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CULTURE

19.04.09

「久山町から日本を元気に」産官学で取り組む『ひさやま元気予報』|九大 × DeNA特別対談

2018年6月にリリースした生活習慣病発症予測ツール『ひさやま元気予報』。

将来の生活習慣病の発症リスクを提示するとともに、生活習慣の改善効果をシミュレーションするツールです。

生活習慣病の疫学調査『久山町研究』の成果に基づき、福岡県糟屋郡久山町、九州大学、DeNAの3者が「産学官連携」で共同開発しました。

「産学官連携」は3者の知見を融合できるメリットがある一方、立場や考え方の違いをどう乗り越えられるかがプロジェクトの成否をわけます。

『ひさやま元気予報』の開発にはどんな壁があり、どう乗り越えてきたのか?

九州大学の二宮 利治(にのみや としはる)氏、吉田 大悟(よしだ だいご)氏をお招きし、DeNAヘルスケア代表の瀬川 翔(せがわ しょう)、部長の今吉 友大(いまよし ともひろ)と振り返ります!

 

九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 公衆衛生学・疫学、腎臓内科学 教授

二宮 利治(にのみや としはる)氏

研究活動:久山町における疫学調査(久山町研究)で、慢性腎臓病・認知症・高血圧・脳卒中・虚血性心疾患などの発症率、危険因子についての検討。海外における慢性腎臓病や高血圧に関する臨床研究に参加する。また、福岡県や福岡市との公衆衛生活動を支援する。 教育活動:医学部4年生、6年生および大学院生に対し講義、研究指導を行う。

九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 公衆衛生学・疫学 助教

吉田 大悟(よしだ だいご)氏

福岡県久山町の地域一般住民を対象に行われた長期間の追跡研究の結果をもとに、病気の原因や予防法の解明を行っている。また医療のみならず保健・福祉に関する科学的エビデンスの構築にも取り組んでいる。主な研究テーマは、「高齢者における日常生活動作(ADL)障害の時代的推移とその原因の解明」や、「障害などを持たず自立して生活できる健康寿命の延伸に関連している因子の探索」「ITを活用した健康づくりの評価」などである。その他、社会的な活動として、研究で得られた知見を地域住民の健康づくりに生かす取り組みを地方自治体(久山町、福岡市、福岡県など)とともに行っている。

株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 ヘルスケア事業本部 本部長

瀬川 翔(せがわ しょう)

大阪大学大学院工学研究科修了。2010年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。Eコマース分野での新規事業立ち上げ、事業責任者を経て、2015年5月よりDeNAのヘルスケア事業に参画。2017年8月よりヘルスケア事業の子会社である株式会社DeNAライフサイエンスの取締役副社長COOに就任。2018年4月より現職。

DeSCヘルスケアプラットフォーム企画部 部長

今吉 友大(いまよし ともひろ)

システムインテグレーターを経て、2011年8月株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。Mobageプラットフォームにて各通信キャリアとの戦略的アライアンスの推進、決済領域のプロダクトマネージャー、新規事業立ち上げを歴任。2016年4月よりヘルスケア事業に参画し、『KenCoM』のプロダクト責任者を担当。

 

「正確さと楽しさの両立」に最初は懐疑的だった

ーーまず、3者協同にいたった経緯を教えてください。

▲ 株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 ヘルスケア事業本部 本部長 瀬川 翔
▲ 株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 ヘルスケア事業本部 本部長 瀬川 翔

瀬川 翔(以下、DeNA 瀬川)2015年に『KenCoM』をリリースした際、もともとDeNAのヘルスケア事業部とご縁があった二宮先生のお役に立てるのではと思い『KenCoM』をご紹介しました。

 

ーー『KenCoM』のどのような点に魅力を感じられましたか?

▲(左)九州大学大学院医学研究院   衛生・公衆衛生学分野 公衆衛生学・疫学、腎臓内科学 教授 二宮 利治氏
▲(左)九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 公衆衛生学・疫学、腎臓内科学 教授 二宮 利治氏

二宮 利治氏(以下、九大 二宮):健康に特化したアプリで、健診結果をはじめ、歩数や体重など個人データをスマートフォンでチェックできるのは便利ですね。

それにただ管理するだけではなく、チーム戦で行うウォーキングイベントや、アプリ内の行動でポイントが貯まり時々賞品が当たるのは「利用者が楽しみながら健康になれる仕組みがあり面白い」と思いました。

以前から吉田先生がITを活用しようと動いていたこともあり『KenCoM』と久山町研究を掛け合わせれば、町民の健康への意識をITの力で、さらに高められると感じました。

 

『KenCoM』アプリの健診結果確認画面
▲『KenCoM』アプリの健診結果確認画面(https://kencom.jp/より)

ーー吉田先生がITを活用しようと動かれていた、というのは?

 

吉田 大悟氏(以下、九大 吉田)ITを活用し、町民が楽しみながら使えるツールをつくれないかと模索していたんです。

「健康増進」と聞くと、難しいイメージがありますよね。提供する情報が正確でも、結局「難しい」と思われて町民に伝わらなかったらもったいない。

▲ 九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 公衆衛生学・疫学、助教 吉田 大悟氏
▲ 九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 公衆衛生学・疫学、助教 吉田 大悟氏

ーー歴史ある研究結果に「楽しさ」をプラスすることに抵抗はなかったのでしょうか?

 

九大 吉田「楽しさと正確さの両立は大変難しい」と思っていて、当初は『KenCoM』に懐疑的でした。ですが大切なのは「届けたい人に情報が届き、使ってもらえること」。

DeNAのみなさんと議論する中で「情報にエビデンスがあれば見せ方は楽しくしてもいい」と考えが変わっていきました。

 

「言葉の違い」を乗り越える

ーー教育機関である九州大学と民間IT企業のDeNAとでは、さまざまな違いがあると思います。協同でもっとも高いと感じたハードルは何でしょうか?

 

九大 二宮「言葉の違い」ですね。仕事中に何気なく使う日本語の解釈がまったく違っていたことがありました。

 

DeNA 瀬川「システム」という言葉は、その1つですね。

4名で談笑

九大 二宮私たちはシステムを「非効率な作業を効率化すること」ととらえていました。 その認識でDeNAさんに「システムをつくってほしい」と言ったら、瀬川さんが顔の色を変えてしまって。

 

DeNA 瀬川IT業界の人間にとって、システムは「スマホやパソコンのOSのように、大掛かりな仕組みをつくること」と捉えがちです。 そうしたシステムを完成させるには時間がかかりますし、二宮先生からリクエストをいただいたときには「お、それはかなり大変だな」と。

 

九大 二宮みなさんと議論する中で、私がDeNAさんに求めたのは、すでにある仕組みを活用して、実現できることがわかりました。 IT業界で言う「運用」にあたることだったのですが、そのように伝えられなかったんです。

 

何よりも「信頼関係」が大事

ーー言葉の違いは、どのようにして乗り越えたのでしょうか?

 

今吉 友大(以下、DeNA 今吉)意味を勝手に決めつけず「先ほどの発言は、このような意味でしょうか」とこまめに確認しながら進めました。

バックグラウンドが違うからこそ、意識してコミュニケーションをとる必要があります。 私たちが定期的に福岡に向かい、先生方と直接お話する機会をつくりました。メールやチャットなど文面だけのやりとりでは理解が進まず、話がすり合わないこともありますから。

久山町の担当者に対しては、研究で付き合いが長い二宮先生に間に入っていただくことで、スムースなやりとりができました。 DeNAが伝えたいことが行政の方に伝わるよう橋渡しをしてくださっているんです。

▲ (左)DeSCヘルスケアプラットフォーム企画部 部長 今吉 友大
▲ (左)DeSCヘルスケアプラットフォーム企画部 部長 今吉 友大

ーー異業種のメンバーで1つのプロジェクトを進めるからこそ、こまめな確認やコミュニケーションが大切ですよね。実際に産官学連携をされてみて、何が1番大切だと思いますか?

 

九大 二宮「信頼関係」これにつきます。

産官学連携で困難があるのは当たり前です。だからこそ「共通のゴールを実現させる」という強い想いを持ち、責任感をもって仕事に取り組めるかが重要です。その「想い」から、信頼関係が生まれると思うんです。

瀬川さんと今吉さんに対して、厳しい発言をしたこともあります。その中でも、お2人はもちろん、DeNAさんは仕事に対して真摯な姿勢を持ち、誠実な対応をしてくださいました。 DeNAさんだからこそ『ひさやま元気予報』を一緒につくれたと思いますね。

 

DeNA 瀬川そうおっしゃっていただけて、嬉しいです。 約60年の歴史を持つ研究だからこそ、それを築いてきた町、町民の方や大学の先生方の想いや努力と向き合いながら取り組ませていただくことが大切だと日々感じています。

二宮先生が言われた通り、信頼関係にもとづき、成功に向けた強い想いで一丸となって実現していくことは、産官学連携の成功には本当に重要。

産官学連携は、全くバックグランドが違う関係者が、想いを1つにして集まるからこそ、1社だけでは成し遂げられないことが実現できるんだなと今回の取り組みでも強く実感しました。 今後、DeNAも含めもっとこういった産官学の取り組み、成功事例が広がっていくといいですね。

 

現地に足を運ばなかったことを後悔

ーーさまざまな壁を乗り越え『ひさやま元気予報』をリリースし、久山町の健診でも『KenCoM』が使われました。どのような気持ちでしたか?

 

DeNA 今吉実は、自分たちの認識の甘さを反省しましたね。「健診初日という大切な日に、なぜ現地に行くという考えにならなかったのか」と。 達成感を抱いたのはもちろんなのですが……。

 

ーー何があったんですか?

 

DeNA 今吉町民の方が『KenCoM』アプリのダウンロードや操作方法に慣れておらず現場で混乱が起こってしまったんです。

普段からスマートフォンを使い慣れていなければ戸惑うのは当然なのですが、自分はDeNAというインターネットの会社にいて、まわりはアプリに慣れている人ばかり。 事前にこのような事態を予測できていなかったんだと思います。

吉田先生から「現場に来ないんですか」と連絡を受け、ハッとしました。そしてすぐに健診現場に。町民の方に直接、使い方をお教えしました。 オフィスで仕事を完結させるのではなく、現場に足を運んでご利用者さまと直に接する必要性を痛感したできごとです。

 

▲久山町で、DeNA社員が町民の方に説明する様子(右から2番目:今吉)
▲久山町で、DeNA社員が町民の方に説明する様子(右から2番目:今吉)

ーー実際に現地に行って、何を感じましたか?

 

DeNA 今吉久山町は健康への意識が高い方が多く、町の取り組みが住民に伝わっていると感じました。 このことは久山町での『KenCoM』の毎月の利用率が50%という高い数字にもあらわれています。 ITリテラシーが高いお客さまに向けてサービスを届けても、ここまでの利用率にはなかなか達しません。

 

九大 吉田そう、久山町は健康への意識が高いんですよね。 一般的に特定健診受診率は40%ほど(※2)と言われていますが、久山町では50〜60%と、平均値を上回っています。

 

九大 二宮長年の研究を通じて、健診を受けることのメリットを町民が感じているのだと思います。 保健師さんが日頃から住民に対して「健診を受けましょう」とか「体調はいかがですか」と声がけを行なっているわけですから、保健師さんの努力のたまものでもありますね。 九大とDeNAさんだけでなく、久山町のご協力のおかげですね。

 

※2……「特定健診・特定保健指導の地域差」http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shakaihoshoukaikaku/wg_dai1/siryou4-1.pdfより 福岡県は42.0%(平成24年度)

 

久山町から日本を元気に

ーー今後の目標を教えてください。

DeNA 今吉2019年秋に、久山町でウォーキングイベントを企画しています。 当社では健康保険組合さん向けには「歩活」という名前でこれまでウォーキングイベントを開催してきているのですが、そのノウハウを活用しながら自治体の方にも楽しんでいただこうという取り組みです。

「歩数」を起点としたイベントで、健康増進のきっかけにしていただくのはもちろんのこと、町自体が活性化するような取り組みにしていきたいと考えています。

 

九大 二宮「歩く」以外ではぜひ食事の領域にも取り組んでいきたいですよね。 健診結果と同じように、個人の食習慣をスマホで手軽に楽しくチェックできるようになれば、食と病気の関係性を意識してくれると思うからです。

 

九大 吉田「普段何を食べていて、摂取した栄養素が健康にどう結びつくのか」をアプリで示せたらいいですね。食事は健康に重要なファクターですから、医者に指摘されてではなく「自分でわかる」をコンセプトにアップデートしていきたいです。

 

DeNA 瀬川「楽しみながら健康に」というDeNAのヘルスケア事業の強みを活かして、これからもより住民の方の健診率の向上や健康増進を加速させていきたいです。

まずは久山町でしっかりその実績をみなさんと一緒に作りながら、それを他の自治体等にも拡げて、日本が元気になるような取り組みに発展させていきたいですね。

インタビュー終了後、和やかに談笑する一同
▲インタビュー終了後、和やかに談笑する一同
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※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

 

執筆:薗部 雄一  編集:榮田 佳織・栗原 尋美  撮影:杉本 晴

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