆の前で話します。80人から130人ぐらいのエンジニアが参加しています。基本的に新卒が登壇することはほとんどないのですが、三軒家君、清水君、共に登壇済みです。
——登壇してみてどうでした? 緊張しました?
三軒家:普段から喋り慣れていたので、特に緊張はしませんでした。僕が登壇した回は、たまたま新卒及び中途採用で新規に入社した人にスポットを当てると言う趣旨で、同期の中で喋り慣れている数人が壇上に上がりました。その時は学生時代に制作したWebアプリについて、制作理由や課題、その過程について話しました。
清水:彼が登壇したのは5月。僕が、まだ動くモノをつくるという経験をし始めた頃です。三軒家君たちが登壇しているのを見て、なるべく早く絶対に自分も登壇したい!と思い、それからすぐに人前で自信を持って発表できるクオリティのアプリを完成させ、実際にそのアプリを多くのユーザーに使ってもらった上で、まずは新卒内でのLT会で発表しました。
その結果、登壇経験のある人を始め、色々な人から感想や改善点などインプットをいただき、「これならTechTalkで発表させてもらってもいいのではないか」と思い、Tech Tallk事務局にアピール。10月末に行われた回に登壇することができました。
——LT会の経験が活きましたね!
清水:DeNAのエンジニアはレベルの高い人が多いですし、経験の浅い自分が彼らの前で技術の話をすることに不安はありました。でも新卒内でのLT会での発表後、三軒家君や同期のみんなに「すごく良かった!改めてモノづくりっていいな、と改めて思った」との感想をもらっていたことが、登壇する上での自信になりました。
平子:臆することなくTech Talkに新卒が登壇するのは、先輩エンジニアにとってもなかなかのインパクトだったし、刺激を受けた人も多かったと思います。これは横のつながりの強さが生み出した、大きな成果のひとつだったと言えますね。
何のためにつくるの?「自由じゃない」自由課題に四苦八苦

——ところで、三軒家さんは最後の自由課題のフェーズはどうだったんですか?
三軒家:自分は、ソフトウェアは課題を解決するためにあると思って学生時代からプログラミングをしてきました。でも、研修では「課題を解決するため」ではなく「研修を卒業するため」にプログラミングをするんです。例えば、自分では正しいと思う実装を、詳しい説明もなく講師に却下されたりもしました。自由課題なのに自由じゃない……まさに「つらみ」でした。
平子:あの時期はつらそうだった。実際よく対話したね。
三軒家:4週間あった第4フェーズは、研修と配属マッチングが絡んでいたこともあり、毎週別な部署からメンターがつくんです。なので、前の週ではOKだったものが次の週にはNGになる。その統一性のなさもつらかったです。
清水:僕は課題に対するアドバイスに対してより、色々な意見や考え方の違うメンターの方々と話せること自体が、本配属についてはいいのかなと思っていたのでそこまではストレスなかったんです。
方向性も意見も違い、ともすれば翻弄されてしまう第4フェーズでのメンターとの対話。それがなぜ本配属にいいと思ったのか、そこには人事担当が意図する採用マッチングへの深い想いが隠されていました。後編へ続く(後編はコチラ)
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
執筆:片岡靖代 編集:菊池有希子 撮影:小堀 将生