行政と民間の協働が賑わいのあるまちづくりを加速させる。鹿児島県庁職員がDeNAでの2年間を振り返った
2024.03.05
横浜DeNAベイスターズが、スタジアムアプリ「BAYSTARS STAR GUIDE」をリリース。2025年シーズン、横浜スタジアムでの観戦体験がより便利に、より楽しく進化します。
実は、このスタジアムアプリ、この先に構える壮大なプロジェクトの第一歩なんです。サービスの進化はもとより、スタジアム外の街へもシームレスに範囲を拡張し、まだ見ぬデライトを届けようと、今まさに企画・推進しています。
横浜DeNAベイスターズ取締役の林裕幸と、全社のデジタル戦略を指揮する菅原賢太が、観戦体験とスタジアムアプリの展望を語り合いました。
目次
ーースタジアムアプリ「BAYSTARS STAR GUIDE」について教えてください。
林裕幸(以下、林):ひとことで言うと、横浜スタジアムでの野球観戦をより楽しく快適にして、体験価値を最大化するためのツールです。入場時にこのスマホアプリさえあれば、お客さまの欲しい情報がタイムリーに届く。ということを目指しています。
ーースタジアムアプリでは、どのような情報をキャッチできますか。
林:今まさに打席に立っている選手の情報がトップ画面に表示され、選手ごとの応援歌も歌詞を見ながら歌って応援いただけます。チャンス到来時のチャンステーマもリアルタイムに反映できたら、スタジアム全体がもっと盛り上がるよねという話もしています。
ーーファンの皆さんにとって便利な機能も搭載されているとのことですね。
菅原賢太(以下、菅原):ファンクラブ会員のポイント(STAR)登録も便利になりましたよね。立売販売員からドリンクを購入するともらえるポイントが、DeNA Payを利用することで、支払時に自動付与されます。表示された商品の個数を選択すればいいので便利になったという声を多数いただいています。
ーーそんな中で、お二人の役割を教えていただけますか。
林:ベイスターズの事業責任者として、スタジアムサービスの全体像を把握して、来場者の満足度を充実させるための最終的な意思決定をする立場にいます。
菅原:DeNAのデジタル戦略を全社横断で推進しています。DeNAアカウントサービス(顧客共通基盤)や決済システムを設計しながら、ベイスターズのスタジアムアプリを含む開発組織全体のマネジメントもしています。
ーーDeNAの顧客共通基盤や決済システムと、スタジアムアプリの関係とは?
菅原:顧客共通基盤は、DeNAグループ全体のユーザー体験の革新をめざすプロジェクトです。お客さまのアカウントと、その決済を握るDeNA Pay、ユーザーニーズを知るために分析するデータ基盤を、全サービスで結びつける取り組みです。
第一弾の導入先としてベイスターズが候補に挙がり、それなら顧客共通基盤とスタジアムアプリをセットにしようと、2023年1月に提案しました。近年のフィンテックのトレンドでアプリサービスに金融を組み込む動きがあるのをみて、2階建て構造みたいなものを思いついたんです。
スタジアムアプリならスタジアム周辺地区でのイベントや、ベイスターズが取り組むまちづくりにも拡充していけると、イメージできたこともあります。
ーー顧客共通基盤とスタジアムアプリの連携は、すんなりと運びましたか?
菅原:いや、すんなり運ぶことはなくて(笑)。DeNAグループ同士とはいえ、お客さまに提供しているサービスが異なるので、まずは相互理解をするところから始まりましたよね。
林:もともとベイスターズでは、点在していた複数のアプリを一つにまとめたスーパーアプリを作ろうと、2022年3月ごろから構想していたんです。
菅原:そう、それぞれ単独のプロジェクトで別々に動いていましたよね。
林:ベイスターズファンには既にIDが発行されていたので、顧客共通基盤の導入は工数が増えるだけでメリットはないと考えていました。でも、その基盤の上にスタジアムアプリを作ろうとなって以降、それなら「こんなこと出来るのでは?」と、イベント企画やグッズ、飲食のアイデアなどが各部署からどんどん出てくるようになりました。
ーー目的が異なるプロジェクトが空中分解せずに融合してるうえに、アイデアが湧き出てくるとは……。普段、どんな会議がなされているんですか?
菅原:最初は大変だった気もしますよ。
林:大変でしたよね。菅原さんたち開発チームが、臨機応変に動いてくれたことで、まとまっていったかなと思います。あとは、電子チケットやリセール対応とか、これまでに開発チームと一緒に築いてきた実績があったから、信頼していたというか。
菅原:信頼してもらえたのは大きいですよね。あとは、オペレーションに関してはベイスターズの皆さんがたくさん知見をもっているので、それを聞いて技術的にこんなこと叶えられたらいいよねってアイデアをどんどん膨らませていきました。
ーースタジアムアプリ開発で重視したのはどのようなことでしょうか。
菅原:スタジアムアプリは、PDCAを回しながらスクラップ&ビルドで常に改善できるような状態で開発しています。自分たちでスタジアムへ出向いて実体験を重ねながら作り直した部分もありました。
例えば、フードやドリンク、グッズがどこで買えるのか、目当ての店にすぐ行けるようにゲート番号と通路番号でナビゲーションするマップ画面を実装。当初は全体のフロア図のようなものを用意していましたが、目的地のみにフォーカスさせるよう改良しました。
林:そうそう。シンプルな方が分かりやすいって結論に至りましたよね。進めていた全体図をバッサリと切り捨てて根底からシフトチェンジしたのはすごい覚悟だなと。
私が重視したのは来場者の満足度です。座席までフードが届くシートデリバリー機能はまさにチャレンジしたかったことです。誰だって試合の大事なシーンを見逃したくないですし、みんなが同じ時間帯に来場して、同じタイミングで店頭に出向いて混雑に巻き込まれるなら、手数料を払ってでも座席に届けてほしいという要望は必ずあると思っています。
ユーザーの行動を分析でき、お客さまへのアンケートから拾った声を実装していけるのはスタジアムアプリに期待していることです。
ーーDeNA Payと連携することでの、ユーザーメリットとは?
菅原:インハウス(自社)の決済を使ってもらうことで、そのデータを通してお客さまの課題に気づき、課題をベースにブラッシュアップしていけることかなと。僕らは決済サービス市場で戦いたいわけじゃなくて、インハウスにすることで手数料を抑えたり、データを活用することで他とは一味違う特別なユーザー体験を創出して、結果としてお客さまに還元していきたいということが最大の目的なんです。
価値のリターンがないと、DeNA Payを導入する動機には繋がらない。お得さで還元するには限界がある。でも実は、ファンの方が本当に求めていることは、プレミアムな体験の方が上なんじゃないかなって。ベイスターズのポイント制度のリワードプログラムが盛り上がってるのをみて、気が付きました。
林:昔からベイスターズのポイント制度はありましたが、実はあまりうまくいってなくて、つい2024年シーズンからリニューアルしました。来場登録やグッズ購入でもらえるポイントを体験や限定ユニフォームと交換できるなど、気持ちよくポイントを集めたくなる仕掛けを作りました。
どうやったら貯まって、貯まったものがどう使えるかという入口と出口のところは、2年ぐらい議論してやっと導けたものだったりするので……。スタジアムアプリ決済により便利になりますし、デジタル戦略によってアイデアの可能性も広がります。
菅原:ベイスターズファンの皆さまは、一般的には煙たがられる本人確認にも積極的に対応してくださっているので驚いています。ファンの熱量もさることながら、ファンとベイスターズの粘着性の高さみたいなものを感じますよね。
ーー今後、スタジアムアプリを通して叶えたいことをお聞かせください。
林:横浜スタジアムでの試合観戦に限らず、その前後の時間の体験も充実するものにしたいですね。ベイスターズは、2026年春からJR関内駅前の横浜市旧市庁舎街区活用事業「BASEGATE横浜関内」で、「THE LIVE」というライブビューイングアリーナ(LVA)も運営していきます。スタジアムとBASEGATE横浜関内の行き来を活性化させる橋渡しに、スタジアムアプリがうまく介在できたらいいですね。
例えば、試合前後にBASEGATE横浜関内のお店を予約できるようにとかは、すでに話をさせてもらっています。
ーースタジアム体験をどんどん拡張していくイメージですね。
林:そうです。THE LIVEに立ち寄ってから試合を見に行くという人もいれば、試合が終わった後にベイスターズが勝った余韻に浸りたくてTHE LIVEで2次会、3次会みたいなこともあると思います。子どもが観戦に飽きてしまったから、試合中にBASEGATE横浜関内へ遊ばせに行って戻ってくるとか、そういう体験も可能になって面白くなるんじゃないかなと。
菅原 :スタジアムの座席に人が埋まっている状態が望ましいので、座席の回転数を上げることができたらいいという話も林さんから聞いています。チケットが完売している試合でも、お客さまにもさまざまな背景があって途中入場/退場は一定数起こるので、チケットのリセールの機能を活用して、席が空いたら他の人に開放することで何かで還元されるとかは、近いうちに実現できたらいいですね。
ーー今後の観戦体験はどのように進化していくと思われますか。
林:スタジアム内と外がどんどんシームレスになっていくと想像しています。例えばですけど、スタジアムの中にいながらTHE LIVEやBASEGATE横浜関内の飲食店のものをデリバリーするのは、仕組み的にも叶えられる状態にあります。
THE LIVEで試合を観ていた人が、リセールチケットを優先的に買えるとか、そのときにTHE LIVEで使った金額の分のチケット代が安くなるとか。いい意味でその境目がない世界観になっていくんじゃないかなと。
周辺事業者とのタイアップなんかも増えていくと思いますし、関内エリア一帯の事業者との新しいサービスのあり方が生まれてくるのではないでしょうか。
ーー開発側の視点からもお聞かせください。
菅原:スポーツやエンターテインメントのサービスの特徴に、サーバーでいうところのスパイク(急激なアクセスの増加)があると思っています。人が集中する時間帯のピークの波が激しいじゃないですか。それをスタジアムアプリでうまく緩和できたらいいですよね。
例えば試合後はJR関内駅が大混雑するので、東急東横線の日本大通り駅まで歩けばポイントが付与される案内を出して分散を促したり、DeNA Payに入っているVisaタッチでポイント利用によって電車に乗ることもできます。キャッシュバックできる仕組みもあります。
林:飲食店に寄ってもらうのもありですね。スタジアム内の飲食にもダイナミックプライスを設けて、空いている時間帯は少し安くなるとか。デジタルかつ自社決済だからこそ叶えられる可能性が充分あります。
菅原:デジタルで頑張るところと、オペレーションの仕組みで頑張るところをセットで考えなければいけないと思っていて。ベイスターズがこれまでもやってきたように、ファンの状況をしっかり見ながら、周囲の街の人たちの状況を見ながら、丁寧にやっていく必要があるんじゃないかと。その平準化をうまくできれば、僕らのやりたいDelight(デライト)を届ける範囲がどんどん広くなるのではないでしょうか。
ーー最後に、林さんから一言お願いいたします。
林:有り難いことに、スタジアムアプリのダウンロード数が目標数値を大きく上回って推移しています。ファンの方々の期待値の高さを感じるとともに、この期待を上回るDelight(デライト)を届けようと、社内でも熱気が湧いています。ベイスターズを熱く応援してくださるファンの方に良いアプリだと納得していただけるようブラッシュアップを重ねながら、初めてスタジアムに来場されるお客さまにもアプリを通してスタジアム観戦の醍醐味を味わっていただけるように広げていきたいと思います。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
執筆:さとう ともこ 編集:難波 静香 撮影:内田 麻美
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