組織・働き方

英語もプログラミングもできない新卒がサンフランシスコに行って痛感した“ここで戦うな”と“わかりにくさ”の価値 【DeNAの根っこ掘り】

2026.03.26

英語は大学受験レベル。プログラミングの経験はゼロ。「GitHubって何ですか?」から始まった新卒1年目の社員を、DeNAはAIビジネスの中心地サンフランシスコに送り出した。

彼が目にしたのは、夜中の0時から翌0時まで週7日コードを書き続ける人たちだった。しかしその光景は彼に「何をどう作るか」だけでなく、「なぜ作るのか」という問いを突きつけてきた。

様々な社員の取り組みから、DeNAという会社のベースとなっている考え方や行動スタイルを探るシリーズ「DeNAの根っこ掘り」。

第1回は、AIイノベーション事業本部で新規プロダクトを立ち上げ中の森中さんに話を聞いた。

「AIで開発が速くなると、均質化する」──わかりにくさの中に価値を見つけろ

──森中さん、サンフランシスコからお帰りなさい。向こうで一番衝撃を受けた経験って、何でした?

競争の熾烈さですね。会う人会う人が、自分の作ってるプロダクトにしか時間を使ってないんですよ。

写真右:AIイノベーション事業本部 プロダクト開発統括部 森中 柊(もりなか しゅう)
大学生のときにインターンとしてVライブコミュニケーションアプリ「IRIAM」に携わり、2025年に入社。

──向こうではどんな生活を?

サンフランシスコって、娯楽がほとんどないんです。いや、あることにはありますけど、エンジニアやファウンダーはやらない。やることといえば開発をするか、どういう開発をしているかについて話しながらご飯を食べるか。基本的にはその2つしかない(笑)

話す人話す人、楽しそうにやってはいるんですけど、目の奥が寝てない。
寝てないと特有の目の感じがあるじゃないですか。

──まさにAI競争最前線の街って感じですね。

Spellbrushっていう会社のオフィスに行った時に「“996”って、実際どう思う?」って聞いてみたんです。“996”って、朝9時から夜9時まで週6日働くっていう働き方のことです。みんなオフィスに寝泊まりしてたんで、“996”じゃ足りてないのは明らかだったんですよね。
で、聞いたら「いやいや、“007”でしょ」って。夜中の0時から翌0時までを週7日。

──ね、寝てないってことですか?

アパートを丸ごとオフィスにしてる別の会社に行った時は、一応ベッドはあったんですよ。「あ、ベッドあるんですね、やっぱオフィスで寝てるんですか」って聞いたら、「いやいや、みんなベッドでは寝なくて、ナップボックスの中で2時間ぐらい寝てるよ」って。ナップボックスっていうのは、昼寝用の小さい箱みたいなやつなんですけど、ベッドすら使わないのかと。

──取り組み方がまるで違う。

この人たちと競争するのは、心底やめた方がいいと思いました。

そこで思い出したのが、AIイノベーション事業本部長の住吉さんが「AIの基礎モデル、つまりお金と時間を注ぎ込んで競争した先に勝てる領域には絶対入るな」とずっと言っていたことです。「それよりもユーザーのコミュニティにMOATを見つけないとダメだよ」って。

MOATとは「堀」の意味、つまり競合他社の参入を防ぐ障壁のことです。
そこに独自のフライホイール(弾み車:プロダクトの核となるサイクル自体にAIのフィードバックループを組み込み、それによってユーザー体験価値が継続的に高まっていくことの例え)が回ってることとか、ユーザーの空気感があるとか、そういうところに勝ち筋を見つけなさいと。

頭ではわかってたんですよ。
でも、実際に体をサンフランシスコに置いて、目の前で様々な国籍の人たちが寝てない目で開発してるのを見ると、全然違う。「あ、なるほど。これが住吉さんの言ってたことか」って腹の底から納得しました。

── 帰国してから、DeNAという会社の見え方は変わりましたか。

2つの面がありますね。

1つは、「もっと早くなれる」ということ。
日本の中ではDeNAは本当にAIツールの導入が進んでると思います。大きな会社ですが、社員がClaude Codeを使えてるとか、かなり先を行ってる。でも、もっとサンフランシスコに人を送り込んでいいと思うし、2週間ぐらいの短期でもいいから、現場のマネージャークラスの人が体験すべきだと思います。仕事を変えるきっかけを得られると思う。

──もう1つは。

こっちのほうが大事なんですけど、サンフランシスコではわかりやすい事業がかなり好まれるんです。投資家に3語で説明できないともう相手にされない。例えば「Canva!for!AIエージェント!」みたいな。

でも、IRIAM(タイムラグの無いリアルタイムなコミュニケーションが楽しめるVライブコミュニケーションアプリ)とかPococha(ライブコミュニケーションアプリ)が提供してるものって、3語じゃ全然説明できないんです。そこにいる人たちの空気感とかは「アプリ触ってください」以外に言いようがない。こういうものを作れるのは、絶対に僕たちの強みだと思う。

──わかりにくさの中に価値があるっていうのはおもしろいですね!何でわかりやすさに偏っちゃうんだろう?

AIで開発が速くなると、均質化するんですよ。
わかりやすくてやったらいいことは、みんなやってくる。そうするとパワーがあるところ、つまり24時間365日働ける優秀な人材を、高い年収で集められるところが勝つ。OpenAIの人は本当に寝てないですし。その戦い方はどう考えてもうちがやるべきことじゃない。

──じゃあDeNAはどこで戦うのか?

一見わかりにくくて、どれぐらい大きいのかもよくわからない、でも、実際にユーザーが触ると確かに価値がある。そういう領域です。開発プロセスの恩恵は当然受けますけど、僕たちが目指すのはあくまで根本的な喜びとか幸せっていうもの。

──南場さんは社内でことあるごとに「Delight(期待を超える驚きと喜び)届けてる?」って言ってますもんね。

「3日後から行ける?」でサンフランシスコへ

──そもそも、なんで森中さんはサンフランシスコに行くことに?

実は、最初は有休を取ってサンフランシスコに行ってたんですよ。プライベートで。

──え、自費で?

はい。自分がやってるサービスは、リアルタイムでAIとコミュニケーションする高度なことをしようとしてたんです。技術的な難易度が高いんですけど、日本には参考になる情報がほとんどなかった。だったら最先端に行くしかないと。

あとシンプルに、AIのtoC(個人向け)サービスを作ってるのにサンフランシスコに行かないとは何事だ、と自分の中で思ってました。

── 会社にはどのように希望を伝えたんですか?

ちょっとずるいやり方なんですけど、滞在中に住吉さんに「今サンフランシスコにいます」って連絡して、出張に行きたい雰囲気を醸し出したんです。

──(笑)

そしたら住吉さんから「3日後から行ける?」って。

──まるで昭和のTVのバラエティ番組。

「え、3日後?」って思って。出張って普通はレポートを作るとか、何かしらのミッションがあるじゃないですか。でも、住吉さんからは結構ざっくりと「行ってきて」「暴れてきてください」って送り出されて。

──てっきり、住吉さんがお膳立てして「ここに行ってこれをやれ」っていう形で送り出したのかと思ってたんですけど、真逆ですね。現地ではどんな風に過ごしていたんですか。

最初はホテルだったんですけど、すぐにハッカーハウスに移りました。サンフランシスコは家賃が高すぎるので、エンジニアやファウンダーが8人で1つの家をシェアして住むっていうハッカーハウスがあるんです。アジア系の人たちが集まるハッカーハウスにたまたま入ることができました。

1部屋に2段ベッドが5台ぐらい置いてある男子部屋で、僕は2台目の下段に寝てました。

ハッカーハウスにはオフィスもモニターもあるし、開発環境として成立してるんです。あとサンフランシスコだとWeWorkとか、フロンティアタワーっていうエンジニアやファウンダーが集まるシェアオフィスがあって、そこでミーティングしたりしてました。

日中はネットワーキングにかなりの時間を使ってましたね。毎日のようにイベントがあるので、ピザ食べながら自分と似たことやってる人を探して、紹介してもらってコーヒーチャットして、LinkedInでつながって。わらしべ長者みたいにどんどんつながりを広げていった感じです。

──toCの人たちに絞ってつながりを増やした?

最初はあまり絞らずに行ってたんですけど、サンフランシスコはtoB(法人向け)サービスをやっている人がかなり多いんですよ。だから意図的にtoCの人たちを探しに行くようになりました。

シェアオフィスでのネットワーキング

面白かったのが、toCをやってる人たちはtoBの人たちと雰囲気が全然違うんです。
toBの人たちはアメリカンドリームを掴みにきたエンジニアと、ウォールストリートから来たスーツの人が多い。toCの人たちは良い意味ですごく変。独特の「俺たち」感がある村みたいなコミュニティで。

アニメが好きな人たちでAI開発してるリサーチャーが集まるバーベキューに行ったことがあるんですけど、さっきまでいたtoBのイベントと属性が違いすぎて。みんな優しいし、『NARUTO』が好きとかそういう話で盛り上がるんですよ。

──ちなみに英語力はどんな感じだったんですか。

大学受験レベルです(笑)

──それで「行っちゃえ」って?

さすがに英語はめちゃくちゃ不安でした。
「行ってください」って言われた瞬間から、瞬間英作文を1日30分やって。「これ絶対無理だよな」って思いながら飛行機乗って。実際着いてみたら、何言ってるかよくわかんない。でも、よくわからないなりに何とかしました。喋るほうは意外とバイブスでいけたりするんですよ。

「GitHubって何ですか?」──コードが書けない僕を救ってくれたClaude Code

──AIイノベーション事業本部に入ってからは、どうやってプロダクト開発に関わるようになったんですか。

最初は企画職でした。

──そういえば以前、「DeNAは企画書よりプロトタイプ」という記事が話題になっていました。ビジネス職もデザイナーも、アイデアはプログラミングしてプロトタイプを作って出せ、と。

そうなんです。企画の時点でプロトタイプが必要なんです。「僕、コード書けないですけど」って住吉さんに言ったら、「え?」って。「AIあるから書けるでしょ」って。

それで、GitHubでオープンソースのプロジェクト、つまりコードが公開されているプロジェクトを見て、それを見よう見まねで、1ヶ月ぐらいClaudeとずっと話しながらひたすら勉強しました。「GitHubって何ですか?」「ブランチって何?」みたいなレベルからです。

──それを乗り越えられない文系ビジネスパーソンは多そう。

自分の場合はわかりやすく、作りたいものが先にあったのがよかったです。
オープンソースのプロジェクトでPC版として動いてるものを、スマホの画面で動かしてみたいっていう、具体的なゴールがあった。でもやり方は全く知らない。その差を埋めるのにClaudeに丁寧に教えてもらったという感じです。

──コツとかはあります?

知らない単語が出てきたらその場で「これは何?」って聞くのが大事でした。Claudeがやたら僕が知識がある前提で説明してくるので、途中からユーザープロンプトに「このユーザーは本当に何も知らない文系なので、手取り足取り教えて」って入れたんです。そうしたら、少しずつわかりやすい説明になってきました。

──先ほどの英語の話しと同じで、まずは飛び込んでみる、でも、挫けないのは具体的な目的があるから、というのは共通ですね。

原点は、一人暮らしをして初めて気づいた「会話」への渇望

──森中さんがオンラインコミュニケーションに関する事業をやりたいと思った原点って何だったんですか?

きっかけは、一人暮らしを始めたことでした。元々実家暮らしだったんですけど、ある時、実家から20分ぐらいのところに引っ越したんです。

──それはめちゃ近いですね。

その生活になった途端にIRIAMにハマり始めたんです。実家にいた時は「まあ触ろうかな」ぐらいだったのが、一人暮らしして、仕事が終わって帰ってきて人と喋りたいってなった時に、電話するのもなんか違うし……って考えると、ファーストチョイスとして上がるようになったんです。

IRIAMは入社前からインターンで関わっていて、週5でライバーさんのイベント運用をやってました。秋葉原の駅広告にライバーさんを載せるとか、外部IPのキャラクターとコラボして一緒に広告に出るとか、そういう「非日常を提供するイベント」を毎月実施する仕事です。

その中でアプリを触る時間はすごく長かったし、ライバーさんと直接話す機会もあった。なのにその価値に気がつけていなかったんです。

DeNAが「ソーシャルライブ」って呼んでいるような小規模のライブ配信、開かれた場でのミクロなコミュニケーションっていうものに、すごく価値があるということ。人は結局、コミュニケーションを通じて幸せになるんですね。

── 一人暮らしの実体験がそれを裏付けたわけですね。

そうです。自分が目にするコンテンツの量自体は増えました。TikTokやYouTubeショートで山ほどコンテンツは流れてくる。でも、隣でしゃべるとか飲み屋でたまたま話すとか、そういう同期的なコミュニケーションは全然増えてない。むしろコンテンツが増えた分、リアルなコミュニケーションの機会はどんどん減ってるんじゃないかって思って。

そこに目をつけた事業がかなり少ないっていうのは、ずっと感じていました。

──そういう問題意識があったところに、AIの新規事業のチャンスが来た。

インターンを終え、4月に社員として入社したタイミングでAIイノベーション事業本部が立ち上がり、住吉さんから声をかけてもらったんです。実はかなり悩みました。IRIAMの組織が好きだったし、まだやれることもあった。最初はすぐ飛びつきそうになったんですけど、2、3週間は悩みましたね。

Claude Codeが変えたのは「開発速度」ではなく「組織のかたち」

──サンフランシスコに話を戻すと、Claude Codeとの出会いがかなり大きかったと聞きました。

きっかけは、あるスタートアップのチーム構成を聞いた時でした。かなりしっかりしたアプリケーションを作ってて、UXデザインもきっちりしてる。で、「チームは何人?」って聞いたら「エンジニア4人」って。

──PdMもデザイナーもいない?

いないんです。デザインを統括する人もいなくて、エンジニアが全部やる。ユーザーとも話すしデザインもする。「そんなのできるの?」って聞いたら、「全然できるよ」って。

当時まだリリースされたばかりのClaude CodeのSkillsについてわーっと説明してくれたんです。ほぼ聞き取れなかったんですけど、どうやらすごいらしいことだけは熱量から伝わって。

後で調べたら、Claude Codeがフロントエンドデザインのスキル、要するにいかにもAIが作りましたという見た目から脱却できるSkillsをちょうどリリースしてて。実際に試してみたら「マジか」って。

──どのあたりが「マジか」だったんですか?

アウトプットのクオリティもさることながら、チームのあり方について考えさせられてしまって。
僕たちの組織もそうなんですけど、開発のスピードのボトルネックって、実はコードを書く速度じゃないんです。「何を作るか」を決めることと、「作ると決めたもののデザインをどうするか」を決めること。ここにかなり時間がかかってました。

さっきのチームは、何を作るかを朝15分の会議で決めて、あとはそれぞれ作るだけ。ほとんどコミュニケーションしない。かなりプロフェッショナルなエンジニアだからできることではあるんですけど、それを見て思ったんです。「自分の存在価値ってどこだろう」って。

僕がいることで、デザイナーさんと相談する時間が発生して、そのぶん開発スピードが落ちる。これからはそれがかなり痛くなるだろうなと。

──それで自分も手を動かす方向に。

根本的に考え方が変わりました。「人を増やしてケイパビリティを上げる」んじゃなくて、「今いる1人のエンジニアをAIで武装する」んです。そのほうがケイパビリティは上がるし、コミュニケーションコストも増えない。

うちのチームは僕が23歳で、27歳と30歳のエンジニア2人。全員タメ口でしゃべってるぐらいの距離感です。少人数でコミュニケーションコストが一番低い状態を保ちたかった。

──実際に仕事の仕方はどう変わったんですか。

自分がコードを書くんじゃなくて、5つぐらいのAIセッションを並行で動かして、自分はAIに食わせるためのコンテキストを書く。文章ばかり書いていて、まるで小説家ですよ。

この仕事の変わり方って、受け入れるのにかなりのきっかけが必要だと思います。
5年10年コードを書いてきたエンジニアにとって、「自分でコードを書かないで、AIに指示する側に回る」っていう転換は大きいんです。AIとチャットしながら書くのが速くなったっていうレベルなら受け入れやすいんですけど、自分がほとんど書かずにAIを複数走らせるっていうのは、よほどの体験がないと切り替えられない。

だからこそ、サンフランシスコでの体験が大きかった。南場さんも言ってましたけど、「トップがワクワクしてるかどうかがめちゃくちゃ大事」っていうのが本当にその通りです。Xで大量に流れてくる情報と、自分が実際に生身の体で経験することは全然違いました。

──もしサンフランシスコに行ってなかったらと思うと?

怖いですね・・・。いつかは気づくと思いますけど、その遅れが怖い。

──サンフランシスコには森中さん一人で行ったんですか。

途中からチームのAIエンジニアが合流して、2人で同じシェアハウスに住んでました。2人で日本食の店にひたすら行ってパスタを並んで食うみたいな生活。

行きつけのパスタ屋さん

──エンジニア側のマインドチェンジも一緒に起きたのは大きいですよね。

大きかったです。英語話すのって大変だよねっていう生活面も含めて、同じ体験を共有してるかどうかで全然違う。2人いると行動範囲も広がるし、それに勇気も出ます。

原点は「人が何に喜びを感じるか」──USに行ったから気づけたDeNAの価値

──今後のサービス開発に活かせそうな気づきはありましたか?

サンフランシスコで違和感を感じたんです。
文化祭的な楽しさはすごく感じるんですよ。みんな寝ないで1つの目標に向かう熱狂。でも、長期的にユーザーをどう幸せにするかっていうことに向き合ってる人はかなり少なかった。

一方でDeNAには、住吉さんのように、KPIはもちろん見るけれど、その先のユーザーの本質的な喜びを真剣に考えてる人がいる。会社の歴史を振り返っても、人を喜ばせた経験と、それが良くない方向に回ってしまった経験の両方がある。そこに向き合ってきた上で、現場レイヤーまでこのビジョンが共有されてるっていうのは、すごく価値のあることだと思います。

──DeNAという会社は、もしユーザーそっちのけにしてビジネスに走っていったら、誰かが「おかしくない?」って言ってくれる場でもあると。

そうですね。住吉さんが「あれ、これって何をやりたいんでしたっけ?」って言うと思う。KPIが遅行指標だってことをわかってるんです。熱量の高いユーザーが喜ぶところから全てが始まるっていう感覚がある。

──確かに。いま、向こうの起業家文化の話が出ましたが、サンフランシスコの街とかはどうでした?私も昔何度か出張しましたが、テック企業のオフィスの裏で、ホームレスが寝てる光景とかありますよね。

ギャップが激しいんですよね。建物から一歩出ると全然違う風景がある。

日本に帰ってきたら「日本めっちゃいい国やん」って思うんです。東京すごくない?って。臭くないし綺麗だし、夜中に爆音でスピーカーからEDM流してる人もいない。でも日本人はあまり自分の国をいい国だと思ってなくて、アメリカと比べて負けてると思ってる人は多い。
資本主義的な論理ではそうかもしれないけど、幸せっていう尺度では「いやいや、あっちの社会はかなり底が抜けてるよ」って思うんです。

──そこが森中さんの事業観にもつながってくる。

AIによって事業がどんどん立ち上がる時代は確実に来ますけど、必ず反動が来ると思ってます。最終的にはユーザー、つまり人間が何に喜びを感じるか、何に疲れるか、何が本物だと思うか、そこは変わらないんですよ。

最近SNSの使用時間がようやく減少に転じかけてるのと同じで、そこに回帰する流れが必ず大きく起きる。その時に、ちゃんといいポジションで待ち構えておくってことですね。

──DeNAがやってることって、考えてみると面白いですよね。野球、ゲーム、ライブコミュニケーションにヘルスケア・メディカルと、一見するとバラバラなんだけれども、一貫して「私たちの喜びとは何か」に向き合ってる事業が多い。

そうですね。そして、開発のプロセスがどんどん速くなって、物量で勝っていくって戦い方がどの国のどのチームでもできるようになった時に、僕たちのポジションはどうなるのか。

それを経営層じゃなくて、現場でユーザーに価値を届けてる一人ひとりが考えるっていうことが、どれだけ組織の中に根付いてるか。それがtoCサービスの企業としての成否を分けるんじゃないかっていうのが、今の僕の中の大きな仮説です。

──最後に、森中さんの学びは、DeNAを志望する学生さんにはどう伝えてるんですか。

ピュアに人を喜ばせるものを作りたいっていう学生さんが多いですよね。それ自体はすごく素敵なことだと思います。ただ、自分が「いいものを作った」と思った先に、それが本当に人を幸せにしてるかどうかを見極めるのは、かなりトレーニングがいるよとは言ってますね。

AIでいろんなサービスがこれからどんどん出てくるけど、そのうち何割が本物なのか。売上が上がっても人を幸せにしてないものはたくさんある。「Delightを届ける」っていうのがDeNAのお題目だとしても、少なくともそれが会社として掲げられてるってこと自体にどれだけ意味があるか。僕は本気でそう思ってると伝えています。

──ありがとうございます。
またUSに行くんですよね?お気をつけて!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

執筆:大槻 幸夫

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