組織・働き方

「脱皮できない蛇は滅びる」エンジニアからデータ組織を率いるリーダーへ。そのキャリアの指針を紐解く

「エンジニアリングの力で、人々の健康という普遍的かつ本質的な価値に貢献したい」

その強い思いを胸に、フィンテックからDeNAのヘルスケア領域へ参画した佐々木 桃太(ささきももた)。

現在はデータプラットフォーム開発部の部長として、約20名の組織を牽引しています。現場の最前線でコードを書き続けてきた彼が、なぜマネジメントという役割を選び、いかにして組織を動かしているのか。その道のりには、尊敬する上司から受け継いだ「変化」への覚悟と、事業と組織を地続きで捉える一貫した哲学がありました。

ソフトウェアエンジニアリングを軸としたキャリア形成

──まずはDeNAに入社される前のキャリアについて教えてください。

私は主にフィンテック(金融×テクノロジー)の業界に身を置いていました。特にキャリアの大きな転機となったのは、2010年代後半に在籍していた決済サービスのスタートアップです。この場所でソフトウェアエンジニアとしての基礎を徹底的に磨きました。

▲DeSCヘルスケア製品開発統括部データプラットフォーム開発部 部長 佐々木 桃太(ささき ももた)
エンジニアとしてフィンテックやAI領域のベンチャー企業での経験を経て2021年にDeNAへ中途入社。入社後は一貫してヘルスケア事業の開発に関わる。現在はDeSCヘルスケアのデータプラットフォーム開発部長として事業成長と組織成長の両輪に向き合っている。

──その会社では、具体的にどのような業務を担当されていたのですか?

バックエンド開発をメインに、クレジットカード業界のセキュリティ基準(PCI DSS)の準拠や運用、CRM領域の機能開発など幅広く携わりました。また、機能開発以外にもログデータ取得、データ分析環境の整備、分析、施策立案、実行といった「データの入り口から出口まで」を一気通貫で経験できた点や「エンジニアリングの力でプロダクトをどう成長させるか」という視点を持たせてもらった経験は、今の私の土台となっています。

──そもそも、ソフトウェアエンジニアの道を選ばれたきっかけは何だったのでしょう。

高専時代は電気工学を専攻していて、当初は大手電力会社など「重厚長大」なインフラ企業への就職を考えていました。

しかし、次第に自身のキャリアを工学を軸にしつつもより広い視野で考えたいという思いが強まり、大学に編入して進みたい方向性を模索していました。

そんな中、インターンでお世話になった会社から内定をもらいまして、Web領域でのソフトウェア開発およびつくったプロダクトをすぐ世に出せるスピード感に魅力を感じ、ソフトウェアエンジニアの道へと大きく舵を切りました。

「社会課題」を軸に見つけた、ヘルスケアという場所

──そこからどのような経緯でDeNAに入社されたのでしょうか。

2019年頃から、これまでのように幅広く開発に従事するよりも特定の領域に注力していった方がよいと考えるようになり、データエンジニアリングの領域に注力し始めました。

AIコンサルティングのスタートアップなどを経て、改めて「活用対象のデータボリュームが大きく、組織で意思決定できる事業会社でキャリアを積み重ねたい」という思いに至ったのです。

その際、軸にしたのは「社会の本質的な課題の解決に直結する領域」であること。そこで出会ったのが、DeNAのヘルスケア事業でした。

──数ある関連企業の中で、最終的にDeNAを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

ヘルスケアデータという極めて機微かつ膨大な情報を扱うには、高度なセキュリティと安定的な運用が不可欠です。その難易度の高さは、自分のエンジニアキャリアをさらに深める大きな糧になると考えました。

そして最終的な決め手は「人」ですね。面接で後に上司となる人物をはじめとした社員とお話しし、その人当たりの良さと仕事への熱量のバランスを見て、「この人たちと一緒に働きたい」と素直に思えたのが一番の理由です。

「走りながら組み立てる」拡大期の現場で学んだこと

──2021年に入社されてから、現在に至るまでの歩みを教えてください。

入社当初は上司と二人三脚で、新規事業のためのデータ基盤構築からスタートしました。転機は翌年の2022年です。事業の展開が広がり、扱うデータ量も爆発的に増えました。

当時の現場は、まさに「走りながら組み立てる」ような状態でして、私は一貫して、事業価値の源泉となる「DeSCデータベース」のプロダクト開発とデータ運用を担ってきました。

──その後、グループマネージャーを経て部長という役割を担うことになります。プレイヤーからマネージャーへと役割が変わることに、抵抗はありませんでしたか。

実は、マネージャーになる半年ほど前から当時の上司と共に準備をしてきたこともあり、特段抵抗があったわけではないです。

プレイヤーとマネージャーでは職種が違うと考えるのが妥当だと思っていて、役割も大きく異なります。

目標設定をする側になるのは初めてだったこともあり難しさを感じることはありましたが、1on1等を通じて対話を積み重ねることでその難しさも解消していきました。

部長というラベルがついたばかりの時には孤独感からくる戸惑いもありましたが、現在は約20名のメンバーを預かる立場として、「組織全体の力を最大化させること」に大きな責任を感じています。

──現場で自ら手を動かしたい、という葛藤はないのでしょうか。

自分が実務のボトルネックにならないよう、現場の業務からは意識的に距離を置いています。

私の仕事は、優秀なメンバーたちが最高のパフォーマンスを発揮できる「環境と道筋」を整えること。任せられることはどんどん任せ、彼らが「自分たちの力で組織を動かしている」と実感できる状態をつくることが大切だと考えています。

「脱皮できない蛇は滅びる」。上司から受け継いだ変化の哲学

──前任の上司からは、どのような影響を受けましたか。

彼がよく口にしていた「脱皮できない蛇は滅びる」という言葉は、私の中でも常に意識するものになっています。彼は、あえて3年ごとに自分の役割を強制的に変え、常に「脱皮」し続けるスタンスを持っていました。私が部長に就任したのも、彼が次なる挑戦へ向かうためにバトンを渡してくれた結果です。

現場の細部まで知るプロフェッショナルでありながら、いざという時は誰よりも先に泥臭く動き、必ずやり切る。その背中を間近で見てきたからこそ、今の私があります。

──佐々木さんが率いる「データプラットフォーム開発部」は、どのような組織でしょうか。

一言で言うなら「ひたむきなプロフェッショナル集団」でしょうか。ヘルスケアという人の命に関わる情報を扱うからこそ、より高い品質を目指して最後までやり遂げる「クラフトマンシップ」をメンバー全員が共有しています。

一方で、風通しのよい組織文化をつくることにはこだわりがあります。実際に、他部署からの異動者や新卒メンバーがスムーズに馴染んでくれている実感もあります。程よい緊張感を保ちつつ、お互いを認め合える心理的安全性をいかに両立させるか。部長としてそこは注力している部分であり、手応えを感じているところでもあります。

視点を「どうつくるか」から「なぜつくるか」へ

──DeNAが掲げる「AIオールイン」については、開発組織としてどう向き合っていますか。

AIは単なる「効率化ツール」ではなく、私たちが市場競争力を保つための「必須装備」だと捉えています。開発組織としても、単にコードを書くサポートだけでなく、企画や運用のプロセスそのものをAIでどう変革するか。組織全体のケイパビリティを広げるための挑戦を続けています。

──最後に、今後の展望についてお聞かせください。

事業の成長と組織の成長の好循環を追求し続けていきたいと思います。

データプラットフォームの進化を通じて、DeNAのヘルスケア事業を技術面から支え続けていきたいです。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

編集:川越 ゆき 撮影:内田 麻美
撮影場所:WeWork 渋谷スクランブルスクエア 共用エリア/会議室

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