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PEOPLE

18/05/24

「なぜ人は移動するのか?」を哲学した! 未知の領域、自動運転に挑む『Easy Ride』のUX設計

イノベーションを起こす。

 

IT業界では、以前にも増してこの重要性が大きくなっています。各企業の技術力がコモディティ化している現代。「無難でいい子なアイデア」はなかなか価値を生みにくくなっており、「斬新なアイデア」を形にする力がより一層重要になってきているのです。

 

自動運転という未知の領域で今まさにイノベーションを起こそうとしているのが、日産×DeNAの『Easy Ride』。

 

3月5日〜3月18日の期間、みなとみらい地区周辺にて実証実験を実施。現在も、より良いサービスにしようと開発メンバーたちが“フルスイング”し続けています。



プロダクトの開発において、「UX設計が本当に難しく、かつ重要だった」と話すのは、オートモーティブ事業本部の角田良太(つのだ りょうた)と桑原国仁(くわばら くにひと)。進化の過程にあるこの領域で、彼らはどのように新しいUXを生み出していったのでしょうか?

 

「既存のアプリ以下の体験」からのスタート

ーー『Easy Ride』の開発は、何からスタートしたのでしょうか?

 

桑原:まずはサービスのコンセプトを考えることからでした。実はこの工程、本当に難航したんですよ(笑)。

 

ーー難航したのは、どうしてですか?

 

角田:実は、DeNAが最初に考えていた2017年度の自動運転車のコンセプトはかなりシンプルなものだったんです。Uberのように「現在地から目的地まで運んでくれるもの」を作れればいいと考えていました。

 

なぜなら、2017年度は実証実験の段階だから。DeNA社内では「実験をやること自体に意味がある。ベーシックな機能があればいい」という雰囲気になっていたんです。

 

オートモーティブ事業本部基幹システム開発部 角田良太
SIerでキャリアをスタートし、スマートハウス向けのアプリケーション開発、技術コンサルティング等を経験。2015年にDeNAに入社後、リードエンジニアとしてmobageの各種SDKおよびAndAppの開発に従事。2017年度より『Easy Ride』に参画し、現在プロダクトオーナーを担当。

 

桑原:けれど、日産さんの視点は大きく異なるものでした。「それだと、お客様にとって新しい体験が生まれていないから、自動運転車を新たに開発する意味がなくなってしまう。人が運転する場合よりも自由度が低くなる分、既存のアプリ以下の体験になってしまうのではないだろうか」というご意見に、大きく頷いたのを覚えています。

 

角田:それで、どんな機能を実装すべきか、どういったUXを提供すべきかをもう一回ゼロから検討し直すことにしたんです。

 

しかし、「新しい体験を作る」ことは生易しいものではなく、DeNA側からはなかなか良いアイデアを出すことができませんでした。

 

ーーそれって、どうしてなんでしょうか?

 

角田:DeNAの社員ってどうしても理屈で考えてしまう人が多いというか、良くも悪くも真面目なアイデアばかりが出てくるんですよ。

 

桑原:現実的に考えてしまうんです。保護者が安心できる機能とか、お年寄りが安全に移動できる機能とか。

 

でも、それでは車のスペシャリストである日産さんの予想できる範囲内に収まってしまい、IT企業としてのバリューを出せない。

 

そこで、アイデアの出し方を抜本的に変えていったんです。

 

「2020年、2030年の自動運転ってどうなっているんだろう?」一度、大きなスパンで考えてみる

ーー抜本的に変えた……というと、どんな感じに?

 

角田:まずは一度、日産さんと一緒に、短期的なスパンだけではなく長期的なスパンで将来の自動運転についてブレストをしました。具体的には、2020年とか2030年の段階で「どんな自動運転があったら楽しいだろうか?」と、ざっくばらんに話し合ったんです。

 

さらに、ブレストにはデザインやUXなどを得意とする外部企業の方にも参加してもらい、アイデア出しの方法についてレクチャーしてもらったんです。

 

桑原:それは結構うまくいって、突拍子もないアイデアもたくさん出てきました。

 

角田:「走りながら車が変形するんじゃないか?」みたいな話もしましたね(笑)。

 

「自分たちは何があったら楽しいか」をベースに、アイデアを生み出す

ーーなんだかワクワクしてきますね(笑)。他には、どんな方法でアイデア出しをしましたか?

 

桑原:「どうせやるなら、自分たちが楽しいと思えるものをやろう」という話をしました。

 

スタートアップ企業などではそうだと思うんですけど、斬新なサービスって、最初に携わる人たちが「自分の欲しいもの」を作っているからこそ、熱量があってヒットするわけじゃないですか。だから、「そういう考え方をした方が良いアイデアが生まれるんじゃないか」という話になって。

 

オートモーティブ事業本部基幹システム開発部 桑原国仁
大学院時代にWeb会社にてモバイルECアプリ事業を0から立ち上げ、営業、企画、開発、運用の全行程を経験。2016年DeNAに新卒入社後、ロボットタクシー株式会社に出向し、次世代モビリティの新規事業開発をリードエンジニアとして、クライアントからサーバーまで幅広く携わる。2017年度から『Easy Ride』の開発リードを担当。

 

ーーなるほど! ヒットしているサービスの多くって、創業者たちがとにかく熱い想いを持って開発を続けていますもんね。

 

角田:だから、自分の欲しいもの、使いたいものは何なのかをちゃんと考え直そうと。原点に立ち返りました。

 

桑原:そう決まった後、メンバー3人くらいで集まって、ホワイトボードにどんな自動運転車だったら乗ってみたいかをバーっと箇条書きにしてアイデアを出し合いました。

 

角田:「ミステリーツアーのように、毎回知らない場所に連れて行ってくれる」といったようなすごいアイデアも出たんですけれど、「それはやめよう(笑)」と。毎回それだと使いづらいので、一発屋的になってしまうと思って。

 

ーー話し合いを続けた結果、どんな仕様になっていったんですか?

 

角田:徐々に「日常的に使いたいと思えるような自動運転車にする」という方向に集約していきました。

 

桑原:「乗車への心理的なハードルを下げたい」と思っていましたね。『Easy Ride』のコンセプトは「もっと自由な移動を」なんですけど、その通りに、本当に自由に、気軽に乗れるようなものにしたかったんです。

 

▲『Easy Ride』では、お客様が「やりたいこと」をテキストや音声で入力すると、おすすめの候補地が表示される。

 

自由って何? 楽しいって何? 移動って何? 脱「無難でいい子」のために哲学する

ーー「心理的なハードルを下げたい」という考えを、さらにどうブレイクダウンしていきましたか?

 

桑原:ハードルを下げるには、お客様に「楽しい経験」とか「新しい発見」をしてもらうことが大事です。「じゃあ、そもそも『楽しい』って何だろう?」という議論がメンバー内で巻き起こりました。

 

そこで一度、思考の整理をしました。「楽しいとは何だろう?」とか「人はなんで移動をするんだろう?」とか。

 

ーーおおお……。なんだか哲学的な議論になってきましたね(笑)。

 

角田:懐かしい。桑原さんが、すごく哲学的なメッセージをチャットツールの『Slack』上に投稿していたのを覚えています。

 

アイデアを最適なUXに落とし込む

ーー最終的に、人が移動するのは“なぜ”だという結論が出ましたか?

 

桑原:僕らは「人は目的があるから移動する」という結論を出しました。目的とは例えば、「買い物に行きたい」「人に会いたい」「遊びたい」とか。そもそも目的がなければ、車に乗らず家でゴロゴロしていたい人の方が多いんじゃないかなって(笑)。

 

だから、2017年度版の『Easy Ride』では「お客様の『○○したい』という願望を叶えるために移動してもらう」という体験(UX)を一連のサービスとして提供しようという方向性で、機能が決まっていきました。

 

ーーなるほど! それが「やりたいことを入力して、そこまで移動する」という機能に結びついていくわけですね。

 

ペルソナに合わせて、ベストなUIにチューニングする

ーーターゲットとなるペルソナの設定はしましたか?

 

角田:明確なペルソナが出てきたのは、開発フェーズのわりと後半の方でしたね。正確に言うと、初期フェーズから「親子連れ」「お年寄り」「サラリーマン」など色々なペルソナが乱立していました。「2017年度はこのペルソナで行こう!」と確定したのが後半だったんです。

 

ーーいったい、どんなペルソナに決まったんですか?

 

桑原:「24歳か25歳くらいの女性。友だちとよくカフェに行く。アプリやITにそこまで詳しいわけではない。Instagramなどのオシャレなアプリはよく使う」という人を設定しました。

 

ーーすごくイメージしやすいです! どうして、その人に決まったんですか?

 

桑原:僕たちが目指していたのは、誰でも気軽に使えるような自動運転サービスです。だからこそ、「自動運転車には興味を持たなそうな方々」が使ってくれなかったら、きっと誰も使わないだろうと思ったからです。逆に言えば、その層に使ってもらえたならば、きっと普及するだろうと思いました。

 

ーーペルソナ設定は、サービスの仕様にどう影響しましたか?

 

角田:UIに大きな影響を与えました。女性にとっても使いやすい見た目にしたいと思って、操作画面はごちゃごちゃせずスッキリしたものにしましたし、キーカーラーも黄色をベースに可愛い感じにしました。黒ベースの案もあったんですけど、「黒い色のサービスは使ってくれないでしょう」という話になって。

 

ーー現在の『Easy Ride』のどこかポップなUIを見ると、そのエピソードも納得ですね。

 

「今、世の中にあるシステム」に、未知のUXのヒントはある

ーー実証実験をやり始めてからわかってきたことはありますか?

 

角田:自動運転車を「管理する」ための裏のオペレーションが相当に大変だということですね。例えば、「お客様が乗車位置まで来た」「車が所定の位置に到着した」「お客様が乗車した」といったイベントを、全て何かの方法で検知しなければいけません。

 

2017年度の実証実験では乗車位置に案内係がいたので、お客様は案内係に会えばそれで済みました。でも、本運用が始まったら案内係はいません。看板もなく目印もない場所に、どうやってお客様を誘導して乗せるかなどを1つひとつ考えていかなければならないんです。

 

桑原:それ以外にも、管理しなければいけない情報は山ほどありますね。自動運転車は指定した通りにしか走れないので、停まるべき場所に路上駐車されていたらどうするべきなのか。Jアラートが鳴るなど、予期せぬ事態が起きたらどうするのか。

 

角田:今後はそのようなすべてのケースを検討して、解決していかなくてはいけません。

 

出典:日産自動車とDeNA 無人運転車両による交通サービス「Easy Ride」の実証実験を実施

 

ーー前例のない自動運転という領域で、未知のUXを考えるのは大変な作業だと思います。どうやって、その方法を考えていくのですか?

 

桑原:「今すでにある管理システム」を参考にして、どのような設計にするかを検討し続けています。

 

具体的には、電車や高速道路、都内の道路などさまざまな管制室を見学しに行って、「画面に何を表示しているのか」「手元でどんなオペレーションをしているのか」「どんな通知が来ているのか」などを参考にさせていただいているんです。

 

それらで得た知見は、今後の『Easy Ride』に組み込まれていく予定です。

 

理想の未来に向かって、ドライブし続ける

ーー『Easy Ride』のプロジェクトに携わっていて、お2人が楽しいと思うのはどんな瞬間ですか?

 

桑原:自分たちが努力した結果、想像もしていなかったような体験が生まれるとき。その体験からまた気づきを得て、試行錯誤できるのは本当に面白いですね。『Easy Ride』はまだ実証実験段階なので、文字通り毎日が“実験”なんですよ。もちろんスムーズに進むことばかりではないですけど、それも含めて楽しいです。

 

角田:“実験”というのは本当にそうで、僕たちの頭の中で描いている未来の姿、理想の姿に現実はまだまだ追いついていません。その距離を今後はどんどん埋めていきたいです。

 

ーー理想の自動運転が実現したら、ワクワクするような未来が待っていそうですね! 最後に聞きたいのですが、それを実現するうえで大切な“考え方”ってどういったものなのでしょうか?

 

桑原:未来志向、サービス志向が強いことが大切なのかな、と思いますね。

 

世の中にあったら便利な全く新しいサービスを自分たちの力で考えて、それが実現するまでひたむきに努力できること。「夢を叶えるために、ありとあらゆる課題に挑戦していく」というマインドが、すごく必要なんだと考えています。

 

 

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執筆:中薗昴 編集:坂本葉月 撮影:小堀将生

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