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完売の先にある満員を重視。横浜DeNAベイスターズ史上初の観客動員を下支えするチケット販売戦略

2019.03.19

2018年のシーズンでは、球団史上初となる200万人を超えるホームゲーム観客動員数を成し遂げた横浜DeNAベイスターズ。

DeNAグループになった2011年から比較すると、なんと1.8倍も観客数を増やしています。

この成果を下支えしているのが、横浜DeNAベイスターズの”チケット部”。データと経験を組み合わせた丁寧な仮説検証と地道な戦術が、功を奏したからこそ。

「横浜DeNAベイスターズが目指すところは、単にチケットを完売させることではなくチケットを手にしたお客様が、しっかり横浜スタジアムに来場してくださること」

2018年までチケット部部長を務めてきた原 惇子(はら じゅんこ)が、その言葉の真意と、施策の裏側を語ります!

株式会社横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長

原 惇子(はら じゅんこ)

早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒業後、健康スポーツ事業会社にて秘書職に。その後、大手インターネット広告代理店を経て2014年横浜DeNAベイスターズへ転職。チケット部にて多くの施策を手がけ、動員数と着券率を上昇させ、部長職に。2018年11月からMD(マーチャンダイジング)部部長。

“いつ”、“いくらで“、“どういう席種で“売るか「設計」する

――昨年度、横浜スタジアムでのホームゲームの観客動員数が202万7,922人と過去最高だったそうですね。

原 惇子(以下、原):そうなんです。おかげさまで、球団史上初の200万人を超えました。

ベイスターズがDeNAグループになった2011年から比較すると1.8倍、私が入社した2014年と比べると1.5倍に増えたことになります。2014年は年間156万4,528人でしたので。

――原さんが部長をしていたチケット部の活躍が、この結果に貢献したと伺いました。

株式会社横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長 原 惇子(はら じゅんこ)
▲ 株式会社横浜DeNAベイスターズ 事業本部 MD部 部長 原 惇子(はら じゅんこ)

原:いえいえ、チケット部だけではムリですよ(笑)。

ただ、チケット部のスタッフ全員が裏方として地味ながらも、貢献はしたかなという自負はありますね。

細かなデータの分析と、仮説検証を繰り返した結果かと思っています。

――チケット部というと、その名の通りチケットを売る部署なのでしょうか。

原:なかなかイメージ沸かないですよね(笑)。

わかりやすく言うとそうなんですが、チケット部の仕事は「チケットを売る」だけじゃないんです。

横浜スタジアムでのホームゲームのチケット販売設計、管理、配券調整、精算など、チケットに関わる業務すべてを請け負っているんですよ。

――チケットの“販売設計”とは……?

原:チケット部がチケットの売り方を設計しています。

“いつ”、“いくらで“どういう席種で“売るか、ベイスターズの売上の大きな部分を「設計」しているんです。

――ベイスターズのチケット券種は「1試合で100種以上もある」と聞いたことがあります。その券種を、すべてチケット部が設計しているんですか?

原:ええ、その通りです。

ですが、実際にスタジアムで「席の名前」としてお客さまに見えているのは100種もなくて、30席種。(※)

「内野指定席SS」とか「ホーム外野指定席」とか言った席名ですね。

※……2019年現在、販売している席種数。

横浜スタジアム席種
▲お客さまに見えている横浜スタジアムの30席種座席マップ。ホームチーム側がBAY SIDE、ビジターチーム側がSTAR SIDE。 (https://www.baystars.co.jp/ticket/regular/seat.php より)

――お客さまから見えているのは30券種なのに、なぜ実際の管理・運営上は100種以上になるのでしょうか。

原:これら30の席種と、お客様属性や施策の掛け合わせで券種を管理しているからです。

「大人」「子供」「ファンクラブ」などで30の券種を分けると1試合で100種を超えるんですよね。

――なるほど。100以上の券種の売れ行きを予測して用意し、ベイスターズの実際の売上が左右されるとなると、なかなか頭が痛くなりそうです……!

原:そうですね、かなり頭を悩ませますし、地道な分析と仮説立証の連続ですが、おもしろいんですよ。

実際にどの属性の方々が、チケット購入後にご来場くださったか、チケットの半券を集計して、後々のデータ活用にもつなげています。

原さん

「完売」の先にある「満員」を重視する

――本当に地道な、粘り強い作業ですね。チケット部で目指すのはやはり「完売」ですか?

原:はい、ここ数年はお陰様で売行きが好調でしたので、チケット販売の伸びしろもほとんどない状況でした。

それでもなお、最後の1枚まで手を抜かずにしっかり売切るということを重視し「完売試合」を増やしてきました。

――売り切る、という姿勢で人気試合であっても日々のデータ集計・分析にも手を抜かないのですね。

原:ただ、横浜DeNAベイスターズが目指すところは、単にチケットを「完売」させることではなく「チケットを手にしたお客様が、しっかり横浜スタジアムに来場してくださること」。

つまり、満員のスタジアムを作る事です。

満員の横浜スタジアム

――なぜ「チケットを売り切る」ことではなく、その先の「来場」までを視野に入れるのでしょうか?

原:「満員のスタジアム」を作り出すことで、ご来場くださったお客様にはよりスタジアムとの一体感を感じていただくことができ、満足度が高まるからです。

また、球団・球場全体で考えても、グッズや飲食の売上にもつながりますのでチケット部も「チケットを売って終了」ではなく、しっかりとお客様にご来場いただくことまで考慮した設計が重要。

難しいもので「完売」しても、必ずしも「満員」になるわけではありません。「ちゃんとご来場くださる方」の手に、チケットが渡る必要があります。

詳細はお伝えできませんが、チケット部ではそのための設計を試行錯誤して、現在の動員率につなげてきました。

原さん

――なるほど。しかし、チケット部で「完売」を超えた「満員」までを目指せるのは、「すでに余裕があるから」「ベイスターズだからできるのではないか」という気もします。

原:そんなことはないですよ。

今でこそ、完売・満員御礼が増えましたが、私が入社した2014年、2015年頃は空席が目立つ試合が多々ありました。

新しいお客様に横浜スタジアムに来ていただくにはどうしたらいいか、当時のメンバーと悩みながら、色々と手探りで企画をしていた時期もあります。

プロ野球に接点がない方々からすると「チケットを自分で購入して、スタジアムに向かう」というのは、なかなか高いハードルで、簡単なことではありません。

――確かにそうかもしれませんね。プロ野球に接点がない方には、どのようにアプローチしたのでしょうか?

原:少しでもベイスターズ、横浜スタジアムへ興味を持っていただくきっかけとして、神奈川県内のお子様とそのご家族を対象とした「こども招待」や、横浜市に移転されたご家庭を対象とした「ようこそ横浜」など、様々なご招待企画も行ってきました。

そういった企画の積み重ねが、現在の満員のスタジアムにつながっていると思います。

DeNAらしさと、ベイスターズらしさと

――ここまでの道のりは簡単だったわけでないのですね。チケットの席種設計、とても奥が深いですね。チケット部には他にはどんな経歴の方がいらっしゃるのですか?

原:多種多様です。 戦略系コンサル出身の人、外資系のIT企業出身、元秘書の方、銀行出身の方などもいて、本当に個性豊かですね(笑)。 今のチケット部は、私のように「ここ数年で中途入社してきたスタッフ」と「球団がDeNAグループになる前から在籍しているスタッフ」が半々の構成です。

――働く人のバックグランドが多様であることの良さを感じることはありますか?

原:ホエールズ、ベイスターズの時代から球団・球場で働かれてきた先輩方は、1998年の日本一と、その前後の状況をご経験されています。 その先輩方のご経験やノウハウというのは、チケット部の大きな力であることは間違いなく、私自身も本当にたくさん勉強をさせていただきました。

昨年11月からMD部へ異動となりましたが、球団に入社して、最初の部署がチケット部だったことは、私にとって本当にありがたい経験です。

――みなさん、それぞれの強みがありそうですね。その中でチケット部長を務めていた原さんは、どんな強みで存在感を出していたのでしょう?

原:存在感……。 全然出せてないですけど、そんな個性豊かな皆の中で私が自分の強みを出せるように頑張っていた部分は、部内だけでなく、社内の情報連携を密に行うことでしょうか。

社内のスタッフ数は一般的な企業から見れば小さい組織です。 ですが、プロ野球の試合は待ってくれないので、何をするにもスピードが重要。状況も日々変動します。 小さな組織で風通しが良い会社ですが、それでも情報が埋没しがちなところを部署を跨いで連携を強化していくことに努めていました。

また「チケット部は何を目指すのか」「我々が大切にしていることは何か」のベクトルがずれないように、常に声、文字にして共有することは心がけてきました。

――元々の、原さんの秘書職の経験が活きてそうですね。さらに、状況を見渡して、必要なことをしてきた結果、という印象を受けました。原さんから見て横浜DeNAベイスターズはどういった社風ですか?

原さん

原:先ほども言ったとおり、ホエールズ時代の方から、DeNAグループ後入社したスタッフと、バックボーンが多種多様で、それぞれの人が強みを活かせる組織だと感じます。

そう聞くと「なかなか打ち解けあえず、ぶつかりあうこともあるのでは?」というイメージもたまに持たれることもあるのですが、目指すゴールが明確だからか、お互いを尊重し合いながら協力しあう社風があるんです。 さらに球団というと「独特な社風なのではないか」と思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、全くそういったことはなく、ごく一般的な企業です。 面白いことを全力でやらせてもらえる、風通しの良い会社ですので、ぜひいろんな方にご入社いただきたいです。

今以上に多種多様な人材に溢れた個性ある球団になれば嬉しいですし、また働く楽しみも大きくなっていきますね!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:箱田 高樹  編集:榮田 佳織・栗原 ひろみ  撮影:小堀 将生

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