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一歩踏み出すことに軽やかであれ!ーーITトップ企業3社が考えるこれからのモノづくり

2019.10.04

2019年9月13日(金)、14日(土)に開催された『BIT VALLEY 2019』。「モノづくりは、新たな領域へ〜テクノロジーとクリエイティビティが交差する世界」というテーマのもと、トークセッションやワークショップなど、2日間にわたって数々のプログラムが催されました。会場にはエキスパートたちによる「モノづくりのヒント」が随所に散りばめられ、学生から社会人まで多くの人が参集。

本記事では、日本を代表するIT企業3社のトップによる「ITトップが考えるモノづくり対談」をご紹介。最先端の経営者たちが語った「現在」「未来」のロングセッションをお届けします。

すべての産業・業界がインターネットをどう活用するかというフェーズへ

ー 不確実で不安定な世の中こそ、ありとあらゆるチャンスがある


▲独立研究者 / 著作家 / パブリックスピーカー 山口 周(やまぐち しゅう)氏

山口 周氏(以下、山口):今日は日本を代表するIT企業の経営者の皆さんに「今のIT業界」「経営者としてのモノづくりの考え方」「ITの力×クリエイティビティがつくる未来」の3つについておうかがいしていきます。まずは川邊さん、今日会場に集まっていらっしゃる方の中には学生さんも多いと思うのですが……。


▲ヤフー株式会社代表取締役社長 / CEO 川邊 健太郎(かわべ けんたろう)氏

川邊 健太郎氏(以下、川邊):そうですね。就職直前の方も多いと思います。転職も今や当たり前という世の中で、「どういう会社に行こうか」「自分は何を成したいのか」と考えると思いますが、会社はそれぞれ違います。

会社が大事にしている理念や価値観は各社さまざま。それらをよく調べて、「自分の価値観と合うのか」あるいは「こういう理念の会社に一回寄り添ってみたら自分が変わるんじゃないか」、そんなふうに考えて会社や事業を選ぶといいのではないでしょうか。

山口:私は電通出身でその後コンサルティング会社に勤めました。電通時代はソフトバンク担当で、孫さんの話を聞いているうちに夜も眠れなくなるくらい興奮したんです。「何かすごいものが来る」とワクワクして、結局会社を飛び出してしまいました。

今はすごく不確実で不安定な世の中といわれていて、それをすごくネガティブにとらえる人もいますが、ここからキャリアを20年30年と歩んでいける皆さんは本当に恵まれていると思います。旧来のビジネスのやり方がキッチリ決まってしまっている時代と比べると、今は本当にありとあらゆるチャンスがあります。かつ、5Gやブロックチェーンなど、さまざまな技術がある中で、業界地図もどんどん塗り替わっていくことを改めて感じていますね。

ー ネットとリアル、現実と仮想。次のパラダイムが広がるなか、誰が勇気を持って踏み出すか

山口:「今のIT業界」というと非常に曖昧なテーマですが、産業が新しく生まれる時は「役に立つ」ことをバリューにして出てくるものです。「役に立つ」ことが一旦落ち着いてくると、個性とか意味性が差別化の要因となってくると思っています。

日本のIT業界の先駆けといえる「Yahoo! JAPAN」がスタートしたのは1996年ですよね。20数年を経ていろいろなステージの変化というものを皆さん感じられていると思います。守安さんいかがでしょうか。


▲株式会社DeNA代表取締役社長 / CEO 守安 功(もりやす いさお)

守安 功(以下、守安):私は1998年に日本オラクルに入りました。当時、米国の状況を調べるとインターネットブームの真っ只中で「すごい!」と興奮したのを憶えています。

DeNA立ち上げ時はちょうど「ビットバレー」が盛り上がっているタイミングで、本当にお祭りのようでした。メンバーはほとんどが20代。みんなで何ができるかを手探りしながら進めていきました。私は当時エンジニアという立場でモノづくりに携わっていましたが、うまくいったと思っても「サイトが文字化けしてる!」なんてこともありましたね(笑)。

スキルや経験は足りていないけれど、「これからインターネット業界は伸びる!」という強い思いでサービスを始めて、まさにトライ&エラーを繰り返しながらインターネットに賭けてきたというのが実感です。今年DeNAは20周年を迎えましたが、今ではインターネット業界というよりも、すべての産業・業界がインターネットをどう活用するかというフェーズに入ってきていると思います。

我々もオートモーティブやヘルスケアなど、社会課題解決型の事業にも挑戦していますが、インターネット産業とリアルの産業を融合しどう社会を変革していくか、ということを見据えていくと、IT業界やインターネット業界が成し遂げられることが広がっていくと考えています。

山口:確かにITとリアルという分け方自体が1対0的ですよね。

守安:そうですね。これからもネット完結型の新しいサービスは出てくると思いますが、ネットだけでは完結しないサービスや事業をどのように融合させるかが楽しいところではないでしょうか。

山口:これはITやインターネットが世の中にさらに大きなインパクトを残せるかという問題でもありますね。

守安:そうですね。皆さんが暮らしたり消費したりする日常がリアルの世界。そこをITやインターネットを活用することでどのように快適にするか、という取り組みができる環境が整ってきていますのでとても楽しみですね。

山口:舛田さんはこの辺りをどのように見ていらっしゃいますか。


▲LINE株式会社 取締役 / CSMO 舛田 淳(ますだ じゅん)氏

舛田 淳氏(以下、舛田):私は「ビットバレー」が隆盛を極めた頃は学生でした。ちょうどIT革命といわれている時代で就職難も重なっていた。そのカオス感がすごくて「何かが変わっていきそうだな」と感じて。一学年上にいたメルカリの山田進太郎さんたちとも話をしながら、ある種の憧れを抱いて見ていました。

あの時描いていたインターネットやITで実現したいことが、この10〜20年かけて各社がやってきたことほぼそのままではないでしょうか。テクノロジーの進化や社会の変化などによって、ようやく実現できるようになってきている。また、まさにこの数年、個人的な感覚も含めてですが、インターネットが狭くなってきたと感じているんです。

山口:インターネットが狭くなってきたというのは?

舛田:インターネットの広がりがある種閉じてきたなと思うところもあって……。例えば、米国のGAFAや中国のBATH、ここにいる3社も含め、実はプレイヤーが少し固定化されてきていて、ユーザーを持っている面積もある種固定化されはじめている。これって今までずっとワクワクし続けてきたIT、インターネットの世界にちょっと「際」が見え始めたんじゃないかと考えています。

であれば、私たちが次にどこに向かうのかを考えるのがまさに今で、それは2つあると思っています。一つは私たちがリアルの方に染み出して行って、ネットとリアルをどう統合するのか。それがまさにOMOという話だと思います。もう一つは、VR、AR、MR、XRといった現実と仮想の世界を融合させる方向ですね。

スマホバブルがある種終わり、みんなが模索していく中でようやく次のパラダイムが広がってきています。積み重ねじゃない、ここは合理性と非合理な世界が混ぜこぜになるタイミングなので、カオスが生まれる。カオスっていうのは言葉を選ばすにいうと、いわゆるワンチャンがあるということなんですよ(笑)。誰が勇気を持って踏み出すかなので、今が非常に面白いと考えています。

山口:これは既存のシステムで覇権をというかプレゼンスをもっている皆さんからしてみると、ある意味でリスクでもあるんだけれども、そこが固定化してしまうことはそもそものネットの面白さじゃないということですね。

まだまだプレイヤーの顔ぶれが変わるチャンスがあるし、そういう意味で若い人たちが入ってきても大きなプレゼンスを発揮できる会社が活躍する機会もある。今ここにいる皆さん自身が若い時期にこの業界に飛び込んだからこそ、業界の中でもリーダーシップをとれる会社になっているということでもありますよね。

本質的かピュアかどうか。「経営者としてのモノづくりの考え方」

ー パラダイムが変わる時というのは、既成概念がない人が入ってくる

山口:では、次の質問にいきたいと思います。「経営者としてのモノづくりの考え方」をおうかがいしたいのですが、今度は舛田さんからいきましょうか。

舛田:私は経営者ではありますが、いまだにサービスや事業をつくっていまして、よく自分に問いかけるんです。本質的かどうか、ある種ピュアかどうか。例えばいろんなものを合理的に積んでいってリサーチをしたりフィジビリティをしたりするんですけど、それをやりすぎるといろんなものを積みすぎている時があります。

いろんな算出……コストを気にするとかですね。それこそ長くやっているとネットサービス界でのカニバリ、「今できている企画自体はある種合理的です」といった状態に陥ることがあるんです。その時に1回疑ってみる。「本当にこれがピュアに、ユーザーの課題なりニーズなりを叶えられているかどうか」と。自分の中でもチームの中でも、かなり行ったり来たりそういった議論をする場面が多いです。

「無邪気に言ったらこれってどうなんだっけ?」「極論するとこれどうなんだっけ?」という私の中でのマジックワードを使ってそれを検証していきます。先ほど、企業の考え方についての話がありましたが、LINEグループとしては「ユーザーニーズがほぼすべて」と言い切れるんですね。商業的であるとかテクノロジードリブンであることよりも、まずは「ユーザーニーズにそれが適うかどうか、ということだけを考えてモノをつくりましょう」と言っています。

エンジニアがいて、そこからプロダクトアウトで出てくるものが良いと考えていた時代もあったんですが、その時にうちの取締役CWOである慎(慎 ジュンホ)が、「いや、違うよ」と。実はユーザーニーズだったんですね。私の前職は『百度』という中国の検索サービスの会社なんですが、創業者のロビン・リーも同じことを言っています。「テクノロジードリブンである必要はない、ビジネス、レベニュードリブンである必要もない、すべてはユーザーニーズである」と。2人ともかなり厳格にそのルールを守っていましたし、私としてもパートナーとして、尊敬する人たちとして、このルールを羅針盤として大切にしています。

山口:この「ピュアに」というのは言葉としての抽象度が高いと思います。僕の理解だとピュアに判断する時に「テクノロジーがすごい」とか「めっちゃ簡単にもうかりそう」とかいろんなノイズが入ってきて濁ってしまいます。これは「顧客や世の中の人たちの何らかの課題解決の足しになっているか」と純粋に向き合えているかどうかという意味でのピュアでしょうか?

舛田:そうですね。あとは、触った時に「お、すごっ!」ってユーザーが体験として驚いてくれるか、良いと思ってくれるかを大事にしようと。

山口:川邊さんはいかがですか?

川邊:我々はヤフーでありソフトバンクグループであるわけですが、「とにかくやるからには世界一」あるいは「やるからには日本一」という価値観が強いです。「とにかく成長するんだ」「今日より明日の方が成長する」という理念を持っています。今回のZOZOへの投資もそのひとつで、「ファッションをいかにeコマースで強化するか」というのを我々は考えています。ZOZOはファッションの力で「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」という素晴らしい企業理念を持っていて、この理念に共鳴している人たちがサービスを動かしています。

やっぱり、文化っていうのはお互いに尊重し合って、かつ影響し合ってより良いものになっていくと思うんですよね。今回のことを例とするならば、ヤフーとZOZOの組織文化・理念は異なりますが、「eコマース日本一に」という大きな志によってお互いを認め融合し、お互いに影響し合って新たな便利でかっこいいeコマースというのをつくっていけるんじゃないかと思っています。ビジネスで絶対に日本一になってユーザーに新しいメリットを届けたいですね。

山口:守安さんはいかがですか。

守安:モノづくり、事業のつくり方全般だと思うのですが、まずその0→1のフェーズ、インキュベーションのフェーズとその後のグロースのフェーズというのはだいぶ考え方が違います。

0→1やインキュベーションのフェーズは少数精鋭でモノをつくる。ユーザー側に出しどんな反応が返ってくるかというところを見たい。今新しいゲームをつくると2年から3年はかかりますので、「本当に良いものができているのか」と見極められるまではあまりチームを大きくせず、熱狂する少人数のチームで良いものをつくれるかだと思います。

その後「これはいけるな」と手ごたえを持ってグロースのフェーズに移ったら、マーケティングや営業、分析などいろいろなファンクションを投入して総力戦で一気に伸ばしていくということになるんですけれども。0→1のところではやはり、舛田さんがおっしゃった「ユーザーニーズがそこにあるか」というのは非常に重要ですね。

山口:なるほど。ユーザーニーズとかユーザーの課題解決というところでいうと、ゲームは必ずしも課題解決ではないですよね。しかもそれがスマートフォンとなるとコードを書くのがものすごく手数がかかるようになって、投資も大きくなりますよね。課題解決だと比較的意思決定はわかりやすいと思うんです。「これって課題が確実にあるよね」「自分も共感できるよね」と。

一方でゲームに関する感動とか面白さというのは、人それぞれみたいなところがあると思います。投資が大きくなると、インキュベーションの段階で投資の判断を合理的にやるのって難しいんじゃないかと思うのですが……。

守安:そういう意味での課題は「本当に面白いんですか?」というところだけです。「ターゲット層にどこまで刺さっているのか」ということと「ターゲットユーザー層が多そうか」ということとの掛け算のイメージなんです。少なくとも、我々がこれが面白いと思ってもらえるだろうというユーザーに対して、触ったり見てもらったりした反応がどうであるか、というのは相当重視しています。

舛田:守安さんのスモールチームっていうのは、まさにゲームづくりの考え方に当てはまっていると思います。合理性でやることじゃないんですよ、ゲームって。ある種ピュアじゃない感覚も入っている状態で評価すると失敗することもあります。

ちなみにスマホゲームで世界トップクラスのユーザー数・売り上げの「ディズニー ツムツム」ですけど、実はこれ、担当レベルではリジェクトされているんです。で、それを私が無理矢理拾い上げようとして「やろう!出そう!」と言って進んだ背景があるんです。これって私がそこに思い入れがなければ終わっているんですよね。

守安:我々も内製でこれまで一番ヒットした「怪盗ロワイヤル」ですが、あれはゲームをやったことがないメンバーがつくったんですよ。パラダイムが変わる時というのは、既成概念がない人が入ってくるとうまくいきます。「ゲームはこうあるべし」という既成概念を持った人が入ってきてもあのゲームはつくれなかった。フェーズごとにどういう人が活躍するかは変わってきます。

山口:これはゲーム世界の勝ちパターンで、再生産にこだわりすぎると経営がうまくいかなくなるといわれています。勝ちパターンから外れたことは大概うまくいかなかったりするんですが、そこで失敗が学習になったり、あるいは普段手を出さないボールが場外ホームランになったり、そういうことをやっていくのも経営の仕事っていうことですかね。

守安:ある種の通用するパターンがあり、普遍的なものと環境に依存するものの2つ。環境に依存しているものだと環境が変わると通用しないので、その辺りを見極めないと難しいと思います。

山口:川邊さん、ご自分なりのポリシーやここから先の展望などがあれば教えてください。

川邊:「経営者としてのモノづくりの考え方」と「モノづくり」というより「経営者として」というところに起点を置いて話すならば、一番重要なところは2つに分かれると思います。「人に任せる」ことと、「自分でつくる」ことですね。

「人に任せる」ことは、任せる人のトラックレコードが重要だと思います。どれだけの大ヒットを飛ばしたことがある人なのか、ヤフーでいうと「1,000万ユーザー以上のサービスをつくったことがある人かどうか」ですね。さらに、あるとするならば「0からのフェーズを手がけた人なのか、それとも数百万くらいになったものをうまくグロースさせた人なのか」。いずれにせよ、トラックレコードをよく把握してから任せます。

「自分でつくる」ことは、「自分でつくっているか」「使っているか」「その背景にあるサービスの考え方とか理念が本質的か正しいかどうか」という3つの要素になってきます。なので、自分でつくる場合の一番の理想は自分自身がエンジニアであることですね。

私はこれまで「自分でつくる」ことはしないで、「つくっている人」と一緒に考える立場でしたが、「つくっている人」と一緒にやればそういう感覚が身につく。あとは使っているかどうかです。

山口:エンジニアでなく自分自身がユーザーになると?

川邊:そう。そのサービスが本質的か正しいかという判断は、舛田さんがおっしゃっていたように「ネット業界的考えの中で本質的かどうか」ということです。リアルではできない、パラダイムの転換的なことを起こせるかどうかを正しく判断するのは美意識みたいなもの、真善美ですよ。それが真なのか善いことなのか美しいのか。真善美の判断は経営者がした方が良いと思っています。

ー 失敗を許容できるか。組織文化をどのようにつくるのかが大事

山口:既存産業の人たちが新規事業を興す時は基本的に「絶対成功させる!」という気持ちでいますよね。もちろんネット業の人たちもそうだとは思うんですけど、失敗を許容できる度合いが全然違う気がするんです。

例えばAmazonは上場から数えた新規事業の数ってだいたい80くらいあるんです。今、続いているのが1/3程なので、2/3は失敗しているんですよね。失敗したとしてもその担当者たちがちゃんと敗者復活戦で生き残っていけるっていうのを横から見ているわけです。そこが既存産業とネット業の大きな違いだと思います。

守安:Amazonの話を聞いてすごいなと思ったのが、3割バッターを目指しているところなんですよね。3割成功すると相当打率は高い。やっている人は絶対に成功すると思ってやっているんだけれども、経営的には出したものの3割がうまくいけばいいなという感覚はありますね。

山口:既存産業は正直差がつきにくいので、失敗した人を下ろすというシステムになっていることが多いですね。若干変わってきていますけど。

川邊:これは「組織文化をどうつくるか」というテーマで解決できるんじゃないかと思います。ヤフーの組織文化というと、失敗も恐れるし責任問題も問う文化です。しかし、ソフトバンクの場合は、過去のことは成功したことも失敗したことも全部忘れるんです。昨日失敗したことも大成功したこともきれいさっぱり忘れて未来しか考えないんです。

山口:ピュアですね。

川邊:ピュアですよ。そういう意味ではソフトバンクのような組織文化を持っている方が、新しいことにチャレンジしやすいですね(笑)。

舛田:当社でいうと、プロジェクトをものすごくたくさん進めているんですね。ネット業界の中でも、ものすごい手数を打っている会社なんです。まさに成功するかどうかはやってみないとわからない。経営側も正解を持っていないので、特に新しい領域に関しては出してみて、まずは反応をみてみないとわからないということになります。

当然、失敗もする。その時に閉じる判断は当然経営側でするべきで、その責任も負うべきなので、プロジェクトをちゃんとリードしている人に関してはペナルティはないです。考え方としては「チャレンジをして失敗するのはしょうがない。それは当たり前のプロセスでその中で成功した人は評価する」で、加点でしかないんです。

今後、「みんなでインターネット、社会構造を良くしましょう、チャレンジしましょう」というものは、どんどん増えていくと思うんですよね。ソフトバンクは成功したことも失敗したことも忘れるということでしたが、社会も世論も失敗したことは覚えてないんです。

山口:それは、たくさん試して失敗の数も成功の数も同じだけあるけど、失敗は全部水に流れちゃうと。

舛田:既存事業もネットITの事業も、当然「外しちゃいけない」というプレッシャーがかかることはありますよね。ネットか既存かという話ではなく、どこまで失敗を許容するかをプロセスに入れられるかだと思います。

個がエンパワーメントされる時代。「好き」「楽しい」にとことん向き合った先に「勝ち」がある

ー 自由な発想でチャレンジすることに躊躇しない。好きで楽しいと思えることに踏み出そう

山口:若い時からネットの世界に身を置き、業界の成長とともに会社も自分も成長させてきたお三方。今日は特に若い方が多く集まっていると思うので、彼らにメッセージをいただけますか。

舛田:皆さんが今後何かチャレンジをしていく時に、今までどうだったかは気にせず、どうやって一歩を踏み出すか。踏み出すことにピュアであってほしい。それがまた次につながりますし、それが許される社会になっていくと思うからです。

これが20年前に同じアドバイスをしたかというと、していないかもしれません。けれど今このタイミング、今ここからの時代に関しては個人というものがさらに強くなるでしょうし、そこに集まる仲間もより強くなると思います。目的に応じて、その都度仲間と組んでいけばいいのではないでしょうか。

私は、いつでも人生はやり直せると思っているんです。実際、いろんなショートカットは存在しますし、いろんな山の登り方も存在します。これからの時代、一歩踏み出すことに対して軽やかな方が絶対に最終的に幸せになる。そこらへんを意識してチャレンジをしていただけたらなと思います。

守安:自分が学生のときを振り返っても、社会とか仕事ってまったくわからないですよね。なので、あんまり考えすぎない方がいいんじゃないかと思います。

僕が学生のときはインターンを受け入れる企業があまりなかったと思いますが、今はインターンされてる方も結構いますよね。そういう意味では学生さんには「とことん遊べ」と言いたいですね。とことん遊ぶからこそ、仕事とのメリハリがきいてきますので。遊び飽きたっていうくらい遊んでもいいんじゃないかなと思います。

ただ、僕は理系の研究室にいて実験とかも無理矢理行ってたんですけれども、やったことはやっぱり後々つながってくるんですね。そこで学んだことが、サービスをつくるときや経営するときの基礎になってくると感じています。

川邊:コンピューター、ITは最初、軍事用途として生まれました。国家的な大きな力のためにこういう技術はつくられてきたんですけど、ある時から個人ファーストに向かっていったんですね。LINEにしたってDeNAにしたってヤフーにしたって、あるいはGAFAにしたって、みんなその文脈に沿った形で個人をエンパワーメントするためにサービスをつくっているし、個を開放するために横同士ではしのぎを削ってサービス開発をしています。

何がしたいかさえあれば、何でもできちゃう世の中になりつつあるので、ぜひ「何をしたいのか」と名乗りをあげて、我々がしのぎを削ってつくっているいろんな良いサービスを活用して、世界最先端の人類になってもらえたらなと思います。

山口:私は、今の世の中で活躍する人にひとつ共通点があると思っています。それは好きな仕事をやっているということ。たとえ優秀な人が努力してやっているとしても、好きで楽しんでやってる人には最後に勝てないんですよ。

「勝つ」ってすごく大切だと思いますが、「勝ちたい」「結果を出したい」って思っているんだったら絶対好きで楽しいと思えることをやった方が良いと思います。ここにいる人たちはまさにその例かなと思いました。

まだまだお話をおうかがいしたいですが、残念ながら時間ということになりましたので、今日はここまでとさせていただきます。皆さん、ご清聴ありがとうございました。

※この記事は『BIT VALLEY 2019』で行われたトークセッション「ITトップが考えるモノづくり対談」を再構成したものです。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

写真提供:BIT VALLEY 2019 実行委員会 編集:川越 ゆき

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