CULTURE
19.10.18
「地方学生の熱い想いに応えたい!」DeNAエンジニアと学生が合同でハッカソンに出た理由

国内最高峰のアプリハッカソン『SPAJAM』。今夏開催された2019年大会では、DeNAのエンジニア2名と新卒内定者含む学生3名が合同でチーム「おやすみ」を組み、参戦しました。
チームは東京A予選を最優秀で通過し、箱根の温泉ホテルで1泊2日で行われた全国大会に進出。
なぜDeNAのエンジニア2名は、多忙な業務の合間で内定者とチームを組み、ハッカソンに参加したのか?
「きっかけは地方在住の内定者から来た1通のメッセージでした」と話すのは、当時新卒エンジニア採用チームリーダーを務めていた福沢 悠月(ふくざわ ゆうづき)。
『SPAJAM』参戦の真の狙いを、今回の仕掛け人となった福沢と、実際に参戦したDeNAのエンジニア、兼原 佑汰(かねはら ゆうた)、神武 里奈(こうたけ りな)が語ります!
地方の内定者が抱いていた、あるジレンマ
――『SPAJAM』参戦のきっかけは、内定者からのメッセージだったそうですね。

福沢 悠月(以下、福沢):はい。東北在住の2020年新卒エンジニア職内定者から、当時採用担当だった私にメッセージが来たんです。
「地方にいるので基本的に1人で開発しているが、やはりチームでの開発現場を知れるチャンスが欲しい。リモートでインターンできる機会はないか?」という趣旨でした。
首都圏の内定者は大学在学中にDeNAでインターンをする人もいます。ただ遠方の地方学生にはハードルが高いですよね。彼女は東北の学生なので「リモートで」と提案してくれたんです。
DeNAでは毎回決まったインターンを募集しているわけではないのですが、学生側から強い要望があり、社内でもマッチングするポジションがある場合は個別で対応します。その結果、今回は「リモートでのインターンは違うかな」と思いました。
――それはなぜでしょうか?
福沢:最初からリモートでの開発だと、サービス全体の文脈も正確に伝わり切らないまま、「細切れのタスク」を渡すことになってしまう場合が多いんです。チーム開発の経験があまり豊富でない学生は特にそうなりやすいですね。しかし、それはDeNAの働き方と相反するスタイルなんですよね。

兼原 佑汰(以下、兼原):DeNAのエンジニアは、ユーザー目線はもちろん、サービスやプロダクトの持つ本質的な価値を理解した上で業務にあたっています。そのうえで様々な職能を持つ社員同士がフラットに膝を突き合わせてディスカッションするからプロダクトの質が高まるし、磨きあえる知見も多いのだと思います。
福沢:内定者にもせっかく貴重な時間を使ってもらうなら、そんなDeNAらしい働き方をしてほしいと思っています。そうでなければ今しかできない、研究や遊びに没頭してもらったほうがいいですよね。
――とはいえ、地方在住の内定者の方には「自分も東京の学生のようにインターンして学びたい」というジレンマは残ったままになるのでは?
福沢:大学の研究室や授業の関係で長く東京にはいられない学生も多く、でも学生の熱い要望に何か応えられることはないのかと、日頃から新卒採用に関してカジュアルに相談していたエンジニアの兼原さんを巻き込みました。
兼原:Slackで連絡が来て、何かぴったりの環境はないかと考えたときに「社員と内定者が1つのチームでハッカソンに参加するのがいいのでは」と思いあたりました。ハッカソンなら1泊2日で、地方の学生でもその短期間なら東京に来やすいですし、実際の業務のように社員と一緒に議論をしながら開発することができますね。
そして「それなら彼女だな」と神武さんに話をふったんですよ。
――ハッカソンといえば、神武さんなんですか?

神武 里奈(以下、神武):私はDeNAでは主に『マンガボックス』のiOSエンジニアを担当しています。ハッカソンはプライベートで、学生の頃から好きでたくさん参加しているんです。
なので、アイデアを聞いたときも、「よき!」と即答しました。
福沢:私も「すごく妙案!」と興奮したのを覚えています。その日のうちに、他にも地方在住のデザイナーとエンジニアの学生に声をかけ、学生メンバーは3名揃いました。
神武:そして、DeNA側からは私と……。
兼原:僕ですね。気づいたら、いつの間にか当たり前のようにエントリーされていました(笑)。そのあとは、学生により力をつけた状態で臨んでもらえるように、ハッカソン当日に用いる想定の技術を使っていくつか実装をしてもらい、それに対してSlackやGitHubを通じて質問に答えたり、コードレビューをしたりしていました。
「面白いだけ」のアプリはつくるな
――予選でのテーマは「NEWS」。実際に開発したのは、ニュース番組のインタビュー取材風に字幕付き動画が撮れるユニークなアプリですよね。
神武:はい。アイデア出しから学生と社会人の壁を取っ払って、議論を進めていました。議論は、ニュースをどう見せるか、どう扱うかではなく、「ニュースを発信する側になれるアプリって楽しそう!」と、盛り上がるところからはじまりました。
兼原:そして、このアイデアを実際にアプリという形にしていくわけですが、ここからがこだわるポイントでもあり難しいポイントでもある。
「こんなアプリがあったら面白いよね」まではたどり着く。けれど、「その面白いアプリが”誰に”対してどんな“ユニークな価値”を生み出せているのかまでをきちんと考えきろう」と伝えていました。
「ただ面白いだけでは自己満足でしかない。このチームでつくる以上は、徹底的に考えぬいたモノを作ろう」と強く伝えていたんです。
神武:その発言にも促され「ニュース形式で伝える価値は?」「家族間で普段伝えられないことが伝えられると良いよね」などと、学生の3人ものびのびと発案してましたね。
本当にニーズがあるのか、実際に使われる場面はどんな空気感なのかを検証するために、ハッカソン中に学生たちと会場近くの公園に飛び出して、アプリのモックを持って実際に街頭インタビューをしてみたりもしました。

福沢:まさにこういう議論を内定者には体験して欲しかったです。DeNAではユーザー数が数万人、数十万人というサービスもたくさんあり、ユーザー一人ひとりの生活に溶け込むプロダクトを作り、運営しています。
「なんか面白い」だけで、使用するユーザーや場面をあまり想像できないサービス作りはして欲しくないなぁと思っていたので、妥協せずにアイデアを磨き上げていて嬉しかったですね。
神武:ロゴやUIを担当したデザイナー職内定者は、初めてエンジニアとタッグを組んだらしく、「自分のデザインが実装されて、みるみる形になっていく!」と感動していました。地方にいてエンジニアと出会える機会が少なく、ずっと1人でデザインしていたようだったので、一緒にモノづくりができて良かったです。
――そして、予選を最優秀賞を取り、本選への出場権を獲得したんですよね。
兼原:ええ。みんなで勝ち取った最優秀賞だったので嬉しかったです。2ヶ月後に、本選会場の箱根の温泉ホテルで再集合しました。
学生が遂げる「分刻みの成長」と突き上げられる社員
兼原:本選では予選時からの成長に驚かされましたね。まずアイデア出しから違っていて、僕の出したアイデアも「それ利用者にとって直感的なものですかね?」と何度もつっこまれました(笑)。
決勝のテーマは「ホーム」。そこから着想を得ながら、「どういうユーザーの課題を解決する?」「こういうニーズ本当にあるかな?」と、気づいたら本当にDeNAの普段のメンバーとやるような議論を侃々諤々と。

神武:深夜3時までアイデアの議論を続けて、「みんなが持つ課題をシンプルに解決しよう!」と方針を定めました。そして「家にある家具・家電にアプリをかざすと、AIが商品を識別して、Web上の取扱説明書を表示してくれるサービス」に行き着いたんです。
そこから実装に入るのですが、解決する課題、目指す体験、想定ユーザーなどをバシッと定めたので、動くモノが完成するまではとても早かったですね。学生たちが予選のときよりも更に成長していて、手と頭を柔軟に動かして自走していました。
兼原:予選から決勝までの2ヶ月の間、予選での経験も踏まえたハッカソンにフィットしそうなアーキテクチャをいくつか考え、学生と一緒に実装をしてみることで、問題点を洗い出したり開発効率を確かめたりしていました。そういった事前準備も効きましたね。
神武:ですね。そしてプレゼンでも学生が大活躍でした!
――学生がプレゼンをしたんですね。本来その予定じゃなかったのですか?
神武:プレゼンに慣れていることもあり、私が担当する予定だったのですが、風邪をひいて声がでなくって。急遽「頼む!」と。
お願いした学生は最初「無理です! やったことないし絶対できません!」と頑なでした。ですが、「大丈夫、できるよ!」と背中を押して、「少し練習してみよう」とコツを伝えて練習してみたら、驚くことにみるみるうちに上達していったんです。ほんの1〜2時間で立派なプレゼンターになっていて感動しました!
福沢:私も決勝のプレゼンを見ていたのですが、学生が堂々たる顔つきと声色で作ったサービスの魅力を伝えていて、成長の速さに少し震えましたね(笑)。

――本戦の結果はいかがでしたか?
兼原:残念ながら、入賞は逃しました。ただ、学生はもちろん僕らDeNAのエンジニアも得るものがとても大きかったと思います。
神武:そうですね。私はモノづくりが好きですが、正直なところ、人事や育成に強い興味がなかったんです。けれど、今回学生たちの「分刻みの成長」を目の当たりにして私自身刺激を受けましたし、こういう機会を提供できるのはいいなと実感しました。
兼原:僕は今、共通基盤の開発を担当していることもあり、ユーザー向けサービスの開発からは少し離れていたのですが、ハッカソンという短い期間で、学生たちと一緒に手を動かしながらアプリを作ったことで、モノづくりの面白さと難しさを思い出せました。
福沢:まさにDeNAが新卒採用をやっている本質がここにあると思うんですよね。
1年目の新卒が入社してきて、まっさらな心と頭でぶつかってくる。びっくりするほどの速度で成長していく。そしてその姿が他の社員を突き上げ、DeNA全体のレベルが上がっていく。人事の役割は、その素晴らしい反応を起こさせる触媒みたいなものだと私は思っています。
――こういった内定者への取り組みは今後も継続しますか?
福沢:DeNAは向上心や好奇心を持って全力でものごとに取り組む学生を応援しています。立地などの環境要因で、思いっ切りストレッチできる機会が少なくなっているのであれば、人事として、何らかの力になりたいと思っています。
今回は内定者とDeNA社員でハッカソン参加、というスタイルでしたが、今後もまた良い触媒となりうる取り組みを模索したいです!
――今後も楽しみですね。今日はありがとうございました。

▼参加した学生の声(抜粋)
・岩佐 晃也さん(京都大学)
DeNAの最前線で活躍しているエンジニアと一緒に本気の議論をして、すごいスピードでプロダクトができあがっていくのがとても面白かったです。プロダクトが初めて動いた時のワクワクやドキドキなど、純粋な気持ちを忘れずに、これからもサービスを作っていこうと思いました。
・渡部 椰也さん(東北大学)
個人開発だと「プロダクトが動けばいい!」がゴールだったので、自己流で書いていたコードを社員さんから指摘され、初めて「この実装方法ではダメなんだ」と気づけました。また、Google Cloud Platformの便利な機能など、先輩社員は引き出しが多いと感じました。今後は作るだけではなく、新しい技術も習得していきたいですね。
・成塚 雅樹さん(宮城大学)
今までデザイナーのイベントで数日かけてアプリのデザインを作る経験はあったのですが、開発まで行い一つのアプリを完成させるのは初めてでした。今回得たものは、エンジニアとデザイナーのコミュニケーションの大切さです。お互いの特性や考え方を理解し、両方の考えをバランスよく組み合わせることが良いプロダクト作りに重要。入社後は、ハッカソンで得た経験をもとに他業種の人たちの視点・考え方を取り入れられるクリエイターになりたいです。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
執筆:箱田 高樹 編集:榮田 佳織 撮影:小堀 将生