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18.02.28

AI創薬を支えるのは、「人」との“縁”。DeNA佐野毅が思い描く創薬の未来絵図

車の自動運転、ゲームのバランス調整、カメラ画像の解析。

 

世の中に新しい価値を提供すべく、DeNAはAI(人工知能)導入の取り組みを数多くの分野で続けています。そして私たちは「創薬」という領域にも、その一歩を踏み出しました。

 

2018年1月10日、DeNAは製薬企業と、AIを使った創薬手法を共同研究することを発表。医薬品を創生するプロセスのうち「リード化合物の最適化」にAIを活用し、既存の手法と比較して期間とコストを半減させる技術の確立を目指します。

 

このプロジェクトに“フルスイング”しているのが、ヘルスケア事業本部ビジネスディベロップメントディレクターの佐野毅(さの たけし)。もともとは製薬企業で長年キャリアを積んでいたという佐野は、「製薬 × IT」という領域にチャレンジするため、DeNAに入社しました。彼が目指す未来とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

 

人の勘と経験に頼っていた創薬プロセスを、AIで支援・代替する

――“「リード化合物の最適化」プロセスにAIを活用”とは、具体的にはどういうことなのでしょうか?

 

佐野:それをご説明するために、まず1つの薬がどういったプロセスを経て世に出ていくのかをお話しします。基本的には、以下のような各段階から創薬プロセスは構成されています。

 

▲「リード化合物の最適化」にかかる研究コストが最も高い。

 

最初に実施されるのは「創薬ターゲットの同定」です。手法は色々ですが、低分子創薬では、病気に関係するゲノムや体の中にある機能性タンパク質を特定するところからスタートします。

 

低分子創薬の場合、次に行われるのが「ターゲットからのリード化合物の創出」です。試験管の中で数十万の薬の候補化合物から、病気の改善に最も効果のある化合物(リード化合物)を何種類か選び出します。

 

その次が、私たちがAIを導入しようとしている「リード化合物の最適化」です。選定されたリード化合物が、必ずしも人体で十分な有効性・安全性を示すとは限りません。

 

例えば有効性を上げるように構造式を改変しても、心臓毒性や癌原性に問題がでてくる場合もあります。そのため、より有効性・安全性が高い薬になるよう最適化させていく作業が必要になります。創薬プロセスにおいては、この段階にかかる研究コストが最も高いんです。

 

ヘルスケア事業本部 ビジネスディベロップメント ディレクター 佐野毅
2015年DeNA中途入社。薬剤師。製薬企業入社後、市販後調査部門、本社営業本部、ライセンス部、経営戦略部へ配属。その間、研究機関・NGOへも出向。業界の事業戦略業務等を幅広く経験。

 

――研究コストが高くなるのはなぜですか?

 

佐野:リード化合物から最適化合物を見つけ出すためには、「その都度、化合物の構造式を設計し、合成し、有効性や安全性を検証する」という地道な作業を数千回もくり返します。検証するための化合物を合成するのに1か月かかる事もあると言われています。そのため研究コストが高くなるのです。

 

――数千回……。気の遠くなるような作業ですね。

 

佐野:そのプロセスをAIで代替できれば、膨大なコスト削減につながります。また、「リード化合物の最適化」は企業の知財を生み出す工程でもあるため、この作業が効率化すれば製薬企業の競争力を高めることにもつながります。また、アメリカの製薬企業をモデルとした創薬プロセスに関する論文では、「リード化合物の最適化」は最も財務インパクトがあると紹介されており、この点も大事です。

 

デジタルヘルスに大きな可能性を感じ、DeNAへ

――佐野さんは前職、製薬企業で働いており、2015年にDeNAへ移ってきたそうですね。それは今回の取り組みのように、ITを活用した創薬にチャレンジしたかったからでしょうか?

 

佐野:結果的にそうですね。最初は、デジタルヘルスにチャレンジすることが主眼でした。順を追って話すと、前職では経営戦略の部署でオープン・イノベーション(※)の取り組みを担当していました。大きな戦略としては「製薬と異業種の掛け算による新しい価値創造(新薬の創生)」。

 

※…新技術や新製品を研究開発する際、組織の枠組みを越えて広く知識や技術を募り、新しい価値を生み出すこと。

 

この経験を経て、2014年頃から、「今後は、健康・医療 × IT(=デジタルヘルス)が重要になるだろう」と考えるようになりました。

 

――そう考えるようになったのはなぜですか?

 

佐野:その当時、自分自身の健康状態やリスクに関する情報を、個人でデジタル情報として扱えるようになってきていました。具体的には、健康診断の経年データのデータベース化と本人への開示、スマートフォンやウェアラブルデバイスでの活動量(歩数)、心拍数の測定などです。

 

さらに、何と言っても「薬」の価値をより進化させたいと感じていたのです。DeNAが得意とするような「デジタル」で実現しているゲーミフィケーションは、人のココロを動かします。楽しくさせたり、感動させたりできるわけです。つまり、ココロに”効かせる”ことができます。

 

これを応用すれば、人を健康にする行動変容を起こせると思いました。カラダに”効かせる”ことができるわけです。

 

そこで、上司に「私にデジタルヘルスをやらせてください」と打診し、担当業務を変えてもらいました。その後、さまざまなIT企業の方々とお会いした中の1社が、DeNAだったのです。

 

▲まだDeNAに入社する前、佐野さんはDeNAライフサイエンスの代表取締役 大井さんに『不格好経営―チームDeNAの挑戦』を渡し、DeNA代表取締役である南場さんのサインをお願いしたという。書かれているメッセージは「これからよろしくお願い致します」。未来を予見しているようで示唆的だ。

 

――そこでDeNAと出会うわけですね。なぜ、入社を決めたのでしょうか?

 

佐野:良かった点は大きく3つありました。

 

1つ目は、生命倫理を大切していること。DeNAのヘルスケア事業を行う会社であるDeNAライフサイエンスは、遺伝子検査サービスMYCODEなどを提供しています。そのため倫理審査員会を設置して定期的に会議を開催し、しかもその議事録をWeb上で公開している事には驚きました。

 

2つ目は、科学的根拠を大事にしていることです。製薬企業で長年働いていた私にとって、これは非常に信頼のおける文化でした。

 

3つ目は、個人情報を扱うにあたって最も審査の厳しいISMSの国際規格である「ISO/IEC 27001:2013(JIS Q27001:2014)」の認証を取っていること。

 

これら3つが揃っている企業は、IT企業ではなかなかないと思ったのです。「この会社ならば、私の製薬企業でのキャリアを活かしつつ、ITを用いて新しいチャレンジができるかもしれない」と考え、働くことを決めました。

 

「人」との縁が、事業を動かす推進力

――佐野さんはビジネスディベロップメントディレクター職に就かれていますが、その業務内容とは?

 

佐野:ヘルスケア事業本部において、Delightfulで数年後には収益が上がるような新規事業(主に創薬関連)を作り上げていくのが私の役割です。残念ながら機密事項が多くて、詳細なことは話せないのですが。

 

――仕事を成功させるために、大切にしていることはありますか?

 

佐野:前職から現在までずっと大事にしているのは、「人」とのご縁ですかね。私は「人」と「人」を繋ぐことが自分の天命であり仕事の要だと思っています。

 

――前職で担っていたオープン・イノベーションとも共通する理念ですね。

 

佐野:私1人だけで実現できる仕事というのは限られていて、さまざまな人が持っている知識やスキル、アイデア、経験、熱量などを結びつけるからこそ、大きな仕事が達成できると考えています。

 

今回のAI創薬グループのエンジニアである上原さんは、製薬企業の宝である化合物情報を扱うためのセキュリティ環境を盤石にするだけでなく、その熱量で提案資料まで作ってくれました。また、社内調整をスマートに取りまとめるR&Dグループリーダーの米山さんの思考回転・行動速度には脱帽しています。

 

――社外の「人」との関係を築くために、心がけている習慣はありますか?

 

佐野:やはり何よりも、しっかりと方向性(事業アイデア)を決めて、積極的に「人」に会いに行くこと。その出会いから新しいアイデアや次のステップが見えることがあります。

 

私は、製薬系のセミナーやカンファレンスなどには積極的に参加していますし、また自分たちでイベントを開催することもあります。独りよがりにならないようにアウトリーチが得意な、AI創薬グループの久保さんとも連携して機会を作っています。そうして生まれた出会いというのは、いつかどこかのタイミングで必ず活きてきますから。

 

実際に、参加したセミナーで繋がったご縁で、現在AI研究開発グループにいる望月さん(IT創薬コンテスト4回連続優勝者。AIを用いたアルゴリズムを開発)を紹介して頂きました。

 

事業に結びつけるにはただ人と会うだけではなく「天・地・人」が揃うことが重要であると私は思います。この言葉は中国人の友人から教えていただきました。

 

 

――「天・地・人」とはそれぞれ何でしょうか?

 

佐野:「天」は、戦でいうと時を選ぶこと(タイミング)です。昔も今も天候をコントロールすることはできません。しかしタイミングを選ぶことはできます。同じ様に時代の流れ、経済状況、そして技術のトレンドもコントロールしきれるものではありません。現時点におけるAI技術の著しい進歩と製薬企業の生産性向上に対する切迫感、そして競合状況から、今がAI創薬に参入するタイミングと思いました。

 

それから「地」は、戦でいう地の利です。自分たちの持つ強みです。DeNAは、先ほど話した3要素や、他社に先駆けてAI領域に力を入れてきたという実績があります。逆に言えば、強みの部分がなければ、どれだけたくさんの人とお会いしてもなかなか“その次”には繋がりません。そして、勝ち抜くには、AI創薬のどこで戦うかのフィールドも大事で、幸いにもホワイトスペースを見つけることができました。

 

そして最後が「人」。これは文字通りに人です。社内・社外含め、多様な人がいて、それらの人々が適切なタイミングで出会うよう、偶然が必然になるように仕組んでいく。だからこそ、何かの事業が実現していくのだと考えています。

 

実は、AI研究開発グループのエンジニアである藤川さんは、余暇の時間で作った自然言語処理のAIアルゴリズムを用いて昨年バイエル薬品のコンテストで優勝しています。彼はこのプロジェクトに入る前には、大学入試以降、化学も生物も勉強したことがなかったのですが、わずか1か月で関連論文を読み込み、AI創薬の課題と解決の方向性を製薬企業の方にプレゼンして高い評価を受けました。

 

このプレゼンがなかったらこのプロジェクトはスタートも切ることができなかったでしょう。「人」は、ビジネスの要だとつくづく思います。

 

創薬で、目指すは「Delight and Impact the World」

――佐野さんが仕事をしていて楽しいと思うのは、どんなときですか?

 

佐野:私は「0から1を生む仕事」が好きですし、楽しいです。自称「シリアルイントラプレナー(企業内起業家)」です(笑)。

 

DeNAでも、AI創薬という前例のない領域にチャレンジさせていただけることは本当に幸運なことですし、なんとしても成功させたいと考えています。そして、自分たちの生み出した「1」が、「10」になり、「100」になり、世界中の病気で苦しんでいる多くの人たちを救うものになれば嬉しいですね。

 

――世界中の多くの人たちを救う……。とてもスケールの大きな話ですね。

 

佐野:そうです。薬は日本だけじゃなく、世界中の病に苦しんでいる人々を救っています。そういう意味では、創薬のプロセスを改善できれば、世界の人々の健康に貢献できる可能性を秘めています。まさに、「Delight and Impact the World(※)」ですね。

 

※…DeNAはミッションとして「Delight and Impact the World(世界に喜びと驚きを)」を掲げています。

 

それは同時に、競争する相手は日本の企業だけではなく、世界中の企業であることも意味しています。アメリカ、インド、中国。ありとあらゆる国のIT/AI企業と戦っていかなければなりません。

 

けれどその環境のなかで、DeNAのメンバーや協業先の方々と手を取り合い、「製薬」と「IT/AI」を組み合わせて新しい価値を生み出せることには、大きな意義がある。今この時代に、この会社で働けているのは、幸せなことだと思いますね。

 

まとめ

佐野さんがAI創薬を推進するうえで大事にしていること

①さまざまな人が持っている知識やスキル、アイデア、経験、熱量などを結びつける

②しっかりと方向性(事業アイデア)を決めて、積極的に「人」に会いに行く

③「天・地・人」が揃うこと

 

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執筆:中薗昴 編集:下島夏蓮 撮影:鈴木智哉

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