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18.05.16

お客さまの本音を引き出す設問設計13の鉄則。リサーチとは全て意思決定のためにある

サービスを運営するなかで、改善点を探したり効果測定をするためお客さまへのアンケートを行うことがあります。ほとんどの方はそのノウハウを持たず、手探りで実施しているケースが多いです。しかし、それでは上手くいきません。アンケートの設問設計では、質問の仕方や言葉の選び方が少し不適切なだけでも、結果が大きく変わってしまうからです。

 

では、どんな方法を用いれば、調査を成功させられるのでしょうか? 前編「【テンプレ公開】リサーチの成否は“企画設計“で決まる。7つのステップで学ぶ調査企画書の作り方」では、調査前に作成すべき調査企画書の書き方を解説しました。後編はアンケートにおける設問設計の方法について扱います。

 

マーケティングリサーチャーの仕事に“フルスイング”する片瀬大(かたせ おおき)が、設問設計において「これだけは守ってほしい!」という13の鉄則を紹介します。

 

アンケートが失敗する原因は、“設問設計”にある!?

アンケート実施の際に、多くの方がやってしまいがちな失敗例として「やみくもに設問を設計する」というものがあります。しかし、これでは適切な回答を得ることは難しいです。

 

なぜなら、質問文の文面や順序が少し変わるだけでも、回答の傾向は変わってしまうから。設問設計は調査の結果を左右する重要な要素なんです。アンケートの成功は、設計段階にあると言っても過言ではありません。

 

デライトドライブ本部アナリティクス・リサーチ部 片瀬大
マーケティングリサーチの企画・分析およびマーケティング戦略のコンサルティング業務に6年従事後、渡英し修士号(MBA)を取得。帰国後、スマホゲームの開発・運営会社でデータアナリストとしてスマホゲームの分析を担当。2015年DeNAに入社。スマホゲームのマーケティングリサーチ、EC事業のデータ分析を経て現職。

 

もしかしたら、読者の中には「アンケートを実施したけれど、サービス改善に役立ちそうな回答があまり得られなかった」という方がいらっしゃるかもしれません。それは、設問設計が適切にできていなかった可能性があります。

 

そんな失敗を防ぐには、正しい設問設計の方法を学ぶことが必要不可欠です。ここからは、アンケートを成功させるために気をつけるべき13のコツを解説していきます。

 

1)専門用語や業界用語を避ける

回答者が必ずしもその用語を知っているとは限りません。意味を理解できない場合、回答が適当になったり、意味を取り違えて想像で答えたりするため、不正確になります。

 

PvPやF2P、リセマラなどは使うべきではない用語の代表例。回答者が設問の意味を考え込んでしまわないよう、誰でもわかる平易な表現を使いましょう。

 

2)質問文は簡潔に分かりやすく。長文にしない

長文になればなるほど、最後まで読まない回答者の割合が高くなります。質問文はできる限り簡潔にしましょう。

 

×

「あなたは昨日、ご自宅で視聴するためのテレビを家電量販店やメーカーの公式ショップなどの小売店やオンライン販売しているメーカーの公式サイトやオンラインショップなどで購入しましたか?」

「あなたは昨日、ご自宅用のテレビを購入しましたか?」

 

3)「〜ない〜ない」はNG! 二重否定を避ける

文章のなかに否定文が複数出てくると、回答者が迷ったり勘違いしたりするケースが増えるため、使ってはいけません。

 

「キャラクターのデザインが良くないとは思わない」「夜更かしが健康に良くないとは思わない」などは典型的な二重否定の例です。

4) 意味・解釈が複数ある言葉を使わない。「回答者を迷わせない」が大原則

例えば、「お宅で遊んでいるゲームを全てご記入ください」という設問を読んだとき、あなたは何をイメージしますか?

 

回答者自身が遊んでいるものだけを記入すべきなのでしょうか。また、子供は遊んでいるが自分は遊んでいない場合にはどうすべきでしょうか。回答に困ってしまいます。

 

また、「ゲーム」についても、ボードゲームやテレビゲーム、スマホアプリなど、複数の解釈が可能です。「遊ぶ」とは1回でも遊んでいれば該当するのか、毎日遊んでいるのかもよく分かりません。

 

このように、意味・解釈が複数ある言葉を使ってしまうと、回答を集計する際に大事な情報が抜け落ちてしまう可能性があります。先ほどのフレーズでは「あなたが、ご自身のスマホで週に1回以上遊んでいるアプリゲームを全てご記入ください」などに修正するといいでしょう。

 

5)質問文に2つ以上の要素を入れない(ダブルバーレル)

「このゲームのキャラクターの可愛さとボスの格好良さについて、どのように思いますか?」という質問文に対し、回答者が5段階評価で答える設問があるとします。

 

この場合、キャラクターは可愛いと思っているけれど、ボスの格好良さはイマイチと思っている人は回答しづらくなります。文章に2つ以上の要素が入っているためです。これはダブルバーレルと呼ばれるもので、避ける必要があります。

 

先ほどの質問文では「キャラクターデザインについて、どのように思われますか?」などに直すといいでしょう。

   

6) 同じ内容の質問をしない。設問の無駄をなくそう

「良いと思う点」と「満足した点」のように微細な違いの場合、結果に違いが出にくく無駄になりやすいです。場合によっては、設問の違いを回答者自身に考えさせてしまうことになりかねません。どちらか一方をカットしましょう。

 

7)モレなし、ダブリなし! 選択肢はMECEにする

MECE(ミーシーもしくはミッシー:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは「漏れなく・重複なく」を表す用語です。

 

「〇〇についてどのように思われますか? すべてお選びください」という質問に対し、「品質が高い」「クオリティが良い」「価格が安い」という回答の選択肢を用意するケースがあります。しかし、調査を正確に行いたいのならば、こうした設問設計はあまり良くありません。

 

なぜなら、「品質が高い」「クオリティが良い」のどちらか一方だけ選ぶ人と、両方選ぶ人とが出てきてしまい、結果を分析しづらくなるから。つまり、両方の要素が重複しているのです。

 

選択肢で提示する設問の場合、各要素は重なりがない状態にしましょう。

 

8)回答を誘導しない。フラットな印象の質問文にする

「あなたは、このゲームに満足していますか? なお、このゲームは100万人ダウンロードを達成し、多くのお客さまが遊んでいます」という質問文があるとします。この設問は「100万ダウンロードもされているゲームなんだから、面白いはずですよね」という誘導的な文章になっているため、正しい結果が得られないことは明らかです。

 

この場合、「満足していますか?」ではなく「満足していますか? それとも不満ですか?」と偏りのない聴き方にするか「どのように思いますか?」とフラットに聴きましょう。

9)アンケートの流れを意識して、質問の順番を整える

アンケートは「ただ並べればいい」というものではありません。流れを意識しなければ、回答者が混乱してしまい、回答もあやふやになりがちです。回答者にとって理解しやすく、自然な流れになるように順序を調整しましょう。

 

例えば、「同じテーマのものはまとめる」「対象者の記憶の流れに注意する(少なくとも過去と現在を混ぜないようにする)」などは基本になってきます。

 

認知媒体(xxxを知ったきっかけを教えてください)

認知時期(xxxを知った時期をお知らせください)

評価(xxxに満足していますか?不満ですか?)

 

10)意図を持って「直近」「普段」を使い分ける

「直近」や「普段」というフレーズを、何気なく使ってしまうことも多いかもしれません。しかし、これらの言葉はあいまいさを持っているため、人によって受け取り方が異なることを理解しておく必要があります。

 

例えば、「直近利用した」という言葉には「たまたま利用した」と「いつも利用している」という意味が混在しています。直近の定義も「1週間以内」や「1か月以内」など、回答者によって異なるでしょう。

 

「普段利用している」は「たまたま」という意味を持ちません。ですが、人によっては「1か月に1回くらい」の場合もあれば「毎日」の場合もあります。普段利用しているものが1種類とは限りません。

 

こうした前提を念頭に置き、「直近」や「普段」を使い分けましょう。

 

×

「あなたが普段使っているスーパーマーケットをお選びください」「あなたが直近利用したスーパーマーケットをお選びください」

「あなたが普段、最も利用しているスーパーマーケットをお選びください」「最近1か月の間に○○を利用しましたか?」

※時期の重要性が大きい場合、具体的な時間軸を入れるなどする。

 

11)回答者の記憶に頼りすぎない

人間の記憶は時間が経てば経つほど曖昧になっていくため、回答が集まったとしても正確性に欠けてしまいます。例えば、あるゲームを1年前に離脱した人に「○○○をプレイしなくなった理由をすべてお選びください」と質問しても、正確な回答は返ってこないでしょう。

 

この場合、1年前のことを今さら聞こうとしないことが一番です。「マーケティングリサーチを思いついたらやる」ではなく「戦略的にいつアンケートを○○の目的でやる」「Aの場合はいつやる」など、リサーチを"線"で実施することが大切になります。

 

12)質問数を少なくする

アンケートを設計する立場からすると、あれもこれもと多くのことを聞きたくなってしまうものです。しかし、質問数が50問や100問もあると、回答終了前に離脱する人が多くなります。

 

そのため、回答結果が「最後まで回答してくれる人」のものだけに偏ってしまう。つまり、「アンケートを離脱した人」の意見が反映されない状態になってしまうのです。質問数はなるべく少なくしましょう。

 

13)アンケートにもターゲット設定を!

Aというブランドを知らない人に「ブランドAのイメージをすべてお選びください」と質問しても、効果がほとんどありません。このようなケースでは「当てはまるものがない」という回答や、当てずっぽうな回答が増えてしまいます。

 

「そもそも回答する人が適切に抽出されているか?」をアンケート実施前に確認しましょう。 

 

リサーチは事業とお客さまとの架け橋

改めて思うのは、アンケートは言葉1つを変えただけでも結果に影響があり、難しい面もあるけれど、本当に面白い領域だということです。

 

リサーチが難しいのは、「事業を理解すること」「お客さまを理解すること」「適切なリサーチ設計と結果の分析でネクストアクションを事業に促すこと」をすべて満たす必要があるからです。でも、うまくリサーチができると、事業とお客さまの架け橋になれた達成感があったり、人について理解が深まったり。楽しいことが多いです。

 

今回解説したような考え方ができるようになったのは、DeNAに入る前に出会った御年73歳になる師匠のおかげです。彼からマーケティングリサーチの基本を教わりました。

 

それに、父も同じようなマーケティングリサーチに携わっていたので、知らず知らずに強く影響を受けています。2人から、リサーチのゴールは「単にお客さまを理解すること・知ること」ではなく「その後の意志決定・アクションに役立て、事業をより良くしてお客さまにより喜んでもらえること」にある、と叩き込まれました。

 

そのゴールを達成するためには、調査目的や事業のネクストアクションを絶対に見失わないこと。そして、人間理解という壮大なテーマに挑むプロとして勉強を怠らないこと。その大切さを教えてもらったんです。2人ともプロ意識がとても高く、高齢になってからもずっと研鑽を怠ることはありませんでした。

 

また、「意志決定・アクションに役立たない、知ることだけが目的の調査」はできる限りしないようにとも教わりました。今でも、事業との打ち合わせで「リサーチの目的がネクストアクションに結びついていない」と感じたときは、実施前にMTGを重ね、目的とネクストアクションと紐づけてからリサーチを実施するようにしています。

 

アンケートって作るだけなら簡単で、小さなお子さまでも作ることができます。でも本当に事業に役立つアンケートは、事業理解・人間理解の両方が必要です。そして人間理解というテーマに終わりはなく、認知心理学や社会学、統計学など幅広い分野の勉強が必要です。終わりがないからこそ、この仕事の醍醐味があるのかもしれません。

 

私のレベルはまだまだですが、これからも努力を怠らず、DeNAのサービスとお客さまのより良い架け橋となれるような、事業にもお客さまにもデライトできるようなリサーチャーとなりたいと思っています。

 

今回、お話しさせていただいたのは、リサーチやアンケートの本当に基礎の基礎ですが、これからアンケートにトライしてみようという方の参考になれば幸いです。

   

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執筆:中薗昴 編集:下島夏蓮 撮影:鈴木智哉

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