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会議の「伝わらない!」を可視化で解決。描いて語るグラフィックレコーディング

2018.01.29

話し合いをしたのに、意図した内容が全く相手に伝わらなかった。

会議などで、こんなコミュニケーションロスを経験したことのある方は多いのではないでしょうか。そんな方に、おすすめの手法がグラフィックレコーディングです。これは、議論をグラフィックで可視化して記録するというもの。言葉だけではなくグラフィックを用いてコミュニケーションすることで、数多くのメリットが生まれます。

今回は、ライフワークとしてグラフィックレコーディングに“フルスイング”し続けるシステム&デザイン本部 デザイン戦略部の和波里翠(わなみ さとみ)が、この手法を利用するコツや、彼女のモチベーションの源について語ります!

【後編】会議を可視化・構造化する5つのコツとは? グラフィックレコーディング実践編

コミュニケーションデザインの手法としてのグラフィックレコーディング

――まず、グラフィックレコーディングにはどんなメリットがあるんですか?

発話内容をリアルタイムに「見える化」することで客観視できるようになるので、結論が出るまでの流れが見えたり、言葉だけでは伝わりにくいことを共有できるんです。会議の参加者の理解も早くなり考えが浮かびやすくなるなど、議論を活性化することができるのが利点です。

あと、紙の上では平等になるというか、発言力が強い人によっていい意見が埋もれてしまったり本筋からのズレが減って、誰が言ったではなく何を言ったかが見えるのでシンプルにことに向かって話し合えるのもいいところだと思ってます。

システム&デザイン本部デザイン戦略部UI/UXデザイン第二グループ 和波里翠(わなみ さとみ)
2015年にDeNA中途入社。UI・UX・グラフィックデザイナー。新規事業中心に現在はDeNAライフサイエンス「歩いておトク」のプロダクトデザインに従事。グラフィックレコーディングは生放送Web授業講師や行政シビックテックやTVなど全国200箇所以上で行っている。

――和波さんはいつ頃からグラフィックレコーディングに興味を持ち始めたんですか?

和波:小学生の頃から授業内容をノートに図解したり、海外の子がわりといる小学校だったので絵で会話したりと、絵を描いて共有することが好きな子どもでした。

情報デザインを専攻していた大学時代にインフォグラフィックスに興味があったのですが、人間の感情とかモヤッとしたエモーショナルな部分、より抽象的なことを具現化することにも新しい価値があるのではないかと思い、対話の可視化に辿り着きました。

――社会の場で活用しようと思ったきっかけって何なんでしょう?

和波:社会の場で活用しはじめたのは、都内のIT企業でサービス企画開発のインターンシップに参加したとき。経済系、エンジニア系、美術系、の大学生チームで話し合いをしていたら、1つのことについて話をしているのに話が通じなかったんです(笑)。お互いの知識や考え方も生きてきた環境なども異なり、言葉に対する定義も共通認識も違っていたんですね。

そこで、各人の定義や概念を可視化して共有したら話し合いがスムーズに進みました。それをきっかけに、「こういうコミュニケーションのデザインもあるかもしれない」と思うようになったんです。

「モヤモヤを見える化すること」こそ、グラフィックレコーディングの真骨頂

▲非営利団体のCode for Tokyoの運営に携わり品川区と地域課題ワークショップを開催したり、各地の高校大学でコミュニケーションデザインの授業を行ったり、ビジュアルファシリテーションフォーラムの運営をしたりとグラフィックレコーディングを通して幅広い活動をする和波さん。自身のブログ「Enjoy Graphic Recording」でも活動を発信している。

――グラフィックレコーディングはどんな場に向いているんですか?

和波:アイデアブレストや未来設計の会議とか、新しいものを考える場に向いていると思います。あとは先ほどの事例のように、所属やバックグラウンドが違う人たちが集まる話し合いで、共通認識を持って話したいときにも便利だと思いますね。

――抽象的なイメージを可視化するというか。

和波:そうですね。抽象的なモヤモヤしたものも描いて客観視することで整理しやすくなると思います。

――例えばDeNAの業務では、どんな場でこの技法を活用していますか?

和波:例えば、アイデアブレストや未来のことについて話す場ですかね。ホワイトボードに構造的に描いて共有しながら進め、何について話しているのか、どこに向かっているのかについて関係性を見える化したり。

あとは、ペルソナを考える際にシナリオやシーンを描きながら進めたり。UIデザインもその場でみんなで描きながら設計したり。お客さまインタビューの感情部分も描いてメンバーにシェアしたり。サービスデザインだけでなく活用場所はたくさんあると思います。

絵に苦手意識を持っている人でもグラフィックレコーディングがうまくいく3つのコツ

――絵に苦手意識を持っている人でも、グラフィックレコーディングってできますか? 実は私、あんまり絵には自信がなくて……。

和波:興味があればできると思います! 実践するには、いくつかコツがあって。

①丸と四角と三角を意識して描いてみる

和波:実は、世の中にあるものの形はだいたい、丸と四角と三角の組みあわせでできています。と言うとちょっと言い過ぎですが(笑)。だから、絵がそれほど得意ではない人でも、この3つの図形を意識するのがおすすめです。

――ほ、本当ですか! それなら、私でも描けそうです。

和波:四角と三角を組み合わせれば家が描けますし、丸と四角を組み合わせればカメラも描けます。上手に描くことよりも、他の人と情報を共有して、話の材料として活用することを大切にすればいいと思います。

②描いた情報を構造化する

――次に、身につけておくべきコツはありますか?

和波:会話で登場した色々な要素を繋げたり分けたりして構造化することですね。類似しているアイデアなどをグループに分けていく「KJ法(※)」という手法を参考にするといいと思います。

※…会話によって得られたアイデアを整序し、問題解決に結びつけていくための手法。この名称は、考案した文化人類学者・川喜田二郎氏のアルファベット頭文字からとられている。

構造化すると出たアイデアや事象を個別に見るのではなくてコアの要素について話せて、課題が抽出しやすくなるんです。無理に絵にしなくても、出てきた情報を繋いだり分けたりするクセをつけるだけでも、だいぶ変わるんじゃないかと思います。

③話し合いの目的を定義する

和波:あと、何をもって成功とするかは場によっても違うので、「そもそも何を目的として導入するか」は実施前に決めておいた方がいいですね。例えば、「参加者のふりかえりや、認識統一して士気を高めたい」「誰が言ったかを重要視せずに俯瞰して議論を進めたい」など、色々なパターンがあると思います。

あくまでグラフィックレコーディングは手法なので、それを架け橋として場に変革をもたらすこと、シンプルに客観的に捉えネクストアクションのために”ブーストをかける”ことが大事なのではないかなと思います。

――なるほど。DeNA Quality(※)の1つでもある、「こと」に向かう事が重要なのですね。

※DeNA Qualityとは

可視化は、自分にとっての第2の言語

――グラフィックレコーディングの活動をしていて、どんなときが楽しいですか?

和波:わりとどんなことも楽しいんですけど、特に楽しいのは、立場や価値観が異なる方々が同じ場所に集まったときに、コミュニケーションの橋渡しができることですね。

冒頭で出たシビックテックなど社外活動をしていると、行政関係の方やエンジニア、デザイナー、学生など、多種多様な人が一堂に会して話し合いをする機会が多いんですが、普通なら、そうした人たちが共通認識を持って会話するのって難しい。でも、会話を可視化することで参加メンバーの対話が弾むのが嬉しいです。

それから、私はグラフィックレコーディングの授業を高校や大学などでやっているんですが、そこで授業を受けてくれた子供たちが、授業後もファシリテーションの場で活躍してくれることもあって。「何か影響を与えられたのかな」って、本当に嬉しくなります。

――グラフィックレコーディングが、人と人との橋渡しになっているんですね。和波さんがグラフィックレコーディングにこれほど“フルスイング”できるのって、どうしてなんでしょうか?

和波:どうしてだろう。たぶんですけど、私は人と話すのがそれほど得意じゃないからこそ、可視化が自分にとっての「第2の言語」になっているからだと思います。グラフィックレコーディングに触れたことで、色々な場に関わったり、多くの人と出会う機会を与えてもらえたりしました。

▲自身が運営委員を務めるビジュアルファシリテーションフォーラムの様子。

――多種多様な人たちとも描くことでコミュニケーションできた。その感動が子どもの頃から続いているんですね。

和波:はい。だからこそ、描いて情報共有することが当たり前の世の中にしたいです。自分の思考をアウトプットできたり、他の人とも対話の可視化を通して伝え合えれば、面白いアイデアがたくさん生まれて新しいモノづくりに繋がるかもしれない。もっと多くの方々が言葉以外の手段で情報伝達や意思表現できる世の中になったら楽しいだろうなと思い、グラフィックレコーディングを続けています。

まとめ

グラフィックレコーディングを成功させる秘訣

①丸と四角と三角を意識して描いてみる

②描いた情報を構造化する

③話し合いの目的を定義する

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

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執筆:中薗昴 編集:下島夏蓮 撮影:岩切卓士

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