組織・働き方

AI時代こそ「便利な道具」でありたい。クリエイターの情熱を支え、アニメ制作の未来をつくる

2026.03.05

国内最大級のSNS運営企業で11年間、サーバーサイドからインフラまで幅広く担当してきたエンジニア、長田 乾(おさだ けん)。彼が次なる挑戦の舞台に選んだのはDeNAでした。

「AI時代だからこそ、周囲にとっての『使い勝手のいい道具』でありたい。AIという便利な最新技術とはまた別の、頼れる隣人のような存在として、気軽に声をかけてもらえるのが一番嬉しいんです」

あえて自らを「道具」と称するその言葉の裏には、特定の技術領域に固執せず、現場の熱量に寄り添いながらクリエイターの理想を形にしようとする、エンジニアとしての確固たる覚悟が見えます。

テクノロジーによって人が「義務的な作業」から解放され、創作の純粋な喜びだけに没頭できる未来をどう描くのか。エンターテインメント業界(以下、エンタメ業界)のDXに挑む現在地について聞きました。

安定よりも「誰と、何を面白がるか」。信頼する仲間との直感で選んだ新たな挑戦の場

──DeNA入社前は、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

▲エンターテインメント開発事業本部 事業統括部 プロダクト開発部 部長 長田 乾(おさだ けん)@ten3
ソーシャルゲーム、SNS大手企業を経て、2022年にDeNAに中途入社。入社後は、IPビジネスのDX推進やAI活用、イベント演出開発などの技術リードを務める。フェレットをはじめとしたイタチ科の動物が好き。

前職では11年間、SNSサービスの運営に携わっていました。サーバーサイドからインフラまで幅広く担当しましたが、大きな転機が訪れたのは、会社全体があるスマートフォン向けゲームの記録的な大ヒットに沸いていた時期です。

社内の主要エンジニアが次々とそのヒットプロジェクト側へ異動し、私が担当していたSNS側のインフラを守るメンバーが減少しました。「人手が足りないなら、自分の領域を広げて何でもやるしかない」。そんな状況下でクラウド環境への全面移行などを完遂させた経験が、現在の自身の基盤になっていると思います。

──そこからDeNAへの転職を決めた理由は?

実は、15年ほど前のモバイルゲーム全盛期に別の会社でゲームをつくっていた頃から、DeNAは常に意識する存在でした。転職の直接のきっかけは、以前一緒に働いていた信頼する先輩との会話です。サービスが安定期に入り、自分自身も「守り」のフェーズにあると感じていた頃、「ブロックチェーンを使った新しいプロジェクトがある」と知ったんです。

私はキャリアを緻密に計算するタイプではありません。それよりも「今、何が面白そうか」「誰と働くか」を重視しています。能力も人柄も知っている仲間と、また新しい領域で挑戦できる。その直感に従って、入社を決めました。

現場の「こだわり」を技術で紐解く。アニメ制作のプロと挑む、デジタルとアナログの融合

──現在のプロダクト開発部での役割を教えてください。

アニメや漫画などのIP(知的財産)ビジネスのDXを推進しています。注力しているのは、アニメ制作工程の効率化と、ファンが作品の世界観をより深く新しく楽しめる体験づくりの2点です。

具体的には、アニメ制作会社と提携した制作支援ツールの開発や、イベントでのプロジェクションマッピング、バーチャルプロダクションの実装などを行っています。一ファンとして見ていたエンタメ業界の裏側に入り込み、現場のプロが抱える切実な課題を技術という切り口で解決していく。これまで接点のなかった異業界の方々と新しい価値をつくっていく過程には、さまざまな発見があります。

──異なる業界の方々との共創において、意識していることはありますか?

「技術を押し付けないこと」を何より大切にしています。特にAI領域は進化が速く、現場には期待と不安が共存しています。だからこそ、現場のクリエイターの方々との対話には、特に時間を割いています。

現在、アニメ監督の朴性厚氏が率いるE&H production(以下、E&H社)と連携し、アニメ制作DXの共同開発プロジェクトを推進していますが、ここでも現場との「対話」がすべての起点になっています。具体的には、監督自身が演出をイメージしながら手元で編集できる「簡易撮影ツール」の試験導入などを進めています(※)。包括的なDXによりアニメ制作の効率化を図ることで、クリエイターがより創造的な活動に集中できる仕組みを実現したいと考えています。

※E&H社と進めているアニメーション制作プロセスにおけるDXの技術検証を目的とした共同開発プロジェクトの詳細はこちら

制作現場の苦労やこだわりを徹底的に聞き、社内のエキスパートと連携して、クリエイターが「本当に欲しいもの」を形にする。現場特有の慣習や感覚的なこだわりの違いを、対話を通じて一つひとつ紐解いていく。ものづくりに心血を注ぐ者同士、対話を通じて解決策が見えてくる過程は非常に刺激的です。

便利な「道具」として表現を支え続ける。技術で制作の制約をなくし、創作の喜びを最大化したい

──DeNAの働く環境については、率直にどう感じていますか?

役職に関わらず「漠然としたアイデアや概念を丁寧に言語化して共有し合う」というプロセスを組織としてとても大事にしていると思います。

また、AI活用への熱量とスピード感も圧倒的です。南場(会長)が「AIオールイン」を掲げてからは、現場の動きがさらに加速しました。

新しいツールの導入が即決されたり、最新モデルについてディスカッションする場が自然と立ち上がったり。周囲には、自費で高スペックなPCを購入して生成AIの研究に没頭する同僚や、専門知見を惜しみなく初心者に教えてくれるAIエキスパートが当たり前のようにいます。「好奇心が枯れない」個性豊かなメンバーに囲まれて、飽きることがありません。

──「AIオールイン」で加速する現場の熱量を感じます。その上で、長田さんが考えるエンジニアとしての理想像はどんなものでしょうか。

究極の目標は、AIや自動化が発展した先で人間が「生きるための義務的な作業」を技術で代替し、「苦しいけれど楽しい」という創作の純粋な部分に没頭できる世界を実現すること。それが私の理想です。

その未来を手繰り寄せるために、今は周囲から「便利なツール」として重宝される存在でありたい。「ツール」だと思ってもらうことで、自分の仕事の幅を閉じずに済みますし、好奇心の赴くままに新しい領域へ踏み込めます。そうして、クリエイターが予算や制作期間の制約に縛られず、頭の中にある理想を100%形にできる環境を、TVシリーズが劇場版級のクオリティになるような世界を、技術で支えていきたいと考えています。

──長田さんが見据える、その「クリエイターの純粋な喜びを最大化する世界」。その実現を共に目指す未来の仲間へ、メッセージをお願いします。

アニメ制作のように、いまだ「人の情熱と努力」で支えられている領域には、テクノロジーで解決できるポテンシャルが無限に眠っていると感じています。

自分の「好き」という熱量を武器に業界の当たり前を塗り替えたい。そんな好奇心旺盛な方と一緒に、エンタメの未来を面白がりながらつくっていきたいです。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

編集:川越 ゆき 撮影:内田 麻美
撮影場所:WeWork 渋谷スクランブルスクエア 共用エリア/会議室

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