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PEOPLE

18.06.18

目指すのはマンガのおもしろさを損ねずに伝えること。マンガの未来のためにIT企業に何ができるのか?

「マンガのおもしろさが100あるとしたら100で伝わるように届けることが重要なんです」

 

そう話すのは『マンガボックス』でサービス開発部長を務める渡部要一郎(わたなべよういちろう)。

 

そして、『マンガボックス』編集長の安江亮太(やすえりょうた)は自らが関わるマンガアプリだけでなく日本のマンガ業界自体が消えることを危惧している、と言います。

 

マンガアプリの市場は年々拡大し、参入するプレイヤーも増加しています。競争が激化する中、『マンガボックス』はマンガのおもしろさを”少しも損ねない”サービスを追求してきました。

マンガボックスが提供していきたい価値とは何なのでしょうか。また、マンガ文化を次世代に伝えるために、IT企業に何ができるのでしょうか。

 

世はマンガアプリ戦国時代

――マンガアプリの市場が過熱しているという実感はありますか?

 

安江:競争が激化していることは間違いありませんね。この2、3年でプレイヤー数は大きく増加しました。要因の一つは、大手出版社が自分たちでアプリを提供し始めたこと。もう一つは、後発の非出版社系のアプリも続々と市場に参入してきたことです。

 

DeNA ゲームエンターテインメント事業本部 IPプラットフォーム事業部長 / マンガボックス 編集長 安江 亮太 2011年DeNAに新卒入社。入社1年目の冬に韓国でのマーケティング組織の立ち上げを手がけ、2年目に米国でのマーケティング業務、全社戦略の立案などの仕事を経て、マンガボックスにジョイン。2017年より、編集長を務める。

 

渡部:新たに参入する企業が多い理由は、マネタイズできるからというよりも、技術的な参入障壁が極めて低いからだと思います。

 

まだ市場の勝敗が決まっていないからこそ、新規参入がしやすいのもありますね。SNSアプリに見られるように、通常、人気市場は数年でトップアプリ以外はお客様に使われなくなってきます。でもマンガアプリはそうなっていませんし、ビジネスの構造上そうならないものなのかもしれません。

 

ゲームエンターテインメント事業本部 IPプラットフォーム事業部サービス開発部長 渡部要一郎
2014年入社。以後、一貫してマンガボックスの企画担当として携わる

 

――覇権を握るのはこんなアプリだろう、という見通しはありますか?

 

安江:どのようなマンガアプリが勝ち抜いていくのかは私たちにも分かりません。今はまさに戦国時代ですね。

 

目指すはマンガのおもしろさを”少しも損ねない”サービス

――そんなマンガアプリ戦国時代に『マンガボックス』はどんなサービスを目指すのですか?

 

渡部:マンガそのもののおもしろさを”少しも損ねない”サービスです。

 

――「おもしろさを”少しも損ねない”サービス」とは?

 

渡部:マンガのおもしろさが100あるとしたら100で伝わるように届けることが重要なんです。

 

――100を100で伝える……。普通なことに聞こえます。アプリならではの体験を設計しなくていいのでしょうか?

 

渡部:スマートフォンにおけるマンガ読書体験をアプリであることによって邪魔しないことがとても重要なんです。そして、それをしっかりやりきれているサービスは皆無だと思います。これは非常に難しいことなんです。

たとえばマンガ喫茶で、あるマンガをおもしろいなと思って没頭して読んでいたのに、途中でゴミが挟まっていたらテンションが下がりますよね。

 

安江:他にも、「2巻を読み終わったら3巻がない!」とか。

 

 

――現実に引き戻されちゃう感じがしますね。

 

渡部:アプリに置き換えると、次のページをめくりたいんだけどずっとロード中でイライラするなど、内容以外の理由で、マンガのおもしろさを”損ねない”ことが大事だと思っています。

 

マンガを見つける、読む、連載を追う、の各機能をいかにスムーズに読者に体験していただくかは、かなり時間をかけて議論し、日々取り組んでいますね。

 

しっかり時間をかけて、複数の仮説検証をしていく

――作品の集め方に関しては、どんな戦略を取っていますか?

 

安江:現在は、あえて“何でもあり”な多角的コンテンツ戦略をとっています。

マンガアプリをプラットフォームの特徴で大別すると、「オリジナルコンテンツを育てる場」か「電子マンガを販売する書店」に分けられるかと思います。

 

『マンガボックス』はこの両方の機能を持つ「ハイブリッド」型を取っています。

発掘の場である「マンガボックスインディーズ」を備え、マンガボックス編集部がオリジナルコンテンツを作りながら、ストアでは既刊も読める。加えて、複数の出版社との協業でも作品をつくっているので、本当に“何でもあり”ですね。

 

――なぜ“何でもあり”という方針を取っているのですか?

 

安江:どうすればヒット作を生み出せるか、いまだに誰もわからないからです。だからこそ、複数の仮説検証を同時に走らせています。複数同時に仮説を検証していても、IT業界のスピード感だと「まだ結果が出ないの」と言われたりしますね(笑)。

 

マンガは、つくり始めてから単行本が出るまでだいだい2年かかります。さらに、単行本は1巻だけでは売れなくて、数巻出してようやく売れ始める。つくり始めてから売れるまで3、4年はかかるんです。

サービスの改修はスピード感を持って行いつつ、必要な部分にはしっかりと時間をかけて作品を育てています。

 

――作品づくりの面で、マンガボックスならではの取り組みがあれば教えてください

 

安江:象徴的な取り組みは「Project ANIMA」ですね。マンガの原作をアニメ化するのではなく、オリジナルアニメの原作をプロ・アマ問わず募集しているのが特徴です。未完結のネームでも応募が可能、だけど大賞受賞作はTVアニメ化されるという、ほかに類を見ないコンテストになっています。

 

▲DeNA、文化放送、創通、MBSが共同でテレビアニメシリーズを制作する大型企画、Project ANIMA。一般からアニメの原作を広く募集する。

 

マンガアプリが廃ってもマンガカルチャーは次世代に残したい

ーーなるほど。“何でもあり”な中でしっかりと未来のタネを仕込んでいるんですね。マンガアプリ市場は今後どうなっていくと思いますか?

 

安江:マンガアプリ市場というより、僕が危惧しているのは、日本のマンガ業界自体が消えることです。

 

――えっ。マンガ業界自体が消えてしまうんですか?

 

安江:今、海外のコンテンツ産業の盛り上がりがすごいんです。いろいろなコンテンツプラットフォームがあって、立ち上がって数年で数億人のマンスリーアクティブユーザーがいるものもあります。

 

1億人が見ているプラットフォームがあれば、そこから何かが生まれる可能性は非常に高いですよね。

 

――日本のマンガやアニメが今後も発展し続けられる保証はないんですね。

 

安江:いまだに海外で日本の作品が流行っていると強く思っている人も多いですが、どの国でも自国産のマンガやアニメがどんどん伸びています。

 

ただし、まだそのクオリティが日本より高いとは言えない。なぜなら、マンガやアニメは原体験に基づくヒューマンドラマだからです。クリエイターの質は思春期までにどれだけ良質なエンターテインメントに触れたかで決まると僕は思っています。

 

しかし、もしもこんな大きなプラットフォームで国産の大ヒット作が多数生まれてきたら。そのたくさんの大ヒット作に触れながら子供時代を過ごした10代がクリエイターになったら本当に手強い。読者が1億人、2億人いるプラットフォームにまた彼らが作品を送り出すわけです。マンガ業界に黒船が来るんですよ。

 

――そうなるともう、アプリがどうこうという話ではなくなる?

 

安江:マンガアプリの未来について言えば、スマートフォンの次のデバイスが出たら廃るでしょうね。大事なのはマンガというカルチャーが残るかどうか。残していかなければならないというのが、僕の意見です。

 

子どもの頃からマンガに慣れ親しんで、楽しみを教えてもらったり、辛い時は救ってもらったり、何らかの感情を揺さぶられてきました。それを自分達の手で作り、次の世代に届けたいから、今、ここでチャレンジしているんです。

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執筆:さとうともこ 編集:坂本葉月 撮影:杉本晴

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