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遺伝子検査が広がりをみせるこれからが本番。5周年を迎えた『MYCODE』の新たな挑戦

2019.09.26

自宅に届く検査キットで唾液を採取し郵送するだけで、病気の発症リスクや体質的な特徴がチェックできる――。

MYCODE』は、DeNAライフサイエンスが2014年8月に提供を開始した一般向けの遺伝子検査サービスです。

自宅で手軽に検査が行えることと、Webで情報を閲覧できる利便性、さらに検査費用は最高でも約3万円ということもあって広く浸透。サービス開始から5周年を迎え、未病・予防という意味での国内の「ヘルスケア」サービスとして、広く知られるようになりました。

『MYCODE』の研究開発に携わるR&Dグループの座間 慶彦(ざま よしひこ)は「遺伝子検査の認知が広がり、その概念が浸透しつつあるこれからが面白いフェーズです」と言い切ります。

また、サービスの事業拡大を推進する砂田 真吾(すなだ しんご)は「この5年で積み上げてきた実績とノウハウを活かしながら、さらに付加価値を感じてもらえるサービスをつくっていきたいですね」と言葉をつなげます。

『MYCODE』を背負って立つリーダー2人が「これからが面白い」と語る、その理由に迫りました。

遺伝子から健康のためのヒントを見つける。5周年を迎えた『MYCODE』

――『MYCODE』は、5周年を迎えたそうですね。

砂田 真吾(以下、砂田):はい。おかげさまでDTC(Direct to Consumer)の遺伝子検査サービスとして市場の認知も高まり、未病・予防という意味での国内の「ヘルスケア」サービスとして広く知られるようになりました。

座間 慶彦(以下、座間):加えて事業の幅も広がり、食品メーカーやヘルスケア企業、また大学の研究室などとのゲノムデータを活用した共同研究『MYCODE Research』も大きな躍進を遂げています。

――企業とコラボする『MYCODE Research』の具体例をおうかがいできますか?

 座間 慶彦(ざま よしひこ)
▲DeNAライフサイエンス ヘルスケアサービス部 R&Dグループ グループマネージャー 座間 慶彦(ざま よしひこ)
2016年新卒入社。学生時代は経済学部で開発経済学を研究。NPOを組織し、発展途上国の教育/経済支援を中心に持続可能な発展に向けた事業活動を行う。「事業をつくる力をつけ、発展途上国で事業をつくりたい」とDeNAに入社。『MYCODE』のセールス・マーケティングを経て、現在はグループマネージャー。企業との協業にて行う事業開発・研究開発やMYCODEに関連した新規事業企画を推進している。

座間:わかりやすい例でいいますと、森永乳業株式会社様との「腸内フローラ」をテーマにした実証実験ですね。

腸内に共存する多様な細菌を「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」というのですが、この腸内細菌叢の状態や変化が、病気や肥満などの健康状態に関連することがわかってきました。DeNAが蓄積してきたゲノムデータをかけ合わせることで、病気予防や未病の早期発見につながる可能性があるわけです。

――5年かけて大量の正確なゲノムデータをストックしてきた結果ですね。

砂田:そうですね。立ち上げ時からのパートナーである東京大学医科学研究所(以下、東大医科研)と「community-derived science」を標榜してきたことがカタチになりました。

砂田 真吾(すなだ しんご)
▲DeNAライフサイエンス ヘルスケアサービス部 MYCODEグループ グループマネージャー 砂田 真吾(すなだ しんご)
ITベンチャー、 SEOコンサル、WEB事業会社の事業責任者/WEBプロデューサーを経て、2015年にDeNAに入社。これまでのキャリアを通じて、計10以上の新規事業開発や既存事業の推進・グロースハックを担当。数多くの失敗と少しの成功体験を経て、2018年4月からMYCODEグループのリーダーとして『MYCODE』サービスの事業拡大・推進に従事している。

――コミュニティ・ディライブド・サイエンス? 具体的に教えていただけますか?

座間:はい。これまでは研究参加者の募集をする際、一部の限られた方しかご案内できず、参加者は特定の研究に関する情報しか選択できませんでした。

しかし『MYCODE』では、複数の研究や臨床試験を取り扱うことで、利用者が豊富な選択肢の中から積極的に選べる状態を構築、研究参加を促す仕組みが実現できています。また個別で参加を希望される研究や臨床試験でも、利用者の方々に対し事前に研究への包括的な同意をとった上で、さらに個別の同意を取得するスキームも取り入れています。

結果的には、コミュニティの力を借りて巨大なゲノムデータでしか成し得ない研究に取り組めるようになりました。これは私たちの大きな強みであると考えています。

――とてもユニークな取り組みだと思いますが、それはサービス開始当初から?

砂田:はい、5年前から実装しています。もちろん、最初から全てスムーズにいったわけではありませんが(笑)。

座間:それこそサービス開始当初は、多くの方に「遺伝子検査? 何それ?」「大丈夫なの?」という目でみられることから始まっていますからね。

リスクを伝えて健康を増進する「ヘルスケア」の考え方を伝えることから始まった

MYCODE5

――5年前の状況は今と比較していかがでしたか?

砂田:違ったと思いますね。

私は現在、『MYCODE』事業のビジネスサイド、いわば“売る側”の責任者をしていますが、立ち上げ当初は他社にいて、翌年の2015年にDeNAへ入社しました。しかも、他事業からのスタートでしたから直接は関わっていません。

それでも横目で事業を開始して2年目のヘルスケア事業と『MYCODE』をみる立場で、「売りにくいだろうな」という感想は抱いていました。

――「売りにくい」と感じた理由は?

砂田:『MYCODE』のような遺伝子検査サービスは、病気になってから治す「シックケア」ではなく、健康をケアして病気予防をする「ヘルスケア」の最たるものだったからです。

今では多くの企業がヘルスケア事業の領域に参入し、さまざまなサービスをリリースしていますが、当時はDeNAのような異業種の会社がヘルスケア事業に参入するケースはそれほど多くはありませんでした。未病・予防という意味での国内の「ヘルスケア」サービスとしては、まだまだ市場の認知も低かったと思います。

座間:私も2016年新卒入社なので、『MYCODE』の立ち上げ当時を直接は知りません。でも入社1年目は“売る側”に。家電量販店やドラッグストアなどの小売店向けの営業をしていたんですね。それぞれの店頭にブースを作らせてもらい、直販させてもらったりもしました。

――今はR&Dグループのリーダーを務める座間さんですが、“売る側”の最前線からキャリアをスタートさせていたんですね。

座間:そうなんですよ。だからこそ、売り場の声が生々しく耳に残りました。

「遺伝子検査? 親子鑑定ですか?」とか「病気かすぐわかるの? 何か怖い」とか。間違った捉え方をされることが本当に多くて……。

もともとはDeNAの代表取締役会長である南場が、家族の闘病をきっかけに「病気を治す『シックケア』から楽しく健康な『ヘルスケア』の社会を作りたい」という想いでヘルスケア業界に参入したのが始まりです。そうした強い想いからスタートさせた『MYCODE』は、自身の遺伝的な疾患罹患リスクや体質の傾向を知ることで、未病改善・病気予防、体質改善を行うという新しい価値の提供であったこともあり、極めてユニークなサービスでした。ただ極めてユニークなサービスだけに、多くの方に認知いただくまでは苦労もありましたね。

――潮目が変わったのは?

座間:『神奈川県の「未病市場創出促進事業」に選ばれ、神奈川県在住/在勤の方を対象にエリア限定のマスマーケティングを実施したこと。あれは大きかったと思います。

それは私が入社する直前のことでしたが、その後1年ほどかけて、じわじわとサービスの認知度と利用してくださる方が増えていきました。売り場でも「これ知ってる」と声をかけられる機会も着実に増えていって、嬉しさを実感したのを覚えています。

何よりも、サービスそのものに「興味がない」「価値がない」と判断されていたわけじゃないと気づくことができた。自信になりましたよね。

――砂田さんは、どれくらいから変わったと?

砂田:今から約2年前にR&D事業を正式に立ち上げたこと、そして『MYCODE Research』を積極的に進めることを決めた時期がターニングポイントだったと感じています。

それまで我々ビジネスサイドは「サービスとしての『MYCODE』をいかに広めていくか」に注力していましたが、アカデミアや他企業と連携することによって、新たな価値を生み出すという広がりが出た。『MYCODE』のデータを使った画期的なヘルスケア製品の開発から創薬の領域にいたるまでの可能性が出てきています。

砂田 真吾

――事業の発展、将来の可能性が広がると同時に、仕事としてのやりがいも倍増した感じでしょうか?

砂田:そのとおりです。もちろんこれまでも遺伝子検査が健康意識を高めたり、未病・予防のための行動変容を促すなど、社会的な課題を解決することに一定の成果を見せることはできたと思います。

それがさらにスケールアップして、幅広に展開できるようになる。売って終わりじゃない世界、むしろ「売ったあと、どんな世の中を描けるか」を考えられるようになったわけです。

座間:わかります。言い方を変えると、これからの5年こそ、MYCODE事業はずっとおもしろくなると私は確信しています。

「R&D」と「サービス」の2軸で、ヘルスケアの未来を支える

――これからの5年がおもしろくなる? 詳しく教えてください。

座間:はい。事業の拡大とともに、アカデミアや他企業との研究に関する連携が進んだことを受け、我々R&Dグループと、砂田さんが率いるビジネスサイドのグループもより連携を強めています。一般消費者向けのサービスの提供と、利用者の方にご協力いただき実施する研究の実現が一貫して繋がることで、更に大きなチャレンジに向けて動けるようになったわけです。

砂田:たとえばビジネスサイドから「自分たちのアセットがあれば、こんな会社に提案できるんじゃないか」と戦略面を膝突き合わせて立体的に考えられるようになりましたね。

座間:逆にR&Dからも「私たちが目指したい世界を実現するためには、このアセットを使って事業をどうスケールさせればいいのか」と、新たな取り組みの実現に向けてダイナミックに、高い視座を持って事業成長や研究の社会還元に取り組めるようになりました。

――確かにただサービスを売るのではなく、ビジネスとR&D、両者の強固な連携は、社会課題解決の加速に繋がりますね。

座間 慶彦

座間:DeNAヘルスケアで提供している別サービス、たとえば『kencom(ケンコム)※』との連携の可能性もあるかもしれません。

ご存知のとおり、病気や健康は遺伝要因だけで決まるわけではありません。「遺伝要因×環境要因」の掛け合わせで決まります。『MYCODE』は遺伝要因の部分はしっかり識別できても、環境要因には踏み込んでいませんでした。

しかし、健康診断の結果やライフログなどのデータが1つになっている『kencom』と『MYCODE』の遺伝子データを掛け合わせることができたら、より精度の高い、リアリティのあるヘルスケアデータを積み上げることができるかもしれない。こういった連携で、未病への貢献がカタチになっていく可能性は大いにあると思っています。

※……「kencom」とは「楽しみながら、健康に。」をコンセプトにする、主に健康保険組合向けに提供するヘルスケアエンターテインメントアプリ。

――そうなると、さらに多くの研究をスケールアップさせるお手伝いができそうですね。

砂田:そうですね。目指しているのことの1つに「パーソナライズ」の領域があります。ゲノムは基本的にその人だけが持っているユニークな情報。そこに環境要因が重ねあえばなおさらです。

薬にしても、生活用品にしても、本来、その人に最適な性質が各々あって違うはず。そうしたパーソナライズされたヘルスソリューションを、多くの企業、大学などと連携し、新たな、かつ正確なエビデンスを構築しながら生み出していきたいと考えています。

――5年かけて辛抱強く積み上げてきたものが、これから花開くときですね。

砂田:そう信じています。そのチャレンジを下支えしているのが自社で所有する「厳格なセキュリティを有した解析ラボ・研究員」と、「研究同意を取得したゲノム会員パネル」です。これらにしっかりと投資してきたことがあってはじめて実現できる未来だと思います。

座間:そうですね。また東大医科研との長いリレーション、そして国内唯一で弊社だけがすべてオープンに公開している遺伝子検査の結果を提供するための計算式といった部分もそうです。アライアンスをひろげ、これからは創薬支援領域まで踏み込んでいきますが、今まで積み重ねてきたものが更に圧倒的な強みになると感じています。

公明正大に、透明性を大切にしながら、我々のミッションである「健康寿命を延伸する」世の中を創造することに繋げていきたいですね。

MYCODE5
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:箱田 高樹 編集:八島 朱里、川越 ゆき 撮影:小堀 将生

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