DeNAの「人」と「働き方」の"今"を届ける。

CULTURE

18.12.10

4年間で40の新規事業を生んだDeNA流リーンインキュベーションの秘訣|私の所信表明 千條 吉基

DeNAには、リーンインキュベーション部というボトムアップの新サービス開発を支援する部署があります。

スピンアウトしたSHOWROOMMirrativといったサービスも、この部署から生み出されました。

部のミッションは、“プロダクトを通じて深いニーズ、熱狂的なニーズを掘り当て、対象となる方を大いに幸せにすること”。

DeNA各部リーダーが、事業を通じて成し遂げたい世界観や想いを伝える「所信表明」シリーズ。今回は新規事業・サービスの育成を手がけるリーンインキュベーション部長、千條 吉基(せんじょう よしき)が登場します。

世界中の人々を熱狂させるサービスを生みだすために、個人が持つ小さなアイデアの可能性にかけてみる。

小さく始めるのは、失敗を恐れずに何度も挑戦を続けるためと、語る千條が方針に込めた想いとは?

 

熱狂的に欲する人がインターネット上にいるか


株式会社ディー・エヌ・エー コマース&インキュベーション事業本部サービスインキュベーション事業部リーンインキュベーション部部長 千條 吉基
東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、大手携帯電話メーカーを経て、2011年DeNAに入社。Mobageのサービス開発、リードエンジニアとして音楽配信サービスの立ち上げに携わる。

はじめまして。リーンインキュベーション部の部長をしている、千條です。

DeNAにインキュベーションの部署があること自体、もしかするとあまり知られていないかもしれませんね。

「新しい事業をゼロから立ち上げたい」「自分が考えたサービスを実現したい」DeNAには、熱い思いを持って集まっているエンジニアがたくさんいます。私もその1人です。

個人のアイデアを実現するために、DeNAには全社的なインキュベーション・プログラムがあります。このプログラムによって、職種や所属にかかわらず、社員の誰もが新しい事業・サービスの提案をすることができます。

そういった社員からの提案に対して審査を行い、予算をつけるかどうかの判断をするのが、事業部長と、私の役割です。

判断基準はただ1つ。提供しようとしている価値を、熱狂的に必要とする人が「インターネット上にいるかどうか」

「友人が欲しいと言っている」ではなく、TwitterやInstagramなど「インターネット上でその価値を欲している人の存在を観測できているか」がポイントです。

「インターネット上でのニーズ」にこだわるのは、私たちはインターネットサービスを提供する立場だからです。そして「リアルな人の行動」が「インターネット上の行動」に移行するには、時間がかかるからです。

たとえば、今でこそ「インターネットで大型テレビを買うこと」は普通ですが、実際にそうなるまでは長い時間を要しました。少し前までは「そんな高額な買い物をインターネットでするなんて考えられない」という反応のほうが多かったのです。


▲提案された新規事業への投資判断基準は「その価値をとても熱量高く欲している人の存在」がインターネット上で観測できているかどうか。

 

初期投資は3ヶ月チャレンジできるギリギリの金額

インターネット上でのニーズの存在が証明できれば、予算をつけます。

リーンインキュベーション部が行なう投資は、R&D的な長期的投資の目線とは異なります。初期投資額は1,000万円前後まで(※)。

この1,000万円には、手を挙げた自分自身の人件費のほか、オフィスの地代家賃などの販売管理費用も含みます。約3カ月間の開発と運用ができる、ぎりぎりの金額です。

つまり、直近の数カ月間、長くても1年以内にサービス化できうるものに投資するのが基本的なスタンス。提案のジャンルは何でもありです。

自分たちの目線でイケているかではなく、すでにインターネット上でニーズが浮き出ててきていることを、いかにタイミングよく、タイムリーに捉えるかが一つのキーになります。

しかし、そのタイミングを予想することはかなり難しい。大規模な投資をしてタイミングを外すと、会社への打撃が大きくなります。すると、もう1度トライするかどうかの判断が、遅く、鈍く、重くなってしまいますよね。だからこそ、小額投資であることが重要なのです。

投資が小額であれば1回失敗しても再チャレンジすることができます。すなわち、リーンインキュベーションとは「社内のチャレンジを増やす試み」なのです。チャレンジが増えれば、それだけインキュベーションの知見が蓄積されるという好循環にもつながり、新規サービスの成功をぐっと近づけることができます。

※……DeNAの新規事業の検討・立ち上げ経験則は下記記事に詳細。 『DeNA流リーンスタートアップ。「3年間で24事業立ち上げ19事業を閉じた」新規事業チームが語る、10の経験則』 

企画者自身が初期メンバーを共感度で集める

投資が決定したら次は、企画立案者とともにサービスを立ち上げるパートナーを見つける手助けをします。

基本的には企画立案者自身が、事業部内でエンジニアにピッチを行います。そして、その企画に最も共感度が高く、スキルマッチする人物を調整してアサインするのです。

サービスを開発するチーム編成も、投資金額と同じくミニマムです。基本的には、企画立案者、エンジニア、デザイナーの3名で開発をします。立案者がエンジニアのときは、エンジニアとデザイナーの2名体制、またはもう1人エンジニアを引き込んで3名体制になることもあります。


他部署から異動、もしくは社内副業的なかたちで、メンバーを引き込むこともできます。

DeNAには、希望する事業部のマネージャーと合意すれば、現部署のマネージャー承認なしに異動できる「シェイクハンズ制度」、所属事業部の業務と並行して社内副業的に他部署の業務も担当できる「クロスジョブ制度」があります。ですので、これら制度を活用し社内告知を出してメンバーを募る企画立案者もいます。

サービスがやむなく終了しても、また新しいサービスを思いつけば、企画立案者は2打席目、3打席目、さらに何度でも打席に立つことができます。ビジネス系人材からだけでなく、エンジニア、デザイナーからの発案も少なくありません。

 

無理に存続させない。あらゆる知見を共有し活かす

こうして、たくさんのメンバーからボトムアップで発案が重ねられ2014年以降、インキュベーション・プログラムで約40のサービスを世の中に出しました


▲2014年からリーンインキュベーション部で立ち上げたサービスの一例

結果として、今もサービスが存続しているのは、スピンアウトした『SHOWROOM(ショールーム)』『Mirrativ(ミラティブ)』

今、社内で運営しているサービスとしてはPococha(ポコチャ)』『クンカブルなどがあります。主にライブ配信サービスですね。

 


▲誰でも気軽にライブ配信と視聴ができる『Pococha』、犬が主役の写真・動画SNS『クンカブル』

ライブ配信サービスは『SHOWROOM』が先行して市場をつくり『Pococha』で市場形成をしていこうという段階です。市場が、経済活動までを含めて大きく動きはじめることが見えてきた事例ですね。

 

エンジニアにとっては「0から生まれたサービスを1〜100に伸ばしていく」またとない機会


スタートアップでサービスをグロースさせてきた経験がある方にとっても、今の『Pococha』はおもしろいフェーズかもしれません。

集まってきたメンバーにはスタートアップで新規事業立ち上げに携わった経験があり、より確かな手応えを求めてDeNAにステージを移してきた人たちが多くいます。


▲2018年『Pococha』拡大に合わせソーシャルライブ事業部を新設。スタートアップや新規事業立ち上げを経験してきたメンバーが多く集まっている。

DeNAには、スタートアップのようなスピード感と、既に複数の収益の柱を持っている企業としての知見と両方の良さがあります。

もしスタートアップで単体のサービスで勝負をしていれば、なかなかそのサービスを終了させるという判断はできないですよね。しかし、DeNAのリーンインキュベーションでは「無理に存続させる」という判断はしません

生み出したサービスの終了はもちろんとても辛いものですが、社内には知見が蓄積されていく構造があり、サービス立ち上げ、グロースから終了までのあらゆる知見を可視化・共有しています。

エンジニアはその後もまた新たなサービスの開発に関わりますが、新規事業・サービス立ち上げで得た知見を、次の立ち上げに活かすことができるのです。

 

絶えず小さなプロジェクトが立ち上がるDeNAには、スタートアップで活躍していたエンジニアの方も、常に熱量を注ぐことができるサービスと出会える地盤がある。私はそう考えています。

 

成功確率を高めるには小さく始め、打席を増やす

私が大手携帯電話メーカーからDeNAに来た理由は、ガラケーからスマートフォンの時代になり、メーカーの枠を超えて世界中でより多くの人に使ってもらえるアプリケーションを自分の手でつくりたいと思ったからです。

ちょうど『Mobage』を立ち上げるときで、DeNAの人たちと会い、話をして、その熱量に魅かれて即決しました。

入社後は『Mobage』チームでアプリ制作などを担当する傍ら、一時期は『comm(コム)』という通話サービスの開発にも携わったことがあります。

2011年、音楽サービスを立ち上げようという声が社内で上がって、自ら手を挙げてリードエンジニアとしてプロジェクトに参加しました。

音楽が好きだということだけでなく、自分がつくったサービスをたくさんの人に使ってもらえるという期待感もありました。

しかし、音楽サービスはリリース後すぐにクローズ。大きく立ち上げて大きく始めることの難しさを知り、失敗したときの打撃の大きさを痛感しました。最も恐れたのは、次のチャレンジができなくなることでした。

 

この課題感も、サービスインキュベーション事業部の創設に影響を与えています。このときの音楽サービスのオーナーや、結果的にクローズした『comm』のメンバーなど、いわゆる「失敗も知っているメンバー」が集まってチームをつくりました。

成功の確率を高めるためには、できるだけ少人数で小さく立ち上げるほうがいい。スムーズに立ち上げて、スムーズに検証できるという実感をもって、新規サービスの立ち上げをリーンインキュベーションに移行しています。

2014年以降、インキュベーションの知見をためて私たちなりのメソッドができ、サービスを育てる確率を上げられる部署になってきました。それは、失敗も成功も重ねてきたからです。

今、私はいろいろなサービスを横断してみています。いろんなサービスの立ち上げを同時に見ることができ、可能性を秘めたサービスを通して世の中を見ることができます。これは私にとって大きな喜びです。


サービスの成功も失敗もオープンにして、トライし続けることが大切だと思います。

メンバーには失敗できる土壌で、いくらでもチャレンジしてほしい。

私は、リーンインキュベーションのメソッドの精度をさらに高めて、エンジニアが開発に集中できる環境を守っていきます。そして、ここから生まれるサービス全体でDeNAの成長に寄与します。すべては世界を熱狂させるために。

DeNAでは一緒に働く仲間を募集しています
温かくて居心地がいいソーシャルライブ空間をつくるエンジニア募集!
※本記事掲載の情報は、2018年12月10日時点のものです。

執筆: さとう ともこ 編集:榮田 佳織 撮影:小堀 将生

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Tag

タグをすべて表示する