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CULTURE

18.09.28

地方学生の情報格差をなくしたい。サイバーエージェント、GMO、ミクシィ、DeNAが「BIT VALLEY 2018」に込めた想い

2018年9月10日、渋谷区文化総合センター大和田で開催され約1,000人が来場したテックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」。

このイベントを共催したのは、事業上はライバル同士とも言える渋谷のIT企業4社。サイバーエージェント、GMOインターネット、ミクシィ、DeNAです。

1990年代後半、この4社を含むITベンチャー企業が続々と誕生した渋谷周辺。シリコンバレーになぞらえ、その一帯は「ビットバレー」と呼ばれ、IT企業ブームの波に乗り大きな注目を集めていました。

約20年の時が経ち、2018年7月に4社は共同して「渋谷をIT分野における世界的技術拠点」にすべく「SHIBUYA BIT VALLEY」プロジェクトを開始。その第1弾として本カンファレンスを開催しました。

同時期に創業し、競うように事業を成長させてきた各社は今回、なぜ手を取り合うことになったのか? そこにあったのは、共通した未来を見据えた社会課題解決への想いでした。

東京と東京以外の「情報格差」を解決したい

――どのような経緯で各社共同で「BIT VALLEY 2018」の開催に至ったのでしょうか?

サイバーエージェント 長瀬 慶重氏(以下、CA長瀬):私がゴールデンウィーク明けに渋谷区の長谷部区長に挨拶に伺った際にお話させていだいたのがきっかけです。

「何かしら渋谷区と渋谷のIT企業で一緒に取り組みをしたい」と。


▲(右)株式会社サイバーエージェント執行役員技術制作室室長 長瀬 慶重(ながせ のりしげ)氏

――そのとき既に今回の「BIT VALLEY 2018」の形式を想定されていたのですか?

CA長瀬:いえ、実は当初は参加者を学生向けに絞ってやろうと思っていたんです。学生向けに「IT業界・エンジニアとして働くことは魅力的なんだ」というのを伝えられればと。そういう趣旨を区長にお話しさせていただきました。

――なぜ学生向けに絞ろうと?

CA長瀬:もともと、私は「東京とそれ以外の学生の情報・機会の格差を何とかしたい」という思いがありまして。仕事で地方に行くと感じるのですが、地方は東京に比べると「機会の格差」が大きい。

それから経済産業省が試算で出している「エンジニアがこれからさらに不足する」という将来的な問題(※1)に対しても渋谷区と渋谷の企業が1つになって何かできないか、と思っていたんです。

まずはじめに区長に話を持っていったのは、渋谷区が一緒になることで社会的な大義ができれば企業各社が自分たちのメリットを考えず一緒にやれるようになるからですね。

※1……経済産業省はビッグデータ、人工知能等の先端IT人材が2020年までに12.9万人不足すると推計した
出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 ~報告書概要版~
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY/ITjinzai_report_summary.pdf

――長瀬さんが渋谷区長に話をされたのが始まりだったのですね。その後、各社どのように合流されたのでしょうか。

GMOインターネット 稲守 貴久氏(以下、GMO稲守):CAさんからお話をいただいてすぐに「ぜひ一緒にやりたいです」とお返事をしました。まさに同じような課題感を持っていたからです。

私も、インターンシップの運営で全国の学生と会う機会が多いんですよ。先日も東京を離れていたんですが、やはり東京と東京以外だと学生に届く情報量とか、情報の粒度の部分で違いを感じる点があります。


▲GMOインターネット株式会社次世代システム研究室シニアクリエイター 稲守 貴久(いなもり たかひさ)氏

CA長瀬:お話してから1~2週間で、4社から「ぜひやりたい」とお返事が揃いましたね。

 

――各社スピード感ある意思決定をされたんですね。

株式会社ミクシィ村瀬 龍馬氏(以下、ミクシィ村瀬):弊社としても「同じ渋谷区界隈が一丸となる取り組み」ということでぜひ、と思いました。

地方での情報格差という課題はやはり採用の際に感じます。各社協力して同じ目的に向かえれば、と思いました。


▲(左)株式会社ミクシィ執行役員(技術領域) 村瀬 龍馬(むらせ たつま)氏

――今回の「BIT VALLEY 2018」は渋谷で開催されましたが、地方の学生は参加が難しかったのでは? 当初の課題感であった「学生向けに地方と東京の学びの格差をどうにかしたい」という点にはどのように合致しているのでしょうか。

CA長瀬:学生支援プログラム(※2)として、実際に当日イベントに来た102名の学生に交通費支援をしました。これだけの人数の旅費負担を渋谷のITの企業の力で実現したというのは、すごいことだと思います。

学生参加総数で言うと、約1,000名の参加者のうち200名くらいが学生でしたね。今回は行っていませんが、今後は当日参加できない学生に向けてインターネット上でイベントの様子を配信することもできるかと思っています。

※2……通学している学校のエリアに応じ、学生に最大5万円の交通費を支給するプログラムを実施した

1年はかかる大規模イベント準備を3ヶ月で

――各社の役割分担などはあったのでしょうか?

株式会社ディー・エヌ・エー小林 篤(以下、DeNA小林):一応ありましたよね。セッションとか登壇者決定の取りまとめはDeNA、会場まわりはミクシィさん、プロジェクト管理やメディア系はCAさん、懇親会やその他いろいろなサポートはGMOさんが……。あれってどうやって決まったんでしたっけ?


▲(右)株式会社ディー・エヌ・エー執行役員システム本部本部長 小林 篤(こばやし あつし)

GMO稲守:各社の役割は事務局で話す中で自然と決まっていった感じですよね。まずは発起人のCAさんが「全体を見ます」と言ってくださって。

――しっかり決めて始めたというより、大枠の役割分担が自然と決まっていったんですね。

CA長瀬:ええ。各社が自主的にというか。「1,000人集めたい」「恥ずかしいものにはしたくない」という各社みなさんのプライドみたいなものがあったからでしょうか。それで、3ヵ月くらいという大変短い準備期間でイベントをつくりあげることができました。

みなさん他の業務も持ちながらあのクオリティをこの短期間で実施できた。当日の会場にも各社から80人くらいのスタッフの方が来てくれた。あらためてすごい会社さんたちと一緒にいいプロジェクトができたなと感じています。

――3ヶ月であの規模のイベントを実施したというのは、かなり速そうです……!

DeNA小林:通常、あの規模のイベントをやろうと思えば準備に1年はかかります。

1年前に会場をおさえて、イベントを設計して、制作物の手配をして、と……。1年かければもっとできたことはあったかと思いますが、この短期間で仕上げたというのは相当すごいと思いますね。

各自がそれぞれ他の業務を持ちながらの準備だったので「ここ、できていないよね」といったことが出てくるかと思いましたが、ほとんどなかったんです。

――4社が連携してこのようなイベントを行うのは通常難しさが伴うと思いますが、なぜここまでうまくいったのでしょうか?

DeNA小林:みなITベンチャーで、仕事の仕方とかをわかり合っていることは大きいでしょうね。

たとえば、今回は連絡ツールにSlackを使ったのですが、ふだんから皆さんSlackを使っているからコミュニケーションも慣れていて。こういうふうにすればみんなコミュニケーションとれるよねという共通理解みたいなものがあったからだと思います。

CA長瀬:いろいろな利害関係者と一つのことをするときに、さまざまなことが合致しなくてうまくいかないことは結構多いんですよ。世の中の流れとやりたいことが合致することってなかなかない。

今回は、それが合致したんです。渋谷区の都市開発の流れであったり、各社の潜在的な社会への課題感であったりが一致していたと。

各所からの問い合わせも多く、注目度という点でもここしかないというタイミングでした。タイミングがずれていると、同じことをやりたくても難しくなってしまうので。

――難しくなる、というのは?

CA長瀬:たとえば協賛金がこれくらい必要だとかを1つ1つ決めていく際に、決裁を社内で取りづらいとかですね。

今回、各社の社内決裁がすごく早かったんですよ。それは「悩まずこの取組みはやったほうがいい」と合意できていたからだと思う。

それと、今回は区長が1度打ち合わせに顔を出してくださって。それで、各社の共通認識を最初につくれたのは大きかった。あとはやるしかないという状態を早い段階でつくることができたのが良かったですね。

成長したかつての仲間が集い、若手には新たな成長機会に

――当日はどのようなシーンが特に印象的でしたか?

DeNA小林:個人的には南場、熊谷さん、藤田さんが控室で話している雑談風景ですかね。その横で村瀬さんが居づらそうにしていて……(笑)。

一同:(笑)

ミクシィ村瀬:緊張感しかなかったですね(笑)。


▲左から、ミクシィ 執行役員(技術領域) 村瀬 龍馬氏、DeNA代表取締役会長 南場 智子、渋谷区長 長谷部 健氏、GMOインターネット 代表取締役会長兼社長・グループ代表 熊谷 正寿氏、サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田 晋氏
ミクシィ笠原会長は当日現地には来られずビデオメッセージでの出演となったため、各社トップと並び村瀬氏がミクシィ代表として取材等の対応を行った。

DeNA小林:控室で仲良さそうに「久しぶり」「最近どうですか」みたいな雑談をしているのを見ていて、こういう関係性なんだな、これが20年くらい続いてきたんだなと。それを感じられたのが印象的でした。

3人が対談する基調講演にそれが現れているなと思いましたね。それぞれ渋谷で起業して時代を競い合うように会社を大きくしてきた3人が、全くすり合わせもしていないのに壇上に並んだ時に特に違和感もなく進んで行っていたんです。

CA長瀬:私としてはプラネタリウムで開催(※3)できたことは斬新だったし、良かったと思います。真っ暗な中で夜空を見ながらスライド見て話する、というのは新しい体験をつくることができた。

※3……当日の会場は3つあり、メイン会場は大ホール(さくらホール)、残り2つのサブ会場はプラネタリウムとプラネタリウムロビーだった

――稲守さんは当日ずっと事務局対応をされていたそうですが、会場の様子は見られましたか?

GMO稲守:そうですね、当日はインカムを付けて駆け回っていましたね(笑)。ただ、その合間に会場の様子を覗くと各社の違いが出ていておもしろいなあと思いました。

渋谷区は今「ちがいを ちからに 変える街。」というキャッチコピーでダイバーシティを大事にしていますよね。

私達も各社「インターネットのテクノロジー事業をやってます」という点では同じなんですが、やはりみんな違っていて。特にメインセッションはその違いの色が強くておもしろいなあと思いました。


▲当日のメインセッションの様子。

GMO稲守:それから、運営面では当日100人弱くらいのスタッフで1,000人強のお客様を受け止めたというのはすごいなと思います。スタッフの皆さんに感謝ですね。

大変だったと思いますがスタッフみんな楽しみながらやっていたかと。僕自身も楽しみながらやろうと思っていて、それはできたと思います。

――村瀬さんはいかがですか?

ミクシィ村瀬:もともとミクシィにいた人がベンチャー企業を興したり違う場所で活躍していたりするんですけど、長い時を経て今回登壇してくれていたりして「かつての仲間がまた集まってきた」という感じがあり、個人的には感動しました。

それはミクシィ出身者に限らず、南場さん、熊谷さん、藤田さん3人の基調講演でモデレーターをしてくださった馮さん(※4)も含めて。えふしんさん(※5)もそうですし。懐かしかったです。

それぞれ新卒で入った人たちがこんなに成長するというか、あの時はこんなこと言っていなかったよな、みたいなことを喋っていて……。

※4……株式会社技術評論社 馮 富久(ふおん とみひさ)氏
※5……Twitterウェブサービスクライアント「モバツイ」開発者プログラマ 藤川 真一(ふじかわ しんいち)氏

――かつての仲間がそれぞれ成長し、また集うというのは感慨深いですね。

ミクシィ村瀬:ええ。それから社内の若手も頑張っていて、いいなと思いました。初めて登壇した若手もいたとかで。今回登壇者からすると、参加者層に学生が多いのか、技術の話を聞きに来たエンジニアが多いのかわかりにくかったと思うんです。

ただ、当日その不思議な反応の雰囲気を楽しみながら、「こう言ったら反応良かった」「次につなげよう」という反省が控室でされていて。すごく良かった。

――若手の方の成長機会にもなったのですね。

チャレンジをサポートできるチームでありたい

――今回の「BIT VALLEY 2018」を皮切りに、今後どのような活動の広がりをつくっていきたいですか。

CA長瀬:正直なところ、まだ今後どのようなかたちにしていくか検討中の段階ですが、定例会議をやっていくことになっているので、そこで何かが生まれていくと思います。

GMO稲守:いろいろな可能性が考えられますよね。区長がオープニングトークのなかでエストニアの電子政府の話をされていましたが、たとえば将来的には、渋谷区がブロックチェーンの台帳技術を使って何か実証実験するということもあってもいいのかなとか。

ほかにも渋谷区のどこかで、各社のサービスがもっと当たり前に見られるようになったらいいな、と。DeNAさんだったらカーシェアリングの『Anyca』だったり、タクシー配車サービスの『タクベル』だったり。

ミクシィ村瀬:街自体を変えられそうな雰囲気を区長から飛ばしてくれたので、テクノロジーを扱ってる身としてはすごくワクワクするというか。他の場所にはないと思います。

DeNA小林:区長は「これをやりたい」というビジョンを持っている方なので、物事がいろいろと進みやすくなった気がします。

こういうイベントは年1回だけやって終わり、みたいになってしまうことが多いと思うんですけど、それを超えてもっといろいろできるんじゃないかとは思いますね。

「BIT VALLEY 2018」が終わったあとに知り合いのデザイン事務所の人から「いいですよね。渋谷に移転したいんですけど」という反響もありました。

通常なら「不動産屋に聞いてみて」となると思うんですけど、私たちはコミュニティのなかで「どういった物件があってどこに来れば他社とコラボしやすい」とかそういうことまでサポートするチームになれればいいんじゃないかと思っています。

――渋谷に進出したい会社があるときに、サポートできる存在でありたいと。

DeNA小林:そうですね。「起業したいが場所はどうしよう」という方に場所を提供してあげるとか、そういうプログラムがあるとか。できることはいろいろあるかと思います。

ミクシィ村瀬:地方の学生が来る時にふらっと寄れる場所、というのがあるといいですよね。

DeNA小林:いいですね。そこでいろんな人とつながっていったりとか。

――そんな場所があると学生は嬉しいですね。次回のイベント開催はいつでしょうか?

CA長瀬:次回は、時期としては地方の学生は夏休みだと来やすいかなと。1万人くらい集めたいなとも思っているんですよ。

DeNA小林:渋谷の街全体がカンファレンス会場みたいになって、たとえば映像ストリーミング系のカンファレンスならここ、Webサービス系はここ、フィンテックならここ、みたいに街中で同時進行的にやっているとおもしろいですよね。

それで街を歩くと「SHIBUYA BIT VALLEY」ののぼりが出てたり、みんなストラップつけて歩いていたりする、というのをつくれるとすごくいい。

CA長瀬:街コンのような感じもおもしろそうですよね。その街の中で技術領域によって特色がある催しをやっていたり、夜はいろんなお店でエンジニアが飲んでいたり。それでリアルな話が聞けたりとか……。今年の反響の大きさからすると、来年はなんかすごいことやらないといけないなと(笑)。

DeNA小林:ものづくりってエンジニアリングだけではないので、たとえば音をつくっているような人だったり、UXデザイナーの人だったり……。いろんな方を絡めて楽しめる場所にしていきたいですね。

DeNAでは一緒に働く仲間を募集しています
※本記事掲載の情報は、2018年9月28日時点のものです。

聞き手・執筆:榮田 佳織 撮影:小堀 将生

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