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「社員の個性・能力を活かす仕組みを強化していきたい」HR Techチームが進めるモノづくりとは

2019.12.05

DeNAでは、社内の人材・組織開発を支援する取り組みとして、ピープルアナリティクスのチームを2017年に設置。さらにその取り組みを強化するため、2019年に人事データを収集・分析するHR Techのチームを立ち上げました。収集したデータは、事業部を担当するHRビジネスパートナー(以下、HRBP)にリアルタイムで連携。人材配置の最適化や、社員の能力を活かす仕組み作りをバックアップしています。

定期的に行われる1on1やミーティングを通じて話される個々のやりがいやキャリアプランといった人事データを、いかに可視化して人材開発、組織開発に活かしていくのか。今回は、ヒューマンリソース本部人材企画部テクノロジーグループのグループマネージャーを務める澤村 正樹(さわむら まさき)に、DeNAのHR Techチームの特徴や取り組み、今後の展望について聞きました。

分散しがちな人事データを整理して組織開発に役立てる

澤村 正樹(さわむら まさき)
▲株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 人材企画部 澤村 正樹(さわむら まさき)
2012年DeNAに中途入社。前職では雑誌のウェブ版運営、ポータルサイト運営などを担当。入社後は、ゲームプラットフォームのエンジニア、エンジニアリングマネジャー、HRBP等を経験した後、2019年より現在のポジションを担う。

一般的にHR Techは「採用」「労務」「組織開発」の3カテゴリーに分かれます。人事が担う領域として広義な意味で捉えられがちですが、DeNAのHR Techは「組織開発」を推進、各事業部の人材戦略を支援しています。

じつは、HR Techチームを立ち上げる以前から、人事データを活用するピープルアナリティクスは積極的に行っていたのですが、蓄積したデータを洗い出してみると、情報が分散していて十分に活かしきれていないことがわかりました。

また人事データと一言にいっても扱うデータは多岐に渡ります。採用時の情報に始まり、受け入れ時の情報や各種評価、マネージャーから見た各メンバーの強みや本人のモチベーションなど、日々多くの情報がたまっていきます。

そんな中、社員の強みや希望するキャリアプランといった情報が、有益な情報として扱える状態にないのは決してよいことではない。それらを組織開発に活かせる人事データとして整理・分析するために、ヒューマンリソース本部でHR Techチームが立ち上がったのは自然な流れでした。

社内の細かい要件に応えられるよう、データ収集ツールを内製化

澤村 正樹

HR Techチームでは、従来から取り組んでいた全社調査や月次調査などのデータを収集・分析して、事業部を担当しているHRBPにリアルタイムで連携しています。

HRBPは受け取ったデータを参考に、マネージャーや社員とコミュニケーションを取りながら人材戦略に活かしていくのですが、データを収集するために運用している主なツールが「マンスリーアンケート」「360°フィードバック」「組織状況アンケート」の3つです。

■マンスリーアンケート
月に一度、一般的に「パルスサーベイ」と呼ばれる全社員が記名で回答するアンケート。「過去1ヶ月間のやりがいの7段階評価」と「振り返りの記述」の2つのシンプルな質問で実施。

■360°フィードバック
半期に一度、メンバーがマネージャーに対して良い点や改善点、マネージャー要件を満たしているかなどを記名式で行うフィードバックをする。

■組織状況アンケート
半期に一度、「『こと』に向かえているか」「加点主義か」といった自身の所属する組織があるべき状態になっているかをチェックするアンケート。全社員が約30の質問に匿名で回答するエンゲージメント調査で、それぞれ5点満点で回答。

特徴は「マンスリーアンケート」や「360°フィードバック」を記名式で実施していること。DeNAには「DeNA Quality」と呼ばれる5つの行動指針があり、その中に、チームで成果を上げるために正直でオープンなコミュニケーションを心がける「透明性」、役割にかかわらずしっかりと自分の考えを示す「発言責任」という項目があります。

記名式にすることで、事業部内で誰がどんなことにやりがいを感じたり悩んだりしているかが可視化され、HRBPやマネージャーがフォローやコミュニケーションの参考にできるようになりました。

さらに、注力しているのが、集めたデータを管理するツールの開発です。読みやすく情報管理がしやすい、かつ異動の際もきちんと情報が引き継げることを考慮し、マンスリーアンケート向けの『Flow』や360°フィードバック向けの『Gifts』といったツールを開発し、情報を集約できるようにしました。

360°フィードバック向けのツール『Gifts』(イメージ)
▲360°フィードバック向けのツール『Gifts』(イメージ)。記名式で行うことで「誰がどう考えているか」をダイレクトにマネージャーに伝えることができ、より改善のサイクルが早まる。DeNAの「透明性」を大切にするというカルチャーが生きる取り組みのひとつ。

当初、既成のツールの導入も検討しましたが、社内のさまざまな要件にスピーディーに応えていくためには、内製化が必須でした。収集したデータの中から強調したい点やメッセージをより明確に打ち出したりということも、内製でツールを開発していればすぐに対応することができる。

また、データの中には人の得手不得手やキャリアプランといったセンシティブなデータもあります。人のデータを扱う上で、アクセスする方の役職や状況に応じて権限範囲を細分化するのは、既成のツールだとなかなか設定しづらい。細やかな配慮がツールに随時活かしていけるのも内製のメリットだと思っています。

データが整理され、組織の状況が形式知化

澤村 正樹

実際にデータを活用しているHRBPや現場からは、ツールが整備されて組織の状況がより見えやすくなったという声も聞こえています。以前は、調査したデータを集めるだけでしたが、『Flow』などを活用して参照しやすくなったことで、利用頻度は上がったと実感しています。

同時に事業部からはたくさんの要望も届きます。収集しているデータをどのような形で現場に提供するかは、これからの課題。ただ、これらの要望も、現場の社員がHR Techの活動を認知して各データを役立ててくれるようになったからこそ。その点は、とてもポジティブに受け止めています。

HR Techを推進する上で大事なことは、データを活用しながら各人の働きやすさを担保し、人の力を最大化させることだと考えます。データは、組織の現状把握や意思決定の一助になってくれますが、あくまでも補助ツール。最終的に判断するのは、実際に現場で働く人であるということを常に意識しながら採用計画や人事の施策に影響を与えるような動きを起こしていきたいですね。

エンジニアの技術力で組織の「モノづくり」ができる

私はこれまでエンジニアとして事業部のマネージャーやHRBPを経験してきましたが、HR Techのチームに異動して感じたのは、テクノロジーの力を使うことで、組織をよりよく循環させていけるということ。社内には、まだまだ仕組み化されていない部分が残っています。これまで培ってきたエンジニアとしての技術力を、人や組織の「モノづくり」に活かせるのがこの仕事の面白みであると実感しています。

私もそうでしたが、事業部でエンジニアとして経験を積んできた方が今後のキャリアを考えるとき、HR Techは非常に面白いポジションだと思います。収集したデータの分析レベルを上げながら、エンジニアからデータサイエンティストへ守備範囲を広げることも可能ですし、HRBPやマネージャーと接する機会が多いので、そこから得られる知見は将来マネジメント層で活躍したいと思っている人にとっても役立つはずです。

DeNAのHR Techは、テクノロジーの力で組織開発を仕組み化して、働く社員がより一層輝けるようにするための手助けができる領域です。人や組織に興味関心があり、エンジニアとしてゼロベースで物事を考えるのが好きな人には、とてもやりがいがある仕事です。興味がある人はぜひチャレンジしてほしいですね。

HR Techのメンバーと
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:藤原達矢(アバンギャルド) 編集:川越 ゆき 撮影:小堀 将生

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