「スポーツ×まちづくり」の最前線。なぜデベロッパーからDeNAへ?その理由を聞いた
2024.10.07


2026年3月19日、横浜・関内駅前に完成した新たなランドマーク「BASEGATE横浜関内」が開業を迎えました。
DeNAグループが進める「DeNAらしいまちづくり“Delightful City”」が、スタジアムという「点」から、街という「面」へ。そのフィールドの広がりと共に、パートナー企業と新たな価値創出に挑んでいるのが、スポーツ・スマートシティ事業本部の営業チームです。
彼らのミッションは、単なるスポンサーシップの枠を超え、企業の経営課題に寄り添う「プロの課題解決パートナー」となること。今回はその最前線を走るメンバーの中から、バックグラウンドの異なる3人に集まってもらいました。
元横浜DeNAベイスターズの営業として現場の熱狂を知り尽くす小嶋 直人。ゲーム業界での渉外経験をスポーツの事業共創へと転用する森田 貴史。そして、戦略コンサルで培った視座を土台に、クライアントと向き合いながら営業の可能性を広げる吉橋 翔太郎。
異なる強みを持つ彼らは、「スポーツ」や「まちづくり」を通して、いかにしてパートナーと共に経営課題の「解」を導き出しているのか。その取り組みの裏側に迫りました。
目次
──まず、皆さんが取り組んでいる「営業」とは、従来とは何が違うのでしょうか。
森田 貴史(以下、森田):私たちが向き合っているのは、ナショナルクライアントを中心とした「経営課題」をお持ちのさまざまな企業様です。
これまでの営業は、球場の看板やユニフォームなどへのロゴ掲示といった「広告枠の販売」が主流でした。しかし、我々のミッションは、スポーツおよびスポーツを起点として始まったまちづくりとそれに伴って開発された施設という多角的なアセットを使い、パートナー企業様の「経営課題」そのものを解決することにあります。
実際、企業の担当者様も、自社のリソースをどう活かすべきか、最初から明確な答えを持っているわけではありません。何が正解か分からない状態から共に悩み、クライアント自身もまだ言語化できていない潜在的な課題を構造化していく。私たちが持つアセットを活用して解を導き出すことが、私たちの介在価値だと考えています。
吉橋 翔太郎(以下、吉橋):最初から「深い課題」を持って来られる方は稀です。多くの場合、「看板に空きはありますか」といった企業やサービス名の露出機会を求めるディスカッションから始まります。そこからが私たちの本番です。
採用課題、ブランド刷新、あるいは新規事業の創出。浮かび上がった課題に対して、野球・バスケ・サッカーという3つのプロチームと、DeNAが手がける施設というアセットをどう「調理」して一皿の解決策に仕上げるか。その設計図を描くことが私の役割です。
小嶋 直人(以下、小嶋):そして、その設計図に「血」を通わせるのが私の役割です。
横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)、川崎ブレイブサンダース、SC相模原。DeNA SPORTS GROUPの3チームは、それぞれ異なる歴史と熱い想いを背負っています。私は現場で、パートナーシップを起点とした事業拡大がチーム強化を支え、その熱狂が企業のブランド価値向上へと還元される好循環を見てきました。
スポーツ・スマートシティ事業の営業においても、その「現場の熱」は欠かせません。ロジックだけでは動かないスポーツ特有の熱狂や地域とのつながりを、いかにして企業のソリューションとして泥臭くカスタマイズしていくか。そこが私たちのスタートラインです。
──企業の経営課題は多岐に渡ると思いますが、それらをどのように「スポーツ」や「まちづくり」の文脈へと落とし込み、プロジェクトにつなげているのでしょうか。
森田:私たちがまず行うのは、「なぜ今、スポーツ・まちづくりなのか?」を徹底的に問い直すことです。「今日お見せできるメニュー」を売るのではなく、何度も打ち合わせを重ねて答えを一緒に探すプロセスを大切にしています。
たとえば、最初は「認知を上げたい」というご要望であっても、対話を繰り返して「採用」や「ブランド刷新」といった本質的な課題まで因数分解していく。そうすることで、スポーツ、まちづくり、ITといったDeNAの多角的なアセットを、課題解決にフル活用する道筋が見えてきます。
その共創を具現化する舞台の一つとして、たとえば没入型体験施設「ワンダリア横浜 Supported by Umios」(※)をご活用いただくことも考えられます。先端技術を持つ企業様であれば「実証実験の場」として、あるいは自社の世界観を届ける「ブランド体験の場」として。そこで得られた実績やフィードバックを、次のビジネスにつなげていただくことも可能です。施設を起点に、課題解決と街の賑わいを同時に生む独自のストーリーを共に描いていく。こうした「答えのない課題」に伴走し、形にしていくのが私たちの営業スタイルです。
※……驚きや不思議との出会いを臨場感のある映像とともにお届けする没入型体験施設。「高原」「深海」「原生林」などそれぞれ異なる全6つのゾーンを巡り、デジタルだからこそできる映像演出で来館者を没入体験に誘います。
小嶋:現場レベルの「三方良し」の視点も大切です。企業様、私たち、そしてファンや地域の方々への価値提供。どれか一つが欠けてもプロジェクトは持続しません。特に、チームやベニューを支えてくださるファンや地域の方々に、どのような体験を提供できているか。エンドユーザーの喜びが最上位である視点を持つことこそが、DeNAのスポーツ・スマートシティ事業の真髄であり、決して欠かすことのできない視点です。
この3つの円が重なる部分を見極め、ステークホルダーにとっての「経済的なインセンティブ」という火を灯し、プロジェクトを動かしていくことが合意形成の鍵になります。
──「三方良し」の実現に対し、具体的にはどのように「共通の意思」を見出し、プロジェクトを動かしているのでしょうか。
小嶋:一例ですが、かつて花王様からの「横浜スタジアムで『ビオレ冷タオル』を販売できないか?」というアイデアを起点に取り組んだ「夏場の観戦環境を快適にする施策」です。
球団側にとって、この取り組み自体が直接大きな売上につながるわけではありません。しかし、花王様と共に「酷暑の中で来場してくれるファンにとって、少しでも快適な観戦体験のサポートになれば」との思いを共有し、真摯に社内を説得。既存販売員のルートやオペレーションと競合しないよう、交渉と調整を重ねました。
私自身も現場に入り、販売員の方々と一緒に最適な導線を考えるなど、「ラストワンマイル」まで泥臭くこだわり抜く。前例のない取り組みも乗り越えていく姿勢こそが、DeNAらしい突破力だと思っています。結果的には、スタジアムやファンの課題解決を通じ、花王様のニーズである球団ファンを起点としたブランド、商品へのロイヤリティを高めることに微力ながら貢献できたと考えています。
──企業の課題に深く寄り添うほど、提案はオーダーメイドになり、具体化のプロセスや挑戦にはパワーが必要になるかと思います。質の高い提案を継続的に生み出し実行していくために、チームとしてどのような工夫をされているのでしょうか。
森田:こうした「ラストワンマイル」の調整は極めて大事な一方で、大きなコストもかかります。だからこそ、そのコストを下げ、かつ提案の質を上げて、よりパートナー様に向き合う時間を生み出していきたい。IT企業である私たちの強みを活かし、最新技術も積極的に取り入れながら営業活動そのものを進化させていくために、今まさに「専用のAIツール」の自社開発も進めています。
お客様の経営課題を入力すると、膨大なアセットの中から最適な組み合わせの仮説を生成する。言わば、「AIとプロの営業が本気でディスカッションできる」ツールです。これにより、これまでは熟練の営業が時間をかけて発想していた仮説の質が格段に高まり、人はクライアントへの深い理解や企画の磨き込みといった「より本質的な創造」に時間を割けるようになりました。
吉橋:「スポーツチーム運営」「ベニュー開発」「周辺街区開発」「デジタルソリューション」といった豊富な素材を、どう組み合わせてパートナー様の事業課題解決に直結する「商品」にするか。そのアイディエーションの過程では、多角的な分析と打ち手の構造化を緻密に行っています。
森田:たとえば、ライブビューイングアリーナ「THE LIVE Supported by 大和地所」を活用したプロモーションについてAIと壁打ちを行い、「この文脈ならこちらの見せ方の方が響くはずだ」などアイデアを研ぎ澄ませていく。このAIと人間が高速で打ち返し(ディスカッション)することで、人間だけでは辿り着けなかった驚きのある提案を、より確度の高い、洗練された解として形にできるのです。
吉橋:このツールを使えば、個人の経験則に頼らず、組織としてベストな提案を出せるようになります。そして私たちは、この仕組みをDeNAだけで独占するつもりはありません。
この仕組みを、将来的には日本のスポーツ界全体が使えるものへと広げていきたいと考えています。一社の利益を追うのではなく、この共創のノウハウを業界全体の「基盤」へと昇華させること。それが、結果としてパートナー企業の皆様に提供できる価値の最大化につながると信じています。
──行政や地域住民、他競技の団体など、ステークホルダーが多岐に渡る中で、プロジェクトを進める「推進力」はどこから来るのでしょうか。
小嶋:まずはスタジアムという現場に足を運んでいただき、その熱量を肌で感じてもらうこと。ステークホルダーが多岐に渡るプロジェクトほど、「この熱狂を自分たちの事業でも形にしたい」という純粋な情熱こそが、人を動かす大きな原動力になると思うからです。
営業の世界ではよく「頭と心に響くアプローチ」が重要だと言われます。決裁を通すには緻密なロジックが必要ですが、その手前で「心」が動いていなければ、どんなに優れた理屈も熱を持ちません。だからこそ、まずは実体験を通して「心」を動かす。その実感を土台に、各チームやベニューの魅力を丁寧にお伝えし、ロジックを構築していく。このステップを愚直に踏むことが、結果として強力な推進力を生んでいるのではないでしょうか。
吉橋:組織的な強みで言えば、異なるバックグラウンドを持つ人間が、「プロジェクトにとって何が最善か」をフラットに議論できる点です。全体像を整理するのが得意な人、現場に寄り添い力強く推進する人、再現性のある形に落とし込むのが得意な人。こうした多様な強みが噛み合うことで、複雑なプロジェクトを着実に前へと進めることができます。
森田:DeNAには「どうすれば実現できるか」を粘り強く考え抜く土壌があります。一社毎に異なる最適解を求めるこの領域では、既存の慣習が通用しないことも多い。しかし、そこで立ち止まらずに試行錯誤を繰り返す姿勢に共感していただくことが、パートナーの方々と歩調を合わせ、共にプロジェクトを動かしていく力になっていると感じます。
──最後に、この挑戦(スポーツ・スマートシティ事業)に皆さんが感じている価値と、今後の展望を教えてください。
吉橋:私は、スポーツ産業に「新しいスタンダード」をつくっていきたい。既存の枠組みを超えた先にこそ、スポーツが持つ新たな可能性があると信じています。
現在、DeNA SPORTS GROUPというフィールドで、その可能性を広げるための挑戦を続けています。この産業の発展は、ビジネスとしての成功だけでなく、社会にとっても大切な価値になると考えています。この挑戦を通じて、同じビジョンを共有するパートナー企業の皆様と、さらに大きな一歩を踏み出したいです。
小嶋:球団営業をしていた頃は、自分の仕事がチームの強化や観戦体験の向上に直結し、その手応えに大きなやりがいを感じていました。今は、スポーツが街のインフラとなり、365日人々に「Delight(喜び)」を届ける未来をつくっている実感が強いです。
2030年には京急川崎駅隣接地に10,000人規模が収容できるアリーナを含めた複合商業施設を開業するプロジェクトも進めています。短期的な成果に留まらず、10年後のスタンダードをパートナー様と共に今、ここでつくり出そうとしていることに大きな意義を感じています。
森田:私は20年以上ゲーム業界に携わってきましたが、培ってきた知見はスポーツ業界でも幅広く活かせると実感しています。「BASEGATE横浜関内」がオープンし、ようやくDeNAの手がけるDelightful Cityの輪郭が見えてきました。
異なる業界の知見を融合させ、最新技術も積極的に活用し、スポーツの新しい価値を具現化していく。この変化に富んだ環境で、パートナー企業の皆様と試行錯誤することに大きなやりがいを感じています。この構想が形になったとき、日本の街の風景はもっと魅力的なものになっているはずです。
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執筆・編集:川越 ゆき 撮影:内田 麻美
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