VUCAな時代に求められるエンジニアの生存戦略 | フルスイング - DeNA

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CULTURE

20.02.12

VUCAな時代に求められるエンジニアの生存戦略

ゲームやエンターテインメント、モビリティ、ヘルスケア、スポーツなど、多くの分野で事業を展開するDeNAですが、事業領域の拡大が近年さらに加速し、新しい技術を素早く取り入れて実用化することが強く求められるようになってきました。

そこでDeNAでは、2018年8月より、既存事業の開発現場とは別にR&D組織を設置。新たな技術領域を積極的に研究開発し、最先端技術のスムーズな事業適用を目指しています。

技術が発展すれば、エンジニアに求められるスキルやマインドも細分化していきます。本記事では、システム本部技術開発室でブロックチェーン技術のR&Dを行う緒方 文俊(おがた ふみとし)のキャリアパスにフォーカス、R&Dの意義を紐解くとともに、これからのエンジニアに求められるスキルやマインドについて考えていきます。

エンジニアとしての原点が培われた学生時代

ーー緒方さんはMobageの決済システム開発、Cocos2d-xやUnityによるゲーム開発、動画配信サービス、キュレーションの広告システム開発など、これまで新規事業の立ち上げを幅広く経験してきたそうですね。たまたまそうなったのか、意図的に新規事業に関わってきたのか、どちらでしょう?

緒方 文俊
▲株式会社ディー・エヌ・エー システム本部技術開発室 緒方 文俊(おがた ふみとし)
大学卒業後、ベンチャー企業でのシステム開発を経て、2012年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社。Mobageの決済システム開発、Node.jsを用いた複数人によるリアルタイム対戦型HTML5ゲームタイトルの開発、Cocos2d-xやUnityによるゲームアプリ開発、実況動画配信サービスの開発、キュレーション事業における広告配信システムなど、複数の新規事業の立ち上げをWebからアプリまで幅広く経験。現在は、ブロックチェーン技術に関するR&Dを行っている。

意図的なものです。学生時代は3分程度のおもしろショートムービーをつくる「Flash職人」をやっていました。ゲームもずっと好きで、DeNAに入る前はmixiアプリなどを個人でつくっていましたね。今でも趣味でiPhoneのインディーゲームをつくっています。

ーーでは、そもそもプログラミングを学びたいと思ったのはなぜでしょう?

やっぱりゲームが好きだったからですね。当時『ウルティマオンライン』というゲームにハマり、バーチャル世界で人が動いている様を見て本当におもしろいなと感じたんです。ゲーム内の土地をリアルマネーで売買している人がいたりするのも衝撃的でした。

あと、もともとはシンガーソングライターを目指して上京したんです。自分でレコーディングをしたりDTMで曲作りをしたりもしていました。

ーーもしかして、音楽をつくる延長でプログラミングを始めたとか?

テクノロジーにはずっと興味があって、たとえば、当時はアルファ波CDみたいなものが流行っていて、テクノロジーとして、そういうものを詰め込んだ楽曲がつくれないか考えていたこともあります。

シンガーソングライターといったら声1本で勝負するべきなんでしょうが、私はどうやったらおもしろいものをつくれるかを考えながら、思いつくアイデアを足したり引いたりしていた記憶がありますね。

ーー緒方さんのエンジニアとしての原点はそこにあるのかもしれませんね。

確かに、言われてみればそうかもしれません。今でも考え方は同じです。ブロックチェーンという新しい技術を既存のアプリケーションに足したらどうなるか、と考えているわけですし。

緒方 文俊

なぜか昔から、人がやっていないものに惹かれるんです。振り返ると、周囲がiPhoneで盛り上がっている頃は、HTCDesireというAndroid端末を購入してAndroidの開発に没頭したり、DeNAに入社してからも、所属部署がアプリへシフトする時期に、ブラウザをもう一度盛り上げるという趣旨の、ある意味トレンドに逆行する新規事業に参画したりしていました。

きっとジャイアントキリングが好きなんだと思います。大きいところで勝っていくより小さいところに芽を見つけてやっていく方が性に合っているんですね。

そのプロジェクトは、ブラウザ上で100人がマルチ対戦できるRPGをたった3人、半年の期間でつくるというものでした。「ブラウザでも、アプリと同じ挙動はできる」というのがテーマの1つでもあったのですが、ユーザーにとってはブラウザかアプリかというのはそれほど重要ではなく、リリースすることなくチームは解散。今思えばかなり無謀だったと思いますが、このプロジェクトのプロデューサー兼エンジニアとしてゲームをつくったことは、後にも先にも自分の開発の糧となっています。

 

ネガティブをポジティブに転化する

緒方 文俊

ーー今振り返ってみて、そのプロジェクトはどんなものでしたか。

とにかく目まぐるしかったですね(笑)。いざ始まってみると、あれが足りないこれが足りない……と戦場のようになってしまって。でも、「感覚をいかに言語化するか」の大切さを実感したとてもよい経験でした。

当たり前のことですが、「これおもしろいじゃん!」だけでは意思の共有はできない。なぜそれがおもしろいのかをしっかり言語化し、つくりたいもののイメージを細部まで言葉で伝えるよい訓練の機会にもなりました。

ーー感覚をいかに言語化するか、は重要なテーマですよね。

そうですね。なぜそう思うかをしっかりロジックを持って関係者に伝えていくことは、プロジェクトを推進する上でとても大切だと思います。ただ、当時社内にいたゲームプロデューサーたちと話をして思ったのは、最後は「人間力」が決め手になるのでは?ということなんです。ジェンダーフリーバーに通っていたのもその頃でした。

 

「スキル」から「ウィル」の時代へ

ーー1つの場所に所属していると、どうしても価値観は似てきてしまうものだし外に出ることは重要だと思います。でもそれがなぜジェンダーフリーバーだったのですか?

プロジェクトを通して、「自分はなんて人間力がないんだろう……」と思ったんです。物事を進める上でロジックはとても重要ですが、ロジックで相手を打ち負かしても、人はついてきません。最終的にはそれを率いる人の人間性だったり魅力だったりするんじゃないかって……。それで、ジェンダーフリーバーに行ったら、私が抱いたことのない感覚や経験値を積み上げた人たちがいるんじゃないかと思ったんです。

実際、彼らと話していると、思慮深さだったり、物事の捉え方だったり、リスペクトできる人が多いと感じます。それからは当たり前だと思っていたことに疑問を持ったり、寛容に物事を捉えることが以前よりはうまくなった気がしています。

ーーなるほど。では少し話題を変えますが、新規事業ではどんなスキルが大切だと思いますか?

一般的に、新規事業を始める際のエンジニアに対する募集のかけ方は「特定の言語やフレームワーク、SDKを何年以上経験している人」ということが多いと思うんです。スキルが数値化され、そのプロジェクトにマッチするスキルを持った人がアサインされることが多い。もちろん、これは十分に理解できることなのですが、個人的にはスキルではなく「ウィル」でやりたいと思っていて……。

ーースキルではなくウィル、ですか?

たとえ今そのスキルがゼロだったとしても、つくりたい気持ちがあればその1週間後にはゼロではない。そのプロジェクトに参加したいという想いで必死にキャッチアップしますから。私はずっとそういう気持ちで新規事業に携わってきました。「やりたい」という欲求に勝るものはありません。そこには経験値を超えるものがあるはずです。

将来が予測不能なVUCA(※)と呼ばれる時代にあって、私が強く意識しているのは、今もっているスキルがいつまで有効かなんて誰にもわからないということ。大事なのはアイデアであり、アイデアとは「四六時中好きで好きで考えてしまう」といったウィルから生まれると思うんです。ずっと考え続けることはストイックに思えるかもしれないけれど、本人にとってはそれほど大変ではなく、むしろ趣味のようなものだったりします。自分もあまり「仕事をやっている」という感覚はありません(笑)。

※VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つのワードの頭文字をつなげて作られた造語。

キュレーション時代の経験がブロックチェーンに活きている

緒方 文俊

ーーブロックチェーンをやろうと思ったきっかけを教えてください。

キュレーションメディアで問題が起きた時、その屋台骨を作っていた側としては、ただただ悔しく悲しかった。再開に向けて、記事の内容や、掲載写真の管理方法を検討する中で、再発を防ぐための仕組みをコンテンツを制作する現場に任せるだけではなく、自らのエンジニアリングの力で問題解決できないかと、当初からずっと考えていました。その時たまたま読んだ、「フェイクニュースと戦うブロックチェーンで作られた記事システムの話」がきっかけでブロックチェーンという分野の熱烈なファンになったんです。

緒方 文俊

ブロックチェーンというテクノロジーは、「鎖」を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。あとから改ざんができないように、がんじがらめな鎖で繋がっているイメージですね。ウェブサイト上の記事でたとえると、この技術を使えば、誰がどこで最初に書いたかという事実を担保できる。もちろん、現時点でも技術的にすべてがクリアになっている訳ではないのですが、これを使えば、どんなにシステムを悪用されたとしても、オリジナルの権利はしっかりと証明できると当時は考えました。

ーーその頃はまだ社内にR&Dはありませんでしたよね。ブロックチェーン研究を本格的にできるようになったのは、R&Dが正式な部署として発足したことが大きいと感じますか?

まさにそうですね。キュレーションの直後は、現在のサービスインキュベーション事業部にあたる部署で新しいサービスを企画・開発していたのですが、事業部には事業部の難しさがありました。たとえば、その部門でやっている研究活動を他の事業部でやろうとすると、予算の問題等で都度社内調整が必要になったり、ビジネスとして立ち行かない場合、技術自体も存続することができないなど、テクノロジーからビジネスをリードしていく場合、色々な課題がありました。1つの技術をテーマに、社内のさまざまな部門に提案できるのは、今の部署のメリットであると実感しています。

ーー現在はどのような研究を行っているのですか?

ブロックチェーンの分野は、現在黎明期で、大小さまざまな技術が出ては消えていくのですべてをここで説明することは難しいのですが、大きなテーマとしては、「Interoperavility(相互運用性)」に向かっていくテクノロジーをつくっていると言えます。

これまでは難しかった「異なるアプリ同士が繋がるということ」。その結果、相互作用によってこれまでになかった新たな価値やビジネスが生まれます。DeNAには多岐にわたる事業が存在するので、それらをもっと強固にすることも可能だと思っていて、各事業部の方とブレストをしたり、小さなプロトタイプを作る仕事をしています。

単体の開発としては、CryptTrackingHubとCryptGamingHubというさまざまなアプリケーションのアイテムやコンテンツを橋渡しするSDKを開発しています。CryptTrackingHubはリアルなものとデジタルデータの橋渡しを可能にするようなテクノロジーで、初期はフィジカルとデジタルのトレカの掛け合わせのようなものを考えていますが、将来的にはエンタメ分野だけではなく、サプライチェーンなどが繋がるテクノロジーの基礎になるとよいなと思っています。

また、CryptGamingHubは複数バージョンのキャラクターが登場したり他のゲームのキャラクターが繋がる場合に起こりうる課題を解決するためのSDKです。これらは一部、3月に開催の「DeNA TechCon 2020」でプロトタイプのゲームとして公開する予定なのでぜひみてほしいですね。

さらに、ブロックチェーンというものをテーマとした時、DeNA内のビジネスだけでは補えない、たとえばチェーン技術そのものや、ハードウェア技術からのアプローチを行うために、副業で外部顧問としての活動も始めました。テクノロジーで企業間のつながりを広げ、最終的には会社に利益として還元できるようにしたいと考えています。

 

「できるできない」じゃない。やれる場所を見つけることが大切

ーー先ほどの「ウィル」の話ですが、誰もが強いウィルを持っているわけではなく、一見ウィルがないように見える人もいると思います。何が人にウィルをもたらすのでしょうか?

それは、今までの経験だと思います。もちろんウィルがあっても世の中に求められていなければ事業にはなり得ません。だからニーズを察知するためのアンテナを張ることも大事だと思います。しかし、突き詰めていくと「ニーズ」とは非常に曖昧な概念です。

ーーしかしいずれにしろ、スキルやマインドを求めるのではなく、好きなことを追求することが大事だと。

緒方 文俊

それにかなうものはないと思います。まず自分が何を好きなのか、何に喜びを感じるのかを見つけようと動くこと。そしてそれが見つかった時、今度はその好きなこと、喜びを感じることに、他者をどんどん巻き込んでいくこと。待っていても、誰も来てはくれないので、いろんな人にアプローチしてウィルを伝え、そこで可能性、実現性を探究することが重要だと思います。そして、ここで試されるのが人間力なのかもしれませんね。

ーーでは最後に。緒方さんから見て、エンジニアに向いている人はどんな人でしょうか。

私の場合は、状況が変わるたびに意地になってアーキテクチャを学び、食らいついてきたから今があると思っています。でも、全員がそうすべきだというわけではなく、同じアーキテクチャを極め続けて、求められなくなったら、転職し続けることだって生存戦略としてアリだと思います。

ただ、最後は誰もが自分との戦いなので、自分で自分を評価できることが重要だと思います。上司だって変わるし、評価基準も変わりますからね。そういう意味では、自分で自分を客観的に見て、動かぬ指針をつくれる人がエンジニアに向いているのかもしれませんね。

自分のウィルに向き合うことで、時には誰かに嫌われたり、情けない姿を晒したりすることになるかもしれない。でも、働くことは何かを我慢することではないと思います。私もまだまだ人間力も、技術力も、全然完成ではないです。好きなことを追求できる環境に身を置き続けられるよう、これからもテクノロジーを掘り続けます。

緒方 文俊

IT技術が急速に発展する現代においては、いま使っている技術やスキルは1年後には使いものにならないかもしれない。だから、エンジニアに求められるのは「スキル」ではなく「ウィル」であるーー。

「ウィル」がシンプルに「自分の好きなこと」の反映であるならば、働くことは何かを我慢することではなく、好きなことをより深く追求できる場を見つけ、開拓することなのかもしれません。

 

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:山田宗太朗 編集:フルスイング編集部 撮影:内田麻美

 

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