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目標達成かチームビルドか。揺れるプロデューサーが気づいた“何より大事なこと”

2019.07.25

会社ベースからプロジェクトベースへと仕事のスタイルが変わる過渡期に会社選びをしているみなさんには、成長できる環境を選んで欲しいと思います。

間違った会社に入ってしまっても転職すればいいと思うかもしれないけど、最初に身を置く環境はとても大事です。

最初に身を置く場所で、驚くほど多くのことを吸収します。それが発射台の角度となり、そこでついた差はなかなか埋めることが難しい。とにかくストレッチできる環境を選んで欲しい。」

そう語るのは、新卒採用にとても強いこだわりを持つ、DeNA代表取締役会長南場智子。

そんな彼女が、現場で活躍している社員に声をかけ、キャリアについてインタビューする「キャリアの本質」。第3回は、新卒採用に向き合う、ヒューマンリソース本部人材開発部新卒グループ 小川 篤史(おがわ あつし)。

面白いものが生み出せなかったゲームプランナーからキャリアスタートし、プロデューサーになるも、今度は数字目標とチームビルドの両軸で成果を求めもがき苦しんだ過去。現在「新卒採用」にフルコミットする、深い理由を聞きました。


会社に入ること以上に「どう生きるか」に向き合ってくれたDeNAへ

写真の説明
▲株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部人材開発部新卒グループ 小川 篤史(おがわ あつし)

南場:小川とは新卒採用でガッツリ組んで仕事しています。そもそも小川がDeNAに入った経緯から教えてください。

小川:就活する時それほど深く考えていなくて。面接を受けると大抵「なぜうちに来たいか」と聞かれるじゃないですか。

それに対して「御社のHPを見て」とか「御社の製品のこういうところが好きで」とか、言うべき答えはわかっているんですけど、本心じゃないので言えなかったんです。 自ら嘘をついてまで相手によく思ってもらおうと思えず、就活では「人生上がり切りたくない」と言い続けましたが、結構色々な会社落ちました。

南場:「人生上がり切りたくない」ってどういうこと?

小川:経験を積むと、色々な課題を解決する引き出しが増えるじゃないですか。そうすると、ミッションに対して、積み上げた引き出しを開ければ達成できるようになると思うんです。でも、そういう状態ってつまらないなって思って。

僕は「その都度一皮むけないと対応できないもの」に向き合いたかったんです。それに対して「いいね」と言ってくれたのがDeNAだけでした。

南場:要するにうちしかなかったのね。消去法だ。

小川:消去法じゃないです! DeNAに出逢えて幸せですって(笑)。

南場:入社してからはどう?幸せ?

小川:生きたいように生きられているけど、なかなかハードな日々もありました。まず、プランナーとしてブラウザゲームに配属されたんですが、その頃の僕は、今思うと鼻につくヤツだったと思うんです。

南場:どうして?

小川:プランナーはゲームの中のコンテンツやキャンペーンを企画して面白くする仕事です。僕は最初、毎月4週目にリリースされる定常イベントを任されたんですけど、自分の力で面白い企画を考えてやると息巻いて、周囲の意見をあまり聞かずに締め切りギリギリまで1人で抱え込んでいました。

締切日にドヤ顔で企画案を出すのですが、とにかく面白くない。企画が採用されない月が続きました。

プランナーって難しいとつくづく感じていたんですが、なぜかそんな自分に5周年イベントが任されたんです。プレイヤーも期待しているし、SNSでも話題になる1ヶ月続く大規模キャンペーンでした!

南場:周年イベントは大事だよね。よくそんな小川に任せたね。

小川:そうなんです。ギアが変わりました。それまで、自分ひとりで面白いものをつくろうって思っていたけど、自力とか誰のアイデアとか意識する余裕がなくなりました。とにかく1ヶ月の間、プレイヤーにとって1番面白いものを届けようと必死になりました。

南場:「俺の企画を楽しめ」という気持ちが消えたのね。それは当然。気づくの遅いよ。

「自分の成長」を忘れるくらい没入した周年イベントでみえた本当の成長

小川 篤史

小川:「一緒に考えてほしい」と、30〜40名いたチームメンバー全員、企画職ではないデザイナーやエンジニアにも、なりふりかまわず時間をおさえ、相談して回りました。ボロボロになりながら駆けずり回って、なんとか企画を仕上げてリリースしました。

南場:成功したの?

小川:これは成功しました!

南場:よかった。自分の成長だけを意識していると不思議と成長しない。他の人の力を借りてでも成功させたいと没入すると、結果的に成長するもんね。その後は?

小川:運営専門(※)の会社DeNA Games Tokyo(以下、DGT)に出向しました。
※ゲームには新しいゲームを世に出す新規開発フェーズとそれを運営するフェーズがあり、リリース後のゲームを日々運営していくことを専門とした会社を指します。

そこで、あるゲームのDGTへの移管をミッションとし、プロデューサー、企画やエンジニア、クリエイティブのリーダーも含め、かなりのメンバーを数ヶ月というスピードで入れ替えていきました。

ところが、引っ越しが終わって秋葉原に出勤したら、新しいプロデューサーが急に現場を離れることになってしまったんです。

南場:あらら。

小川:元々いたメンバーも新しいメンバーも「プレイヤーを楽しませたい」という気持ちは同じなんですが、引き継ぎが不十分だったり、今まで言葉にしなくてもわかる阿吽の呼吸みたいなものがなくなったりして、メンバー同士のぶつかり合いも増えていきました。

そういう負のエネルギーが知らず知らずのうちに溜まっていて、全体のリーダーであるプロデューサーに向かっちゃったのもあったのかも知れません。

南場:それは辛い。

小川:それで急遽、僕がプロデューサーになったんです。プロデューサーは収益の責任も全て負う事業責任者なのですが、とにかく悲惨なチーム状況の中、「いいものをつくって事業目標を達成すること」と「チームを強くすること」、どちらを優先的にやるか、“葛藤した”という言葉で片付けられないくらい、葛藤しました。

プレイヤーには僕らの内情は関係ないので、つくるものをトップダウンで決めて半ば強制的につくるべきか、でもやっぱりチーム再建かな?けど仮にチームが強くなったら、それで本当にプロダクトや事業数字はよくなるのか?って考えると、やっぱりチームビルディングは後回しかな……とか。

南場:堂々巡りだね。で、どっちを選んだの?

小川:チームです。

悩みに悩み抜いた結果「チームが良くならないとプレイヤーに対しても継続的に良いものは届けられない」と思ってチームをつくることを優先することにしました。

「チームを去りたい」という考えの人がいる中、チームの可能性を信じ、チームビルドに向き合いました。それから2ヶ月くらいの間、マネジメントの本を読んだり、1週間の約8割を1on1に割いてメンバーの話を聞いたり、なんとか良い環境にできるようにもがいたんです。

が、それでも去っていくメンバーもいて、にっちもさっちもいかなくなって、入社したときからメンターだった人事の先輩に相談しようと思い立ちました。

南場:相談相手がいてよかった。それで?

小川:不覚にも大遅刻をするんです。朝9時に先輩を呼び出していたのに「今日は先輩に相談するんだ」と目覚めたら11時半。

顔面蒼白でダッシュで行って、まず謝り倒し。半ばパニックになりながら相談したら、先輩が「落ち着こう」って自販機で冷たい缶コーヒーを買ってくれました。

その瞬間、張り詰めていたものが一気に溢れて、涙と嗚咽が止まらなくなってしまいました。

メンバーが疲弊していく無力さと人のネガティブな感情にさらされ続け、奔走すれども状況は良くならない。そんな中でも自分を信じようとしてくれているメンバーに申し訳なくて……。

泣き止んで落ち着いたタイミングで「メンバーに申し訳ないなんて思うことがおこがましいかもね」と言われたんです。普段からスパルタな先輩らしい一言だったんですが、それでハッとしたのを覚えています。

今まで自分がしてきた「チームに向き合うこと」って、メンバーの意見を聞いてそれをそのまま反映するだけの御用聞きだったのかなと。それで、考え方が変わって、この事業とチームで、自分がリーダーとして、何を「したい」「すべき」「できる」かを考え、それをメンバー伝えることにしました。

自分が軸を示すことで、チーム状況も成果もついてきた

小川 篤史

南場:事業に対する自分のポリシーを持つことは大事だよね。

小川:はい。そこからは不思議と物事が好転していきました。チームを去っていく人についても、何を大事にしたいかお互いに理解した上で背中を押せたし、チーム全体に前には無かった活気が出てきました。

ところが、今度は数字がついてこない時期がしばらく続いたんです。チームだけ良くなっても、やっぱり結果にはつながらないのかと不安になりましたが「もう信じてやり抜くしかない」と割り切って踏ん張っていたら、半年くらいして当初想定していた事業計画に追いつくことができました。

南場:チーム再建に集中したというのは、経験がない中で素晴らしい選択をしたと思う。事業計画にコミットすべき責任者は、プレッシャーから数字に飛びつくことが多いけど、強制的に数字を追わせても自分が離れたらその数字は崩れるからね

そこに気づけたのはよかった。教科書を読めば書いてあることかもしれないけど、プレッシャーの中でそういう意思決定をするのは大変だったと思う。

小川:いい経験でした……って今だから言えますけど。

一皮むけるどころじゃない!未知のやりがいを感じる新卒採用担当へ

小川・南場

南場:入社して3年間色々苦労してきたね。見かけによらずいい仕事している。

小川:プロデューサーを経験したことで、人の力の凄さに気づけたと思います。ちょうどその頃、新卒採用チームから声をかけられたんです。

新卒で入社してくる人たちは会社全体に影響を及ぼす人材だからこそ、自分自身一皮どころか十皮くらいむけないといけない世界があると感じて、3年目の冬から新卒採用チームに入りました。

南場:まさに人生上がり切りたくない、小川らしい選択だね。

小川:「就活生の未来とDeNAの未来をどう繋げるか?」言ってしまうと普通に聞こえるかもしれないけど、深くて難しくて面白いテーマなんです。

南場:しっかり繋げてください!

今日は面白かった。多くの人の意見を聞くのは大事だけれども、その上で自分のポリシーをしっかりつくり、それを伝達してチームを引っ張る、そういったリーダーに自ら成長したところがすごいと思います。

新卒採用チームで一緒に、喧々諤々議論しているけど、なんで小川がこの小川になったのか今日初めて理解しました。色々、教えてくれてありがとう。


エゴイスティックだったプランナーを経て、人に向き合うこと、その中で自分の軸を持つことの大切さを学べたプロデューサー時代。失敗した時はどう耐えたのかと聞くと「『いいから自分の思った通りやれ』という人たちに支えてもらったのが大きい」という小川。

彼を成長させてくれたのは、やはり身近にいる人たちだったようです。キャリアのはじめに、どんな人たちと仕事がしたいか、ぜひ会社選びの参考にしてみてください。

※この記事はイベント「キャリアの本質」を再構成したものです。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

編集:菊池 有希子 撮影:石津 大助

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