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CULTURE

19.02.26

「コミュニティビジネス持続性のカギは世界観」|佐渡島 庸平×『逆転オセロニア』けいじぇい 特別対談

SNSやイベントを通じて、好きなコンテンツやプロダクトのファン同士がつながる――。

そんな「コミュニティビジネス」の盛り上がりが続いています。

2019年1月現在、配信から3周年を迎え2,300万ダウンロードを超えるDeNAの人気スマホゲーム『逆転オセロニア』もその1つ。

リアルイベントを地道に積み重ねた結果、力強いファンコミュニティが育ち、息の長い人気の底力になっています。

オセロニアン(※1)から「けいじぇい」と呼ばれるプロデューサーの香城 卓(こうじょう たく)が今回対談をしたのは『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』の仕掛け人、株式会社コルクの佐渡島庸平(さどしまようへい)さん。

「コミュニティビジネスという言葉自体がもう、限界に来ているかもしれない」

そんな発言も飛び出した、コミュニティビジネスのキーパーソン2人が見据える「コミュニティビジネスの未来」とは?(※2)

※1……『逆転オセロニア』を楽しんでくださる方々のこと
※2……本記事は、2019年1月18日に開催されたGame Developer’s Meetingの事前特別対談インタビューです。Game Developer’s Meetingイベントレポートはこちら(前編後編

株式会社コルク代表取締役会長

佐渡島 庸平(さどしま ようへい)氏

1979年生まれ。 東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。 週刊モーニング編集部にて『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)など数多くのヒット作を編集。インターネット時代に合わせた作家・作品・読者のカタチをつくるため、2012年退社し、コルクを創業。 コミュニティに可能性を感じ、コルクラボというオンラインサロンを主宰。

ゲーム・エンターテインメント事業本部ゲームサービス事業部 逆転オセロニア プロデューサー

香城 卓(こうじょう たく)

ゲームディベロッパーを経て、2011年2月株式会社ディー・エヌ・エーに中途入社。Mobageプラットフォームでのゲーム運用・開発を経て、2014年より『逆転オセロニア』を企画・開発。現在はプロデューサーとして同タイトルの事業運用に従事。『逆転オセロニア』のファンコミュニティでは「けいじぇい」として知られる。

 

「DeNAのような大会社でよく突破できたなと」

――佐渡島さんは『逆転オセロニア』におけるコミュニティづくりにどんな印象を持っていますか?


▲(左)株式会社コルク代表取締役会長 佐渡島 庸平氏

佐渡島

「DeNAのような大会社で、こういう企画を突破できたことが素晴らしい」と思っています。

香城

本質からきましたね(笑)。

佐渡島

香城さんは3年前から全国をまわり、数名しか入らなくてもリアルイベントを地道に続けてきたわけですよね。

DeNAくらいの規模の会社なら「ムダじゃないか」という経営判断をされても仕方がないと思うんですよ。

香城

確かにいくら熱量あるコミュニティができても、コミュニティの定量的な評価は難しいですからね。

 

――実際、最初の頃はどうやって経営側を説得していたのでしょう?

 


▲(右)ゲーム・エンターテインメント事業本部ゲームサービス事業部 逆転オセロニア プロデューサー 香城 卓

香城

「短期的に数字に現れるものではありませんが、このゲームのために絶対に必要なことなんです。信じてほしい!」と言いはっていました(笑)。

 

――熱意でおしきっていた感じなんですね。

 

佐渡島

『逆転オセロニア』は、そうしてまで丁寧にファンと関係性を積み上げてきたから、長く愛されるゲームになっていますよね。

他のゲームでも「ファンを楽しませよう」とはすると思うんですが、香城さんたちはそれを超えて、距離感の近いイベントを重ねることで「ファンを大切にしている」ことまで伝えてきた。

だからこそ、ファンは自分ごととして『逆転オセロニア』を「こんなにおもしろいゲームがある」「これは、自分たちのゲームだ!」と周囲に広めてくれたんでしょう。

共創者の関係性になったということですよね。以前見た『逆転オセロニア』のイベント写真がすべてを物語っています。「いい雰囲気」がにじみ出てる。

香城

まさに『逆転オセロニア』は、ファンの方々と共に創ってきたゲームだと実感しています。

リリース直後の「このゲームは流行るのかわからない」状況でも、ファンの方々はイベントに集まり、僕らと一緒に楽しんでくれた。

その時の参加者と運営者の熱量が今も残っている。最初期のオセロニアンたちは、今では影響力のあるアカウントとして認知され、コミュニティを支えてくれています。

 

「コミュニティ」という言葉の限界

――一方、香城さんは、コミュニティにまつわる活動「コルクラボ」なども含めて、佐渡島さんにどんな印象を持っていますか?

 

香城

コルクラボは共感でき、学びも多いです。

ですが何より、佐度島さんが本やSNSなどでコミュニティビジネスについて頻繁に発信されていることこそがすばらしいですよね。

巷で「これからはコミュニティづくりだ」と言われる割に、いまだ「コミュニティ」に対する明確な定義付けや言語化はされていません。

だからコミュニティは再現性が低く、ときに怪しげに思われてしまう。

佐渡島

そのとおりですね。

香城

そんな中で佐渡島さんが言語化してくれることでコミュニティの考え方が広まって、一般化したらいいな、と。

とはいえ、僕はコミュニティという言葉そのものは、そろそろ限界かなとも思っているんですよ。

 

――今まさに注目されている「コミュニティ」という言葉が、もう限界ですか?

 

香城

「コミュニティ」と聞いた時に頭に浮かぶことが、人によって違いすぎる気がしているんですよね。

 

佐渡島

「AI」という言葉が、今は時に機械学習を指したり、ディープラーニングを指したりするのと同じかなあと思いますね。

雑に理解されたまま、いろんな意味を内包して言葉が先に流通している。そろそろ「コミュニティ」という言葉そのものをアップデートする頃なのかもしれません。

 

――では、佐渡島さんは「コミュニティ」という言葉をどのようにアップデートしますか?

 

佐渡島

それははまだ僕にも思い浮かんでいません(笑)。僕、頭に思い浮かんだらすぐに言語化しちゃうんで。

 

かつてのコミュニティは「息苦しい場所」だった

――なるほど(笑)。では今、お2人が考えている「コミュニティ」の形と意義を教えてください。

 

佐渡島

まずおさえておきたいのが、昔からコミュニティという言葉はあったんですが、今はコミュニティが「安全・安心な居心地のいい集まりになった」とポジティブなイメージに進化していることです。

 

――というと、かつてのコミュニティは居心地が良くなかったのでしょうか?

 

佐渡島

自分が望んで所属しているとは限りませんでしたからね。かつてのコミュニティは、主に地域や学校、会社の構成員同士のつながりでした。

所属するためには、そのコミュニティに合わせて自分の心を少し調整する必要があったんです。

 

――確かに、学校のクラスなどは必ずしも自分の趣味嗜好と合うメンバーで集まっているとは限りませんね。

 

 

佐渡島

そうです。場合によってはコミュニティは「息苦しさ」を感じる場所だった。

しかし、SNSという仕組みによって、趣味嗜好が合う者同士が、自分の意思で選んでつながりやすくなりました。

コミュニティの中に入れば価値観も言語も共通で、心を調整する必要がない。

たとえば『宇宙兄弟』のコミュニティならば、年齢も性別も職業も関係なく『宇宙兄弟』について、とても濃い話で盛り上がることができる。もちろんそのほうが楽しいし、その結果、さらに『宇宙兄弟』を好きになってもらえます。

 

――「モノが売れない」「ヒットが出ない」という時代でも、こうした新たなコミュニティと世界観を共有することはサービスやコンテンツを成長させるための道筋になりそうですね。

 

佐渡島

ええ。

テクノロジーが進化した結果、むしろ「人間中心主義」に戻ってきているんだと思います。だからこそ、コミュニティはこれからモノやサービスを成長させる上でも1つの道筋だと思いますね。

 

「モノやコトが人間に合わせる」世の中へ

――「人間中心主義」とは?

 

佐渡島

「モノやコトに人間が合わせる」世の中から「モノやコトが人間に合わせる」世の中になってきた、と言い換えても良いかもしれません。

本来、コンテンツは「人の気持ちを動かすもの」であって、人の気持ちを大事にしたいという思いでつくられます。

ですが、これまで本やゲームなどは基本的に受け手個人に対してパーソナライズはされていなくて「こちらで作ったものを、楽しんでくださいね」というパッケージでした。

本のエンディングは決まっていたし、ゲームのストーリーは決まっていた。

 

――テクノロジーの進化によって、パーソナライズしたコンテンツも提供できるようになった、ということですね。

 

佐渡島

はい。同じようなことがコミュニティでも起きています。

「人がコミュニティにあわせなきゃいけなかった」時代から「人が大切にされる、居心地のいいコミュニティ」になってきたと。

香城

インターネットによって「マルチアカウント社会」になったことも大きいですよね。

 

――インターネット上で、個人が複数の別アカウントを持てる、ということですね。

 

 

香城

ええ、その結果、人間関係のカスタマイズがしやすくなり、自分が望むコミュニティに参加するハードルが下がった。

かつてならコミュニティに属すときは本名を使い「自分」という人格で参加するしかなかったですよね。

しかし今は、いくつでも好きな名前を使っていろんなコミュニティに属せます。

「あるネットコミュニティではこの名前でこの人格で、別のゲームでは……」と自分1人の中でも、そのコミュニティ毎に出す人格が選べる。

オセロニアン同士はゲーム以外のその人のパーソナルな情報とかまで知っているんです。これだけリアルイベントをしているので。

けれど、お互いの本名は知らなかったりする。交流会でもずっとアカウント名で呼び合っていたりしますからね(笑)。

 

持続性のカギは「世界観」を提供し続けること

――コミュニティ内で本名は知らないのに、お互いのことは深く知っているとは、おもしろいですね。ところで、多くのコミュニティビジネスに関わる人の課題かと思いますが「コミュニティを維持しながら、ビジネスとして継続させていく」ためのポイントは何でしょうか?

 

佐渡島

うーん、そうですね。

たとえば今日、僕ら2人ともパーカーを着ているじゃないですか?

香城

あ、かぶってますね(笑)。


▲この日は、2人ともパーカーを着用して現れた。とてもシルエットが似ている。

佐渡島

僕は『宇宙兄弟』のパーカーで、香城さんは『逆転オセロニア』のパーカー。

こういった「世界観」を共有できるようなモノやコトをしっかりと提供し続けることはとても大切だと思います。

そうすることでファンはその作品の世界観にさらに深く入り込むことができ、ロイヤリティも育まれる。当然、その価値に共感してくれれば、お金も使ってもらえるでしょう。

 

――世界観を「提供し続ける」ことが持続性のカギを握っているんですね。

 

佐渡島

ええ。ゲームやマンガといったコンテンツに限らず、あらゆるジャンルでその世界観にひたれるグッズなどを用意することは、コミュニティを持続的に盛り上げることに直結します。

 

――常に世界観にひたれるグッズはどのようすればつくり続けられるんでしょうか?

 

佐渡島

そのコンテンツの世界観をしっかりと理解し、共有できるクリエイターとものづくりをすることがとても大切ですね。

既にコミュニティに参加している人の中で、つくれる方がいればベストです。

持続可能なコミュニティは「送り手と受け手」「造り手と買い手」といった関係ではなく、フラットな共創関係であるということもまた絶対条件ですからね。

 

――「フラットな共創関係を築けること」もカギになりそうですね。香城さんは今後、コミュニティビジネスはどのように変わっていくと見ていますか?

 

香城

ゲームで言えば、コミュニティを軸にした新たな「指標」が必要だと感じています。

一般的にスマホゲームは、今までは「アクティブユーザー数」のように人間関係や熱量を加味しない、瞬間的な全体の数字が重視されがちでしたが、もうそれは違うかなと。

むしろ「どれぐらいの大きさのコミュニティがになっていて、どれほどの持続可能性があるのか」を指標にしたい。

佐渡島さんも著書で「1度に100万部より、10万部×10年売れるほうがいい。コミュニティがそれを可能にする」といったことを書いていますが、ゲームもそうなっていくべきだと思うんです。

 

――「瞬間的に好きになってもらうより、深く長く好きになってもらう」という感じですね。

 

香城

ええ。それがコミュニティのおもしろさかなと思います。

5年も10年もファンコミュニティが続いて「高校も大学も卒業したけど、『逆転オセロニア』の仲間とは居心地がいいので、今も続いている」という方が大勢いる、というような世界になっていったら、こんなに嬉しいことはありません。

 

――コミュニティビジネスの可能性を感じますね。本日はありがとうございました。

 

香城

今日はとても勉強になりました! 佐渡島さん、本日はありがとうございました。

コミュニティビジネスをアップデートする言葉が見つかったら教えてください(笑)。

佐渡島

ええ(笑)。こちらこそ今日はありがとうございました。楽しかったです。

 

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※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

 

執筆: 箱田 高樹  編集:榮田 佳織  撮影:佐藤 剛史

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