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なぜDeNAは、ヘルスケア型保険に踏み出したのか。ヘルスケア事業が目指す「新しい保険」のかたち

2019.06.06

自宅でできる遺伝子検査「MYCODE」から「AI創薬」まで。DeNAがヘルスケア事業に取り組み始めてからすでに5年の月日が流れています。

そして、2019年2月のプレスリリースでもあった通り、今年から「ヘルスケア型保険」という新たなフィールドで具体的なサービス×商品の提供に挑戦しています。

DeNAが保険領域に踏み出すと聞くと「生命保険をつくって、売るのか?」と思われることもありますが、そうではありません。

ヘルスケア事業として挑戦する「ヘルスケア型保険」とは? どんな狙いで、どんな未来を描こうとしているのでしょうか?

キーパーソンの2人に聞きました。

新しい保険のカタチを「創る」

——ヘルスケア型保険に関しては「よくカン違いされる」と聞きました。

相園 高志(以下、相園):そうなんです。

たまに、ですが「『DeNA保険』みたいなものをつくって、ネットで売るんですか?」と言われることがありますが、違うんですよ。

相園 高志
DeSCヘルスケア Insur-Techアライアンス部 相園 高志(あいぞの たかし)
人材系ベンチャー企業から独立し、WEB制作会社を起業したが、より大きな事業に関わりたく、2013年にブラウザゲームのリードデザイナーとしてDeNAに入社。ブラウザゲーム・アプリゲームのプロデューサーを経て2017年からヘルスケア事業部へ異動し、生命保険会社との渉外及び、保険商品や付帯サービスの企画提案を行う。

上林 智宏(以下、上林):既にプレスリリースで発表されているとおり、生命保険会社と業務提携し、各社と新しい医療保険商品、サービスの企画・開発、運営をする、という意味では確かに「保険をつくる」ことはします。

しかし、それは新しい保険のカタチを「創る」という感じなんです。

上林 智宏
DeSCヘルスケア Insur-Techアライアンス部 上林 智宏(うえばやし ともひろ)
2007年にDeNA入社。おばちゃんCMで席巻したモバゲータウン時代からキャリアスタートし、課金コンテンツプロジェクト、公式サイト化、TV番組連動企画、スマートフォン展開、海外展開等々の局面で責任者を歴任。ヘルスケア事業はMYCODE創業から参画し、2014年夏のローンチを待たず新規事業(現KenCoM)を手がけ現在までDeSCヘルスケアで現職。

——創造のほうの“つくる”?
 

相園:はい。

具体的には、「楽しみながら、健康に」をコンセプトにした健康保険組合向けアプリ『KenCoM』や、毎日の歩数がdポイント(※)になるアプリ『歩いておトク』などのヘルスケアサービスを、生保各社の生命保険商品のサービスとして組み込んでいただく。

ヘルスケア型保険の取り組み

——なるほど。病気や死亡した場合のリスクに備えて保険料を支払い、万が一のときに保険金を受け取る......という従来型の生命保険とはまず違う。「保険に入ることでどんどん健康になって、健康リスクが低くなるような生命保険をつくろう」というわけですね。
 

上林:そうです。健康寿命延伸のため、病気になる前から健康をケアするヘルスケア社会を実現するのが、我々DeNAヘルスケア事業本部のミッションですからね。

ミッションを果たすために、保険の仕組みはとても親和性が高いと感じていました。そして、既存の保険商品では満たされないニーズが、生保各社と契約者にはある。

このお互いのニーズを満たす形で結ぶのが、今回のヘルスケア型保険だと考えているんですよ。

保険による「共助」を、よりフェアなものに

——生保各社と契約者にあった「既存の生命保険商品では満たされないニーズ」とは何でしょうか?

相園:保険加入者一人ひとりのリスクに合わせたフェアな商品設計が難しいということです。

例えば損保の場合、同じ自動車保険でもゴールド免許であったり、車種による事故率の違いによって、月々の保険料が変わる、といった仕組みがありますよね。

相園 高志

——リスクが高い人はその分保険料が高くなり、低い人はお得ということですよね。

上林:そうです。しかし、生命保険には年齢と性別しかなかった。

同じ年齢と性別では健康のリスクが同じと判断されて、保険料や保障は変わりません。タバコを吸うか吸わないかといった自己申告で変わるくらいです。

けれど実際は、日々健康に留意して運動なり食事に気をつけるなどしている人と、そうでない不摂生な人は、年齢と性別が一緒でも健康リスクは当然違うはずです。

———なるほど。だから「毎日運動をして食事も気をつけていて病気になる可能性も低いのに、こんなに保険料を払うのか」と感じる人も少なくないと。フェアじゃない、というか。

上林:まさにその通りだと思います。そこで我々のヘルスケアサービスが活きる。

というのも『KenCoM』にしろ『歩いておトク』にしろ、あるいは遺伝子検査の『MYCODE』にしろ、DeNAのヘルスケアサービスはすべて正確で膨大なデータをもとにして、その効果を可視化する仕組みがすでにありますからね。

たとえば『KenCoM』を使ってウォーキングをこれくらいの歩数でこれくらいの期間続けていれば、生活習慣における病気の発生率や罹患率がどれくらいなのか——。

相園:そういった一人ひとりの違い、また日々変わっていく健康リスクをしっかりと可視化できる。これを保険商品と組み合わせれば、よりフェアな商品設計ができます。

——損保のように、リスクが低いから保険料が安くなるような「根拠」がDeNAのヘルスケアサービスのテクノロジーによって見える化できると。

上林:はい。

どう活用するかは、実際の保険商品の設計にもよりますが、大切なのは、こうしたリスクの可視化によって病気になる前の状態を維持しようとする方々が増えること、いわゆる「未病」の意識と取り組みが高まることが、我々の願いです。

ご存知のとおり「人生100年時代」が現実になりそうな今、日本人の平均寿命は伸び続けています。

同時に、介護などが必要となる期間が伸び、医療費も右肩上がりで増え、健康寿命の延伸は大きな社会課題としてありますからね。

相園:しかし、私たちのヘルスケアサービスと連動する保険商品、ヘルスケア型保険ならば、加入すると「何をどうすれば健康になるか」「リスクが下がるか」を知ることができる。

それによって保険料が下がったり、クーポンがもらえたりするなど設計はいろいろでしょうが、いずれにしても「健康的な行動をしようとする誘引」が自然と生まれるわけです。

お二人

——保険と連携するサービスを利用していくことで自然に未病へと向かうような、これまでにないお客さまの意識が喚起されるわけですね。

上林:そして長く健康を維持できる人々がどんどん増える。結果として医療費や社会保障の抑制にもつながる。それこそが狙いです。

保険のそもそもの思想にある「共助」。お互いを助け合うということが、もっとシンプルにフェアに存在する世の中にしたい。

——もっとも、すでに海外を中心に生命保険各社は、似たような「健康増進型保険」を販売していますよね。保険にDeNAらしさをどう活かしていこうと考えていますか?

相園:大きく2つあると考えています。まずはゲーム、アプリ・サービスなどで積み上げてきた「サービス力」。そしてAIを含めた多変量データを扱ってきたという「データの解析力」ですね。

——サービス力とは、具体的には?

相園:代表的なのは『KenCoM』などのアプリが実装しているゲーミフィケーションの知見です。

お客さまにいかに長く楽しんでいただくか。DeNAには、数多くゲームアプリを開発し、大勢のお客さまに提供して運営してきた実績とノウハウがあります。

もちろん他のアプリ・サービスも同様です。

私自身、Web制作からこの世界に入り、DeNAではブラウザゲームの企画運営やアプリゲームのプロデュースなどに携わってきました。

どうすればお客さまに違和感なくアプリを楽しんでもらえるか。あるいは長く楽しみながら利用いただけるか。ユーザー目線でとことん考え抜いてきた知見が社内に積み上がっているのです。

——磨き上げられた使い勝手のいいヘルスケアサービスが自ずと提供される。他社にはない積み上げた知見があると。

上林:データ解析に関しても同様ですね。

多くの優秀なAIエンジニア、データサイエンティストがグループ内にいて、ヘルスケア型保険の企画・開発、そしてデータ解析にも力を発揮しています。

ユーザー目線をもったうえで、ここまでAIを活用できている企業は世界的にもあまりないですからね。

ヘルスケア型保険においても、バイタルデータなどを含めたデータの解析、活用は磨きこんできたノウハウが存分に活かせると自負しています。

上林 智宏

ヘルスケアへの想いと、探究心ある人に来てほしい

——この事業が拡大するタイミングで、こういう方に仲間になってほしいという人物像はありますか?

上林:私が思うのは、圧倒的なヘルスケアに対する想いと、あくなき探究心を持っている人ですね。

私自身、かつてはMobageなどに携わってきて、多くのお客さまにエンターテインメントを提供して喜ばれる充実感を感じてきました。

同じようにヘルスケア領域においても、多くのお客さまに喜ばれるようなサービスを提供していきたいと考えています。

そう考えたとき「きちんと努力した人が報われる社会」をこの事業で実現できると考えたんですね。

——努力が報われる?

上林:はい。自分が健康に向き合って努力していたら、それが経済的なメリットや、サービスとして還ってくる仕組みですね。

世の中は構造的にも努力が報われないことがままある。

けれど、先に述べたようにテクノロジーとノウハウによって、今回のヘルスケア型保険では、そんな努力したひとが報われるフェアな保険ができる。結果として社会課題を解決する——。

探究心と想いをもってヘルスケア事業にあたれば、そうした大きなインパクトをもたらすことができるわけです。そこにワクワクしてもらえるような人なら、多様な分野から来てほしいですね。

——相園さんはどうでしょう?

相園:僕もヘルスケアに限らず様々な分野で活躍されている志の高い方に参画してほしい。あとはお客さまがどんなアプリやシステムなら使いやすいのかといった「ユーザー目線」を大事にしたい人ですね。

今回、保険というヘルスケア事業のひとつの出口が増えただけともいえます。今後もどんどんお客さまの未病につながるような事業を企画し、ローンチしていきたいですからね。

ヘルスケア事業は、生活習慣病まわりのみならず、介護や認知症、あるいはメンタルヘルスなどの分野まで拡大を進めています。

幅広くヘルスケア領域を手がけたい方にぜひ来てほしいですね。これほどの大きな領域で、本気で手を動かせることってなかなかないですから。

お二人
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:箱田 高樹  編集:八島 朱里・栗原 ひろみ  撮影:小堀 将生

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