組織・働き方

掛け声だけではない「AIオールイン」の実態。「現場のAI活用」発信とDeNAの2025年AI振り返り

2025.12.23

2025年は、DeNAにとって特別な1年になりました。

2月、「DeNA x AI day」のオープニングで、創業者であり会長の南場が発した「AIオールイン」という言葉。それはお飾りのスローガンではなく、DeNAという企業グループ全体を進化させる1年の始まりでした。

DeNA南場智子が語る「AI時代の会社経営と成長戦略」全文書き起こし | フルスイング by DeNA

フルスイングでは現場社員がどう「AIオールイン」と向き合ったのかを伝えるべく、日々のAI活用術を収集し、Xで発信し続けました。この1年でDeNAでは何が起きどう変わったのか?話題になった記事をもとに、DeNAの「AI変革」の1年を振り返ります。

4月:AIベンチャーを設立

4月14日、DeNAは100%出資子会社「株式会社DeNA AI Link (DAL)」を設立。そして7月2日、DALは米国Cognition AI社との戦略的パートナーシップを発表し、AIソフトウェアエンジニア「Devin(デヴィン)」の日本展開を開始しました。

DeNA、AIエージェント「Devin」の日本展開を支援 米Cognition AIとパートナーシップ締結 - ITmedia AI+

Devinとは要件定義から設計、コーディング、テスト、デプロイまでを自律的に実行できるAIエンジニアで、非エンジニアでも指示を与えるだけで開発が可能になる、そんな革新的なツールです。
社員はもとより、内定者研修でも利用され話題となりました。

DeNA「内定者にもAI教育」 入社前から生まれる”AI格差”の実態と、次の育成標準とは? - エンジニアtype | 転職type

7月:企画書禁止! エンジニア以外もプロトタイピング

従来の文書による企画ではなく、「生成AIを使ったプロトタイプがない企画は承認されない」という大胆な業務フロー変更が、SNS上で大きな話題を呼びました。これによって、

・企画と実装のギャップ縮小
・迅速な仮説検証
・若手による提案活性化

などが加速し、企画の質と検討スピードが大きく向上。国内外のプロダクトマネージャーや起業家からも注目を集め、各種メディアで取り上げられました。

企画を通すなら「生成AIで作ったプロトタイプ」付きで――DeNAが一部部署で “書類だけ”はNGに - ITmedia AI+

8月:球団アプリに日本プロ野球初の「AI解説」を実装

横浜DeNAベイスターズのアプリ「BAYSTARS STAR GUIDE」にAI解説「BASE☆BLUE」が搭載され、新しい観戦スタイルを生み出しました。

AIが投打データを解析し、「打席の見どころ」「選手の相性」をリアルタイムで解説。スタジアムやテレビで観戦しながら、手元のスマホでAIの解説を読むという、リアルとデジタルが融合し、ビギナーにも優しい、野球観戦の新たな提案を行いました。

このAI機能の開発の裏側を解説した技術ブログも話題になりました。

BASE☆BLUE:4つの問題で学ぶ、リアルタイムAI解説のプロンプト設計 | BLOG - DeNA Engineering

8月:全社的なAIスキル評価「DARS」の導入

8月末には社内AI活用をさらに推進するため、社員のAI活用スキルを可視化・向上させる新指標「DeNA AI Readiness Score (DARS)」を導入。

背景には「社内でAI活用状況のばらつきがあり全体像を把握する物差しがない」という課題があり、AIオールイン宣言後の具体策として生まれました。

2025年度末までに全組織がDARS組織レベル2に到達することを目標に掲げ、学習環境の整備や有志による勉強会開催などリテラシー底上げ施策も展開しています。

DeNA、全社員の“AI活用レベル”評価へ 半期ごとに目標設定、等級別の推奨要素に - ITmedia AI+

技術情報の発信

その他にも、技術ブログでの発信が時に大きな話題となりました。

AIエンジニアが本気で作ったLLM勉強会資料を大公開 〜そのまま使えるハンズオン用コード付き〜 | BLOG - DeNA Engineering

社内AIヘルプデスク 正答率80%達成 RAG精度改善の軌跡 | BLOG - DeNA Engineering

現場の試行錯誤をリアルタイムでさらけ出す「AI活用100本ノック」

こうした全社的な取り組みがメディアでも話題になる中、DeNAではもう一つ、現場主導の情報発信施策が進行していました。フルスイング公式Xで展開された企画「AI活用100本ノック」です。

これはDeNAの現場社員が実際にAIをどう業務に使っているのかを「100事例」集めて毎日公開してしまおう、というDeNAらしいオープンでスピード感のある施策でした。


この企画について、担当したコーポレートブランド企画編集グループの畑に聞きました。

なぜ「毎日」発信だったのか

最初は2〜3日に1本のペースで紹介しようと思っていましたが、AIの進化スピードを考えるとそのペースでは100本紹介する頃には情報が陳腐化してしまうという議論があり、出し惜しみせず毎日発信する方針に切り替えました。

「AIオールイン」ではじまった現場の試行錯誤と変化

南場の「AIオールイン」宣言を受け、社内ではこれまで使ったことがなかった社員も含めAI活用と知見の共有が一気に加速しました。全社員に展開された「AI活用事例シート」には社内から200件ほどの事例があっという間に集まりました。100本ノックの序盤はこの200件から重複や類似事例を除外し、発信されました。

その後1〜2ヶ月経つと社員たちの使い方が固定され、新しい事例の共有ペースは落ち着いてきました。例えばビジネス職ではGAS(Google Apps Script)による効率化や、NotebookLMでのナレッジシェアといった「定番」に収束していきました。

ビジネス職ではGeminiやNotebookLMによる要約、まとめの事例が多く集まった
エンジニアのオペレーション活用事例は、ビジネス職がGASを活用する大きなきっかけに

事例や知見が浸透し、全員が自分なりの使い方を身につけたことで新しいネタが出てこなくなる。当然の流れですが、ここで出尽くしたから良しとして事例発信を終わらせないのがDeNAです。

共有されていない活用方法を見つけて広めるべく、各事業部や職種別の勉強会などに直接アタックして徹底的なヒアリングを実施。その結果、表に出ていなかったニッチな活用法やクリエイターなど専門職ならではの活用事例が掘り起こされ、100本を完走することができました。

特定の職種、業務プロセスについての事例も掘り起こし紹介した
同じゲームサウンド事例でも「内部研修の素材を作る」という他職種の参考になるものも

「100本ノック」を終えて

この施策を通じて社内外から様々な反響がありました。社外の方とお会いした際に「ビジネス職でもパッとできることがイメージしやすい」「今のDeNAの空気がわかる」といった感想をいただいたほか、社内でも「隣の部署がこんな使い方をしているなら、自分たちのチームでも活用できるかも」という横展開が進みました。

エンジニアや一部の社員に限らず全員が当たり前にAI活用に取り組み、皆でそのレベルを上げていく。DeNAの「AIオールイン」が単なるスローガンではなくカルチャーとして根づきつつあることもこの取り組みを通じて実感できました。

ダウンロード可能な「AI活用100本ノック」全事例まとめはこちら

これまでXで発信した100本の事例を以下のスライドにまとめました。明日の業務に使えるヒントが詰まっていますので、ぜひご覧ください!

そのまま使える事例を探すのはもちろん、パラパラご覧いただくことで自分なりの使い方のインスピレーションになることもあるのでおすすめです。

2026年度へ向けて「DeNA x AI Day」開催決定

2025年は、トップダウンの大胆な意思決定とボトムアップでの現場の試行錯誤、両輪がフル回転した一年となりました。

もちろんDeNAの挑戦はここで終わりません。冒頭でも触れたAI活用の三本柱「既存事業の競争力向上」「新規事業の創出・グロース」「全社生産性向上」に引き続き取り組み、またそのプロセスや成果をオープンにしていくことで「AIで何かをやるならDeNAでやりたい/DeNAとやりたい」と思っていただく方が増え、さらにAIの成果が加速する状態をめざします。

来たる2026年3月、DeNAのAIの取り組みの詳細をお話しするカンファレンス「DeNA x AI Day 2026」を開催します。 この1年で蓄積された事例や知見を経営陣、現場社員、各事業の様々な業種や職種ごとの視点から余すことなくお話ししますので、ぜひお申し込みのうえご来場ください。渋谷でお待ちしております!

DeNA x AI Day 2026 "Proof." イベント概要・参加登録フォーム

フルスイング編集部では今後もDeNAの取り組みや挑戦する社員の姿を通じて、皆さまに発見や刺激になるような記事をお届けしていきたいと思います。1年間ありがとうございました!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。「AI活用100本ノック」の内容はXでの事例公開時点のものですので、AIツールの仕様変更、モデルの急速な進化によって日々効果的な活用方法が変化していくことにご注意ください。

※本記事掲載のAI活用事例等は、それぞれ生成AIに関する社内ルールを順守した方法で運用を行っており、また透明性、公平性、プライバシー、品質、そして人間の監督を重視した当社のAIポリシーにも準拠しています。

執筆・編集:フルスイング編集部

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